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専門家
コラムVol. 2

近づいてきたインフレの可能性と
賃貸住宅投資の優位性

コラムニスト・吉崎 誠二|プロフィール写真 COLUMNIST PROFILE

吉崎 誠二

不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産投資を始める方々に、その理由を聞くと、
「賃料収入を得たい、節税のため、将来の年金を補うため」・・・など
各々の置かれている立場が違いますから、多種多様でしょう。

しかし、これを金融・投資という切り口で「実物不動産への投資をなぜ行うか」を、
考えてみると、以下のように整理できます。

  1. 投資の分散効果狙い(株式投資等の古典的投資とオルタナティブ投資のハイブリッド)
  2. インカム収益獲得 (賃料収入)
  3. 非流動性などに起因する高い収益率(すぐには売れない。JREITとの違い。)
  4. 高レバレッジ投資(借入で投資ができる。高いLTVの可能性)
  5. インフレヘッジ

という、5つの実物不動産投資の特性(主たるものを列挙。他にもあります)があるからでしょう。

 本コラムにおいては、こうした実物不動産投資(とくにレジデンス系)投資の優位性について、
今後お伝えしようと思っていますが、今回は5つのインフレヘッジについて考えてみたいと思います。

金融緩和政策とインフレ可能性の高まり

 わが国においては、2013年から大胆な金融緩和政策が取られ、インフレの目標を2%にした様々な金融政策がとられてきました。これにより貸出金利が大きく低下し、金融機関の不動産向けの貸出総量が大きく増えました。
さらに2016年年初からは、もう一段突っ込んだ金融緩和となり、さらに金利は低くなりました。不動産向けの融資は2016~17年にさらに増えました。しかし、2018年半ばにいくつかの不祥事が起こったことをきっかけに、個人向けの1棟もの賃貸住宅融資(アパート融資)は厳しくなりました。しかし、個人が投資する不動産向けの貸出件数は減るどころか、増えていました(日銀データベースより)。
 そこに、2020年2月後半から新型コロナウイルスの影響が世界中に広まり、各国は金融緩和策をとり、マネタリーベース(マネーストック)は大幅に上昇しました。マスコミ的な言い方をすれば、「金融緩和で、世界的にお金がジャブジャブの状況」という言い方になります。
市中に出回るお金が増えるわけですから、「コロナショックで、経済が停滞しているので、意図的にインフレ状況を作ろうとしている」というわけです。

金融緩和政策とインフレ可能性|イラストイメージ

欧米では、コロナショックから立ち直り、少しずつ通常の経済活動にもどりつつあり、かつCPI(消費者物価指数)が大きく伸びてきました。
つまり、インフレ状況になっているということです。このような状況のため、少しずつ緩和の出口を模索する動きがあり、年内に段階的に「緩和を緩和する」様相です。

しかし、日本ではそうしたムードではなく、もう数年間緩和策が取られるようです。
こうした背景から、すでに「そのうちやってくるインフレにどう対応するか」を考える方が増えています。

長期資産運用の最大リスクは、インフレ

 インフレーションとは、いうまでもなく「物価が上がること」です。例えば、100円の缶コーヒーが200円になると物価の上昇です。しかし、それは裏を返せば(缶コーヒーの中身が同じだとすると)、100円の価値が下がったということになります。
つまり、インフレーションは紙幣、貨幣の価値の下落を意味します。

さきに述べたように、民間家賃(=賃料)も物価の1つですから、インフレーションになれば、当然、家賃も上昇します。
 具体的に見てみましょう。

不動産価格指数(区分所有マンション)|図表

 図は、1990年から2021年7月までの消費者物価指数の中のコアCPIと民営家賃の前年同月比の推移です。コアCPIとは、消費者物価指数の中から、自然(天候等)の影響を受けやすい、生鮮鮮魚、野菜、果物などを除いたものです。90年代前半をみると、コアCPIと民営賃料はかなり同じような動きを示しています。97~98年、2014~15年のCPI上昇は消費税増税によるものです。

 2つのグラフをみると「かなり強い相関」の関係にあることが分かります。
しかし、近年は消費税増税以外での物価の停滞が続いているため、明確な関係は見えてきません。
また、20年は新型コロナウイルスの影響で消費者物価指数は落ち込みました。しかし、民営家賃は、20年後半からは上昇の兆しにあります。

家賃収⼊はインフレヘッジになる

 前掲の図のように日本においては、近年、消費税増税の時くらいにしかインフレは起こっていません。2013年に日銀総裁に黒田氏が就任した際には、「2%のインフレ目標」を掲げていましたが、実際は現在までそうはなっていません。おそらく、これから2~3年程度は、インフレが起こらないと思いますが、資本主義経済の原理原則から考えると、一定のインフレが起こることこそが、正常と言えます。そのため、市場原理が働くと、いつかはインフレが起こることになります。その日がいつになるのか予測が付きませんが、それほど先ではないことは確かです。

 そうだとすれば、いつか来るインフレに備える必要があります。資産を守る、リスクヘッジを行うという事です。先に述べたように家賃はインフレに連動して上昇します。
このように「インフレに対応するため」は、不動産投資(賃貸住宅投資)を行う大きな理由になりえるわけです。

コラムニスト・吉崎 誠二|プロフィール写真 COLUMNIST PROFILE

吉崎 誠二

不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。
 立教大学大学院 博士前期課程修了。

㈱船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て 現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。

著書:「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社)、 「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。

(レギュラー出演)
ラジオNIKKEI「吉崎誠二のウォームアップ 840」(ニュース解説番組)
「はいさい!沖縄デュアルライフ」 (吉崎誠二×新山千春)
「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」(不動産投資番組)

テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

吉崎誠二公式サイト http://yoshizakiseiji.com/

ご留意事項
※不動産に対する投資はリスク(不確実性)を含んでおり、投資元本が保証されているものではなく、元本を下回る損失が発⽣する可能性がございます。
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※本マーケットレポートに掲載されている情報は、2021年10月3日時点公表分です。各指標は今後更新される予定があります。
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