ざっくり要約!
- 路線価とは、道路に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額。相続税や固定資産税などを算出する際の基準となる
- 路線価は毎年1月1日を評価時点とし、1年間の地価変動などが考慮されたうえで公示地価等を基に定められる
毎年、初夏の気配が感じられる7月1日に「路線価」が国税庁から発表され、テレビや雑誌等の様々なメディアで話題になります。それでは、路線価とは一体どんなものなのでしょうか?不動産(住まいとしての住宅、投資用収益物件、相続不動産など)の価値や売却時の価格、固定資産税などにどの様に関わってくるかについて解説いたします。
記事サマリー
路線価とは
路線価とは、土地の相続税や固定資産税などを算出する際の基準となる価格です。本来、土地は「時価」を計算するのが原則ですが、全ての土地の時価を算出していくのはその数も膨大で時間がかかり、また、いつの時点で測るのかによっても差が出てきてしまいます。そこで、税務署は道路に値段をつけました。この値段を「路線価」といいます。ここでいう道路とは、不特定多数の人が通行できる公道という意味です。個人の敷地内にあるような私道は考慮しません。この“道路につけた値段“に接している土地の面積を掛けて、土地の相続時の評価としているのです。
「相続税路線価」と「固定資産税路線価」
路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」 という2つがあります。相続税路線価は、相続税や贈与税の評価額の算出に用いられ、固定資産税路線価は固定資産税や都市計画税、登録免許税、不動産取得税の評価額の算出に用いられます。「路線価」といわれるときに指すのは、多くの場合「相続税路線価」です。
相続税路線価は毎年、評価されますが、固定資産税路線価は3年に一度の「評価替え」で見直されます。
最新の土地価格情報や過去の価格推移をご確認いただけます。不動産や土地の取引、土地評価の目安にご利用ください。
「倍率地域」とは
路線価が定められているのは、市街地のみです。それ以外のエリアは、路線価がなく「倍率方式」で評価されるため「倍率地域」と呼ばれます。
倍率方式とは、その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価する方式です。
固定資産税評価額に乗じる倍率は、国税庁のサイトから調べることができます。たとえば、上記表の「宅地」の列に「路線」という記載があるエリアは路線価がありますが「1.1」など数値が書いてあるエリアは路線価がない倍率地域のため、この数値を固定資産税評価額に乗じて算出します。
路線価とその他の公的価格との違い
「一物五価」と言われるように、不動産を評価する際の基準となる公的価格は路線価に加え5つあり、評価する目的ごとに使い分けます。
①時価 (実勢価格) | ②地価公示 (公示地価) | ③基準地標準価格 (都道府県地価調査) | ④路線価 相続税路線価 | ⑤路線価 固定資産税路線価 | |
公開元 | – | 国土交通省 土地鑑定委員会 | 都道府県知事 | 国税庁 (国税局/税務署) | 総務省・ 市町村長 |
公開日 | – | 毎年3月中旬~下旬 | 毎年9月中~下旬 | 毎年7月1日 (H20以降) | 3年に一度 (直近はH27年度に実施) |
基準日 | – | 毎年1月1日時点 | 毎年7月1日時点 | 毎年1月1日時点 | その年度の1月1日時点 |
使用用途 | 取引価格などを決める際に参考にする | 公共事業用地の取得価格算定の基準 「一般の土地取引価格に対する指標となること」 | 地価公示と調査時点及び対象区域において、相互に補完関係にある | 相続税や贈与税を算出する際に用いられる評価額 | 土地の固定資産税評価額を決める基準 |
算出 方法 | 過去の成約事例などから推測 | 2人以上の不動産鑑定士が鑑定しそれぞれの鑑定結果を加味した上で決定 | 公示地価とほぼ同じ、不動産鑑定士が1人以上 | 地価公示価格の8割が目安 | 地価公示価格の7割が目安 |
対象 | 取引される不動産 | 都市計画区域内 不動産の取引が行われると予想される土地 | 都市計画区域外 も含まれる | 全国の標準宅地数約34万地点 | |
特徴 | 市況によって変動する | その土地のもつ価値を最大限に評価するよう鑑定。中立な評価。更地での評価 | 一部公示地価と同地点での評価もある。更地での評価 | 法改正で注目度が高い(相続税の増税) 路線価は地価額の平均値で前年と比較するため、変動の影響が出やすいといわれる。 |
