専門家コラム
人口・世帯数動向から見る
賃貸住宅需要の見通し
COLUMNIST PROFILE
吉崎 誠二
不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
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総務省から住民基本台帳に基づく2023年1月1日時点の人口動態調査が発表されました(23年7月26日公表)。住宅需要は人口、世帯数の動向に大きな影響を受けます。
今回は最新の人口動態調査を分析しつつ、今後の賃貸住宅需要の見通しを検討します。
最新の全国の人口動態/社会増減と自然増減の状況
最新の全国の人口動態
23年1月1日時点の日本に住む外国人を含む人口は1億2541万6877人、昨年1月1日から約51万人の減少(-0.41%)、そのうち日本人は1億2242万3038人、外国人299万3839人でした。日本人のみでは、約80万人の減少(-0.65%)、一方、外国人は約29万人の増加(+10.7%)でした。日本に住む人口総数の減少率は-0.41%で、昨年は-0.5%でしたので、新型コロナウイルスの影響が治まり外国人人口が増えたことから減少率は減りました。
日本国内に住む日本人の人口は前年から80万523人減りましたが、これは2013年以降14年連続しての減少で、減少数は昨年61.9万人、一昨年42.8万人と年々増え続けており、1968年(昭和43年)の調査開始以降最大の数となりました。また、日本人のみの人口を都道府県別でみれば、沖縄県が初めて人口減少したことにより、47都道府県の全てで日本人人口は減少となりました。
社会増減と自然増減の状況
人口の増減は、社会増減と自然増減に大別されます。
自然増減(出生数と死亡数の差)をみると、日本人の自然数減少は-79万3324人で15年連続の拡大となり、調査開始以来最大となりました。22年の1年間の日本人の出生数は77万1801人で1979年の調査開始以来最少、一方死亡者数は156万5125人で、調査開始以来最多となりました。少子化がさらに進んでいる状況がわかります。
一方の社会増減(転入者数等と転出者数等の差)は、日本人の社会増減数は-7199人、しばらく増加していましたが今年はマイナスとなりました。外国人の社会増減は新型コロナウイルスの影響が目立った昨年までは2年連続でマイナスでしたが、増加に転じてプラス28万1425人となりました。
都道府県別の人口増減/全国の世帯数/世帯構成員の変化
都道府県別の人口増減
15歳未満の日本人の人口は、調査開始(本調査は1994年)以降毎年減少しており、日本人全体の11.82%となりました。1994年の時点では16.48%でしたので5%近いマイナスとなっております。少子化の影響が鮮明に出ていることがわかります。一方、65歳以上の人口は3568万人で、調査開始以来増え続けていましたが初めて減少しました。しかし、割合で見れば29.15%と過去最高となり、人口の約3割が老年者ということになります。65歳以上人口は1995年の約2倍、高齢化が一段と進んでいる一方で、老年者の減少が始まっています。これから団塊の世代が70歳台後半にさしかかり、死亡者が増えることから、老年者総数は減少基調になるでしょう。
いわゆる「現役世代」である生産年齢人口(15~64歳)は7226万人で総数は減ってきていますが、割合で見ればここ5年は59%前後で推移しています。5年刻みでみれば、最も多い世代は50~54歳(7.65%)、次いで45~49歳(7.58%)となっています。
全国の世帯数
同調査では、賃貸住宅需要に影響の大きい世帯数の調査も合わせて行われます。
世帯数は、調査開始以来増加を続けており、23年1月1日時点の世帯数総計は、初めて6000万世帯を突破し6026万6318世帯でした。前年比では+0.85%、前年対前々年比は+0.44%でしたので、増加率も増えています。
世帯構成員の変化
全国の1世帯当たりの平均構成人員は日本人世帯の平均が2.09人、外国人世帯が1.69人、合計の平均は2.08人(前年は2.11人、前々年は2.13人)でした。これは、現行の調査開始(1968年)以来毎年減少しており史上最低となりました。世帯構成人員は初めて、2.1人を割り込み、単身世帯の増加が顕著になっています。
1世帯当たりの平均構成人員が最も少ないのは北海道で1.83人(前年は1.85人)、続いて東京都1.86人(前年は1.88人)、以下、高知県・鹿児島県・大阪府では2を切っています。世帯構成人員が2を切っている都府県は昨年と同じで、人口減少が目立つエリアと都市部で少ない傾向となっています。
平均構成人員の減少は、核家族化が進んできたことに加えて、近年では単独世帯の増加によるものです。国立社会保障・人口問題研究所の予測では2040年には約4割の世帯が単独世帯になるとされていますので、1世帯当たりの平均構成人員の低下はさらに加速するでしょう。
人口・世帯数動向から見る賃貸住宅需要の見通し
住宅需要を推し量る際には人口動態も重要ですが、一般的に住宅には世帯単位ですみますので、世帯数の方が重要とされています。確かに我が国は人口減少期に入っていますが、単身世帯の増加に伴い世帯数はまだ増加傾向にあります。
このような調査結果をみれば、首都圏など人口集中が続く都市部では、特に10歳台後半~30歳台の人口流入が増えており、こうした方々向けの賃貸住宅需要は底堅いと思われます。
また、単身世帯はしばらく増え続け、単身向け賃貸住宅需要の成長は続くでしょう。さらに、未婚者数が増えていることから、若年層向けや高齢者の単身世帯だけでなく、30歳台~50歳台の単身者も増える傾向にあり、こうした方向けの賃貸住宅需要は伸びると思われます。
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