不動産投資の「レバレッジ効果」とは?
ざっくり要約!
- レバレッジ効果とは、少ない手持ち資金でより大きな利益を得る、不動産投資特有のメリットのこと
- レバレッジ効果を得るには、物件の利回りと金利の差である「イールドギャップ」を意識して投資することが重要
- レバレッジ効果を生かした不動産投資には、逆レバレッジや金利上昇などのリスクも伴うため注意が必要
「不動産投資で利益を増やすには『レバレッジ効果』を上手く活用すべき」不動産投資をこれから始める方や、不動産投資初心者の方の中には、このような話を耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。
不動産投資は他の投資手法とは異なり、レバレッジ効果を上手に活用すれば、投資金額に対してより多くの利益を得られます。
今回は不動産投資特有の利点であるレバレッジ効果について、活用するメリットと、最大限引き出すためのポイントについて解説します。
目次
不動産投資における「レバレッジ効果」とは?
不動産投資におけるレバレッジ効果とは、自己資金だけでなく融資を活用して大きな資産を取得・運用し、より高いリターンを得ることを指します。
「レバレッジ」とは
レバレッジとは、一般的に「テコの原理」を意味し、小さな力で大きな成果を得ることを指します。これを不動産投資に当てはめると、少ない資金に銀行からの融資を加えることで、自己資金だけでは実現できない規模での投資を可能にするということです。
レバレッジ効果を活用すれば、自己資金だけでは購入できないような収益性の高い不動産を所有・運用できます。そしてこのレバレッジ効果を得られるのは、ローンによる借り入れができる不動産投資ならではの魅力です。
レバレッジ効果はイールドギャップによって生まれる
不動産投資におけるレバレッジ効果は、主にイールドギャップによって生まれます。イールドギャップとは、物件の利回りと借入金の金利の差を指し、この差が大きいほど投資の収益性が高まる点がレバレッジ効果の大きな特徴です。たとえば、借り入れ金利が3%、利回りが8%とすると、イールドギャップは5%となります。
イールドギャップを算出するうえでは「表面利回り」ではなく「実質利回り」で考えるのが一般的です。実質利回りとは、単なる家賃収入による利益ではなく、賃貸経営にかかる経費なども考慮して算出する利回りのことです。
不動産投資でレバレッジ効果を得るためには、物件の利回りがローン金利を上回ることが最低条件です。しかし、ローンの返済では当然のことながら利息分だけでなく元本の返済もあるため、自己資金比率や返済期間などによっては、イールドギャップがあったとしても損失が生じる可能性があります。
レバレッジ効果をシミュレーションしてみよう
不動産投資においてレバレッジ効果を活用するか否かで、投資の収益性がどのように変わるのかをシミュレーションしてみましょう。ここでは、自己資金1,000万円を元に収益物件を購入するケースを例に説明します。
自己資金のみで不動産投資する場合
レバレッジを効かせずに、自己資金1,000万円で不動産投資を始めるとします。この場合、借入を行わず1,000万円の物件を購入することになります。仮に物件の利回りが10%であれば、年間で得られる家賃収入は以下のとおりです。
年間家賃収入 = 1,000万円 × 10% = 100万円
利回りは年間の家賃収入を物件価格で割ったもので、物件がどれくらいの収益を生み出すかを表します。自己資金1,000万円で物件を購入したケースでは、年間の収入は100万円となります。なお、今回は修繕費や管理費などの経費は考慮していません。
レバレッジ効果を効かせて不動産投資する場合
次に、自己資金1,000万円に加えて、銀行から5,000万円を借りて6,000万円の物件を購入する場合を考えます。この場合、物件の利回りが10%であれば、年間の家賃収入は以下の通りです。
年間家賃収入 = 6,000万円 × 10% = 600万円
借入金に対しては利息が発生します。金利3%で5,000万円の借入を行ったとすると、初年度の利息は以下の通りです。
利息(初年度、概算)= 5,000万円 × 3% = 150万円
年間家賃収入から利息を差し引くと、実質の年間収入は次のようになります。
実質年間収入 = 600万円 - 150万円 = 450万円
このように、レバレッジを効かせた場合の年間の収入は450万円となり、自己資金のみの場合の100万円と比較して大幅に増加しています。
今回のシミュレーションから、レバレッジを効かせることで、限られた自己資金でより高い収益を得られる可能性があることがわかります。
レバレッジ効果のリスク
レバレッジを利用した不動産投資は、少ない自己資金で大きな資産を運用できる反面、リスクも伴います。特に、逆レバレッジ、金利上昇、空室率の上昇は、投資家が注意すべきポイントです。
逆レバレッジ
逆レバレッジとは、借入によってかえって収益が下がる現象を指します。
既に解説したとおり、レバレッジを効かせた不動産投資では、物件の利回りと金利の差が大きいほど利益も大きくなります。一方で、利回りの低い物件を購入したり、金利が高い時に借り入れたりすると、利益が出ないどころか「借り入れをしない方が利益が大きい」という状態になる可能性があるのです。
これでは不動産投資におけるレバレッジの良さを活かせないだけでなく、手持ち資金を切り崩さなければならなくなるリスクも考えられます。
金利上昇
