定礎とは
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「定礎」の意味とは?ビルなどで目にする板や石の目的について解説

執筆者プロフィール

悠木まちゃ
宅地建物取引士

ライター・編集者。ハウスメーカー勤務時に、新築戸建て住宅のほか、事務所建築や賃貸アパートの営業・設計を経験。
その後、2019年よりフリーライター・編集者として活動を開始。実務経験を活かし、不動産・金融系を中心に執筆から編集まで行う。ブックライターとしても活動するほか、ライター向けオンラインサロンの講師も担当している。

ざっくり要約!

  • 定礎とは建物の土台石を埋めることだが、昨今では「定礎」と書いた石を設置する行為を指す
  • 定礎箱の中には建築図面や工事関係者の名簿などが入っている

学校などの施設やビル、マンションなどの大規模建築物で「定礎」というプレートを見かけたことのある方は多いでしょう。しかし、その意味は意外と知られていません。

本記事では、定礎の本来の意味や昨今の定礎式の慣習、定礎箱の中に入れる物などを解説します。

定礎とは?

ビルやマンション、学校などの建築物で見かけるのが「定礎」と書かれたプレートです。ここでは、定礎の本来の意味だけでなく、変化しつつある昨今の慣習について見ていきましょう。

読み方

定礎の読み方は「ていそ」です。

また、定礎に関係するものとして、以下のものが挙げられます。

  • 礎石(そせき)
  • 定礎板(ていそばん)
  • 定礎箱(ていそばこ)

似ているようですが、それぞれ少しずつ意味が異なっています。

意味

建物の柱を支える土台の石を礎石といい、その礎石を据えることを定礎と言います。つまり、礎石を据えてから工事をスタートするのが、本来の定礎の意味です。

定礎と呼ばれるものは約7000年前のメソポタミア文明から存在し、その慣習がヨーロッパへと伝わりました。古代ギリシャや古代ローマにおいて、建築物の基準となる石に印を刻み、工事の無事や建物の長寿を祈願する儀式を行っていたことが、定礎のルーツとされています。

日本では、江戸時代から明治にかけて西洋の文化が浸透し、レンガ造りや石造りなどの西洋風の建築が広がりました。この過程で、定礎も日本に伝えられたものと考えられています。

しかし、近年では礎石の上に柱を建てる建築方式が少なくなり、定礎は儀式としての意味合いが強くなりました。工事完了後に「定礎」と書かれた石を埋めるのが、儀式のひとつです。

その際に埋め込まれる石が、ビルや施設などで見かける「定礎」と書かれたプレートです。

定礎のプレートに使われる素材は主に大理石や御影石ですが、石に限らず青銅やステンレスが用いられる場合もあります。「定礎」の文字とともに、建築物の竣工年月を記すデザインが一般的です。

近年では岐阜県の新庁舎や青山学院中等部の校舎のほか、全国各地の病院や保育施設、ダムの建設などで定礎式が行われました。

なお、定礎には設置する義務がなく、設置場所も特に定められていません。そのため、すべての建物に存在するわけではなく、定礎がない建築物もあります。

定礎と記された石の中は何?

定礎と記された石は板状のプレートとなっている場合があり、これを定礎板といいます。

建物をつくる際、壁や柱の一部に空洞をつくり、そこに定礎箱を埋め込んでから、最後に定礎板でフタをする形式です。

要するに、定礎板を取り外した中には、定礎箱があります。

定礎箱とは

定礎箱とは、建物の柱部分などに埋め込む箱のことです。銅やステンレスなどの金属製のものが多いですが、古いものでは木製の定礎箱もあります。

定礎箱の中に入れる物は、その建物の工事に関連するものです。たとえば、以下のようなものが挙げられます。

  • 建築図面
  • 工事関係者の名簿
  • その年の硬貨
  • 当時の新聞

定礎に義務がないのと同様に、定礎箱に入れる物にも決まりはありません。

定礎箱はいつ開けるの?

定礎箱は、建物が壊されるまで開けることはありません。つまり、開けるときは建物を解体したときです。

鉄筋コンクリート造の建物であれば、100年以上使用することも珍しくないため、定礎箱を開けるのはかなり先になるでしょう。イメージとしてはタイムカプセルに近いかもしれません。

長い年月を経て当時の資料を見られることから、定礎箱から貴重な資料が発見されることもあります。

過去には、東京大学の新図書館建築において、明治時代に埋められた定礎箱が発見された事例もありました。また、日本IBMの旧本社からは、完成当時の業界紙や、ビルを設計した建築家・故林昌二氏のサインなどが見つかっています。

定礎式が行われるのは着工時?竣工時?

定礎式

先述した通り、本来は工事を始める前に行うのが定礎です。そのため、工事の無事を祈願する定礎式も、着工時に行っていたものです。

しかし、昨今では竣工の直前に行うことが多くなりました。建物の一部に定礎箱を埋め、定礎板でフタをするため、工事完了の間近に定礎式を行います。

儀式の内容は地鎮祭や上棟式などと同様で、お祓いやお清めなどを行います。その際に定礎箱を建物に埋め、年月日を彫り込んだ定礎板を設置するのが、定礎式の儀式です。

まとめ

定礎とは、建物の土台となる礎石を埋めることが、本来の意味でした。しかし、昨今では儀式としての意味合いが強くなっています。

工事に関連するものを定礎箱に入れて建物に埋めたり、竣工年月日を彫り込んだ定礎板をはめ込んだりしています。それと同時に、お祓いやお清めを行うのが定礎式です。

建物を壊すまで定礎箱が開けられることはないため、タイムカプセルのような楽しさを感じることや、貴重な資料を発見できることもあります。

この記事のポイント

定礎とは何?

建物の土台となる礎石を埋めることが、本来の定礎の意味です。しかし昨今では、定礎箱を埋めて定礎板を設置することを、定礎と呼ぶケースが多くなっています。

詳しくは「定礎とは?」をご覧ください。

定礎と記された石や、定礎箱には何が入っている?

定礎と記された石(定礎板)を取り外すと、中の空洞には定礎箱が入っています。定礎箱には建築図面や工事関係者の名簿などを入れることが一般的です。

詳しくは「定礎と記された石の中は何?」をご覧ください。

定礎式はいつ行うもの?

本来は工事着工前に行う儀式でしたが、昨今では竣工間近に行うことが多くなっています

詳しくは「定礎式が行われるのは着工時?竣工時?」をご覧ください。

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