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防火扉(防火戸)の設置基準は?仕組みや機能も解説

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 防火扉とは防火設備の一つで、扉の他に防火窓や防火シャッター、延焼を遮る袖壁、塀、庇等がある
  • 防火地域では、3階以上か延床面積が100平米超の建築物は耐火建築物とすることが必要

マンションやホテル、百貨店等の大きな建物で、防火扉(防火戸)を目にしたことのある人もいると思います。
防火扉や防火シャッター、網入りガラス等は、火災時に火災の拡大を抑える防火設備と呼ばれる設備の一つです。
防火扉はどのような建物に存在し、どのような役割を果たすものなのでしょうか。
この記事では「防火扉」について解説します。

防火扉(防火戸)の仕組みや機能

防火扉とは、防火設備の一つです。防火設備とは、火災の拡大防止と延焼防止のために建築物の内外の開口部に設置されるものです。防火設備には、扉の他、窓やシャッター、延焼を遮る袖壁、塀、庇等があります。

建物の屋内では、防火区画の開口部に防火扉等の防火設備が必要です。防火区画とは、建物内部で火災が発生したときに、火災を一定の範囲内にとどめて拡大を防ぐための区画のことです。

防火区画には面積区画と高層区画、竪穴区画、異種用途区画の4種類があります。
それぞれの区画の内容は下表の通りです。

防火区画 内容
面積区画 大規模な建築物における火災の拡大を防ぐために、一定の面積で分けた区画のことです。耐火建築物では、1,500平米以内ごとに区画されます。
主要構造が耐火構造となる建築物では、床と壁は耐火構造で、開口部は特定防火設備にする必要があります。
高層区画 11階以上の高層部分を、一定の面積で分けた区画のことです。建物の高層部分には消防車の梯子が届かないことから、火災拡大を抑えるために設けられた区画となります。床と壁は耐火構造で、開口部は特定防火設備にする必要があります。
竪穴区画 火災時に吹き抜けや階段など、縦につながる部分からの延焼を抑えるための区画のことです。主要構造部が準耐火構造以上で、地階または3階以上の階に居室がある建物に適用されます。床と壁は45分の準耐火構造で、開口部は遮炎性能を持つ防火設備にする必要があります。
異種用途区画 建物の一部が一定の用途に該当する場合に、その部分と他の部分を分けた区画のことです。床と壁は1時間の準耐火構造で、開口部は遮炎性能を持つ特定防火設備にする必要があります。

防火区画の防火扉には、「常時閉鎖式」と「随時閉鎖式」の2種類があります。

常時閉鎖式とは、普段は締まっている防火扉であり、手で開けるために大きさが3平米以内に制限されています。また、手を離すと自然に閉じる構造でなければなりません。

随時閉鎖式とは、普段は開放されていて、熱や煙を感知した際に閉鎖する防火扉です。随時閉鎖式は大きさに制限はありませんが、避難経路に設置する場合は一部をくぐり戸としなければならないとされています。

特定防火設備の防火扉

特定防火設備の防火扉とは、扉の両面で60分(1時間)の遮炎性能を有する防火扉のことです。特定防火設備は、屋内で発生した火炎の延焼を防ぐ目的で防火区画の開口部に設置します。

防火扉は、防火区画の種類によって設置するものが異なります。特定防火設備の防火扉は、面積区画や一部の高層区画、異種用途区画の開口部に設置されます。一部の高層区画とは、一定の要件を満たす200平米以内または500平米以内の区画です。

特定防火設備の防火扉は、常時閉鎖式のものか、もしくは火災による煙や急激な温度上昇(熱)によって自動的に閉鎖しなければならないとされています。

また、非常用エレベーターの乗降ロビーや避難階段の出入口、異種用途区画のような高い安全性が求められる区画では、煙を防ぐ遮炎性能も必要です。

特定防火設備の防火扉は扉の両面の遮炎性能が60分となります。
60分の遮炎性能を満たす防火扉の材料と厚さの関係は下表の通りです。

特定防火設備の防火扉の材料必要な厚さ
鉄製の戸鉄板の厚さが1.5mm以上
鉄骨コンクリート・鉄筋コンクリート製の戸35mm以上
土蔵造の戸150mm以上
スチールシャッター1.5mm以上

