ひとつの場所にとらわれることがなく、自分の行きたいところや好きな場所で飲食業を展開できる移動販売の開業ニーズが高まっております。移動販売としては、引車(手押し車)もありますが、やはりキッチンカーが人気。イートイン店舗型飲食店よりも低資金で開業できることが知られているキッチンカーですが、具体的にはどのくらいの資金で開業できるのか、解説したいと思います。キッチンカーでの開業の流れ、メリットデメリットについてもあわせてご確認ください。
キッチンカーでの開業は何故人気なのか?
イートイン店舗型の飲食店は、基本的にはお客様をお待ちする受け身の営業ですが、コロナ禍による影響で、ひとつの場所にとらわれずにお客様がいる場所へ行って営業ができるキッチンカーが注目されました。たとえ緊急事態宣言があっても、場所が固定されていないため、ニーズがある場所に自由に行き来して営業できることが最大の強みです。また、固定家賃、内装費がかからないことから、初期投資やランニングコストが抑えられることも魅力です。
キッチンカーでの開業メリット
通常の飲食店を開業する場合と比較したメリットを紹介します。
メリット①開業の初期費用が安い
イートイン店舗型の飲食店を開業する際は、物件取得から始まり、家賃や保証金、内装費や設備費など、総額(初期費用と半年分の運用費)で1,500万円程度かかりますが、それに比べるとキッチンカーの初期費用は圧倒的に安いです。キッチンカーの車自体は借りることができるため低額、さらに内装費も限られたスペースのため安く済みます。
メリット②固定費が安い
イートイン店舗型の飲食店を営業する際は、固定費としての家賃の割合が大きいのですが、キッチンカーの場合はその家賃がないことがメリットです。駐車場代はかかりますが、家賃の相場と比べると、どちらが安いかは一目瞭然。小さな飲食店の家賃と比べたとして、高額と言われている都心の駐車場でも、四分の一程度に抑えることができます。水道光熱費なども同様です。
メリット③簡単に業態変更が可能
車体にお店のメニューやロゴをペイントしなければ、仮に今販売している業態がうまくいかなくても、すぐに業態を変える事が可能です。つまり、トライ&エラーを繰り返す事ができます。営業したい場所が決まっているのであれば、その地域やお客様の層に合わせた業態に変更するものいいでしょう。好きな場所へ、好きな時間に自分の料理を提供できるため、様々な地域で多くの人と関わりが生まれることもあります。
メリット④ワンオペ営業が基本のため人件費が安い
クラウドキッチン同様に、キッチンカーは限られたスペースが特徴です。そのため、ワンオペもしくはツーオペで営業するのがベスト。しかし、ワンオペでいかにスムーズに美味しい料理を提供することができるかが鍵になるので、人材育成は必要です。
キッチンカーでの開業デメリット
メリットと同様に、イートイン店舗型の飲食店とは違う面でデメリットがあります。
デメリット①限られたスペースでの仕込みが重要
設備やスペースが限られているため、仕込みが重要になります。その場で仕込みができない場合は、前日もしくは当日朝に仕込んだ数量のみで営業をするため、1日に販売できる数量が決まり、売上の上限が決まってしまいます。
また、販売予測の精度が高くなければ、ロスを多く出してしまうでしょう。冷蔵庫が付いているキッチンカーもありますが、冷えるまでに時間がかかるなど不測の事態が起こりやすいため、仕込んだ食材及び商品を保管する冷蔵庫の代わりとなるものも予備として用意するなど工夫が必要です。キッチンカーとは別に実店舗を展開している場合は、実店舗の厨房で仕込みを行う事もできますが、実店舗がない場合は、仕込み専用の厨房を別途借りるケースもあります。
デメリット②駐車場代・ガソリン代がかかる
都内でキッチンカーが置けるほどの大きな駐車場を見つけるのは、なかなか困難だと思います。屋根が無い駐車場であれば見つかりますが、食品を扱うため、屋根がついている駐車場がおすすめです。また、屋内駐車場が見つかっても、車高制限で駐車できないなど、制約がさまざまあります。また、世の中の情勢に左右されやすいガソリンも費用がコスト増加の要因となります。料理の販売価格は一度決めると、上げることはなかなか難しいため、ガソリン代の急騰なども視野に入れ、商品の価格設定をしなければなりません。
デメリット③営業ができる場所探し
キッチンカーを始める上で、最も重要なのが場所探しです。道路上で、無断で営業することはできません。ビジネス街であれば、ビルのオーナーに許可をとり、敷地内で営業しましょう。また、そういった場所では同じくキッチンカーが集まっている場合があるので、同じキッチンカー事業者と仲良くなり、情報を交換するのも選択肢のひとつです。フェスの情報や、おすすめのエリアの情報などを交換し、横つながりを大事にすると次第に営業できる場所が増えていきます。
デメリット④保健所の管轄をまたいだ営業をする場合、地域ごとに営業許可の取得が必要
キッチンカーでの営業の場合、地域を移動するのが常です。営業許可は許可を出した保健所の管轄内において有効なものですので、管轄をまたいで移動する場合、それぞれの保健所で営業許可を取得する必要があります。
ちなみに、東京都内はどこでも1つの営業許可書で通用しますが、大阪の場合、大阪市、堺市、豊中市、高槻市、枚方市、八尾市、東大阪市、吹田市、その他大阪府それぞれの営業許可が必要です。
キッチンカーでの開業の流れ
