ざっくり要約!
- 持ち家と賃貸住宅を比べると、生涯コストに1300万円以上の差が生まれる場合があります。
- 賃貸住宅か持ち家かを選ぶ際は、ライフプランと照らし合わせたシミュレーションをすることが大切です。
「賃貸と持ち家はどちらが得か」といった議論はよく見聞きしますが、最近では「賃貸より持ち家のほうが1,300万円お得だ」というかなり具体的な話が話題になっているようです。結論からいえば、持ち家を取得したほうが1,300万円程度お得になることもあるものと考えられます。ただし、どの程度お得になるかは立地条件や物件次第であり、所有後の市況や金利にもよるところですので、一概にはいえません。
とはいえ、気になる方が多い問題でもあることから、本記事では賃貸と持ち家に居住した際の住居費をシミュレーションしたうえで10年後〜40年後までの差額を検証します。持ち家に向いている人と賃貸に向いている人の特徴も紹介しているので、住居を探している人はぜひ参考にしてください。
記事サマリー
賃貸と持ち家で1300万円の差が生じるのか検証
まずは賃貸と持ち家で1300万円の差が生じるのかをシミュレーションしていきます。
不動産・住宅情報サイト「ライフルホームズ」によれば、東京都杉並区の中古マンション価格相場は5,598万円(70㎡)です。一方、杉並区の2LDKの賃料平均は21.85万円となっています。(2023年9月現在)
これらのデータをもとに、賃貸と持ち家にかかる費用を下表にまとめました。
賃貸 | 持ち家 | ||
---|---|---|---|
家賃 | 約21.9万円 | 住宅ローンの月々の返済額 | 約19.3万円 |
仲介手数料・敷金・礼金・保証料などの諸費用 (賃料の5ヶ月分と想定) | 約109.5万円 | 仲介手数料・住宅ローン事務手数などの諸費用 (取得価格の7%と想定) | 約391.8万円 |
火災保険料(年間) | 約2万円 | 修繕積立金(全国平均) | 約1.2万円 |
更新料(賃料の1ヶ月分と想定) | 約21.9万円 | 管理費(全国平均) | 約1.6万円 |
火災保険料(年間) | 約1.5万円 | ||
固定資産税 | 約20万円 |
賃貸または持ち家として中古マンションを所有した場合の10年後から40年後までにかかる費用は、以下の通りです。なお、持ち家として所有した場合は、水回りなどのリフォーム費用として20年後と40年後に200万円を加算し、賃貸住宅に居住する場合は2年に1度更新し、10年に1度転居すると想定します。
賃貸 | 持ち家 | 差 | |
---|---|---|---|
10年後 | 約2,845万円 | 約3,258万円 | 賃貸のほうが約413万円安い |
10年後〜20年後 | 約2,845万円 | 約3,067万円 | 賃貸のほうが約222万円安い |
20年後〜30年後 | 約2,845万円 | 約2,867万円 | 賃貸のほうが約22万円安い |
30年後〜40年後 | 約2,845万円 | 約751万円 | 持ち家のほうが約2,094万円安い |
総額 | 約1億1,380万円 | 約9,943万円 | 持ち家のほうが約1,437万円安い |
10年後〜30年後まで大きな差はありませんが、ローンの返済が終わった30年後からの差は非常に大きくなります。40年後までの総額は、持ち家のほうが約1,437万円安くなったことから「1,300万円の差がある」というのもあながち間違いではないことがわかります。加えて、持ち家は自身に所有権があるため売却が可能です。従って、長い目でみれば持ち家を取得したほうがお得だといえるでしょう。
ただし、今回のシミュレーションは東京都杉並区の現在の相場を比較したにすぎません。賃料や管理費、修繕積立金、金利などは変動する可能性があるため、シミュレーションのとおりの差額が生じるとは言い切れません。
「賃貸と持ち家で1300万円の差」の背後にある要因
先述したように持ち家の住居費は、賃貸住宅に住み続ける場合と比べて安くなる可能性があります。先ほどのシミュレーションでは1,300万円以上の差が出ましたが、しかし、すべてのマンションで同様のシミュレーションとはならないため、どのような変動要因があるのかを確認しておくことが大切です。
更新料があるかないか
賃貸物件を契約する際は「契約期間」を定めて入居するのが一般的で、契約期間を2年間に設定している物件が多い傾向があります。契約期間を超えて賃貸物件に住み続けるためには、契約更新をしなければなりません。この契約更新をする際の手数料を「更新料」と呼び、賃貸物件に住む際のコストとなります。
国土交通省の令和4年度 住宅市場動向調査によると、更新料を賃料1ヶ月分に設定している物件が多く、なかには2ヶ月分としている場合もあります。
居住するマンションの契約期間と更新料によっては、コストが大きく変動する可能性があるので、入居前に確認しておきましょう。
修繕費用
賃貸ではなく持ち家としてマンションを所有している場合は、専有部分の修繕費が発生します。水回りや壁紙、床材などに劣化があったときは自己資金で修繕しなければならず、200万円〜300万円程度の費用がかかります。
一方、賃貸物件は専有部分の設備が劣化した場合であっても、貸主が修繕費用を負担するのが一般的です。なお、居住性を向上させたり故意に設備を壊したりすると、借主負担で修繕をしなければならないので注意が必要です。
マンションの修繕費用は、居室の階数や設備グレードによって大きく変動するので、どれほどの費用がかかるのかを事前にシミュレーションしておくことが大切です。
結局、賃貸と持ち家、どちらのコストが実際にお得なのか?
