床上浸水 床下浸水
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床上浸水、床下浸水とは?火災保険でどこまでカバーできる?賃貸物件の補償は大家さん?

執筆者プロフィール

佐藤翔一

地域情報紙記者、広告代理店、フリーライターを経て2023年に中小企業のWebコンテンツ制作会社All Write(オールライト)株式会社を設立。戸建てやマンションの新築分譲、リフォーム、投資向け物件その他不動産関係のプロモーション実績多数。

近年の異常気象による影響で、日本でも大きな災害が起こっています。特に夏場の台風による河川の氾濫。「水害」は生活者にとっては死活問題です。
住んでいる家が、床上浸水、床下浸水に見舞われることも起こり得ます。そんな時、アパートやマンションなどの賃貸物件の場合は誰が補償してくれるのでしょうか。また、家賃を支払う義務や保険でカバーできる範囲も気になるところです。
この記事では、床上浸水と床下浸水の定義から、被害を受けた場合に備える保険やその補償などについて解説しています。

床上浸水、床下浸水とは?定義と両者の違い

読んで字のごとく、床上浸水は住宅の床の上に浸水することです。一方、床下浸水は住宅の基礎部分に浸水は認められるものの、床上には浸水していないという状況を指します。
国土交通省が発信している「川の防災情報」では「一般家屋の場合、50cm以上水に浸かる程度」を床上浸水、「浸水が50cm以下」を床下浸水と定義
しています。
特に床上浸水は「地面から50cm~1mの浸水で、大人の腰まで浸かる状態」としており、「この水位は幼い子どもの身長を超えるものであり、大人でも着衣での移動は危険を伴います」という注意喚起も記載されています。

避難の重要性

50cm以下の床下浸水でも大きな危険が伴う水害です。当然、避難行動が重要になります。しかし、やみくもに避難するのはそれこそリスクが高くなってしまうでしょう。避難行動を起こす際には、浸水域の地面から水面までの高さを示す「浸水深」をチェックしておきたいところです。この浸水深を目安に、どのような避難行動をとるべきかを考えましょう。

浸水深と建物被害

まずは浸水深と建物被害の関係です。浸水深が0〜50cmの場合はいわゆる床下浸水で、大人の膝ほどまで水がある状況。これが50cm〜1mとなると床上浸水となり、大人の腰あたりまで浸かります。
2階建の家屋の場合、浸水深が1m〜2mで1階軒下まで浸水、2m〜5mで2階軒下まで浸水、5m以上で屋根以上が浸水します。

浸水深と避難行動

浸水深が大きくなるほど歩行、または自動車の走行に影響が出てきます。特に大雨や強風で水害が発生した場合、安全な移動手段として自動車を選択する人もいるのではないでしょうか。しかし、たった数10cmの浸水深でも自動車走行に与える影響は大きくなります。

浸水深自動車走行
0~10cm走行に関し、問題はない。
10~30cmブレーキ性能が低下し、安全な場所へ車を移動させる必要がある。
30~50cmエンジンが停止し、車から退出を図らなければならない。
50cm~車が浮き、また、パワーウィンドウ付きの車では車の中に閉じ込められてしまい、車とともに流され非常に危険な状態となる。

火災保険で水災は補償されるのか。水災補償って?

さて、このような水害に見舞われた場合の補償はどうなるのでしょうか。
台風や暴風雨による洪水、融雪洪水、高潮、土砂崩れなど水による災害が原因となり、建物や家財に損害があった場合は火災保険がカバーしています。
まず、加入している火災保険に「水災補償」が付帯されているかをチェック
してみてください。

水災補償の支払基準

水災補償が付帯されていたとしても、損害を受ければ無条件に保険金が支払われるわけではなく、一定以上の損害が発生し基準を満たした場合に支払われるというものが一般的です。

一般的な基準は、以下のようになっています。

  • 建物や家財の保険価額に対して、30%以上の損害が発生した場合
  • 床上浸水、もしくは地盤面より45㎝を超えた浸水による損害が発生した場合

また、水災=水による損害と思われがちですが、地震、噴火による津波を原因とする浸水被害は水災補償の対象外です。こうした損害に対しては、「地震保険」でカバーすることになります。他にも、台風の風により窓ガラスが割れてしまい雨が吹き込んできて濡れてしまったというような場合も水災補償の対象外で、こちらは「風災」となります。

どのような場合に水災補償の対象になるのか、ならないのかは、契約内容に記載されていますので、よくよく確認することが重要です。

水災補償でいくら支払われるのか

ここで気になるのは「実際にいくら保険で支払われるのか」ということです。
支払われる金額は大きく分けて2つのパターンがあります。

「実損補填」

実際の損害額が支払われます。
厳密にいうと損害額から免責金額を引いた額が支払われる仕組みです。
実損補填 = 損害額 – 免責金額
免責金額とは自己負担額のことです。免責金額を高く設定すればその分、保険料を抑えることができますが、支払われる金額も少なくなってしまいます。

「水災縮小支払特約(定率払)」

保険料支払額を定率にした契約です。例えば
「保険価額の30%以上の損害を受けた場合→(損害額-免責金額)×70%」
「保険価額の15%~30%未満の損害を受けた場合→保険金額×10%」
「保険価額の15%未満の損害を受けた場合→保険金額×5%」
といった基準が設けられています。
こちらの場合では、損害が保険価額の30%に満たない場合でも保険金が支払われることとなりますが、損害額の全額(面積金額を除く)は支払われません。

どちらの支払い方法が良い悪いということではありません。ご自身の住んでいる環境からどのような損害が想定されるか、その時にどんな補償があれば安心できるかといったことと、実際に支払う保険料とのバランスを考えながら選ぶことが重要です。

賃貸物件の場合、修理や家財の補償はどうなる?

