専門家コラム
人口動向から見る首都圏物件への投資の優位性
COLUMNIST PROFILE
吉崎 誠二
不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
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4月12日に総務省から2023年10月1日現在の日本の人口が発表されました。これによれば、日本の総人口は1億2,435万2千人で、前年から59万5千人の減少となりました。これを日本人だけでみれば1億2,119万3千人で83万7千人の減少となり、減少幅は12年連続して拡大し続けています。日本人の人口減少を外国人の人口流入で留めている状況となっています。人口減少は13年連続で、もはや留めることが難しい状況となってきました。都道府県別に見れば、人口増加したのは東京都のみで、他の46道府県は減少となっています。今回は、最新の都道府県の人口動向から賃貸住宅需要について検討してみましょう。
人口減少の背景
人口増減の要因には、自然増減と社会増減があります。
自然増減は出生数と死亡者数の差ですが、出生数はずっと減少が続いており、23年は75万8千人で前年よりも4万2千人の減少となっています。一方で死亡者数は159万6千人(過去最多)となり、自然増減はマイナス83.7万人と過去最大(前年よりも12万6千人多い)となりました。自然減少分だけで堺市(83万人)、新潟市(81万人)、佐賀県(81万人)に相当する人口が減ったということになります。出生数は現在少子化対策を行っていますが、なかなか出生率の回復は難しく、かつ多少回復しても10年以上の期間がかかると思われます。その一方で、団塊の世代が後期高齢者となるため、死亡者数はこの先増える(あるいは今年程度の高い数字が続く)と見込まれており、毎年80万人以上の自然減少が見込まれます。こうしてみれば、少子化に加えて多死化が続くことで人口減少が起こっている現状が分かります。
社会増は続く?
社会増減は入国者と出国者の差で、日本人の出入りと外国人の出入りの合計です。23年は入国者325万人(前年比+165万4千人)、出国者300万8千人(前年比+158万7千人)となり、社会増は24万2千人と2年連続の増加となりました。
国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計によれば、今後も外国人の流入は増えると見込まれていますが、将来の見通しは付きにくいものと思われます。
年齢区分別人口
15歳未満の人口は前年に比べて32万9千人の減少、15~64歳の生産者人口は25万6千人の減少と、近年と同じ状況が続いています。しかし、これまで増え続けていた65歳以上人口は9千人減少し、これは1950年以降初めてとなります。その一方で、75歳以上の後期高齢者は71万3千人増えて、初めて2000万人を突破しました。人口割合では16.1%となり、超高齢化社会となっている状況が分かります。ちなみに、24年3月31日に最後の明治生まれの方がお亡くなりになったそうで、これで明治生まれの方はいなくなりました。
その一方で、15歳未満人口の割合は1950年以降毎年減少し11.4%となりました。1985年には21.5%でしたので、約40年で10ポイント以上の減少となっています。生産者人口は59.5%で前年比0.1ポイント上昇しましたが、ピークだった1992年は69.8%でしたので、10ポイント以上減少となっています。 現在の人口割合をざっくり言えば、15歳未満11%、生産者人口60%、65歳以上30%(うち75歳以上16%)という感じで、日本は世界でダントツの高齢化社会国ということのようです(日本の老齢化指数255.6、2位はイタリアで200.5)。
都道府県別の人口
都道府県別にみれば、東京都は1408万6千人で前年比4.8万人増、全国総人口の11.3%となっています。東京都は47都道府県で唯一の人口増で、46道府県の人口はマイナスとなりました。東京の人口増加率は0.34%で、前年は0.20%でしたので増加率も拡大しています。人口上位は、2位神奈川県922万9千人、3位大阪府876万3千人、4位愛知県747万7千人、5位埼玉県733万1千人、6位千葉県625万7千人(ここまで全国に占める割合が5%超)となっており、この6都府県で全人口の42.7%、首都圏(1都3県)の人口は29.6%と約3割を占めています。
都道府県人口変動の要因と生産者人口の割合
先に述べた人口増減要因の自然増減・社会増減について都道府県別に見れば、自然増の都道府県はゼロとなっています。沖縄県は21年まで自然増でしたが、22・23年は自然減となっています。
都道府県を跨ぐ移動が要因となる社会増減をみれば、21都道府県が社会増となっています。このうち社会増減率が多い上位(1~4位)は東京都・埼玉県・千県・神奈川県で首都圏(1都3県)に人口流入が続いている状況が続いています。
また、15~64歳の生産者人口の割合は全国平均で59.5%ですが、6割を超えるのは6つしかなく、首都圏(1都3県)と滋賀県、沖縄県のみとなっています。
人口動向と賃貸住宅需要
ここまでみてわかるように、都道府県別の人口動態でみれば、首都圏(1都3県)はいずれも生産者人口が6割を超え、さらに人口移動に伴う社会増が顕著となっています。このようにみれば、首都圏における賃貸住宅需要が安定していることがよく分かります。
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