利回りの良い物件を購入し、低金利で借入を行えたとしても、運用中の金利上昇によるリスクがあるという点も押さえておく必要があります。
不動産投資ローンには、固定金利と変動金利という2つの金利タイプがあります。変動金利の方が、融資開始時点の金利が安く設定されていることが多いため、変動金利で借入を行って不動産投資をスタートさせる投資家は少なくありません。
しかし変動金利は、一定期間ごとに利率の見直しが行われるため、金利の上昇により返済金額が増える可能性があります。キャッシュフローに大きな影響を与えられることも考えられるため、定期的に金利の見直しを行い、必要に応じてローンの借り替えも視野に入れる必要も出てくるでしょう。
空室率の上昇
レバレッジの効果が薄れる要因には、収益物件の空室率の上昇も挙げられます。
物件の空室率が上昇すると利回りが低下し、イールドギャップの低下にもつながります。そうすると結果的に、思ったようなレバレッジ効果を得られない結果になってしまうのです。
また、空室率が増えて家賃収入が減少すると、固定費の支払いや借入金の返済が負担になり、賃貸経営や家計に支障をきたす可能性も否定できません。
確実にレバレッジ効果を得て収益を伸ばすためだけでなく、長期間安定した家賃収入を得続けるためには、エリアの需要に順応しつつ、物件の管理も適切に行うなど、入居率を維持向上する工夫が必要です。
レバレッジ効果で不動産投資を成功させるためのポイント
不動産投資におけるレバレッジ効果を活用することは、少ない自己資金で大きな利益を得るためにも重要な手段です。レバレッジ効果により不動産投資を成功させるためには、以下に挙げる3つのポイントを抑える必要があります。
イールドギャップが鍵
イールドギャップ、つまり物件の利回りと借入金の金利の差が大きいほど、不動産投資でのレバレッジ効果をより強く得られます。
レバレッジ効果が得られるイールドギャップの目安は「3%」と言われています。しかし、3%以上のギャップで利益が出るケースもあれば、利益がでないケースもあるため注意が必要です。
不動産投資でレバレッジ効果を十分に得るには、イールドギャップだけで物件や融資を選ぶのではなく、返済期間や借入額を検討し、購入時だけでなく運用中もイールドギャップがどの程度あるかを定期的に確認することが重要です。
できる限り低金利で借り入れる
レバレッジを活用して利益を得るには、できる限り低金利で資金を借り入れることも重要です。
金利が低いほど毎月の返済負担額が抑えられ、イールドギャップを広げられるため、より多くの利益を手元に残せます。さらに、将来的な金利上昇のリスクを避けるために、変動金利ではなく固定金利で借り入れを行うというのも選択肢の一つです。
ローン金利は金融機関ごとに少しずつ異なるため、複数の金融機関を比較し、自分に合った条件で借入を行いましょう。
利回りが高ければいいというわけではない
ここまでの解説を読んで、不動産投資で利益を得るには、とにかく利回りの良い物件を購入すればいいのでは?と考えた方もいるかもしれません。しかし、利回りが高い物件を購入すれば、必ずしも不動産投資で成功できるわけではないという点は知っておく必要があります。
たしかに、高利回りの物件であるほどイールドギャップは広がります。しかし、利回りがいくら高くても、空室が発生しやすかったり、維持管理費用や修繕費用が多くかかったりすれば、利回りの低い物件よりも損失を生むリスクは高くなります。そのため、投資物件を選ぶ際には、利回りだけでなく物件の立地条件や周辺環境などから賃貸需要を見極め、修繕履歴や現状から管理コストを推測する必要があります。
長期的に投資を行い資産形成することを考慮すると、利回りやイールドギャップだけでなく、投資家自身のリスク許容度も含めて総合的に判断することが重要です。
まとめ
不動産投資はレバレッジ効果を上手に活用することで、限られた自己資金でも大きな利益を得られるという、他の投資手法にはない魅力があります。
レバレッジ効果をより実感するためには、利回りの高い物件を低金利で購入することが一番の近道です。とはいえ、空室率の上昇や金利上昇などのリスクも想定しなければなりません。不動産投資を始める際には、イールドギャップを意識しながら、長い目で見て安定した収益を出せる物件を選びましょう。
ワンポイントアドバイス
イールドギャップがどれだけ大きくても、運用中のキャッシュフローが適切に回っていなければ、不動産投資が成功しているとは言えません。
利回りの高い物件を見つけたらすぐにローンの申し込みをするのではなく、その物件を運用して発生するキャッシュフローをシミュレーションしてから、最終的に購入する物件を決めるといいでしょう。
この記事のポイント
Q. 不動産投資の「レバレッジ効果」とはどのようなものですか?
A. 不動産投資におけるレバレッジ効果とは、自己資金だけでなく融資を活用して大きな資産を取得・運用し、より高いリターンを得ることを指します。詳しくは「不動産投資における「レバレッジ効果」とは?」をご覧ください。
Q. レバレッジ効果にリスクはありますか?
A. レバレッジを利用した不動産投資は、少ない自己資金で大きな資産を運用できる反面、リスクも伴います。詳しくは「レバレッジ効果のリスク」をご覧ください。
Q. レバレッジ効果を使って不動産投資を成功させるにはどうしたら良いですか?
A. 不動産投資におけるレバレッジ効果を活用することは、少ない自己資金で大きな利益を得るためにも重要な手段です。詳しくは「レバレッジ効果で不動産投資を成功させるためのポイント」をご覧ください。