増水した河川

持ち家が水害に見舞われた場合は、上記のように保険で対応することが必要になってきます。では、賃貸物件の場合は誰が修理や家財の補償をしなければならないのでしょうか。
民法第606条には「賃貸人は賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」とあります。つまり、大家さんは賃借人に対して賃料と引き換えに利用可能な物件を提供する義務があるということです。

浸水によって賃借人の生活が困難となった場合、大家さんが修繕をしなくてはなりません。
原則として建物の修繕は大家さんが全額負担ですが、賃借人の不注意やルール違反が起因となる損壊は入居者負担になるケースもあります。
例えば「台風直撃の日に窓を開けていて、ガラスが割れた」、「ベランダに置くことが禁止されている自転車が倒れ、ベランダが損傷した」などは、保険会社の調査によって“入居者の責任”と判断される可能性もあります。

窓ガラスやベランダは建物扱いですが、室内の家財についてはどうでしょう。テレビなどの家電製品は賃借人の所有物。大家さんが補償する義務はありません。床上浸水で家電が故障しても、修理や買換えは賃借人の自己負担となります。

例外として、「大家さんの物件管理怠慢」が認められることがあります。「共有部の柱が劣化しており、修繕依頼をしていたが対応していなかったため、突風が原因で柱の一部が部屋を直撃。それにより賃借人が怪我を負った」というケースであれば、物件管理を怠った大家さんが責任を取らなければならないということも考えられます。

賃貸物件が浸水してしまった場合、家賃はどうなる?

賃貸物件が浸水すると、しばらくは住めなくなってしまうでしょう。賃貸物件は民法611条で「生活できるような状態になるまで賃料は支払わなくて良い」とされています。したがって、修繕が終わるまで賃料を支払う必要はありません。

しかし、一時入居先は人それぞれ。実家や親族、友人を頼る人も多いでしょうが、中にはホテルを選択する人もいます。修繕中に賃貸契約している住居の家賃を支払う必要はありませんが、一時入居先のホテル代を大家さんに請求することはできません。大家さんには、賃借人に対して住める状態の物件を提供する義務がありますが、賃借人が一時的に避難する場所を用意するという義務まではありません。

避難の際に注意すべきこと

事前に知識を得ていても、いざ有事に直面するとなかなか正しい行動ができないものです。まず、念頭に置いておきたいのは「正確な情報を得て、早めに行動を起こすこと」です。
スマートフォンに流れてくる災害情報、テレビやラジオなどを駆使して正確に状況を把握することが大切です。
また、素早く行動に移せるように、動きやすい服装でいると安心です。両手が空くように、リュックサックに必要なものを入れておくことも重要です。

水害において最も危険なのは川の氾濫です。氾濫した水流の勢い、強さは私たちの想像を遥かに超えるもの。膝程度の高さですら、大人でも歩くのが困難になります。無理に動くのではなく、高くて頑丈な建物に留まるという選択肢も頭に入れておきましょう。
さらに、氾濫した水というのは濁りが強く地面の様子が見えなくなります。マンホールが外れていることに気づかず、落下してしまう危険も伴います。やむを得ず浸水している道路を歩く時は、長い棒などで足下を確認しながら移動してください。

この記事のポイント

床上浸水、床下浸水の定義は?

床上浸水は、「50cm以上水に浸かる程度」、床下浸水は、「浸水が50cm以下」と定義されています。

詳しくは「床上浸水、床下浸水とは?定義と両者の違い」 をご覧ください。また、それぞれの被害の程度については、「浸水深と建物被害」をご覧ください。

浸水した場合に備える保険について知りたいです。

火災保険に「水災補償」が付帯されているものであれば、浸水による損害に備えることができます。ただし、保険金が支払われるかどうか、支払われる金額については、条件があります。

詳しくは「火災保険で水災は補償されるのか。水災補償って?」 をご覧ください。

賃貸物件の場合は大家さん側で補償してくれる?

大家さんには建物を修繕する義務がありますが、家財まで補償する義務はありません。一方、賃借人の不注意やルール違反が起因となる損壊は入居者負担になるケースもあります。

また、修繕中に賃貸契約している住居の家賃を支払う必要はありませんが、一時入居先のホテル代を大家さんに請求することはできません。

詳しくは「賃貸物件の場合、修理や家財の補償はどうなる?」 及び「賃貸物件が浸水してしまった場合、家賃はどうなる?」 をご覧ください。

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