①時価(実勢価格)
時価(実勢価格)とは、不動産が取引されるときの価格です。時価は市況とともに変動するため、その他の公的価格のように、公開日や基準日といったものはありません。取引時、あるいは売り出し開始時に、不動産会社や売主が過去の成約事例や不動産の特徴などから推測し、売主、買主の合意のうえで決定します。
②公示地価
地価公示は、国土交通省土地鑑定委員会が地価公示法に基づいて、毎年1月1日における標準地を選定し、「正常な価格」を判定し公示するものです。ここで公示される地価を「公示地価」と言います。地価公示をおこなう目的は、一般の土地の取引価格に対して一定の指標を与える為と、公共事業用地の取得価格の算定等の規準とされ、適正な地価の形成を行っていくことにあります。
したがって、該当する土地がもつ本来の価値(売り手にも買い手にも偏らない客観的な価値)を評価することとなっており、建っている建物等の状況に関わらず、対象の土地の価値が最も発揮出来る使用方法を想定したうえでの評価が行なわれます。
③基準地標準価格(都道府県地価調査)
都道府県地価調査とは国土利用計画法施行令第9条にもとづき、都道府県知事が毎年「7月1日における標準価格」を判定するものです。土地取引規制の際の価格審査や地方公共団体等による買収価格の算定規準として適正な地価の形成を図ることを目的としたものです。公表時期は、例年9月中~下旬になることが多いです。
路線価の発表時期と決定方法について
路線価は、毎年更新されます。7月1日に全国の国税局・税務署で公示されます。つまり、1年間は「同じ金額」で、相続税等が計算されることになります。
それでは、なぜ、7月1日に公示されるのでしょうか?相続税の申告期限は、 本人が亡くなってから10カ月以内とされています。つまり、ある年の1月に亡くなった方の財産を相続した場合は、10月までに申告しなければなりません。従って、最低でも3か月前の7月に発表しないと申告期限に間に合わないと考えられているからです。
路線価の評価時点は毎年1月1日です。地価公示価格、売買実例価額、不動産鑑定士等による鑑定評価価額、精通者意見価格等を基に決められます。毎年4月に発表される公示価格の8割程度を基準に決定されます。
路線価図の調べ方・見方を3ステップで解説!
それでは、路線価図の見方について解説します。国税庁の「財産評価基準書」のページから、令和5年分の日本で一番高い路線価が付いた、東京都中央区銀座5丁目の路線価図を見てみましょう。
ステップ1.調べたいエリアのページに移動する
国税庁「財産評価基準書」トップページ
まずは、国税庁のホームページから調べたいエリアの路線価が表示されるページまで移動します。今回は東京都の路線価を調べますので、日本地図の「東京都」をクリックします。すると「目次」のページに移りますので、ここで「路線価図」をクリックします。
続いて、さらにエリアを中央区→銀座5丁目と絞り込んでいくと、東京都中央区銀座5丁目の路線価図にまでたどり着きます。
令和5年分 銀座5丁目の路線価図
ステップ2.上部の数字や記号の意味を知る
路線価図の左上部には様々な記号や表記が記載されています。ここに表記されているのは「路線価図の年分と該当ページ」「地区種別の記号」「借地割合の記号」の3つです。
1つ目の「路線価図の年分と該当ページ」は、一番左にある数字です(下図参照)。「令和5 18008」とある場合、路線価図の年分と該当ページを表します。つまり、この場合「令和5年分の、18008ページの路線価図」ということになります。
令和5年分 銀座5丁目の路線価図の上部
その右に記載されているのは、それぞれの地区や借地権の割合を示す記号です。 地区の種類は7つあり、銀座の目抜き通りや新宿駅周辺の高層ビル群は、楕円形の中に路線価がかいてあるため、高度商業地区と分かります(表1)。通常1人の人や法人が自用地として使用する場合は、路線価をそのまま掛けて計算します。借地権使用の場合は、借地権割合で計算します(表2)。
3つ目が「借地権の割合」です。下表は、各路線価の右隣に表示しているA〜Gまでの記号に対応する借地権の割合を示したものとなります(表2)。
ステップ3.該当地の路線価を見る
令和5年分 銀座5丁目の路線価図の一部
道路ごとに示されている数字は、1㎡あたりの路線価を示しています。たとえば、上記赤線で示した道路に面している土地の路線価は、単位が千円のため1㎡あたり1,123万円となります。数字の末尾に「B」と記載があり、楕円で囲まれているため、借地権割合は80%、高度商業地区であることも読み取れます。
