専門家コラム
不動産資産の組み換え
COLUMNIST PROFILE
吉崎 誠二
不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
ダウンロードDOWNLOAD
「投資用不動産資産の組み換え」の第3回目のテーマは、「資産の組み換えのイメージと目的・目標ついて」です。
⓪資産の組み換えが資産形成における王道であることを理解する
①どんな資産組み換えをイメージするか、目的・目標などを決める
②新規購入物件への投下資金のイメージ(新たな自己資金はどれくらい?)
③所有している物件の査定などを精査
④新規購入物件候補のリスト化、収益シミュレーションなどの作成
⑤所有している物件の全部あるいは一部の売却
⑥新規物件の購入
今回はこのうち、①について解説します。
不動産投資組み換えのタイミングと目標設定
株式投資における投資戦略は投資家によって異なります。グロース株を購入してじっくり成長するのを待ち、数倍から10倍程度のキャピタルゲインを得ようと考える方もいれば、短期売買を繰り返す投資家もいます。
株式投資の教科書的な書籍などに書かれている投資戦略によれば、例えば「保有する銘柄が10%上昇すれば売却、10%マイナスになれば損切りする」というように、売却のルールをきっちり決めることが王道であると書かれています。よほど明確な理由があれば別ですが、「もう少し上昇するかもしれないので、まだ保有しておこう」、あるいは「大きくマイナスになったが、回復するかもしれない」といった感情的な思いを排除して、自らが決めたルールに従い売却し、次の期待できる銘柄を見つけて投資できるかが、「株式投資で勝つ」秘訣のようです。加えて、年間のトータルリターンを、例えば「20%以上を目指す」などと決めることも重要なようです。
不動産投資においては、業者を除けば短期に売買を繰り返すという例はあまりありません。しかし、個人投資家でも、例えば「この物件は、5年保有して3000万円程度で売れるタイミングが来れば売ろう」などと決めている方もおられます。不動産投資においてキャピタルゲインをメインで考えている方は、このような「マイルール」を設定するのも方法の1つだと思います。
不動産サイクルのピークは読みづらい
「ベストな売却のタイミングはいつか」は、税制(短期譲渡・長期譲渡による譲渡益税率の違い)を除いて考えるとして、「最も高く売れる時」ということになります。しかし、「最も高く売れるタイミング」は、どんな専門家でも、はっきりと「いま」は分かりません。
不動産投資における格言の1つに、「バブル期において、今がバブル期にあることは誰も分からない」というものがあります。不動産市況にはサイクルがあることは知られていますが、ここ数年の不動産投資の専門家(機関投資家やアセットマネジメント会社など)へのアンケート調査(年2回実施)を見ても、毎回「今がサイクルのピーク」との回答が圧倒的多数で、そのピークはすでに3年にも及んでいますが、まだ下降サイクルの兆候はありません。このように、「最も高く売れるタイミング」は、専門家でも読みづらいのです。
そのため、キャピタルゲインを確実に得る不動産投資には「マイルール」を定めておくことが必要ということになります。
不動産投資の目的:短期目線か長期目線か
「不動産投資をどんな目的で行うのか」は投資家によって異なります。キャピタルゲインを得るため、節税のため、といった比較的短期的な目的。また、将来にわたりインカムゲインを得るため(かつては、老後の私的年金という言い方も流行っていました)という比較的長期目線の投資目的の方も多いでしょう。もちろん、これらの複合もあり得ます。
はじめて区分マンション投資を行う方の中には「なんとなく周りの方々が行っているから」というものもあると思いますが、スタート時は「なんとなく」でも、ある程度のタイミングでは目的をはっきりさせましょう。
長期目線投資における資産の組み換え
将来にわたるインカムゲインを目的とする、例えば「老後は年金(公的年金+企業年金)に加えて、不動産賃料という不労所得で暮らしたい」という目的ならば、不動産資産の組み換えにおいては「この物件は手放すが、この物件は保有する」というような選択が必要となります。
この場合に重要となるのは、保有する不動産の価格安定性の違いです。好調な不動産市況が長く続く時には、多少の時差はありますがじわじわと多くの物件価格が上昇しますが、下落の局面ではアドレスなど立地条件により差が出ます。つまり、長期目線での投資の際の資産の組み換えは、「より安定感のある物件を保有するように組み替える」ということがポイントになります。
ただし、これらの見定めには個人投資家自身の判断ではなく、専門家等の判断を仰いだ方がよいと思います。
- ご留意事項
- 不動産投資はリスク(不確実性)を含む商品であり、投資元本が保証されているものではなく、元本を上回る損失が発生する可能性がございます。
- 本マーケットレポート に掲載されている指標(例:利回り、賃料、不動産価格、REIT指数、金利など)は、
不動産市場や金融市場の影響を受ける変動リスクを含むものであり、これらの変動が原因で損失が生じる恐れがあります。
投資をする際はお客様ご自身でご判断ください。当社は一切の責任を負いません。 - 本マーケットレポートに掲載されている情報は、2024年8⽉16⽇時点公表分です。
各指標は今後更新される予定があります。 - 本マーケットレポートに掲載した記事の無断複製・無断転載を禁じます。