耐震等級3 とは
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耐震等級3はどれくらいの地震に耐えられるの?本当に必要か?

執筆者プロフィール

悠木まちゃ
宅地建物取引士

ライター・編集者。ハウスメーカー勤務時に、新築戸建て住宅のほか、事務所建築や賃貸アパートの営業・設計を経験。
その後、2019年よりフリーライター・編集者として活動を開始。実務経験を活かし、不動産・金融系を中心に執筆から編集まで行う。ブックライターとしても活動するほか、ライター向けオンラインサロンの講師も担当している。

ざっくり要約!

  • 耐震等級3は、住宅性能表示制度で最も高い耐震性能を示す等級です。
  • 耐震等級3の建物には、コストが上がる、間取りが制限されるといったデメリットがあります。
  • 耐震等級3は、震度6~7の地震に複数回耐えられ、2016年の熊本地震でも倒壊・崩壊はゼロでした。

物件選びをしているなかで、耐震等級3の建物を見たことがある人もいるでしょう。「耐震等級3はどれほどの強度なのか」と疑問に思うケースもあるかもしれません。

この記事では、耐震等級3の強度や、耐震等級3は必要なのかについて解説します。デメリットと注意点も説明するので、耐震等級3の建物を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

耐震等級3とは?

耐震等級3は、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づく住宅性能表示制度において、最も高い耐震性能を示す等級です。

耐震等級1の1.5倍の地震力に耐えられる強度を持ち、震度6強から7程度の大地震が発生しても倒壊しない耐震性能を備えています。

耐震等級と耐震基準の違い

耐震等級と耐震基準は混同されやすいですが、それぞれ異なるものです。耐震等級は、住宅性能表示制度に基づき、建物の耐震性能を3段階で評価するものです。

一方の耐震基準は、建物が最低限の耐震性を保つために建築基準法で定められた基準を指します。2000年施行の現行建築基準法に適合する住宅は、耐震等級1相当とされています。

耐震等級は任意の制度ですが、耐震基準は法的に義務付けられた最低ラインとなります。

耐震等級の地震に対する強度

耐震等級の地震に対する強度は、それぞれ以下のように想定されています。

耐震等級強度
耐震等級1● 震度5弱程度なら住宅が損傷を受けない
● 震度6強~7程度でも倒壊しない
耐震等級2● 耐震等級1の1.25倍の強度
● 一度の大地震(震度6強~7程度)であれば補修することで住み続けられる
耐震等級3● 震度7の地震に複数回耐えられる

耐震等級3の建物は本当に必要か

安全性を確保するために、耐震等級3の建物を選ぶことは良い選択といえるでしょう。その理由について、以下の3つを解説します。

  • 大規模地震が多発
  • 熊本地震では倒壊・崩壊ゼロ
  • 金利優遇・地震保険の割引も受けられる

順番に見ていきましょう。

大規模地震が多発

近年、日本では大規模な地震が頻発しています。阪神・淡路大震災(1995年)、東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)など、甚大な被害をもたらす地震が立て続けに発生しました。

このような状況下で、住宅の耐震性能を高めることは大きな課題となっています。耐震等級3の建物は等級1の1.5倍の強度があり、複数回の大規模地震にも耐えられます。

熊本地震では倒壊・崩壊ゼロ

2016年の熊本地震では、耐震等級3の建物の倒壊や大規模半壊は一件もありませんでした。
このことは、耐震等級3が大地震にも耐えうる高い強度であることを示しています。

一方で、耐震性能が低い建物では多数の倒壊被害が発生しました。大規模地震に備えるためには、耐震等級3の建物を建てることが望ましいといえます。

金利優遇・地震保険の割引も受けられる

耐震等級3の建物は、金融機関から住宅ローンの金利優遇を受けられる場合があります。また、地震保険の割引を受けることも可能です。

耐震性能が高ければ地震による被害が小さくなるため、金融機関や保険会社が優遇措置を設けていると推測されます。

このように、耐震等級3は安全性以外に経済的なメリットもあります。

耐震等級3のデメリットと注意点

耐震等級3の建物には、メリットだけでなく以下の注意点もあります。

  • 施工費・取得費が上がる
  • 間取りが制限されることも
  • 耐震等級は任意の制度

あらかじめデメリットを知ったうえで、耐震等級3を選択するかどうかを検討しましょう。

施工費・取得費が上がる

耐震等級3を取得するためには、壁や柱、基礎を強化する必要があり、建築コストが高くなります。耐震等級を上げるために、100万円以上の追加費用がかかる場合もあります。

