ざっくり要約!
- 固定資産税の納税額は、不動産の構造や築年数、減税措置の適用の有無によって異なります。
- 固定資産税のシミュレーションは、土地と建物を分けて計算しなければなりません。
固定資産税は「固定資産税 = 固定資産税評価額(課税標準額)× 税率」で求められます。固定資産税評価額は、敷地面積や建物の築年数によって大きく異なります。固定資産税は不動産を所有している限り負担することとなるので、購入前に納税額のシミュレーションをしておくことが大切です。
本記事では、一軒家とマンション、更地にかかる固定資産税の計算シミュレーションを紹介します。
記事サマリー
固定資産税の計算方法
固定資産税とは、土地や建物などの固定資産を1月1日時点で所有している人に納税義務がある地方税です。固定資産税の納税額は、以下の計算式で求められます。
固定資産税 = 固定資産税評価額(課税標準額)× 税率
固定資産税評価額は、自治体が固定資産税評価基準によって算出した評価額のことをいい、3年に1度見直されます。これを、評価替えといいます。
固定資産税評価額は、自治体から4〜5月に交付される固定資産税納税通知書や、固定資産課税台帳などで確認できます。税率は「1.4%」としている自治体が多い傾向にありますが、適用税率が異なる自治体もあるので注意しましょう。
・「固定資産税」に関する記事はこちら 固定資産税はいくら?マンションと一戸建ての違いは? |
固定資産税の減税措置とは?
固定資産税は、新築住宅を建てたりリフォームをしたりといった一定要件を満たすことで、以下の減税措置が適用されます。
減税措置名 | 減税対象 | 減税割合 | 減税期間 |
---|---|---|---|
新築住宅の軽減措置 | 建物 | 2分の1 | 戸建ては3年間 マンションは5年間 |
住宅用地の特例 | 土地 | 6分の1〜3分の1 | 基本的に建物を解体するまで |
リフォーム減税 | 建物 | 3分の1〜3分の2 | 1年間 |
マンション長寿命化促進税制 | 建物 | 6分の1〜2分の1 | 令和7年3月31日まで |
固定資産税の減税措置は、自治体に申請しなければ受けられません。減税措置が適用されることで、固定資産税の負担を大きく抑えられる可能性があるので、申請手続きを忘れないようにしましょう。
・「固定資産税の減税」に関する記事はこちら 固定資産税の減税措置とは?適用条件や申請方法を解説 |
計算シミュレーション1. 新築一軒家の固定資産税
条件
新築価格:土地 1,800万円、建物 2,500万円
土地面積:198㎡
床面積 :112㎡
建物構造:木造
土地の固定資産税額(概算)を算出
固定資産税評価額がわからなかったり、決定していなかったりする場合は「実勢価格(購入価格)÷ 1.2 × 70%」で概算金額を計算します。まずは、土地の実勢価格から固定資産税評価額を求めていきましょう。
1,800万円(実勢価格)÷ 1.2 × 70% = 1,050万円(土地の固定資産税評価額)
住宅の敷地として活用されている200㎡までの土地は、小規模住宅用地として固定資産税評価額が6分の1となる「住宅用地の特例」が適用されます。本条件では、土地面積198㎡がすべて住宅用地の特例の適用対象となるため、固定資産税評価額を6分の1にします。
1,050万円 × 1.4%(税率)÷ 6(住宅用地の特例)= 24,500円(土地の固定資産税額)
建物の固定資産税額(概算)を算出
次に、建物の固定資産税を計算します。新築住宅の固定資産税評価額は「新築価格 ×60%」で概算金額を求めるのが一般的です。
2,500万円(実勢価格)× 60% = 1,500万円(建物の固定資産税評価額)
1,500万円 × 1.4% = 210,000円(建物の固定資産税額)
新築から3年以内の一軒家は、固定資産税が2分の1となる「新築住宅の軽減措置」が適用されるため、納税額は「210,000円 ÷ 2 = 105,000円」になります。
土地と建物の固定資産税額を合計すると「24,500円 + 105,000 = 129,500円」となります。
計算シミュレーション2. 築6年のマンションの固定資産税
次は、築6年のマンションにかかる固定資産税を以下の条件でシミュレーションします。
条件
購入価格:4,000万円
敷地面積:1,000㎡
専有面積:80㎡
持分割合:20分の1
土地建物割合:6(土地):4(建物)
建物構造:非木造
長期優良住宅:非該当
土地の固定資産税額(概算)を算出
マンションが建っている土地の固定資産税評価額は、土地建物割合から土地の実勢価格を計算したうえで求めます。
