不動産投資の理想的な利回りは?計算方法と物件選びのポイントを紹介
ざっくり要約!
- 不動産投資の利回りには、表面利回りや実質利回りといったさまざまな種類があります。
- 表面利回りの最低ラインは5%といわれていますが、物件状況や運用期間によって異なります。
不動産投資で理想とされる利回りは、物件状況や運用期間によって異なります。なかには、表面利回りの最低ラインを5%としている投資家もいますが、修繕費や税金などが考慮されていないので、想定していた利益が得られない状況になることも考えられます。
本記事では、不動産投資における4つの利回りの意味と計算方法を詳しく紹介します。物件購入をする際に利回り以外の見るべきポイントも紹介するので、これから不動産投資を始めようと考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
不動産投資の利回りとは?
利回りとは、投資額に対する収益の割合のことをいい、投資判断をする際の指標として用いられます。
不動産投資における主な利回りには、以下の4種類があります。
- 表面利回り
- 実質利回り
- 想定利回り
- 現行利回り
いずれも利回りとして使われている用語ですが、それぞれの数値がもつ意味は大きく異なるため、どのような意味があるのかを知っておくことが大切です。まずは、これらの言葉の定義を見ていきましょう。
表面利回り
表面利回りは、物件取得費に対して得られる1年間の賃料収入の割合のことをいい、「グロス利回り」とも呼ばれています。固定資産税や修繕費などのコストを考慮していないため、実際に手元に入る金額と差が生じるのが特徴です。
実質利回り
実質利回りとは、1年間の賃料収入から年間経費を差し引いた実質的な収益と、投資額に取得費を加えた金額との割合のことをいいます。固定資産税や不動産取得税などを考慮した数値になるので、不動産投資によってどれほどの収益が得られるのかを確認できます。
想定利回り
想定利回りは、すべての区画が埋まった状態の賃料収入から計算される利回りのことです。満室状態を想定していた数値となるため、空室が発生すると予定していた収益が得られない可能性があります。
現行利回り
現行利回りとは、現在の入居状態で得られる賃料収入から計算される利回りのことをいいます。現行利回りは、年間コストが考慮されていないケースが多いため、どのような計算方法で算出されているのかを確認することが大切です。
利回りの計算方法
ここでは、不動産投資で主に活用されている表面利回りと、実質利回りの計算方法を紹介します。
表面利回りの計算方法
表面利回りは、以下の計算式で算出できます。
1年間の賃料収入 ÷ 投資額 × 100 = 表面利回り
たとえば、年間120万円の賃料収入が得られる物件を3,000万円で購入したときの表面利回りは、以下のように計算します。
120万円(1年間の賃料収入) ÷ 3,000万円(物件価格) ×100 = 4%(表面利回り)
この投資では、4%の利回りが得られることがわかります。なお、固定資産税や修繕費などのコストを考慮していないため、実際に得られる収益を知りたい場合は、次に紹介する実質利回りで確認することをおすすめします。
実質利回りの計算方法
実質利回りの計算方法は、以下の通りです。
(1年間の賃料収入 − 1年間のコスト) ÷ (物件価格 + 取得費) × 100 = 実質利回り
たとえば、年間120万円の賃料収入が得られる物件の年間経費が20万円かかり、購入価格に3,000万円に加えて150万円の経費がかかったときの実質利回りは、以下のように計算します。
120万円(1年間の賃料収入) − 20万円(1年間のコスト) = 100万円(年間収益)
3,000万円(物件価格) + 150万円(取得費) = 3,150万円(投資額)
100万円(年間収益) ÷ 3,150万円(投資額) × 100 = 3.17%(実質利回り)
このように賃料収入と物件価格が同条件であっても、表面利回りより数値が低くなります。実質利回りだけを見て物件購入を決めると、年間コストや取得費によって想定していた収益を得られない場合があるので注意しましょう。
不動産投資の利回りの平均はどれくらい?