防火設備としての防火扉

防火設備の防火扉とは、扉の片面で20分の遮炎性能を有する防火扉のことです。防火設備とは、火災時に火災の拡大を抑える設備のことを指し、告示に規定されているものや国土交通大臣認定を受けたものがあります。

防火設備の防火扉は、竪穴区画と一部の高層区画に設置されます。

一部の高層区画とは、100平米以内で区画された高層区画のことを指します。一方、竪穴区画の対象は、主要構造部が準耐火構造以上で、地階または3階以上の階に居室がある建築物になります。例えばメゾネット住宅、吹抜け、階段、エレベーター、パイプシャフトの部分です。

随時閉鎖式の場合には、感知方式が煙とされています。

防火設備の防火扉は扉の片面の遮炎性能が20分となります。
20分の遮炎性能を満たす防火扉の材料と厚さの関係は下表の通りです。

防火設備の防火扉の材料必要な厚さ
鉄製の戸鉄板の厚さが0.8以上1.5mm未満
鉄骨コンクリート・鉄筋コンクリート製の戸35mm未満
土蔵造の戸150mm未満
鉄と網入りガラスで作られた戸鉄板の厚さが0.8以上1.5mm未満

防火扉(防火戸)の設置基準

防火扉の設置基準について解説します。

外壁部

周囲で火災が発生した場合、延焼のおそれのある部分にある外壁部の開口部の防火設備には、両面20分の遮炎性能もしくは片面20分の準遮炎性能が求められます。
延焼のおそれのある部分とは、隣地境界線または道路中心線から1階においては3m以下、2階においては5m以下の距離にある部分が該当します。

また、耐火建築物もしくは準耐火建築物の外壁の開口部の防火設備には、両面に20分の遮炎性能が要求されます。耐火建築物とは、耐火構造で火災が終了するまで火熱に耐えられる、または建物の周囲で発生した火災に耐えられる建築物のことです。準耐火建築物とは、耐火建築物以外の建築物で、火災による延焼を抑制できるものを指します。

防火・準防火地域内で耐火要求のある延焼防止建築物の場合、物販用途では30分、その他の用途では20分の遮炎性能を持つ防火設備が求められます。

防火地域とは、大規模な商業施設等が密集し火災が大惨事につながりかねない地域において、建築物の構造を制限して防火機能を高めることを目的に都市計画で定められた地域のことです。準防火地域とは、防火地域に準じて火災が拡大しないことを目的に都市計画で定められた地域になります。延焼防止建築物とは、耐火建築物と同等性能を有する建物のことです。

さらに、外壁では防火区画を構成する壁や床と接する部分にも制限があります。防火区画の床が接する外壁の部分は、準耐火構造の90cm以上の腰壁をつくるか、50cm以上突き出した庇や床としなければならないとされています。その範囲に開口部を設ける場合は、防火設備とすることが必要です。

避難階段と特別避難階段

避難階段とは、5階以上の階か地下2階以下の階に通じる直通階段のことで、特別避難階段とは、15階以上の階か地下3階以下に通じる直通階段のことを指します。
直通階段とは、建築物の各階から地上もしくは避難階に直結する階段のことです。

高層階や地下等に通じる直通階段は、通常の階段と比べて避難時に階段に滞在する時間が長くなることから、内装の不燃化を図り、防火設備で延焼を防ぐ安全な区画とする必要があります。このように安全な区画とした直通階段が「避難階段」です。

