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専門家コラム

25都道府県で上昇!
コロナ禍から回復が大きくすすむ路線価

専門家コラムVol.23|イメージ
吉崎 誠二

COLUMNIST PROFILE

吉崎 誠二

不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

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国税庁は7月3日、相続税や贈与税の算定基準となる2023年分の路線価(1月1日時点)を発表しました。路線価とは、主要道路に面する土地の1平方メートル当たりの価格を言います。
相続資産には、現金や預貯金、受け取り保険金といった現金だけでなく、株式や不動産といった財産も相続する可能性があります。最近では、「相続した財産の大きな割合が不動産だった」とする相続人の方が多いようです。相続税はそもそも、財産を「時価」で評価することを定めていますが、現金や上場株などと違って、土地の「時価」を把握することは難しいという現状があります。そのため、国税庁が原則として路線価に基づく算定を認めています。
それでは、23年分の路線価について詳しく見ていきましょう。

目次
23年路線価の状況/税と路線価
固定資産税評価額と相続税評価額
都道府県庁所在都市の最高路線価
今後の見通し

23年路線価の状況/税と路線価

全国約31万6千地点(標準宅地=宅地とは、建物が建っている敷地の事です。)の平均変動率は前年プラス1.5%となりました。前々年はマイナス0.5%、そして前年はプラス0.5%でしたので、前年から1ポイント伸び率が拡大したことになり、回復が鮮明となっています。
都道府県別の変動率でみれば、前年比で上昇した都道府県は27都道府県、変動率が上昇(もしくはマイナス幅が縮小)したのは45都道府県となっています。

また、マイナスからプラスになったのは、7県(横ばい含む)となりました。都道府県別で、上昇率がトップだったのは北海道の6.8%(前年も1位:4.0%)、つづいて福岡県4.5%(前年も2位:3.6%)、宮城県の4.4%(前年も3位:2.9%)、沖縄県の3.6%(前年も4位:1.6%)、東京都3.2%(前年は6位:1.1%)となっています。上昇率ベスト4は昨年と同じで、また地価公示と同じように、地方主要地域の上昇が目立っています。

専門家コラムVol.23|イメージ01
税と路線価

ここからは、そもそも路線価とは何か?について解説します。
相続税の算定、贈与税の算定をする際に、現金や株式などは、価格の査定が容易です。しかし土地や建物といった不動産に関しては、実勢価格に基づいて地価を申告してもいいのですが、個別性が強いため価格算定が容易ではありません。そのために、国税庁が路線価を設定しており、それに基づいた申告をすることができます。23年中に、お亡くなりになった方の相続に伴う相続税、23年中に行われた贈与に伴う贈与税などは、今回発表分の路線価を使い価格算定することができます。

固定資産税評価額と相続税評価額

路線価と呼ばれるものには、固定資産税路線価と相続税路線価の2つがあります。
一般的に路線価と言えば、「相続税路線価」のことを指すことが多く、国に納める国税である相続税・贈与税等の課税のためを目的とし、国税庁が算定しています。相続税路線価は、概ね公示地価の8割程度となっています。
一方、「固定資産税路線価」は、市区町村(東京23区の場合は都)に納める地方税である固定資産税の算定を目的としていており、各市町村(もしくは区)が算定しています。固定資産税路線価は、公示地価の約7割程度となっています。固定資産税路線価から固定資産税評価額が算定され、これに基づき、固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税といった不動産を所有・取得に関する税の基準となります。価格時点は同じく1月1日、3年ごとに更新され、基準年の4月に公表されます。

「固定資産税路線価」は、3年に1度の更新(21年は3年に1度の見直し年でしたが、新型コロナウイルスの影響が大きかった為、1年間の見直しの据え置きがありました。)です。そのため、地価が上昇している状況であれば、固定資産税路線価の据え置きは不動産所有者の不利益にはなりませんが、地価が下落している状況であれば不利益が生じます。そのため、地価下落時は、できる限り固定資産税路線価額に反映させるため、市町村(東京23区の場合は都)の判断により簡易方法で修正を加えることができます。これを時点修正といいます。

県庁所在地の最高路線価

専門家コラムVol.23|イメージ02

再び、23年の路線価の状況に戻ります。
都道府県庁所在地の最高路線価地点をみると、上昇したのは43地点でした。前年は31地点、前々年は8都市の地点でしたので大幅に増え、ほぼ全国に広がっていることがわかります。
下落したのは4地点で、前年は16地点でしたので、全国的な地価回復状況がわかります。

都道府県庁所在都市の最高路線価 (変動率で降順)

専門家コラムVol.23|都道府県庁所在都市の最高路線価01 専門家コラムVol.23|都道府県庁所在都市の最高路線価02
国税庁資料より作成

上図は、都道府県県庁所在都市の最高路線価を「対前年比」の順に並べたものです。
(注:千葉市は最高路線価地点に変動があったため、圏外にしています。)
トップは岡山市、次いで札幌市、さいたま市、福井市、奈良市、岐阜市、秋田市の順となっており、地方の県庁所在地中心部での地価上昇が顕著な事が分かります。
地方都市の駅前など中心地再開発が続き、人口減少が続いている都市の中心地でも路線価の顕著な上昇が見られました。

今後の見通し

路線価は、基本的には地価公示と同じ傾向になります。
24年の地価公示、路線価とも、経済状況が活況である事が鮮明な事、観光客の増加、人流増加が顕著な事などから、多くのエリアで今年を上回るでしょう。
また、これまで開発が進んでいなかった地方都市の中心地再開発が進み、こうしたエリアの路線価上昇基調がより顕著になるでしょう。

ご留意事項
不動産投資はリスク(不確実性)を含む商品であり、投資元本が保証されているものではなく、元本を上回る損失が発生する可能性がございます。
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本マーケットレポートに掲載されている情報は、2023年7月19日時点公表分です。
各指標は今後更新される予定があります。
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