近年、日本全国で大規模な再開発が推進されています。その主な理由は、老朽化した建物の建て替えや都市の防災機能の向上です。日本では、高度成長期から高層建築物の建築や都市機能の向上が推進されてきましたが、当時の建築物の多くは耐用年数を超えており、現行の耐震基準を満たしていないものも目立ちます。
防災・減災のためには、区画や道路の整備なども求められます。再開発は、既存建築物の建て替えや改修だけではなく、都市計画に基づいたインフラ整備を推進することで、都市機能の新陳代謝とそれによる居住性や資産性、安全性の維持・向上を図ることが目的です。
東京で注目される再開発エリア
東京では「100年に一度」といわれる大規模な再開発が各地で推進されています。再開発エリアは、渋谷や日本橋などの都市部に加え、サブカルの聖地とされる中野や下町情緒が残る京成立石など多岐にわたります。
渋谷
渋谷駅周辺では、東急グループが中心となって広範囲かつ大規模な再開発が進められています。開発エリアは、渋谷駅を中心とした半径2.5㎞圏内。一連の再開発は、国際的なトレンド発信拠点としての魅力向上が主な目的とされています。駅周辺エリアではすでに竣工・開業している商業施設も多く、渋谷の街が大きく変わり始めています。
2025年2月には「代々木公園Park-PFI計画」が供用開始予定です。同計画は都市公園法に基づくもので「都市と公園を繋ぐ」をテーマに、代々木公園と渋谷・原宿を有機的に繋ぐためのものです。具体的には、公園内に「アーバンスポーツパーク」「にぎわい広場」「フードホール」「ランニングステーション」などが設置されます。
2027年度には、渋谷スクランブルスクエアの中央棟・西棟が開業予定です。東棟はすでに2019年に開業しており、同施設は新たな渋谷のランドマークになっています。
日本橋
ビジネスの中心地である中央区日本橋でも、大規模な再開発が推進されています。再開発エリアは、日本橋川沿いにおける次の5地区です。
- 日本橋一丁目中地区
- 八重洲一丁目北地区
- 日本橋室町一丁目地区
- 日本橋一丁目東地区
- 日本橋一棟目1・2番地区
5つの再開発事業はすでに再開発組合等の設立が認可されており、着工している事業もあります。最も開発面積が大きい日本橋一丁目中地区では、地上51階の複合施設を含む4棟の建築や広場の整備などが進められています。
日本橋の再開発は、防災対応力強化や環境負荷の低減、日本橋側沿いという環境を活かした街並みの構築といった目的に加え「国際金融都市・東京」の形成という重要な役割を担っています。現在、東京は国外に金融市場をプロモーションするための施設が不足しています。日本橋の5地区の再開発により、各地区の機能連携を強化するとともに、大規模な国際カンファレンスなどの開催に必要な都市機能も整備される予定です。同地区の竣工は、2026年3月末を予定しています。
大井町(広域品川圏)
JR東日本は、羽田空港の国際化やリニア開通の期待感が高まる品川駅を中心に、浜松町駅から大井町駅間のエリアを「広域品川圏」と位置づけ、まちづくりを推進しています。品川区の大井町駅周辺は10月、開発のまちの名称が「大井町トラックス」に決定しました。品川区とも連携しながら、一体的なまちづくりや地域防災力などが共創されます。
駅周辺は主にオフィスタワーとホテル・住宅タワーで構成される予定で、オフィスタワーと道路を挟んだ隣に建設される品川区新庁舎を含む3つの建物と大井町駅は、歩行者デッキで繋がれます。ビジネスタワーには、映画館やアウトモール型の商業施設エリアも入る予定です。まちびらきは2026年3月を予定しています。
中野
中野駅周辺では、11の土地区画整理事業や再開発事業が進行しています。すでに完了している事業もあり、懐かしさの残るサブカルチャーの発信地ともいわれている中野の商業化、高層化が進んでいます。
半世紀にわたって多くの人に親しまれてきた「サンプラザ中野」もその幕を下ろし、高さ262mの超高層商業施設「NAKANOサンプラザシティ(仮称)」に生まれ変わる予定です。ただ、昨今の建築費高騰を理由に事業者から施工認可の取り下げがあり、2029年度に予定されていた竣工は遅れる見込みとなっています。
駅北口の囲町地区では2棟のタワーマンションの建築が進められており、一部、販売が開始しています。2棟の総戸数は807戸。南口にも大規模な賃貸レジデンスが竣工しており、駅周辺の利便性や駅舎の工事も進められています。
京成立石
古き良き日本の風景が残る葛飾区の京成立石駅周辺も、再開発によって大きく生まれ変わろうとしています。現在、駅周辺は商店街や低層の建物が中心ですが、3つのタワーマンションや商業施設の建設が予定されています。
北口の開発エリアはすでに立ち退き・解体が進んでおり、2024年11月現在はほぼ更地の状態です。立石駅とその周辺では、駅前の再開発と同時に、駅舎の改修や連続立体交差事業も進められています。北口の建物竣工は2028年度、南口は2031年の竣工が予定されています。
大阪で注目される再開発
東京だけでなく、近畿圏の商業・ビジネスの中心地である大阪でも大規模な再開発が進められています。
大阪駅周辺
西日本最大のターミナル駅の大阪駅周辺では、大阪府や大阪市、JR西日本などが連携し、再開発が進められています。駅北口の旧梅田貨物駅の「うめきた区域」は2002年に開発がスタートし、9月には2期区域のうち中枢機能施設「JAM BASE」の一部などが先行して開業しています。全体のまちびらきは2027年度を予定しています。
2023年には、大阪駅の地下ホームが開業。これにより、大阪駅と関西国際空港が直通でつながりました。9月のうめきた2期区域の先行まちびらきに合わせ、大阪駅地上部で開発が進められている商業施設「うめきたグリーンプレイス」のうち、うめきた区域と大阪駅方面を接続する歩行者デッキも開通しています。12月には駅前広場の一部が供用を開始する予定で、同施設の全面開業は2025年3月を予定しています。
中之島
大阪市の中心部に位置する中之島は、利便性の高さと堂島川、土佐堀川の中州という自然豊かな環境から居住エリアとして人気が高く、公的機関や文化施設も集まるエリアです。西日本の経済、医療、芸術、文化などの発信拠点としての重要な役割を担っていることもあって大規模な再開発が進行しており、これまで高層複合施設や文化施設、美術館などが続々と開業しています。
6月には、未来医療の実用化・産業化を推進する国際的な拠点となる「中之島クロス」が開業。2025年に大阪万博が開催され、2031年にはなにわ筋線の新駅「中之島駅(仮称)」の開業が予定されていることから、現在も万博会場の夢洲と大阪中心部を結ぶ水辺の交通拠点「中之島GATEターミナル」の整備や土地区画整理事業、国際拠点施設の開発などが進められています。
再開発エリアは安全性・居住性の向上に加え資産価値の維持・上昇も見込める
近年、日本各地で再開発事業が推進されていますが、こうしたエリアの多くは、周辺エリアと比べて地価の上昇率が高い傾向にあります。一方で、日本全国、どのようなエリアでも再開発ができるわけではありません。日本ではすでに人口減少が始まっており、今後は世帯数の減少も必至であることから、老朽化や安全性の向上などの課題があっても再開発できず、空き家が増え、地価が下がり続けている地域も存在しています。
再開発は、暮らしだけでなく、不動産の資産性にも大きく影響します。不動産の売買を検討している方は、そのエリアの都市計画にも目を向けてみましょう。
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