避難階段の階段に通じる出入口は、常時閉鎖式または煙感知器連動自動閉鎖式の遮炎性能を持つ防火設備にする必要があります。

なお、5階以上の階や地下2階以下の階の床面積の合計がそれぞれ100平米以下で、主要構造部が不燃材料以上であれば屋外階段の設置は免除されます。

一方で、特別避難階段とは、消防隊の消火活動や避難時の人の滞留のためのバルコニーまたは付室(前室)を階段前に設けて、安全性をさらに高めた直通階段のことです。付室には、外気に向かって開くことができる窓または排煙設備を、延焼のおそれのある部分以外に設ける必要があります。

特別避難階段では、屋内から付室への出入口は特定防火設備、付室から階段室への出入口は防火設備にすることが必要です。どちらも常時閉鎖式または煙感知器連動自動閉鎖式の遮炎性能を要します。

地下街

地下街は避難経路が限られており、炎や煙も蔓延しやすいことから火災で甚大な被害が生じやすい場所とされています。

そのため地下街では、出口が火災により塞がってしまうのを防ぐために、各構え相互間および各構えと地下道との間に防火区画を設けることになっています。構えとは、地下街の店舗のことです。

地下街の防火区画は、耐火構造のある壁や床、特定防火設備の防火扉で区画されます。

防火扉(防火戸)が必要な地域に家を建てる際の注意点

防火扉が必要な地域に家を建てる際の注意点について解説します。

役所による確認が必要

建物を建てる際、建築規制の役所への確認は最終的に建築士が行うため、必ずしも自ら役所に確認する必要はありません。しかしながら、建築士から説明を受ける際、ある程度の知識を持っていた方が望ましいといえます。

耐火建築物にしなければならないケースとしては、「地域」の規制と「用途」の規制の2種類があります。

地域の規制とは、防火地域や準防火地域のことです。防火地域は中心市街地やターミナル駅周辺等の繁華性の高いエリアに指定され、準防火地域は防火地域の周辺に指定されることがよくあります。

防火地域では、3階以上か延床面積が100平米超の建築物は耐火建築物とすることが必要です。その他の建物は、準耐火建築物にする必要があります。

一方で、準防火地域では、4階以上か延床面積が1,500平米超の建築物は耐火建築物とすることが必要です。その他、延床面積が500平米超1,500平米以下で3階建ての建物は準耐火建築物にする必要があります。

また、用途の規制とは、特殊建築物のことです。特殊建築物とは、不特定多数の人が集まる施設や、宿泊・就寝を伴う施設のことを指します。例えば、3階以上の共同住宅(アパートや賃貸マンション)は、原則として耐火建築物としなければならない特殊建築物に該当します。

メンテナンスを行う

防火扉は竣工後、正常に作動させるために定期的にメンテナンスを行うことが必要です。防火扉のうち、随時閉鎖式の防火扉は年1回の法定点検もあります(常時閉鎖式は対象ではありません)。

また、防火扉の前は普段から物を置かないことも重要です。物が置いてあると、いざというときに開閉できない可能性があり、防火扉の意味がありません。

防火扉の前に荷物を置くと大惨事につながるケースがありますので、日ごろから開閉できるようにしておくことも注意点です。

この記事のポイント

防火扉の設置基準は?

周囲で火災が発生した場合、延焼のおそれのある部分にある外壁部の開口部の防火設備には、両面20分の遮炎性能もしくは片面20分の準遮炎性能が求められます。

延焼のおそれのある部分とは、隣地境界線または道路中心線から1階においては3m以下、2階においては5m以下の距離にある部分が該当します。

詳しくは「防火扉の設置基準」をご覧ください。

防火扉が必要な地域に家を建てる際の注意点は?

防火扉は竣工後、正常に作動させるために定期的にメンテナンスを行うことが必要です。

防火扉のうち、随時閉鎖式の防火扉は年1回の法定点検もあります(常時閉鎖式は対象ではありません)。

詳しくは「防火扉が必要な地域に家を建てる際の注意点」をご覧ください。

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