路線価の計算シミュレーション
路線価を計算する方法は、基本的に路線価を調べたい道路が接している道路の路線価に平米数を乗じることです。しかし、接道部に対して奥行きが長い土地や角地などは、計算方法が少々異なります。
奥行価格補正
たとえば、同じ100㎡の土地でも、接道部が4m、奥行きが25mの長細い土地では、後者のほうが使い勝手が下がるため路線価が下がります。逆に、接道部が20m、奥行きが5mなど、奥行きが短い土地も同様です。
評価額が下がるのか、あるいはどの程度下がるかは、地域区分や奥行きの距離次第です。奥行きが長い/短い土地は「奥行価格補正率表」に基づき路線価を調整します。
路線価 × 奥行距離による奥行価格補正率 = 1㎡当たりの路線価1㎡当たりの路線価× 地積(土地面積)= 自用地の評価額
奥行価格補正率表の一部
上記画像は奥行価格補正率表の一部です。たとえば、普通住宅地で奥行きが4m未満であれば、補正率は「0.90」となります。一方、普通住宅地で奥行きが10m以上24m未満の補正率は「1.00」となっているため、補正されません。
角地の路線価の計算シミュレーション
角地のような2つの道路に面している宅地の価額を評価する場合は、奥行価格補正率を乗じて計算した金額が高い方の路線を「正面路線」として扱います。正面路線ではないもうひとつの路線は「側方路線」と呼ばれます。
ただし、正面路線は、奥行価格補正後の金額で判断しなければなりません。たとえば、上記のような普通住宅地であれば、路線価が高い「道路B」が正面路線のように見えますが、道路Bからすると奥行きは6mのため奥行補正の対象となり「51万円/㎡×0.95=48.45万円/㎡」が路線価となります。一方、道路Aからの奥行きは20mであることから奥行き補正されず、そのまま50万円/㎡のため、この土地の正面路線は道路Aです。
とはいえ、側方路線が路線価を算出するうえでまったく加味されないということはありません。角地は、採光や通風などが優れているため、価値が高いと考えられます。そのため、側方路線影響加算額が加算されます。加算率は、地区によって次のように異なります。
地区区分 | 加算率 | |
---|---|---|
角地の場合 | 準角地の場合 | |
ビル街地区 | 0.07 | 0.03 |
高度商業地区 繁華街地区 |
0.10 | 0.05 |
普通商業・併用住宅地区 | 0.08 | 0.04 |
普通住宅地区 中小工場地区 |
0.03 | 0.02 |
大工場地区 | 0.02 | 0.01 |
この表でいうところの「角地」とは道路が十字やT字に交差している道に接している角地を指し、「準角地」は1本の道がL字に折れ曲がっている道路に接している角地を指します。上記の普通住宅地を想定した土地は、T字に交差している道の角地になるため、補正率は「0.03」です。これを側方路線で計算した場合の路線価に乗じたものを加算します。
ここまでを踏まえ、この普通住宅地の角地の路線価を計算してみましょう。
まず、側方路線価による1㎡あたりの加算額を算出します。
51万円/㎡×0.95(奥行補正率)×0.03(側方路線影響加算率)=1.45万円
正面路線価に上記で算出した金額を加算し、平米数に乗じます。
(50万円/㎡+1.45万円)×120㎡=6,174万円
この土地の路線価は「6,147万円」と計算することができました。
まとめ
路線価などの公的価格は不動産の査定を行う際に目安となりますが、最終的な査定額は実勢価格のほか様々な要因で形成されます。不動産の売却をご検討のお客様は、ぜひ東急リバブルにご相談ください。最新のデータと豊富な実績で、適正な査定を行わせていただきます。
この記事のポイント
- 路線価とは?
路線価とは、土地の相続税や固定資産税などを算出する際の基準となる価格です。
詳しくは「路線価(ろせんか)とは?」をご覧ください。
- 路線価はどのように決まるのですか?
毎年1月1日を評価時点とし、地価公示価格や売買実例価額、不動産鑑定士等による鑑定評価価額、精通者意見価格等を基に決められます。
詳しくは「路線価の発表時期と決定方法について」をご覧ください。
- 路線価はどのように見ればいいのですか?
基本的には、面している道路の路線価に平米数を乗じれば算出できます。ただし、借地権割合や土地の形状などを考慮しなければならないためご注意ください。
詳しくは「路線価図の調べ方・見方を3ステップで解説!」をご覧ください。
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