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専門家コラム

建築工事費の上昇と
区分マンション投資に与える影響

専門家コラムVol.27|イメージ
吉崎 誠二

COLUMNIST PROFILE

吉崎 誠二

不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

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投資用・実需用ともマンション価格は高止まりが続いています。また、物価上昇が続いており、数十年ぶりに「モノの値段が高くなったなぁ」と実感されている方も、とくに50代以上の方の中には多いことでしょう。
様々なモノの値段が上がっている中で建設工事費関も同様に上昇が続いています。これまで建築工事費は2013年頃から上昇が目立ち始めましたが、その後も工事費は上昇しており、まだまだ上昇する見通しです。ここでは建設工事費の上昇の現状と区分マンション投資に与える影響について解説します。

目次
消費者物価指数
建設工事費上昇の現状
さらなる工事費上昇の見通し、その背景
中古区分マンション投資に与える影響

消費者物価指数

物価の変動を示す全国消費者物価指数をみれば、執筆時(11月16日)最新の2023年9月分は前年同月比プラス2.8%(生鮮食料品を除いたコア指数)となり13カ月ぶりに3%を下回りました。しかし、生鮮食料品とエネルギー価格を除いた「コア指数」はプラス4.2%と依然高い伸びを示しています。
22年半ばから続く物価上昇は多少伸び率が落ち着いてきたものの、この先も2%台(同)の伸びが続くものと予想されています。

専門家コラムVol.27|イメージ01

建設工事費上昇の現状

合わせて建設工事費の上昇も顕著になっています。執筆時最新分(=23年8月分:23年10月末国土交通省発表)までの建設工事費デフレーターの状況を見てみましょう。
グラフは、2016年4月からの建て方別の建設工事費デフレーターの推移です。
建設工事費は、東京オリンピック・パラリンピック開催が決まった2013年ごろからジワジワと上昇が続いていました。その後、2020年の新型コロナウイルスの影響が広まった頃に一時的に僅かに下がったものの、2021年に入り上昇が顕著になってきました。とくに、「ウッドショック」と呼ばれた木材の急激な需要の高まりから、木造住宅の工事費は21年後半から22年の前半にかけて2ケタの上昇率が続きましたが、その後上昇率は徐々に小さくなり、価格は高止まりながらも落ち着く様相です。2015年の年間平均を100とすれば、どの建て方の工事費も2割以上の上昇となっています。

専門家コラムVol.27|イメージ02

さらなる工事費上昇の見通し、その背景

しかし、今後もさらに工事費は上昇する可能性が高そうです。
その要因としては、まず輸入建築資材の価格上昇気配があります。多くの建築資材を輸入に頼る現状のため、現在のような円安(執筆時のドル円相場は1ドル=151円台)が続けば、この先の価格上昇は避けられません。逆に円高になれば、輸入資材価格は下落の可能性もあります。
次に、輸送コストの上昇は避けられそうにないことがあげられます。建築現場まで建築資材を運ぶ費用などが上昇しています。物流に携わる方々(ドライバーなど)の人件費が大きく上昇しており、2024年4月からはドライバーの労働時間(残業時間)の上限が決められ、人手不足も深刻になることは確実視されており、人件費の上昇、そして輸送コストはさらに上がると思われます。
さらに、建設工事費の上昇に拍車をかけることになりそうなのが、「建設業界の2024年問題」と言われる、24年4月から働き方改革による残業上限規制が施行されることです。ドライバーや医師とともに、建設業労働者も5年猶予されていた働き方改革が適用されます。これにより建設業就業者人件費がさらに上昇する可能性が高まっています。ただでさえ人手不足が深刻のため労働人件費が上昇、残業を依頼することもできなくなり工期が伸びることで、結果、工事費の上昇は確実と思われます。すでに、これから受注する工事においては、このように人件費上昇を見越した見積もりが提示されているようです。

中古区分マンション投資に与える影響

このように、建設工事費は上昇を続けており、さらにこの後も上昇する可能性が極めて高い状況となっています。
建築工事費が上昇し、加えて現在は都市部で地価が上昇、さらにマンション適地不足により入札状況が厳しさをましている状況を踏まえれば、この先、新規供給される投資用区分マンションの数が減少する可能性が高いと考えられます。投資家の購入意欲は高く需要は旺盛ですが、「いい物件」の売り物が少ないという状況は、すでに起こっていますが、これがさらに進むものと思われます。
投資用区分マンションの新規供給が減少すれば、おのずと投資家の視線は中古物件に注がれることになります。とくに、最近は都心一等地物件の新規供給が少なく、また賃料も上昇傾向にあることから、さらに注目を集めるものと思われます。

ご留意事項
不動産投資はリスク(不確実性)を含む商品であり、投資元本が保証されているものではなく、元本を上回る損失が発生する可能性がございます。
本マーケットレポート に掲載されている指標(例:利回り、賃料、不動産価格、REIT指数、金利など)は、
不動産市場や金融市場の影響を受ける変動リスクを含むものであり、これらの変動が原因で損失が生じる恐れがあります。
投資をする際はお客様ご自身でご判断ください。当社は一切の責任を負いません。
本マーケットレポートに掲載されている情報は、2023年12⽉16⽇時点公表分です。
各指標は今後更新される予定があります。
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