また、耐震等級3の申請や検査に係る費用として、10~30万円程度が別途必要です。

間取りが制限されることも

耐震等級3を取得するには、地震の影響を最小限に抑えるための構造が求められます。たとえば、耐力壁と呼ばれる強度の強い壁を適切に配置しなければなりません。

そのため、開口部が大きい間取りや吹き抜けなどを設けにくくなり、間取りの自由度が下がる可能性があります。希望する間取りを実現するのが難しくなる場合もあるでしょう。

耐震等級3を選択する際には、こうした制約を理解したうえで設計者と相談することが重要です。

耐震等級は任意の制度

耐震等級は法的な義務ではなく、任意の制度です。そのため、耐震等級3を取得しなくても住宅を建てることは可能です。

耐震等級3を取得するかどうかは、地震リスクへの備えと費用のバランスを考えて判断する必要があります。

住宅を選ぶときは「立地」の災害リスクにも注目したい

耐震等級3 災害リスク

耐震等級3は、建物の強度が強いことを指すものです。しかし、実際の災害リスクは建物の強度だけで決まるわけではありません。

以下のように、立地やその他の条件によるリスクにも注目しましょう。

  • 地盤の強さ
  • 水災リスク
  • 中古住宅は劣化状況もチェックしよう

それぞれ解説していきます。

地盤の強さ

地盤の強さは住宅の安全性に直接影響します。軟らかい地盤は地震で液状化し、建物が沈下や傾斜するリスクがあります。

液状化のおそれが高くなるのは、埋立地や旧河川敷、砂丘地帯などの軟弱地盤などです。立地や土質を確認するほか、液状化ハザードマップで事前にチェックしておきましょう。

水災リスク

河川や海岸線に近い地域では、洪水や津波のリスクが高まります。そのほか、低地に立地する住宅は、豪雨による浸水被害に遭いやすくなります。

ハザードマップで水災害の危険度を確かめ、必要に応じて水災補償の火災保険に加入するなど、事前の備えをすることが大切です。

中古住宅は劣化状況もチェックしよう

中古住宅を購入する場合は、建物の耐震性や立地リスクに加え、劣化状況のチェックも欠かせません。老朽化に伴う部材の劣化があるケースや、適切なメンテナンスが行われていないケースでは、補修が必要になる可能性があります。

インスペクションと呼ばれる建物検査を専門家に依頼し、安全性を確認するのがおすすめです。必要に応じて、リフォームを検討してもよいでしょう。

まとめ

耐震等級3は、住宅性能表示制度において、最も高い耐震性能を示す等級です。任意の制度であるため、耐震等級3を取得しなくても住宅を建てることは可能です。

耐震等級3の建物は熊本地震でも倒壊しなかったことから、地震の多い日本では、耐震等級3を取得することはよい選択といえます。一方で、コストが高くなったり、間取りの自由度が下がったりといったデメリットもあります。

居住地域の災害リスクや、ご自身のニーズにあわせて適切な耐震等級を選びましょう。

安全性を重視して物件選びをしたい場合は、構造や立地について、不動産会社へ相談するのがおすすめです。

この記事のポイント

耐震等級3とはどのようなものですか?

耐震等級3は、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づく住宅性能表示制度において、最も高い耐震性能を示す等級です。

詳しくは「耐震等級3とは?」をご覧ください。

耐震等級3の建物であることは必要でしょうか?

熊本地震では耐震等級3の建物は倒壊・崩壊ゼロでした。安全性のためにもおすすめです。

詳しくは「耐震等級3の建物は本当に必要か」をご覧ください。

耐震等級以外に住宅を選ぶポイントはありますか?

耐震等級3は、建物の強度が強いことを指すものですが、実際の災害リスクは建物の強度だけで決まるわけではありません。

詳しくは「住宅を選ぶときは「立地」の災害リスクにも注目したい」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

耐震等級は義務ではなく任意の制度であるため、耐震等級3を取得しなくても住宅を建てることは可能です。
地震の危険性が低い地域では、耐震等級3の取得は過剰な投資となる可能性も考えられるでしょう。安全性と費用のバランスを考え、ご自身のニーズに合わせて検討することが重要です。

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