不動産投資をする際は、どれほどの利回りであれば物件購入をするといった判断基準をもっておくことが大切です。
ここでは、エリア・物件種別ごとの利回りと、今後の見通しを紹介します。
エリア・物件種別ごとの平均期待利回り
不動産投資の利回りは、エリア・物件種別、時期によって大きく変動することがあるため、「購入後に期待できる賃料収入 ÷ 不動産価格 × 100」から算出できる期待利回りを確認することをおすすめします。
ここでは、一般財団法人 日本不動産研究所が公表したエリア・物件ごとの期待利回りを見ていきましょう。
東京 | 札幌 | 仙台 | 横浜 | 名古屋 | 京都 | 大阪 | 神戸 | 広島 | 福岡 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
オフィスビル | 3.2% (丸の内・大手町 | 4.9% | 5.1% | 4.4% | 4.5% | 4.7% | 4.2% (御堂筋) | – | 5.2% | 4.5% |
賃貸住宅 (ワンルーム) | 3.8% (城南) | 5.0% | 5.0% | 4.4% | 4.5% | 4.7% | 4.3% | 4.7% | 5.1% | 4.5% |
賃貸住宅 (ファミリー) | 3.8% (城南) | 5.0% | 5.0% | 4.4% | 4.6% | 4.7% | 4.3% | 4.9% | 5.2% | 4.5% |
参考:一般財団法人 日本不動産研究所「第 50 回 「不動産投資家調査」(2024 年4月現在)の調査結果」
※同調査の数値は、デベロッパーや不動産投資家などの市場参加者のアンケート結果をもとにした中央値です。また、同調査の「期待利回り」の定義は、純収益(NOI)を投資価値(不動産価格)で除したものです。
利回りは低下傾向にある
国土交通省が2024年5月31日に公表した不動産価格指数では、住宅や店舗、オフィスなどの不動産価格が過去10年間で上昇していることが示されています。
引用:国土交通省「不動産価格指数(令和6年2月・令和5年第4四半期分)
不動産価格が高騰すると、物件取得費が高くなることで利回りが相対的に低下することとなります。不動産価格に追従して賃料相場が高くなれば、利回りが低くなることはありませんが、下表のように不動産価格と比べて伸び率が小さくなっています。
引用:公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会「不動産市場動向データ集」
これらの統計データから不動産投資における利回りは低下傾向にあることがわかります。
不動産投資への積極性は上昇
日本不動産研究所が公表した「不動産投資家調査(2024年4月現在)」では、不動産市場への参加者の約95%が「新規投資を積極的に行う」と回答しています。前回の調査から1ポイント低下しているものの、今後、不動産市場には多くの資金が集まることが予想されます。
不動産投資の理想利回りと最低ライン
不動産投資のキャッシュフローを安定させるためには、利回りの最低ラインを下回らないようにすることが大切です。
ここでは、理想的な利回りと最低ラインについての考え方を紹介します。
理想の利回りは物件状況や運用期間によって異なる
不動産投資で理想とされる利回りは、物件状況や運用期間によって異なります。
新築物件を購入した場合、取得費が高くなることで利回りが低くなりやすい傾向があります。一方、比較的安価で取引される中古物件は、利回りが高くなりやすい反面、建物の劣化によって運用期間が短くなることが想定されるでしょう。
このように一時的な利回りが高くても、運用期間が短くなることで不動産投資で得られる総利益が小さくなることがあります。
期待していた利益を得られない状況にならないためにも、物件状況や運用期間から適切な利回りであるのかを判断しましょう。
表面利回りの最低ラインは5%?
不動産投資における表面利回りの最低ラインは5%といわれています。しかし、表面利回りが同じであっても、修繕費や税金がかかることで実質利回りが低くなるケースがあるので注意が必要です。
前述したように利回りが高くても運用期間が短くなることで期待していた収益が得られないことも考えられます。そのような状況にならないためにも、表面利回りだけで物件購入の判断をしないようにしましょう。
「不動産投資 利回り 最低ライン」に関する記事はこちら
不動産投資の利回りの最低ラインはどれくらい? 理想や目安、考慮すべきポイントとは?
