専門家コラム
23年 都道府県地価調査(基準地価)の
分析と今後の地価の見通し
COLUMNIST PROFILE
吉崎 誠二
不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
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2023年の都道府県地価調査(=基準地価)が国土交通省より9月19日に公表されました。3月に公表される地価公示と9月に公表される基準地価は、メディアも大きく取り上げる全国にわたる地価状況が分かる調査結果です。
都道府県地価調査は、都道府県が調査主体となって行われる毎年7月1日時点の21,381の「基準地」の地価調査です。そのため、この調査結果により公表される地価は、「基準地価」とも呼ばれます。今回は、最新(23年分)の都道府県地価調査結果について分析してみましょう。
(以下のデータは、国土交通省「令和5年都道府県地価調査」より)
22年都道府県地価調査の全国俯瞰
23年の基準地価は、全国平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇、すべて昨年を上回る上昇率となりました。昨年は、全国平均の住宅地が1991年以来31年ぶりにプラス(+0.1)となったことが大きく取り上げられましたが、今年の基準地価では、全用途平均・住宅地・商業地とも新型コロナウイルスの影響前の19年の上昇率を上回ったことが特徴的でした。
昨年は「コロナ禍から回復」、今年は、「コロナ禍前を上回る水準」ということになります。
このうち、全用途平均と商業地では、東京圏では11年連続となっています。住宅地は、東京圏では3年連続のプラス、2020年に-0.2%となりましたが、それ以外は、近年は上昇となっています。
地方圏も上昇が顕著になった住宅地地価
全国的に住宅地の地価上昇(あるいは回復基調)が顕著となっており、三大都市圏はプラス2.2%(昨年はプラス1.0%)、このうち東京圏はプラス2.6%(昨年はプラス1.2%)、大阪圏はプラス1.1%(昨年はプラス0.4%)、名古屋圏はプラス2.2%(昨年はプラス1.6%)となっています。地方圏全体ではプラス0.1%、このうち地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)はプラス7.5%(11年連続でプラス、かつ上昇幅は20年以降最高値)、その他地方圏ではマイナス0.2%(過去15年で最も低いマイナス)となりました。
このように、大都市部や地方主要都市では住宅需要が堅調で、特にマンション価格は高騰を続けており、地価上昇が続いています。
また、中心部の地価上昇、住宅価格の上昇にともない、その周辺地域へ地価上昇の波が派生しています。とくに、地方四市は10年を超える高い上昇率を伴う地価上昇が続いているため、その周辺部の市町へ需要が波及し、こうした地域ではかなり高い上昇率となっています。また、半導体など大型工場建設が決まっている地域では、住宅需要が伸びることが確実な事から、こうした状況に拍車がかかっています。
住宅地の変動率ベスト10をみれば、そのうち9つは、千歳から札幌にかけての地点となっています(残り1地点は宮古島)。なお、都道府県別でみれば、変動率がプラスの都道府県数は18、昨年から4つ増えました。
その他地方圏も32年ぶりのプラスに。
商業地地価上昇、一段と顕著に
次に商業地をみれば、こちらも昨年を上回る上昇となっています。とくに、地方四市を除く「その他地方」において32年ぶりの上昇(プラス0.1%)となったことが注目を集めました。
三大都市圏はプラス4%(昨年はプラス4.0%)、このうち東京圏はプラス4.3%(昨年はプラス2.0%、11年連続でプラス)、大阪圏はプラス3.6%(昨年はプラス1.5%)、名古屋圏はプラス3.4%(昨年はプラス2.3%)となっています。地方圏全体ではプラス0.5%(昨年はマイナス0.1%)、このうち地方四市はプラス9.0%(昨年はプラス6.9%、11年連続でプラス、かつ上昇幅は20年以降最高値)、その他地方圏ではプラス0.1%(32年ぶりのプラス)となりました。
新型コロナウィルス感染症の第5類移行に伴いオフィス需要が回復し、国内外の観光需要・出張需要の回復、店舗需要の回復が大きく寄与したと思われます。
また、昨年もふれましたが、マンション需要堅調、マンション価格上昇が続いており、マンション用地需要との競合により、商業地地価上昇の大きな要因となっています。また、こちらも昨年と同様に、再開発事業が、首都圏だけでなく全国の主要都市で盛んに行われており、利便性・繁華性向上の期待感から地価上昇がつづいています。再開発周辺地には多くのマンションが建設され、こうした流れも商業地地価上昇に拍車をかけています。
商業の変動率ベスト10をみれば、半導体企業の進出が決まっている地点の伸びが顕著で熊本県菊池郡の地点が1位と6位と10位、6つは住宅地と同じく北海道の千歳~札幌間の地点、あと1つは白馬村の地点でした。
東京圏の状況
東京都区部に目を向けると 住宅地では、東京23区はプラス4.2%(昨年はプラス2.2%)と上昇幅が大きく拡大しました。23区内で各区をみれば、全てプラス3%を超えており、(昨年はプラス1~2%台が多い)、なかでも、文京区と豊島区は6%を超える上昇となっています。東京圏内では、千葉県市川市がプラス11.3%と唯一10%以上の上昇となりました。
商業地では、東京23区はプラス5.1%(昨年はプラス2.2%)とプラス幅が拡大しました。なかでも台東区、北区では7%を超える伸びとなっており、中心区部より離れた区部の上昇が顕著になっています。東京圏内では、千葉県市川市(プラス13.0%)と船橋市(プラス10.2%)、浦安市(プラス14.2%)以上、東京都に近い千葉県の市で10%を超える伸びとなっています。
24年への展望
固定⾦利が僅かに上昇がみられるものの、全体的に低⾦利が続いており、実需が旺盛な事に加えて、投資マネーの流⼊などが顕著で23年の基準地価は⼤きく上昇しました。
24年の⾒通しとしては、⾦利上昇の可能性が⾼まってきたこと、また地価上昇のための好材料が出尽くし感があること、などから考えると、地価上昇は続くものの、⼤都市部での上昇率の伸びは、今年並みにとどまる可能性が⾼いと思われます。
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