更新日:  

鉄筋造(RC造)と鉄骨造はどっちが防音性が高い?違いや調べ方を紹介

執筆者プロフィール

齋藤進一
建築士

やすらぎ介護福祉設計 代表
2004年から「ワンストップ型」介護福祉設計をめざし、各個人の障がいの症状に合わせた住宅設計・施工監理をはじめ、子育て世帯が安心して暮らせるユニバーサルな視点でのバリアフリーで、多くの人に安心とやすらぎを提供している。

ざっくり要約!

  • 鉄筋造と鉄骨造では、鉄筋造(特に壁式工法)のほうが防音性が高い
  • 室内と隣家間の壁を軽く叩いて、音が濁ったように響かない(低音)感覚があった場合、防音性の高い壁であることがわかる

日本で主流な建築物の構造体は大きく分けて「木造」「鉄骨造」「鉄筋造」の3種類があります。木造の物件から、鉄筋造や鉄骨造の物件に引っ越して住まわれる場合、騒音に対する建物の防音が気になるのではないでしょうか。この記事では、鉄筋造と鉄骨造の防音性についてそれぞれ解説いたします。

鉄筋造(鉄筋コンクリート造、RC造)の物件の特徴

鉄筋造(鉄筋コンクリート造、RC造)とは、型枠の中に鉄筋を組んでコンクリートを流し込み、固まったら型枠を外してできあがった構造体を言います(鉄筋を組んだ中央に鉄骨も合わせた「鉄骨鉄筋コンクリート造」もあります)。

鉄筋造には、柱・梁が構造体となる「ラーメン工法」と、壁・床が構造体となる「壁式工法」があります。

耐久性・断熱性が高い

鉄筋造は「法定耐用年数」(減価償却資産が利用に耐える年数)において、他の構造体より年数が長いです。

国税庁のデータをもとにした構造体ごとの法定耐用年数は以下のとおりです。

鉄筋造…47年
鉄骨造(重量鉄骨造)…34年
木造…22年

実際の耐久性においては、環境やメンテナンスに左右されますが、メンテナンス状況が良ければ耐用年数以上に長持ちします。
また、不燃材料のコンクリートを主材料としているので耐熱性・耐火性にも優れています。

出典:法定耐用年数|国税庁

ビルや中高層マンションに多い

鉄筋造は、かつてはコンクリートを圧送するポンプ車の能力が低かったことから高層建築は苦手としていました。近年は圧送能力が上がり、中高層マンションなどで鉄筋コンクリート造が建設されています。

また、鉄筋造は円形など柔軟に形を作ることができるので、意匠デザイン性の高いビルにも使用されています。

鉄骨造の物件の特徴

鉄骨造(S造)も、柱・梁が構造体となるのでラーメン工法で建設され、「重量鉄骨造(骨格材肉厚6mm超)」と「軽量鉄骨プレハブ造(骨格材肉厚6mm以下)」に分けられます。

重量鉄骨造は大規模建築物などで、軽量鉄骨プレハブ造は戸建て住宅や小規模アパートなどでそれぞれ使用されています。

ここでは鉄筋造との比較のため、重量鉄骨造を主軸に解説いたします。

壁の位置や間取りを自由に設計しやすい

鉄筋造(ラーメン工法)の水平方向の標準スパン(柱の間隔)は10m以下なのに対し、鉄骨造(ラーメン工法)の標準スパンは10~20m、最大で50mスパンの建設も可能なため、壁の位置や間取りを自由に設計できます。

こうした特徴から、大型ショッピングモールや体育館のほか、アパートやマンションも鉄骨造で建設されることも多いです。

鉄筋造(RC造)と鉄骨造はどっちが防音性が高い?

防音には「遮音」と「吸音」の手法があります。「吸音」は室内で音が響き渡るのを防ぐために吸音材を壁・天井に張るという方法で、音楽スタジオなどで使われるのが主流です。一般住宅では「遮音」という方法が採用されることがほとんどです。

鉄筋造はラーメン工法でも壁式工法でも、屋外側は基本的にコンクリート壁で作られます。室内の壁に関しては、ラーメン工法は造作壁(石膏ボード)、壁式工法は耐震壁としてコンクリート壁で建設されることが一般的です。

一方、鉄骨造(ラーメン工法)は柱・梁が構造体となり、屋外側の壁はALC板(軽量気泡コンクリート板)などを嵌め込む施工法が多く、室内は造作壁(石膏ボード)であることが多いです。

隣家同士の間仕切り壁にALC板が使用されているか、造作壁であるかによって、防音性が大きく変わります。

そもそも騒音とは?

「騒音」として感じる音には種類があり、大まかに「空気音」(話し声やクラクション、音楽など空気を介して広がる音)と「固体音」(エアコン室外機や自動車の音などの振動が、壁・床など介して発生する音)に分けられます。

人によって騒音の感じ方はさまざまですが、一般的に「とてもうるさい」と感じる騒音には鉄道ガード下や車のクラクション(100dB)が、「うるさい」と感じる騒音には幹線道路周辺や掃除機、電話の着信音(70dB)があります。
換気扇や住宅用エアコン室外機(50dB)は「普通」、夜の郊外(30dB)は「静か」と感じる例が多いようです。

一般的に50db程度以下であれば通常の生活に支障がない音とされていますが、音に敏感な方は数値が低めでも騒音と感じることがあります。

最近は騒音計のスマホアプリがあるので、精度に誤差はありますが目安として使うことができます。家選びの際などにこうしたアプリなどを使って、音に対する数値を身近にしておくのもいいでしょう。

