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木造住宅の耐用年数は33年?減価償却や査定との関連を解説

執筆者プロフィール

桜木 理恵
資格情報: Webライター、宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、管理業務主任者

大学在学中に宅地建物取引士に合格。新卒で大手不動産会社に入社し、売買仲介営業担当として約8年勤務。結婚・出産を機に大手ハウスメーカーのリフォームアドバイザーに転身し約5年勤務。その他信託銀行にて不動産事務として勤務経験あり。現在は不動産の知識と経験を活かし、フリーランスのWebライターとして活動。不動産や建築にまつわる記事を多数執筆。「宅地建物取引士」「2級ファイナンシャル・プランニング技能士」「管理業務主任者」所持。

ざっくり要約!

  • 木造の耐用年数は法定耐用年数、物理的耐用年数、経済的耐用年数の3つに分けられる
  • 木造の法定耐用年数を超えても、定期的にメンテナンスを施すことで快適に暮らせる

木造住宅を評価するときに耐用年数を1つの基準にすることがありますが、耐用年数は不動産の寿命を表すものではありません。

不動産の寿命はメンテナンス次第で長くなるため、耐用年数を超えていたとしても建物の状態によっては高く評価されることもあります。

この記事では耐用年数に対する考え方や木造住宅の評価方法、木造住宅が法定耐用年数である22年を超えたときの対処法を紹介します。

このまま耐用年数を超えた木造住宅に住み続けるべきか、また売却を検討したときに売れるのかなど、不安を抱えている方はぜひ参考にしてください。

木造住宅の耐用年数とは?

不動産の耐用年数に対する考え方は、1つではありません。おもに耐用年数と呼ばれるものは3種類あります。

それぞれ詳しく紹介します。

  • 法定耐用年数
  • 物理的耐用年数
  • 経済的耐用年数

法定耐用年数

法定耐用年数とは、固定資産の減価償却費を計算するときに使われるものです。建物の構造や用途ごとに、国によって細かく定められています。

法定耐用年数として定められた期間において、不動産を取得するときにかかった費用を減価償却費として計上することができます。

法定耐用年数とは、あくまでも税務上の不動産の価値が認められた年数です。したがってその年数を超えたとしても、メンテナンス次第で長く住むことはできます。

木造住宅の法定耐用年数は22年ですが、同じ木造の建物であっても事務所として利用している場合は24年になります。

以下の表は、おもな減価償却資産の耐用年数の抜粋です。

構造用途耐用年数
木造 住宅 22年
事務所 24年
鉄骨鉄筋コンクリート・鉄筋コンクリート造 住宅 47年
事務所 50年
鉄骨造(骨格材4ⅿm超) 住宅 34年
事務所 38年
鉄骨造(骨格材3ⅿm超4ⅿⅿ以下) 住宅 27年
事務所 30年
鉄骨造(骨格材3ⅿm以下) 住宅 19年
事務所 22年

引用:耐用年数(建物/建物附属設備)|国税庁

物理的耐用年数

物理的耐用年数とは、その名前の通り物理的な耐用年数で、その建物が使用できなくなるまでの期間をいいます。建物の寿命と言い換えることもできるでしょう。

土地は年数が経っても劣化することはありませんが、建物はメンテナンスをしていても劣化します。

劣化具合によっては倒壊する恐れがあり住むことができなくなるため、その居住できるまでの期間が物理的耐用年数になります。

災害や突発的な事象により、途中で物理的耐用年数は短くなることもあるため、変動しやすいのが特徴です。もちろん建物をメンテナンスすることによって、物理的耐用年数を伸ばすこともできます。

経済的耐用年数

経済的耐用年数とは、その建物の経済的な市場価値がある期間のことで、建物を新築したときから資産価値がゼロになるまでの期間です。

経済的残存耐用年数という見方もしますが、現時点から経済的な価値がなくなるまでの期間を意味します。つまり「経済的耐用年数=経過年数+経済的残存耐用年数」になります。

経済的耐用年数も、居住者の住まい方やメンテナンスの有無によってその年数は変化します。

耐用年数と耐久年数の違い

耐用年数と耐久年数は似た言葉ですが、意味は異なります。耐用年数とは、一般的に減価償却費を計算するときに使われる法定耐用年数を意味します。

建物の使用や劣化具合に関係なく、構造や用途によって一律に定められている期間です。

一方、耐久年数とはハウスメーカーなどが建物の問題なく使用できる期間として独自に公表しているものです。

従ってその期間を越えて使用できることもありますが、状況によってはその期間を下回る恐れもあります。耐久年数は住む人によっても異なりますので、目安程度にとどめておきましょう。

木造住宅の耐用年数と実際の寿命は違う?

