ざっくり要約!
- 鉄骨造の住宅の耐用年数は鉄骨の厚みが4ⅿⅿ超であれば34年、4ⅿⅿ以下の場合は27年
- 鉄骨造の住宅の耐用年数と実際の寿命は異なり、適切に手入れすることによって建物の寿命を伸ばすこともできる
鉄骨造などの住宅を購入もしくは建築する場合、「建物の寿命」について知りたいと思ったことはありませんか?
法定耐用年数は金融機関が融資する際の判断基準になることがありますが、「法定耐用年数=寿命」ではありません。法定耐用年数とは減価償却に使われるもので、建物の構造や用途によって異なります。
この記事では鉄骨造の耐用年数や寿命に関する考え方、事前に知っておきたい注意すべきポイントを解説します。建物耐用年数を超えても快適に暮らすコツも紹介しますので、鉄骨造の住宅を検討している方はぜひ参考にしてください。
記事サマリー
鉄骨造の耐用年数はどれくらい?
ここでは比較のために鉄骨造だけでなく、鉄骨鉄筋コンクリートや木造の耐用年数も紹介します。以下は国税庁が公表している法定耐用年数の抜粋です。
住宅と事務所でも耐用年数が違うことがわかります。「金属造」とあるのが鉄骨造ですが、鉄骨の厚みによって法定耐用年数は異なります。
鉄骨造の住宅の耐用年数は鉄骨の厚みが4ⅿⅿ超であれば34年、4ⅿⅿ以下の場合は27年です。
建物の構造 | 住宅の耐用年数 | 事務所などの耐用年数 |
---|---|---|
鉄骨鉄筋コンクリートもしくは鉄筋コンクリート造 | 47年 | 50年 |
金属造で鉄骨の厚さが4mm超 | 34年 | 38年 |
金属造で鉄骨の厚みが3mm超4mm以下 | 27年 | 30年 |
金属造で鉄骨の厚みが3mm以下 | 19年 | 22年 |
木造 | 22年 | 24年 |
軽量鉄骨プレハブ造 の場合
一般的に鉄骨の厚みが6mm未満場合 、軽量鉄骨プレハブ造と呼ばれます。鉄骨の厚みによって耐用年数が異なるため、軽量鉄骨であっても鉄骨の厚みが4mm超であれば、耐用年数は住宅の場合34年、鉄骨の厚みが4mm以下であれば27年になります。
軽量鉄骨は住宅や賃貸住宅でよく採用されている構造で、2~3階建ての低層住宅が中心です。その名前の通り軽量であることが特徴です。重量鉄骨と比べて材料費が安く、そのうえ短い工期で建築できるので、建築コストを安く抑えられるのがメリットです。
重量鉄骨造の方が耐震性は高くなりますが、軽量鉄骨造であっても構造が弱いということではありません。構造計算上、耐力が確保されているのであれば、特段心配はありません。
ちなみにプレパブとは工場で部材を大量に生産し、ある程度工場で組み立ててから現地で完成させる工法です。管理された工場で生産するため、品質が均一であり工期を大幅に短縮できるのがメリットです。コストパフォーマンスもよいため、多くのハウスメーカーで採用されています。
重量鉄骨造の場合
一般的に鉄骨の厚みが6mm超の場合、重量鉄骨造に区分されます。耐用年数は住宅の場合34年です。
重量鉄骨造は強度が高いことから、大規模なマンションや商業施設に採用されることが多い構造です。柱や梁が太いため、少ない柱でも大きな空間を作ることができます。
軽量鉄骨よりも材料費が高額で工期も長くかかるため、コストが高額になるのがデメリットといえます。また柱が太く壁が厚くなるため、比較的敷地が狭い個人住宅には向きません。実際、個人住宅に採用しているケースは少ないでしょう。
鉄骨造の耐用年数にまつわる注意点
鉄骨造の住宅を購入または建築する前に、知っておきたいポイントや注意点を紹介します。
耐用年数と実際の建物の寿命は異なる
法定耐用年数とは固定資産の減価償却に使われる年数であって、実際の建物の寿命とは異なります。
減価償却とは固定資産取得にかかった費用を、購入した期ですべて計上することはできず、耐用年数に応じて分割して計上する会計処理です。
減価償却では土地は年数によって価値は目減りしませんが、建物は時間とともにその資産価値が減少すると考えます。つまり法定耐用年数が過ぎると、税務上は資産価値がなくなります。
したがって税制上は資産価値がないからといって、住めないということではありません。建物には定期的なメンテナンスが必要ですが、適切に手入れすることによって建物の寿命を伸ばすことができます。
耐用年数が住宅ローン可否にかかわることも
法定耐用年数は固定資産の減価償却に使われるものですが、住宅ローンの可否や最長返済期間を判断するときにも利用されます。
つまり住宅ローンの担保評価として建物に資産価値があるのか、あるとすればいくらなのか判断する時に使われます。
住宅ローンは借入する人の収入や年齢も審査するため、法定耐用年数だけでは判断されませんが、影響する可能性は十分あるでしょう。
築年数が古く、法定耐用年数を超えている中古住宅の購入を検討する場合は、事前に金融機関に相談しておくことをおすすめします。また審査基準は金融機関によっても異なりますので、複数の金融機関に相談してみるという方法もあります。
耐用年数は減価償却の計算に使われる
法定耐用年数とは、固定資産の減価償却に使われる年数です。個人が減価償却費を計算するのは確定申告で譲渡所得を計算するときです。
譲渡所得から取得費を差し引いて計算しますが、建物の取得費は所有期間中の減価償却費相当額を差し引くことになります。
戸建ての減価償却費の計算方法は以下の通りです。
3,000万円の鉄骨造(鉄骨の厚みが4mm超)の建物の場合を計算してみます。この場合土地の代金は償却しないので含めません。