防音性を重視するなら鉄筋がおすすめ

鉄筋造と鉄骨造の防音性を比較した場合、鉄筋造(特に壁式工法)は柱・梁・床・壁が鉄筋造で一体化しているので、鉄骨造よりも遮音性が上です。

鉄筋造(ラーメン工法)と鉄骨造を比較した場合では、どちらも外壁を後付のALC板を設置したとしても、防音性は鉄筋造(ラーメン工法)が上回ります。

鉄骨造は躯体(骨組み)が金属なので、固体音が伝播してしまいがちです。

固定音とは、例えば鉄骨造(軽量鉄骨プレハブ造)の2階建てアパートなどで、階段や廊下を歩く音が伝播するときに聞こえるものです。

鉄筋造(RC造)と鉄骨造の防音性チェック方法

鉄筋造や鉄骨造の防音性を室内でチェックする方法を解説いたします。

手をたたいて音の響きを確認する

防音性が高い仕様で作られたマンションの居室などは音の逃げ場がないので、手を叩いたり、音楽などを流したりした際、浴室内のように反響音が大きくなる傾向があります。

ただし、防音性の高い部屋だと、中には会話していて耳がキンキンするように感じたり、耳鳴りを感じて体調が悪くなったりする人もいるため、音に敏感な方にはあまりおすすめできません。

壁を軽くたたいてどんな音がするか確認する

鉄筋造も鉄骨造も、室内の壁は「石膏ボード」や「木材の板(コンパネ・構造用合板など)」にクロスが貼られているのが一般的です。

マンションなどであれば、室内と隣家間の壁を軽く叩いた際に、音が濁ったように響かない(低音)感覚があった場合は、コンクリート壁やALC壁といった防音性の高い壁であることがわかります。

反対に、叩いた音が甲高かったり、空洞に響くような感覚があったりした場合は、室内と隣家が石膏ボードで挟んだ壁で仕切られており、防音性が低い可能性があるでしょう。

鉄筋造(RC造)と鉄骨造の防音対策

防音性能をあらわす指標として、壁については「D値」、床については「L値」などがあります。最近は鉄筋造のマンションなどでも、この指標をもとに防音対策が施されている物件が増えました。
住宅において、どのような防音対策ができるか解説いたします。

壁の防音対策

まず壁の防音(遮音)性能を示すD値ですが、壁やドアがどのくらい遮音するかを示し、等級が大きいほど性能は高く、小さいほど性能が低いことを表します。
設定基準が物件により違いますが、一般的にD-50が求められ、最低限D-40以上は必要と言えます。マンションを選ぶ際に、D値について不動産会社に確認してみるのもひとつの方法です。

また、マンション・アパートなどで近隣との壁が造作壁(石膏ボード)の場合、「本棚やタンスを近隣との壁側に移動させて緩衝材とする」「石膏ボード自体を遮音性が高い製品と入れ替え、間仕切り間のスペースは防音材を入れる」といった対策もあります。

自宅で楽器などを演奏する場合は、室内に「防音室」を設置するのもひとつです。一般的に0.8〜4.3畳ほどでさまざまな種類があり、購入またはレンタルすることができます。

出典:建築物の遮音性基準と設計指針|日本建築学会

窓の防音対策

日本サッシ協会が定めるサッシ・ドアの遮音性能基準では、遮音性能はT-1から4の4等級あり、数値が大きいほど遮音性が優れています。

窓の防音化には2重サッシにして空気の通り道をなくし、遮音する手法が一般的です。リフォーム用2重サッシを使えば、大規模な工事もいりません。

また、窓ガラスの仕様を「防音複層ガラス」や「防音合わせガラス」にするのもひとつです。

出典:窓の性能とJIS基準について|日本サッシ協会

床の防音対策

床の防音(遮音)性能を示すL値は、LH値(重量床衝撃音:子どもが飛び跳ねた時などに発生する)とLL値(軽量床衝撃音:軽い物を落下したときに発生する)に分けられます。
一般的水準は2級(L-55)ですが、日本建築学会が推奨するのは1級(L-45〜50)とされています。

床のリフォームや新築時に、こうした等級に対応可能な防音フローリングや2重床仕様にするほか、まずは遮音マットや防音カーペットを試してみるという方法もあります。

出典:建築物及び建築部材の遮音性能の評価方法|日本工業標準調査会
日本建築学会による建物・室用途別性能基準|日本建築学会

この記事のポイント

鉄筋造(鉄筋コンクリート造)の物件の特徴は?

「法定耐用年数」(減価償却資産が利用に耐える年数)において、他の構造体より年数が長いです。また、不燃材料のコンクリートを主材料としているので耐熱性・耐火性にも優れています。

円形など柔軟に形を作ることができるので、意匠デザイン性の高いビルにも使用されています。

詳しくは「鉄筋造(鉄筋コンクリート造)の物件の特徴」をご覧ください。

鉄筋造と鉄骨造の防音性のチェック方法は?

マンションなどであれば、室内と隣家間の壁を軽く叩いた際に、音が濁ったように響かない(低音)感覚があった場合は、コンクリート壁やALC壁といった防音性の高い壁であることがわかります。

反対に、叩いた音が甲高かったり、空洞に響くような感覚があったりした場合は、室内と隣家が石膏ボードで挟んだ壁で仕切られており、防音性が低い可能性があるでしょう。

詳しくは「鉄筋造と鉄骨造の防音性チェック方法」をご覧ください。

物件探しや売却がもっと便利に。

無料登録で最新物件情報をお届けいたします。

Myリバブルのサービス詳細はこちら