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不動産相続前のよくある事例を専門家が解説!

そろそろ相続を考えたい!

相続で押さえておきたいポイントや遺言の書き方、生前贈与について解説します。

相続のポイントQ.01

ひとり暮らしの父が老人ホームへの入所を考えるようになってきました。今から父の住む家の相続について考えておきたいのですが、押さえておきたいポイントを教えてください。

波戸岡光太弁護士
ポイントは大きく3つあります。
第1は、相続の対象となる財産について把握しておくことです。ご実家である不動産の他にも、現金や預貯金、有価証券や貴金属、自動車など、対象となる相続財産(遺産)はいろいろあります。
第2に、誰が相続をするのかということも考えなくてはなりません。お父さまはすでに配偶者を亡くされていますので、子どもがあなただけなら相続人はお一人です。ご兄弟がいる場合には全員が法定相続人であり、遺産はその数で分けることになります(法定相続分)。ただし、相続人同士が話し合いで法定相続分と異なる割合で分配することもできます。その場合は、全相続人による遺産分割協議を行い、全員の署名と押印のある「遺産分割協議書」が実務上必要となります。
そして第3は、相続税についての対策です。相続税とは、相続によって取得した遺産の総額(債務などの金額を除き、相続開始前3年以内の贈与財産の金額を加算します)にかかる税金のことです。一定金額までは相続税の申告をしなくて済む「基礎控除」があり、遺産の総額から基礎控除を差し引いた金額が課税対象となります。基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算します。不動産の場合、土地の相続税評価額は、路線価がある場合は路線価に基づいて算出する(路線価方式)、あるいは固定資産税評価額に地域ごとに定められた評価倍率を乗じて算出します(倍率方式)。また、建物の場合は固定資産税が評価額となります。もし、相続人があなた一人で、ご実家の評価額が3,600万円以下なら相続税はかかりません。
このように、「相続財産」「相続人」「相続税」について家族で話し合っておくことが大切で、詳細については弁護士などの専門家に相談するのがいいでしょう。

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遺言書のつくり方Q.02

遺言書にはいくつか種類があると聞きます。種類によっての使い方や作り方、その効力を教えてください。

波戸岡光太弁護士
通常用いられる普通方式と呼ばれる遺言には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」という3つの種類があります。
「自筆証書遺言」は、遺言者自らが、内容、日付、署名のほぼすべてを書き、押印して作成するもの。費用がかからず、いつでも作成できますが、代筆やパソコンなどによるもの、日付の記載がない場合は無効となるなど様式の不備が生じたり、偽造や隠匿、亡くなった後に発見されなかったりといった可能性もあります。また、家庭裁判所での検認手続きが必要となります。
「公正証書遺言」は、2人の証人の立ち会いのもと、公証人が遺言者の口述に基づいて遺言書を作成し、遺言者、証人、公証人が署名押印するもの。遺言書は公証人役場に保管されるため、偽造や隠匿などの恐れもなく、検認手続きも不要です。ただし、作成には公証人と打ち合わせをするなど若干の手間がかかり、財産の価額に応じて手数料を払う必要があります。
「秘密証書遺言」は、遺言の内容は秘密にし、その存在だけを公証人に証明してもらうもので、遺言者が作成した遺言書が封入されていることを公証人役場で公証してもらう方法で作成します。遺言書は、自筆の署名以外はパソコンや代筆で作成してもよく、「自筆証書遺言」よりも負担が少ないといえます。保管は遺言者が行うため紛失などの恐れがあることや、検認手続きも必要になるなど、手間と費用がかかります。
3つのうち「公正証書遺言」が、手間と費用はかかっても安心という点ではおすすめです。ちなみに、これら普通方式の他に、死期が切迫している場合など特殊な状況で例外的に作成される特別方式の遺言があります。

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生前贈与のメリットQ.03

父が亡くなり、母は実家で一人暮らしをしています。主だった資産は実家だけです。元気なうちに相続の話をしようと考えていますが、生前贈与のメリット(不動産取得、贈与税など)を教えてください。

福岡雅樹税理士
生前贈与のメリットは、大きく3つが考えられます。
1つ目は、贈与する相手を贈与者であるお母さま自らが選べるということです。将来相続が発生し、遺言がなく、ご兄弟がいる場合には、ご実家をご兄弟で分割することになりますが、その取り分をめぐって争いが生じるケースが少なくありません。生前に贈与者が望む相手に譲ることができれば、争いを防ぐことにもつながります。
2つ目は、将来の遺産が減るため、相続税の節税効果の可能性があることです。贈与税には「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」の2つの課税方式があり、どちらかを選ぶことができます。「暦年贈与」は毎年110万円の基礎控除があり、それを超えた金額に応じた税率で課税されます。ただし、不動産の場合は毎年少しずつ分割して贈与するのは難しく、一括して贈与すると金額が大きくなるため税率が高くなり、贈与税が相続税よりも高額になる可能性も考えられます。一方、「相続時精算課税制度」は、60才以上の祖父母や父母などからの生前贈与時には2,500万円までは課税せず、将来の相続時に生前贈与分を含めた財産に相続税を課すという制度です。この制度により贈与した財産を相続時に加算するときは贈与時の時価で計算しますので、ご実家の土地がその後に値上がりしそうなら、この制度を利用することで生前贈与による節税効果が期待できるといえます。ただし、生前贈与は登録免許税が高く、相続にはない不動産取得税も発生しますので、注意しましょう。
3つ目のメリットは、短期間で財産の移転ができることです。相続の場合、遺産総額を確定させ、すべての相続人で遺産分割協議書を交わすなど時間がかかりますが、生前贈与であれば、贈与契約書を作成し、贈与者から受贈者に所有権移転登記をすれば手続きが完了します。
いずれにしても、贈与と相続の仕組みとメリットについて理解することが大切になります。

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監修

弁護士

アクト法律事務所

波戸岡 光太

「困っている人を助けたい」-少年時代からの熱い思いを胸に弁護士になり、これまでの法律相談件数は1000件以上。契約トラブルから、債権債務、相続、中小企業の法律顧問と幅広く取扱う。依頼人に共感し、ともに解決を目指すという一貫した姿勢は、高い評価と信頼を受けている。

税理士

税理士法人Farrow Partners

福岡 雅樹

大手監査法人に勤務後、大手税理士法人への転職を経て2012年に独立開業。税理士法人では相続・事業承継、組織再編に関するコンサル業務等に従事し、独立後は中小企業等への税務・会計サービスをメインに展開。公認会計士、税理士として税務、法務、経営面といった複数の視点から行うアドバイスは好評を博している。

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