利回りだけじゃない!不動産投資物件を選ぶときのポイント
利回りだけで物件購入を決めてしまうと、大規模修繕でキャッシュフローが回らなくなったり、災害で物件を失ったりすることで大きな損失を受ける可能性があります。
ここでは、不動産投資をする際に利回り以外の見るべきポイントを紹介します。
今後の資産価値
物件購入をするときは一時的な利回りだけでなく、資産価値がどのように変化していくのかといった長期的な目線をもちましょう。物件の資産価値は、築年数や設備などの建物本体だけでなく、人口や利便性といった周辺環境からの影響も受けます。
所有物件の資産価値が低下すると、物件の売却金額が想定より低くなることも考えられます。売却金額が購入金額を大幅に下回ると、これまでに得た賃料収入と相殺されることで不動産投資の収支がマイナスになってしまうこともあります。
そのような状況にならないためにも、長期的に需要がある地域なのかを見極めたうえで物件購入を決めるようにしましょう。
修繕履歴・修繕計画
一棟売りのアパートやマンションを購入する際は、大規模修繕計画を確認しましょう。建築または前回の大規模修繕から15〜20年ほど経過している物件は、今後、大きな修繕が必要となる可能性が高くなります。
一方、区分所有をする場合は、これまでの修繕履歴とあわせて修繕計画や修繕積立金も確認しておくことが大切です。なかには、建築当初から修繕費の見直しをしておらず、大規模修繕が近付いた時期に値上げをする物件もあります。このような物件を見分けるためにも、修繕計画をもとに適切な修繕積立金が設定されているのかを確認しておきましょう。
自然災害リスク
実質利回りが高く、資産価値を長く維持できる物件であっても、自然災害によって不動産投資を続けられない状況に陥るケースがあります。大きな借入金が残ると、ほかの物件を売却したり、新たな借り入れをしたりしなければならない状況になりかねません。
そのようなリスクを軽減させるためにも、自治体が発行しているハザードマップなどで自然災害リスクを確認しておきましょう。
まとめ
不動産投資の利回りには、表面利回りや実質利回りといったさまざまな種類があります。これらの利回りの違いを理解せずに不動産投資を始めると、想定していた利益が得られない可能性が高まります。
そのような状況にならないためにも、それぞれの利回りの意味と算出方法を理解しておきましょう。
ワンポイントアドバイス
不動産投資における表面利回りは5%が最低ラインといわれていますが、それだけを見て物件購入を決めるのは危険です。なかには、想像以上の維持費がかかったり、売却金額が購入金額を大きく下回ったりする物件があります。
そのような物件を購入すると、不動産投資の収益が悪化するのはもちろんのこと、ローン返済が滞ってしまうことになりかねません。魅力的な物件を見つけたときは、利回りや資産価値が維持できるのかを確認したうえで購入しましょう。
この記事のポイント
Q. 不動産投資の「利回り」とはなんですか?
A. 利回りとは、投資額に対する収益の割合のことをいい、投資判断をする際の指標として用いられます。
詳しくは「不動産投資の利回りとは?」をご覧ください。
Q. 不動産投資の利回りの平均はどれくらいですか?
A. 不動産投資をする際は、どれほどの利回りであれば物件購入をするといった判断基準をもっておくことが大切です。詳しくは「不動産投資の利回りの平均はどれくらい?」をご覧ください。
Q. 利回り以外にも不動産投資物件を選ぶポイントはありますか?
A 利回りだけで物件購入を決めてしまうと、大規模修繕でキャッシュフローが回らなくなったり、災害で物件を失ったりすることで大きな損失を受ける可能性があります。
詳しくは「利回りだけじゃない!不動産投資物件を選ぶときのポイント」をご覧ください。