建物の構造 | 耐用年数(法定耐用年数の1.5倍) | 償却率 |
---|---|---|
鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造 | 70年 | 0.015 |
金属造(鉄骨の厚みが4mm超) | 51年 | 0.020 |
金属造(鉄骨の厚みが3mm超4mm以下) | 40年 | 0.025 |
金属造(鉄骨の厚みが3mm以下) | 28年 | 0.036 |
木造 | 33年 | 0.031 |
減価償却費=取得価格×定額法の償却率
3,000万円×0.020=60万円
毎年60万円ずつ価値が下がり、耐用年数(法定年数の1.5倍)の51年後にはゼロになります。
出典:「減価償却費」の計算について|国税庁 (nta.go.jp)
No.3252 取得費となるもの|国税庁 (nta.go.jp)
鉄骨造の耐用年数を超えても快適に暮らすためのコツ
鉄骨造の建物の耐用年数を超えても、快適に暮らすためにはどのようなことに気をつけたらいいのでしょうか。ここでは2つのポイントを紹介します。
メンテナンスを適切に行う
鉄筋コンクリート造のマンションでは、10~13年おきに大規模修繕工事を予定していることが多く、不具合が出る前に防水工事などを行います。
これは劣化を未然に防ぐことによって、建物の寿命は延ばせると考えられているからであり、適切にメンテナンスを行えばマンションは100年以上持つともいわれています。
国土交通省の資料によると、鉄筋コンクリート造の耐用年数は120年、外装工事を行うことで150年になるとの報告もあります。
メンテナンスによって寿命を延ばすことができるのは、鉄筋コンクリート造に限った話ではなく、鉄骨造のマンションや建物も同様です。
躯体が鉄骨造で丈夫な構造であったとしても、屋根の防水層や外壁の目地部分の小さな亀裂などから雨漏りする可能性があり、メンテナンスをせずに放置すれば結果として建物の寿命を縮めることにもなりかねません。
また設備などのわかりやすい故障と異なり、気づかぬうちに劣化が進行してしまう可能性があり注意が必要です。
多くの鉄骨造系のハウスメーカーには、定期点検やメンテナンスを受けることを条件に保証期間を延長する保証制度が用意されており、なかには最長60年まで延長可能なケースもあります。
こういったことからも、定期的な点検やメンテナンスによって建物の寿命を延ばすことができることがわかります。
有償点検や、ハウスメーカーが提案する補修工事をすることが条件であったとしても、定期的なメンテナンスによって建物の劣化を未然に防ぐことができれば、長い目で見ると改修費用を軽減できる可能性があります。
快適かつ安心して暮らすためにも、定期的な点検やメンテナンスを受けることをおすすめします。
出典:期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について|国土交通省
家を建てる前に地盤も確認しておく
家を新築するときには地盤調査が必要になります。地盤が軟弱である場合は、その度合いに応じて地盤改良が必要になるためです。また建て替え時にも地盤調査は必要になります。
建物のメンテナンスが十分であっても、軟弱な地盤だと地盤沈下を起こしかねません。最悪の場合、住めなくなることもあります。
地盤沈下すると家は傾き、建具が開かなくなることがあり、傾きの度合いによっては住む人の身体にも影響する可能性があります。
地盤調査はその土地の広さや方法によっても異なりますが、一般的なスウェーデン式サウンディング試験の場合は半日から1日で調査することができます。
地盤調査の費用はスウェーデン式サウンディング試験であれば5万円程度、ボーリング調査の場合は30万円前後です。調査の結果、地盤改良が必要になった場合は、方法や度合いによっても異なりますが50~100万円追加でかかる可能性があります。
建物を建てる地域の特徴を知る
たとえば海に近いエリアに建物を建築する場合は、塩害対策が必要になります。具体的には海岸から2㎞以内の地域です。
塩害とは潮風に含まれた塩が原因となる、建物や車などに起きるトラブルです。一般的な地域よりも金属系の素材が錆びやすく、外壁などの塗装面が剥がれやすくなります。
対策としては塩害に強い建材(ガルバ二ウムや樹脂サイディング)を採用し、こまめな水洗いなど清掃を心がけることです。また外壁や屋根の改修は、他の地域よりも早い周期で行う必要があるでしょう。
一般的に外壁塗装などのメンテナンスは10年に一度行う必要があるといわれていますが、塩害地域の場合は7~8年に一度を目安にしましょう。
この記事のポイント
- 鉄骨造の耐用年数はどれくらいですか?
鉄骨造の住宅の耐用年数は鉄骨の厚みが4ⅿⅿ超であれば34年、4ⅿⅿ以下の場合は27年です。
鉄骨の厚みによって法定耐用年数は異なります。
詳しくは「鉄骨造の耐用年数はどれくらい?」をご覧ください。
- 鉄骨造の耐用年数にまつわる注意点は?
耐用年数と実際の建物の寿命は異なる点、耐用年数が住宅ローン可否にかかわることもある点に注意が必要です。
詳しくは「鉄骨造の耐用年数にまつわる注意点」をご覧ください。
査定は手間がかかりそう。そんな人にはAI査定!
ご所有不動産(マンション・一戸建て・土地)を登録するだけでAIが査定価格を瞬時に算出いたします
スピードAI査定をしてみる