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専門家コラム

売る側と買う側の立場で居住中物件(オーナーチェンジ物件)の売買を解説

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吉崎 誠二

COLUMNIST PROFILE

吉崎 誠二

不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

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「投資用不動産資産の組み換え」の第6回目のテーマは、「居住中物件の売買について」についてです。投資用の区分マンションにおいて、空室中の物件と居住中の物件では、どちらが売却しやすいのでしょうか。

目次
賃貸中の物件は売りやすい?
賃貸借契約の継承
オーナーチェンジ物件の現行賃料と想定利回り
売る側の立場に立てば
空室中に売りやすい区分マンションは?

賃貸中の物件は売りやすい?

投資用区分マンションの売却の多くは、賃貸中(賃貸入居者がいる)物件です。一般的に、このような物件は「オーナーチェンジ物件」と呼ばれます。入居者から見れば、物件のオーナーは変わっても、賃貸借契約の内容には変更がありません。売買するオーナー間では、「賃借人との間に結ばれた賃貸借契約を次のオーナーが継承すること」が条件となります。

中古物件の投資用区分マンションにおいて売買されるのは、賃借権が付いた物件です。一般的に、不動産価格は所有権等の対価ですが、所有権とは本来その物件を自由に使用できる権利であり、賃借権などの自由な利用を制限する権利が付随していると、その分価値は目減りします。

しかし、投資目的の区分マンション、つまり賃貸を前提とした区分マンションでは、賃借権が付随していることが大きな減価要因にはならず、新たな賃借人を公募する必要がないため、購入時からすぐに家賃収入を得られる点が魅力で、マイナスに作用することは少ないようです。

一方で、投資用が前提の区分マンション(たとえばワンルームタイプ)では、空室中の物件、つまり賃借権が付いていない物件については、意外に売却にてこずることも多いようです。しかし、空室物件は自己利用も可能です。自己利用の場合には、投資用不動産では利用できない金利の低い住宅ローンが利用でき、さらに条件を満たせば住宅ローン減税を受けることもできます。

賃貸借契約の継承

先に述べたとおり、賃借人がいる物件を(その状態で)購入する場合、現オーナーが賃借人と交わしている賃貸借契約の内容が継承されます。また、敷金などの預かり金は新オーナーに引き継がれ、返還義務も当然に新オーナーに移行します。

オーナーチェンジ物件の現行賃料と想定利回り

オーナーチェンジ物件(居住中物件)を購入する際、収益シミュレーションが組みやすいことを魅力に挙げる方もいらっしゃいますが、その際には「現行賃料が適切かどうか」をしっかりと見極めることが重要です。例えば、ワンルーム25㎡、賃料10万円(契約残年数0.5年)、売買価格2400万円の物件があるとします。この物件の表面利回りは5%ですが、この10万円という賃料が周辺相場と比べて適切かどうかにより、今後の投資採算性は変わってきます。

 仮に、同様の物件の周辺相場が9万円であれば、半年後の契約期間満了時に継続契約となる場合、「賃料そのまま」で継続される可能性が高いですが、入れ替えがあれば賃料を10万円から多少下げての入居者募集となる可能性があります。そうなると、表面利回りは5%よりも低くなることが考えられます。

売る側の立場に立てば

売却する側の立場から考えると、昨今のように賃料が上昇している状況では、現行賃料が10万円であっても10万5000円(5%増)と見積もり、キャップレートで割り戻すなどの収益還元法で価格を算定するとよいでしょう。レジ系JREITの各銘柄の直近の決算報告書によると、東京23区での入替時賃料は5~8%程度増加、更新時賃料も1~2%程度増加しています。これらを踏まえた売却価格を設定するとよいでしょう。

空室中に売りやすい区分マンションは?

一方、60㎡を超えるようなファミリータイプの区分マンションの場合、空室の方が高く売却できる可能性が高まります。現オーナーが投資用(賃貸用)として購入した物件であっても、「投資用区分マンション」というよりは「分譲マンションの賃貸物件」という位置づけになります。そのため、自己利用(実需)として購入を検討する方は、賃貸中物件を購入することができません。

自己利用・投資用(賃貸用)のいずれの購入検討者にとっても、空室である方が購入しやすく、結果として売りやすいと言えます。

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売却価格の最下限の設定について

「これくらいで売れるといいな」という金額は、多少不動産投資を行っている経験のある方ならば、キャップレートを基準にして、NOI利回りで割り戻して価格の計算をするでしょう。しかし、「これ以下で売りたくないな」の最下限金額の設定には個人差があります。
例えば、3000万円で購入した収益用区分マンション、頭金200万円で2800万円をローン借り入れ、6年経過後の残債が2200万円だとします。また、月々のキャッシュフローは税金分を含めた、多少のプラスが出ているものとします(ここでは諸経費等は考えない。以下同じ)。
所有者の希望としては、購入時価格(3000万円)を下回ると損したイメージを持つと思います。しかし、2800万円で売れれば手残りは600万円で、そこから頭金200万円を引けば400万円(+月々のプラス分×6年間)が真の手残りということになります。ローン支払分は、不動産に変えて貯蓄していたというイメージになります。このような「手残りはいくらか」という考えで収益不動産の売却の最下限価格を考えればいいでしょう。

ご留意事項
不動産投資はリスク(不確実性)を含む商品であり、投資元本が保証されているものではなく、元本を上回る損失が発生する可能性がございます。
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本マーケットレポートに掲載されている情報は、2024年11⽉16⽇時点公表分です。
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