STEP1 キッチンカーを探す(購入orリース)、駐車場契約
キッチンカーを専門に扱うリース業者及び販売店も多くあります。それらの事業会社にはキッチンカー開業のコンサルタントが付くことも多いです。しかし、必要な部分だけ力を借りるのがおすすめです。キッチンカーを入手する際は、購入とリース契約がありますが、リスクが少ないのは後者のリース契約です。前者の場合は、中古であれば設備が整っているため安く済みますが、古すぎるものだとメンテナンス料がかさむので注意が必要です。また、購入の場合と、リース契約では、車体費用はもちろんですが、保証内容も異なるのでよく比較検討しましょう。
STEP2 保健所指示のもと車体を改造
保健所の指示のもと、キッチンカーの設備、内装を仕上げます。保健所の指示を即座に反映することで、営業許可は通りやすく、スムーズに開業ができます。同じ時期に、キッチンカーの開業許可を保健所で取得しましょう。
STEP3 キッチンカーの開業許可を取得する
通常の飲食店同様に、水回りと換気のチェックがメインとなります。給水タンクや排水が設置されているか、換気は考慮されているかなどの確認があります。また、キッチンカーならではの項目だと「調理場と運転席は区切られているか」などもチェック項目です。
また、キッチンカー内で簡単な調理をしますが、これには「食品営業自動車」という営業許可を取得する必要があります。キッチンカー内で調理をせず、お弁当など出来上がったものを提供する場合であれば、「食品移動自動車」という営業許可の取得になります。
STEP4 仕込みの場所を確保したメニュー考案、キッチンカーの仕上げ
キッチンカーを開業するにあたり、最も重要なポイントは仕込みです。キッチンカーの場合、その場でお客様がテイクアウトするため、提供時間が非常に重要なのです。つまり、どれだけスムーズに商品提供ができるかは、優秀で最適な仕込みができるかにかかっています。
お客様から注文を頂き、30秒以内で商品提供ができるほどの迅速なオペレーションを構築できれば、販売数も売上も順調に伸ばせます。お客様へ商品提供するシミュレーションをしながら、限られたスペースで調理ができるメニューを考案しましょう。最後に、仕込みや提供までのオペレーションを考慮した、キッチンカーの仕上げをします。
<補足>調理師免許は必要なのか?
調理師免許は必要ありませんが、通常の飲食店の営業と同様に、食品衛生責任者は必要です。「ゴーストレストランの開業に必要な資格と許可申請について」の記事で、食品衛生責任者の取得方法が記載されているので、ご参考ください。
売上を伸ばすコツ
キッチンカーの売上を伸ばすためには、オフィス街販売の場所も限られているため、フェスやイベントへの出店が鍵となります。定期的に出店できるよう、情報にアンテナをはっておきましょう。ただし、イベントの運営元が募集する業態を決定するため、出店スケジュールが可能でも、業態がマッチせず出店できない場合もあります。幅広く対応できる商品ラインナップがあれば参入しやすいです。
キッチンカーの開業にかかる費用
キッチンカーを開業するための資金は、車両を購入するかリースするか、どれだけ内装にこだわるかなどにもよりますが、平均では合計300~400万程度で開業している方が多いです。開業にかかる費用を紹介します。下記に記載されているもの以外にも、宣伝広告費などがかかることもあります。
●車両を準備する費用
大型ワゴンを想定した例になります。
新車を購入する場合…300〜500万円程度中古車を購入する場合…200万円程度。(※状態による)リース会社と契約する場合…月々8~10万円程度です。
別途車両保険…3〜4万円程度
初期費用を抑えるためには、リースでの開業をおすすめします。
●内装費
5万円程度限られたスペースなので、強いこだわりがあったとしても驚くほどの高額になることはないでしょう。
●設備費
10万円程度
冷蔵庫やクーラーボックスなど、食材管理のために必要な設備をはじめ、調理をするための鉄板やガスコントなどを用意する必要があります。中古車やリースの場合は、既に揃っている場合もありますが、提供メニューにより必要な設備も変わってくるので、事前に確認しましょう。
●資格取得費
1万円程度「食品衛生責任者」の資格がなければ取得しましょう。
●食材費
5~10万円程度。提供メニューや、1日にどのくらいの数量を提供するかによって変わります。
●消耗品費
5~10万円程度
料理を提供するための容器、お箸などが必要となります。ただし、どんな料理を提供するかで容器の値段にも大きく差があります。例えば、クレープであれば商品を巻く紙とスプーンくらいですが、お弁当の容器は高いものでひとつ100円するものも。ドリンクカップなどもカップ、ふた、ストローなど細々と費用がかさみます。
関連記事:ゴーストレストラン(クラウドキッチン)の開業に必要な費用・資金計画について
昨今では多くの飲食店事業者がキッチンカーに参入しています。多々メリットはありますが、一番のメリットはトライ&エラーを繰り返せることです。流行の料理、適正な価格帯など、地域に合わせたスタイルなどを試行錯誤して、流行のキッチンカーを作り上げる事ができるのはとても魅力的だと思います。支出の部分を明確に算出し、利益をしっかり確保できるようにしましょう。
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