専門家コラム
増える単独世帯 東京都は2050年には全世帯の54%、全国でも44%が単独世帯に!
COLUMNIST PROFILE
吉崎 誠二
不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
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すでに日本国内の世帯類型で最も多いのは単独世帯となっており、この先2045年頃までは全国的に増加する見通しです。単独世帯の多くは賃貸住宅に住んでいることから、賃貸住宅需要を支える大きな要因となる状況が今後も続くと考えられます。
ここでは、国立社会保障・人口問題研究所が2024年4月(都道府県別は11月)に公表した推計を元に、住宅需要を決める「世帯」の将来見通しについて考察します。
- 目次
- 日本の世帯、最多類型は単独世帯
- 増える単独世帯:2050年には全国で44%を超える
- 2050年の東京都の単独世帯比率は50%を超える特に増える高齢者単独世帯
- 単独世帯の多くが賃貸住宅に住む
- 単独世帯の増加が賃貸住宅需要を支える
日本の世帯、最多類型は単独世帯
最新の2020年の国勢調査では、総世帯数5570万世帯のうち211万世帯が単独世帯となっています。これは、1980年時点では総世帯数3528万世帯のうち単独世帯は71万世帯であったのに対し、2020年までの40年間で総世帯数は1.55倍に増加しましたが、このうち単独世帯数だけを見れば2.98倍に増加しています。
様々な国の厚生政策におけるモデルとなっている「夫婦と子」世帯ですが、1980年時点では全世帯の42.1%を占めていました。しかし、その割合は年々減少しており、2020年には全世帯の1/4にあたる25.2%となっています。すでに2010年以降、世帯の最多類型は単独世帯となっており、2020年の国勢調査時点では、全世帯の38.0%が単独世帯を占めています。
増える単独世帯:2050年には全国で44%を超える
この単独世帯の数と、総世帯数に占める割合は、この先も増え続ける見通しです。国立社会保障・人口問題研究所が2024年4月に公表した将来推計によれば、2050年には単独世帯が全世帯の44.3%を占め、夫婦と子世帯は21.5%となると予測されています。この先、単独世帯の割合は全ての都道府県で上昇し、2050年には割合が40%を超える都道府県が27県に達する見込みです。
また、世帯の構成人数を見ると、2020年時点での全国平均は2.21人でしたが、2040年には半数以上の都道府県で平均人数が2人を下回り(2020年時点では東京都のみが該当)、2050年には全国平均で1.92人になると推計されています。このように、これからの日本は世帯の「単独化」がいっそう進んでいくことになります。1970~1980年代には核家族化が進んでいると言われていましたが、現在は「1人家族化」が進んでおり、この状況は想像以上の速さで進行しています。
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計は国勢調査の結果に基づいて行われます。国勢調査は5年に1度(西暦5の倍数の年)に実施され、その3~4年後に人口と世帯数の将来推計が公表されます。つまり、将来推計も5年に1度のペースで行われることになります。2010年以降(推計公表は2014年)の推計データを見ると、特に単独世帯の将来推計については、実際の増加ペースが推計を大きく上回っています。想定をはるかに超える速度で「単独世帯」が増加しており、婚姻数や出生数の近年の推移を踏まえると、このペースはさらに加速する可能性が高いと考えられます。
2050年の東京都の単独世帯比率は50%を超える特に増える高齢者単独世帯
首都圏の将来世帯推計に目を向けると、2050年の単独世帯の割合は、東京都では54.1%(全国1位:唯一の50%超)、神奈川県では45.6%、埼玉県では41.2%、千葉県では43.0%となる見込みです。また、人口のボリュームゾーンの状況から、特に大都市部では、単独世帯の中でも65歳以上の高齢者単独世帯が増加することが推計データに示されています。
将来推計データには市区町村別の詳細は含まれていないため、以下はあくまで推測の域を出ませんが、東京23区やその周辺地域では、単独世帯の割合が6割近くに達する可能性が高いと考えられます。また、神奈川県、千葉県、埼玉県の主要都市部でも単独世帯の割合が5割近くに達すると推測されます。
単独世帯の多くが賃貸住宅に住む
最新の2020年の国勢調査によると、全国では単独世帯の63.7%が賃貸住宅(民営・公営)に居住しています。これを都市部に限定すると、単独世帯の7割以上が賃貸住宅に住んでいる状況です。例えば、東京23区では74.1%、大阪市では76.1%、名古屋市では75.5%、福岡市では83.4%の単独世帯が賃貸住宅に居住しています。全体的に見て、都市部では約75%、地方でも60%以上の単独世帯が賃貸住宅に住んでいることが分かります。
単独世帯の増加が賃貸住宅需要を支える
将来的に単独世帯の増加が見込まれることは、単身用賃貸住宅の需要増加を意味します。特に、都市部におけるワンルームタイプやコンパクトタイプの賃貸マンションのニーズは、今後も安定して推移する可能性が高いと言えるでしょう。
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