専門家コラム
区分マンション投資市況の
見通しを読み解く4つの注目の数字
COLUMNIST PROFILE
吉崎 誠二
不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
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23年も引き続き投資目的の区分マンション価格は概ね上昇傾向にありました。都心物件のキャップレートは3%台半ばという史上最低水準で推移しています。しかし、かなり高くなってきた印象もあり後半は上昇基調に落ち着きが見られてきているようでもあります。また、24年には日銀のマイナス金利政策の終了も見込まれており、仮にそうなれば「投資マンション価格はどうなるのか?」と不安視する声も聞こえます。
様々な面から24年の区分マンション投資は「買い」か「売り」かの「状況を見定めるのが難しくなる」ということになると思われます。ここでは、市況を見定めるための「この数字に注目!」をお伝えします。
キャップレートの見通し
アンケート調査によるキャップレートの公表は主なシンクタンクが公表していますが、春と秋の2回調査(6か月毎)が一般的です。4月調査分の調査では大きな変化がないと思われますが、10月調査分では金利の動向次第では変化があるかもしれません。あくまで一般論ですが、「キャップレートが上昇」となれば価格下落基調で、「売り」を検討する方が増え、逆に「キャップレートが下落」の場合は価格上昇基調で「買い」ムードにあることになります。しかし、いずれにせよ現在首都圏の賃貸住宅のキャップレートは史上最低水準であり、24年中は大きな変化はないでしょう。
賃料の見通し
賃料の動向は、なかなか公的な資料がなく動向をつかむのが難しいものです。しかし、開示される資料が多いJREIT銘柄(レジ系REIT銘柄)が首都圏の賃貸住宅を多く保有しており、その賃料動向を知る事ができます。こちらには注目しておきたいものです。首都圏の賃貸住宅を多く保有するレジ系上場REITには、(順不同)東急不動産系のコンフォリア・レジデンス投資法人(3282)、三井不動産系の日本アコモデーションファンド投資法人(3226)、伊藤忠系のアドバンスレジデンシャル投資法人(3269)があり、年二回の決算ですから、2回運用状況資料が公表されます(決算月の概ね2カ月後)。
コンフォリアレジデンスリートとアドバンスレジデンシャルリートは1月・7月決算、日本アコモデーションファンドは2月・8月決算ですので、その2か月後の開示資料で賃料動向をみるといいでしょう。この先の賃料の見通しですが、賃貸住宅需要が旺盛な地域ではすでに上昇基調になっていますが、都市部などではまだ上昇する可能性が高いと思われます。
実質賃金の見通し
現在、名目賃金(実際の支払い給与)はプラス状況にありますが、一方で物価上昇(インフレ率)を換算した実質賃金は前年比マイナスが続いています。そのため、実際の生活が豊かになるイメージは実質賃金で推し量ることになります。この実質賃金ですが、名目賃金が上昇している中で物価上昇率が少し落ち着いてきていることから、次第にマイナス圏から出る可能性が見えてきました。そうなれば、給与の中から賃料にあてる額を増やす可能性がありますので、この「実質賃金の動向」も注目です。実質賃金は次の金利にも影響を与えそうです。
金利の見通し
長く続く金融緩和政策が不動産投資を下支えしているのは間違いありません。金融緩和政策のうち、YCCについては実質的に解除され日銀のコントロール下から市場原理によるものになってきています。残るは政策金利を低く抑えている(現在はマイナス金利政策)のをいつ解除するかとなっています。
日銀はすでにデフレは脱出しているとみており、実際に消費者物価指数は(日銀が目安としている)2%台で推移しています。日銀総裁のコメントでは、いくつかの項目をあげてこれらの数字が目標をクリアした時にはマイナス金利政策を解除し、政策金利を徐々に上げる可能性を示唆しています。この項目のうち、ギリギリのラインの需給ギャップの数字と先に述べた実質賃金の数字がクリアすれば、政策変更の可能性は高くなります。
いまの状況では、春闘を経て賃上げが行われる4月以降、早ければ4月に行われる日銀金融政策決定会合後にマイナス金利政策解除の可能性が出てきました。ただ、政策金利の上昇と言っても、現在マイナス圏にある金利が、0%~0.1%になる程度だとの見方が大勢です。
誤差なのかレジュームチェンジなのか
ここまで、4つの注目すべき数字について解説してきました。いずれも今年に何らかの動きがあると思いますが、ただ数字の動きは小さいでしょう。これを「誤差レベル」とみるか「レジュームチェンジ」とみるか、というところがポイントです。
メディアは、大げさに「レジュームチェンジ」の匂いを出すかもしれませんが、みなさまにおいては冷静な判断をしていただきたいと思います。
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