専門家コラム
24年から新設・変更・延長される
住宅・不動産関連の税制度
COLUMNIST PROFILE
吉崎 誠二
不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
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税の改正は毎年注目を集める国民の関心事です。翌年の税の改正は、毎年12月半ばに出される政府与党による「税制改正大綱」で見ることができます。
(税制度の改正の流れ)
税制度の改正、あるいは特例の延長などは9月末を期限として各省庁から税制改正要望が提出され、それを与党税制調査会が審査し、税制改正大綱として取りまとめます。その後、閣議審議・決定されたものを、国会に提出して衆参両院で審議して成立・施行となります。
ここでは、政府与党が取りまとめた「税制改正大綱」のなかから、国土交通省関連の「令和6年税制改正概要」をもとに、24年に新設・改正・延長される予定の不動産・建築に関連した税についてお伝えします。(注:国会審議で変更の可能性があります。執筆時12月19日)
不動産市場の活性化を図るための特例処置
令和6年度国土交通省税制改正概要(主要項目)をみれば、改正の第一の柱として「持続的な経済成長の実現」を挙げています。「税制度を改正すること」で、実現へ向けたいと考えているということです。そのなかで、「不動産市場の活性化」がトップ項目に上がっています。その中で主要なものとして、以下の3つを紹介します。
①土地に係る固定資産税の負担調整措置及び条例減額制度の延長(固定資産税等)
土地に係る固定資産税について、①現行の負担調整措置、②市町村等が一定の税負担の引下げを可能とする条例減額制度が3年間延長されます。商業地および住宅用地について、負担水準(=前年度の課税標準額÷評価額)に応じて、課税標準額が調整されます。この減税が令和9年まで延長されます。
②土地等に係る不動産取得税の特例措置の延長(不動産取得税)
土地などに対する需要を喚起することにより、土地などの流動化・有効利用を促進し、経済回復を着実に進めていくため、下記①②の特例措置が3年間延長されます。①宅地評価土地の取得に係る不動産取得税の課税標準の特例措置(具体的には1/2控除されます)。②土地等の取得に係る不動産取得税の税率の特例措置(特例として3%、本来は4%です)。
③工事請負契約書及び不動産譲渡契約書に係る印紙税の特例措置の延長(印紙税)
工事請負契約書、不動産譲渡契約書に係る印紙税の特例措置が3年間延長されます。(注:不動産売買においてオンライン契約・メールなどでの契約書では、印紙税はかかりません。)請負契約・売買契約の金額において印紙税は異なりますが、20%~50%減額されます。(金額が小さな契約ほど軽減率が大きくなります。)
住まいの質の向上・無理のない負担での住宅の確保
第2の柱として「豊かな暮らしの実現と個性を活かした地域づくり」を掲げ、そのなかで「住まいの質の向上・無理のない負担で住宅の確保」を促す税制について、10の項目があげられています。そのうち主要なものを解説します。
①住宅ローン減税の要件については、借入限度額及び床面積要件が維持されます。
これにより、所得税・個人住民税が減額されます。(控除率は0.7%)すでに昨年の税制改正で、2024年から一部変更が決まっていました。例えば、長期優良住宅では、23年までは借入限度額(住宅ローン減税対象額)は5000万円でしたが、24年からは4500万円になります。しかし、今回の改正で「子育て世代・若者夫婦世帯」(「19歳未満の子を有する世帯」又は「夫婦のいずれかが40歳未満の世帯」)については、昨年のまま5000万円分が適用されます。また、ZEH住宅は4500万円→3500万円となりますが、「子育て世帯・若者夫婦世帯」はそのままです。
また、床面積要件は50㎡以上ですが、24年中に建築確認を取得した新築物件に関しては40㎡以上となります。(所得制限1000万円)
②住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る特例措置の延長(登録免許税の軽減)
住宅取得に係る負担の軽減、良質な住宅ストックの形成・流通の促進を図るため、住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る特例措置が3年間延長されます。
・所有権の保存登記について税率軽減(本来 0.4%→特例 0.15%)
・所有権の移転登記について税率軽減(本来 2% →特例 0.3%)
・抵当権の設定登記について税率軽減(本来0.4%→特例 0.1%)
③空き家の発生を抑制するための特例措置(3,000万円控除)の拡充・延長
空き家の発生の抑制を図るため、空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除について適用期間を4年間(23年から4年)延長するとともに、譲渡後に耐震改修工事又は除却する場合も適用対象となるよう拡充されます。
以上、不動産・住宅に関することのうち注目されていることにしぼり解説しました。参考にしてください。
冒頭で述べたように、このあと閣議決定、国会での審議を経て施行となりますが、政府与党が国会で過半数の議席を持っていますので、概ねこのとおりになると思われます。しかし、すべてとは限りませんので最新の情報を入手してください。
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