4,000万円(実勢価格)× 60%(土地建物割合)= 2,400万円(土地の実勢価格)
2,400万円 × 70% = 1,680万円(土地の固定資産税評価額)
次に、土地の固定資産税評価額が6分の1となる「住宅用地の特例」の適用対象であるかを確認するために持分割合から土地面積を求めます。
1,000㎡ ÷ 20(持分割合)= 50㎡
敷地面積が200㎡以内となるため、土地のすべてが「住宅用地の特例」の対象となり、固定資産税評価額を6分の1にしたうえで固定資産税を計算します。
1,680万円 × 1.4%(税率)÷ 6(住宅用地の特例)= 39,200円(土地の固定資産税額)
建物の固定資産税額(概算)を算出
次に、建物の固定資産税を計算します。中古住宅の固定資産税評価額は「実勢価格 × 経年減価補正率」で求められるのが一般的です。経年減価補正率とは、建物が経年によって落としていく価値を減価するための税制上の考え方です。経過年数ごとの経年減価補正率は、法務省のサイトで確認できます。
4,000万円(実勢価格)× 40%(土地建物割合)= 1,600万円(建物の実勢価格)
1,600万円(建物の実勢価格)× 0.8335%(経年減価補正率)= 1,333.6万円(建物の固定資産税評価額)
1,333.6万円× 1.4 = 186,704円
なお、長期優良住宅の認定を受けていない築6年のマンションは「新築住宅の軽減措置」の減税対象外となるため、固定資産税額を2分の1にすることはできません。
土地と建物の固定資産税額を合計すると「39,200円 + 186,704 = 225,900円(100円未満切り捨て)」となります。
計算シミュレーション3. 更地の固定資産税
最後は、建物がない更地にかかる固定資産税を以下の条件でシミュレーションします。
条件
敷地面積:250㎡
路線価:40E(4万円)
接面道路:一面のみ(奥行価格補正率100%)
宅地分類:自用地
土地の固定資産税評価額がわからない場合は、国税庁が発表する「路線価」や、国土交通省が公表する「公示価格」から求めることとなります。今回は、路線価をもとに固定資産税評価額を計算します。
4万円(路線価)× 250㎡ × 100%(奥行価格補正率)= 1,000万円(土地の固定資産税評価額)
奥行価格補正率とは、土地の使いやすさにあわせて評価額を調整するための割合をいい、奥行きや立地に応じて補正率が異なります。また、住宅の敷地として活用されていない更地は、住宅用地の特例の適用が受けられないので、算出した固定資産税評価額をもとに納税額を求めます。
1,000万円 × 1.4%(税率)= 140,000円(土地の固定資産税額)
以上の計算から、更地の固定資産税額は「140,000円」となります。
固定資産税をシミュレーションする際の注意点
固定資産税シミュレーションをする際は、土地と建物を分けて計算しなければなりません。
建物は「経年減価補正率」を用いて経年劣化を考慮することになりますが、経年劣化しない土地に経年減価補正率をかけると、正しい固定資産税額が求められなくなってしまいます。また、固定資産税には建物のみに適用される「新築住宅の軽減措置」、土地を減税対象とする「住宅用地の特例」といった減税対象が異なる制度があります。
計算の順番を間違えると、適切な納税額が求められなくなってしまうので、土地と建物の固定資産税額を別々に求めたうえで最後に合算するようにしましょう。
まとめ
固定資産税の納税額は「固定資産税 = 固定資産税評価額(課税標準額)× 税率」で計算できます。固定資産税の納税額は、課税対象となる土地に建物があるのか、中古住宅であるかによって大きく異なります。不動産購入を検討する際は、本記事で紹介したシミュレーションを参考にしながら、どれほどの固定資産税がかかるかを計算しておきましょう。
この記事のポイント
- 固定資産税はどうやって計算すればいい?
「固定資産税 = 固定資産税評価額(課税標準額)× 税率」で計算できます。
詳しくは「固定資産税の計算方法」をご覧ください。
- 一軒家とマンションでは固定資産税のシミュレーション方法が違う?
一軒家とマンションでは固定資産税の計算方法が異なります。
詳しくは「計算シミュレーション1.新築一軒家の固定資産税」と「計算シミュレーション2.築6年のマンションの固定資産税」をご覧ください。
- 固定資産税の減税措置にはどんな種類がある?
新築住宅の軽減措置、住宅用地の特例、リフォーム減税、マンション長寿化促進税制などがあります。
詳しくは「固定資産税の減税措置とは?」をご覧ください。
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