賃貸と持ち家を比較すると、賃貸物件に居住するほうがコストを抑えられる傾向があります。ただし、先述した更新料や物件価格、物件種別によっては持ち家を選んだほうがコストが安く済む場合も考えられます。
賃貸と持ち家のコストを比較する際は、どのような物件に居住するのかを想定したシミュレーションをすることが大切です。
コスト以外の賃貸と持ち家の選択がもたらす生活の変化
賃貸と持ち家を選ぶ際はコストだけでなく、自身のライフプランにあった住居を選択することが大切です。
例えば、勤務先の都合で数年ごとに転勤する必要がある場合は、持ち家ではなく賃貸を選択したほうが柔軟に対応しやすくなります。一方、設備や内装を自分好みにリフォームをしたり、老後に住居費を負担することに不安を感じたりする人は持ち家が向いています。
賃貸と持ち家を選択する際は、それぞれのメリット・デメリットを押さえ、今後のライフプランと照らし合わせたうえで判断することが大切です。入居後に後悔しないためにも、どのような生活を送りたいのかを明確にしておきましょう。
賃貸か持ち家、あなたに合った選択は?
最後に賃貸に向いている人と、持ち家に向いている人を詳しく紹介します。
賃貸に向いている人
賃貸に向いている人の特徴は、以下の通りです。
- 引っ越しや転勤が多い人
- ライフプランが決まっていない人
- 家のメンテナンスに手間をかけたくない人
- 住宅ローンを組みたくない人
結婚や出産、転勤といった転居が必要になるライフイベントが想定される人には、賃貸がおすすめです。また、外壁や構造部分の修繕に手間をかけたくない人は、貸主が修繕計画を立ててくれる賃貸が向いています。
借入額が大きくなりやすい住宅ローンを組みたくない場合は、賃貸に居住し続ける選択をするのもよいでしょう。
持ち家に向いている人
持ち家に向いている人の特徴は、以下の通りです。
- 転居する可能性が低い人
- ライフプランが決まっている人
- 設備や内装にこだわりたい人
- 老後に住居費を負担したくない人
家族構成の変化や転勤によって引っ越しする可能性が低い人や、ライフプランが決まっている人には持ち家がおすすめです。持ち家であれば、設備や内装を自分好みにリフォームすることも可能です。
住宅ローンを完済すれば、老後に住居費を負担する必要がなくなるので、老後生活の不安を少しでも軽減させたい人は持ち家を選択するとよいでしょう。
まとめ
首都圏で中古マンションの持ち家に住み続けた場合、賃貸と比べて1300万円以上お得になる可能性があります。ただし、すべての住居で同様の差額が生まれるわけではなく、金利や賃料などによっては賃貸住宅を選んだほうがコストが安く済む場合があります。
賃貸と持ち家を選ぶ際は、コストだけでなく、結婚や転勤、老後生活などのライフプランをもとに判断することが大切です。ライフプランが定まっていない場合は、ライフイベントに対応しやすい賃貸に居住し、ライフプランが決まった段階で持ち家を選択するのも手段の一つです。
この記事のポイント
- 賃貸と持ち家で1300万円の差がある?
首都圏の中古マンションに住み続けた場合、生涯コストは持ち家のほうが1300万円以上お得になることもあります。
詳しくは「賃貸と持ち家で1300万円の差が生じるのか検証」をご覧ください。
- 賃貸と持ち家のどちらが得?
本文中のシミュレーションでは持ち家のほうがお得という結果になりましたが、金利や更新料、物件の条件などによって異なる場合があるので注意が必要です。
詳しくは「結局、賃貸と持ち家、どちらのコストが実際にお得なのか?」をご覧ください。
- 持ち家に向いているのはどんな人?
持ち家に向いている人の特徴は、転居する可能性が低い人、ライフプランが決まっている人、設備や内装にこだわりたい人、老後に住居費をしたくない人です。
詳しくは「持ち家に向いている人」をご覧ください。
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