木造住宅の法定耐用年数と実際の寿命は異なります。耐用年数を超えていても、メンテナンス次第で建物の寿命は延ばすこともでき、法定耐用年数を大きく超える中古物件も、問題なく売却することは可能です。

メンテナンスは資産価値にも影響しますので、建物の築年数や状態に応じて補修や改修をおすすめします。

耐用年数=不動産の寿命ではない

建物は法定耐用年数を超えても、定期的にメンテナンスを施すことによって快適に暮らすことは可能です。例えば江戸時代に建てられたような古民家であっても、その建物の状況に応じたメンテナンスを加えることで、現在でも快適に暮らしている事例はたくさんあります。

例えば古民家を再生した事例などをテレビなどで目にしたことがあるのではないでしょうか。極端な例ですが、重要文化財に指定されているような古い木造建築物も、定期的に修復を重ねることによってその寿命を延ばしています。

耐用年数=不動産の寿命でないことは、そうした古民家再生事例や、重要文化財が1000年を超えても保存されている実例などからもわかります。

また、東日本不動産流通機構(レインズ)が公表したデータによると、2022年の中古住宅の成約事例の平均築年数は21.31年です。築31年超の中古住宅は、成約物件全体の24%を越えます。

加えて、レインズに登録されている中古戸建住宅のうち、築30年を超える戸建の割合は年々増加傾向にあり、1992~2002年は全体の6%程度でしたが、2008~2013年には24%を占めるようになりました。

建物の性能向上などにより、築年数が古い木造住宅も多く流通していることがわかります。

引用:築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)|公益財団法人 東日本不動産流通機構

メンテナンス次第で寿命は伸びる

木造住宅は法定耐用年数を超えても、定期的な点検と状況に応じたメンテナンスを行うことによって、快適に暮らし続けることができます。

例えば雨漏りや漏水は建物を劣化させるので、気づかないうちに劣化が進行してしまうことがあります。定期的な点検と状況に応じたメンテナンスをして建物の寿命を延ばすようにしましょう。

木造住宅の耐用年数にかかわる3つの項目

木造住宅を評価するときに耐用年数が使われるのはどのようなときなのでしょうか。ここでは、以下の木造住宅の耐用年数にかかわる3つの項目を紹介します。

  • 減価償却の計算
  • 住宅ローンの審査
  • 売却時の査定

減価償却の計算

個人が法定耐用年数を使って何かを計算するタイミングとは、不動産を売却した翌年に行う確定申告のときです。具体的には減価償却の計算をします。

不動産を売却して譲渡所得(利益)が発生したときは、譲渡所得税がかかります。その譲渡所得を計算するときに、建物の所有期間に応じた減価償却費相当額を計算して、取得費から差し引く必要があります。

譲渡所得を算出する計算式は以下の通りです。算出した譲渡所得金額に所有期間に応じた税率を乗じて計算します。

譲渡所得金額=譲渡所得(利益)-(取得費+譲渡費用)

ちなみに不動産を購入したときの金額がわからず、正確な取得費が計算できないときは、売却代金の5%を取得費として計算できます。また上記計算式で計算した金額よりも、取得費を5%とした方が高いときも、5%とすることができます。

出典:
No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき) |国税庁
No.3252 取得費となるもの|国税庁
No.3258 取得費が分からないとき|国税庁

住宅ローンの審査

法定耐用年数は、固定資産の減価償却費を計算するときに使うものですが、金融機関が住宅ローンの審査をするときにも利用されます。

住宅ローンは借り入れする人の収入や年齢だけでなく、抵当権を設定する不動産の担保評価を試算する必要があり、その判断に使われます。

耐用年数を大きく超えている木造住宅を購入する場合は担保評価が低くなるため、希望する金額や年数の住宅ローンを組めない可能性もあります。

住宅ローンの審査基準は金融機関によって異なりますので、複数の金融機関に相談しておくことをおすすめします。

売却時の査定

不動産の査定額を出す方法はおもに3つありますが、中古住宅の建物部分の査定をするときに使われるのは原価法です。

現在の建物と同じ建物を建てたときにかかる費用を計算し、その価格から建物が老朽した分を差し引いて(減価修正して)査定額を出す方法です。この計算をするときに耐用年数を利用します。

積算価格=建築費の単価×延べ床面積×残存年数(耐用年数-築年数)/耐用年数

例えば築10年の木造住宅で、㎡単価が15万円、延べ床面積が100㎡の場合、以下のように計算します。(木造住宅の耐用年数は22年)

再建築する場合の建築費:15万円×100万円=1,500万円
残存年数÷耐用年数=12年÷22年=0.545
1,500万円×約0.55=825万円

積算価格は825万円になります。

木造住宅の耐用年数を超えた場合の対処法

木造住宅が耐用年数を超えた場合、対処法としてはリフォームをして住み続けるか、費用はかけずにそのまま売却する、もしくは貸家として貸し出す方法が考えられます。それぞれのメリットや注意点を解説します。

リフォームする

耐用年数を超えた木造住宅であっても、リフォームすることによって快適な暮らしを手に入れることができる可能性があります。比較的予算がかかるリノベーションをした場合でも、建て替えるよりも低予算で実現できるのがメリットです。

また生活環境が変わらないため、子どもの学区や通勤時間を気にする必要はありません。買い替えなどに比べて、ハードルが低いこともプラス要因でしょう。

一方でリフォームやリノベーションをして見た目は新しくなっても、築年数は変わりません。ある程度住んだ後に売却する場合、リフォームに多額の費用をかけたとしても、築年数が影響して売りづらい可能性はあります。

リフォームは住みながら行うことが多く、工事中は砂埃や人の出入りがあることをストレスに感じる人もいます。大規模なリフォームやリノベーションであれば、仮住まいが必要になり、その費用がかかる可能性があります。施工会社とよく相談した上で、計画を立てましょう。

売却する

売却して新しい住宅を購入する場合、現在のライフスタイルに合った住宅を手に入れることができるのがメリットです。生活環境を変えたい場合も、売却をおすすめします。

中古住宅の補修や改修に多額の費用がかかることが想定される場合でも、基本的にはリフォームをする必要はありません。そのままの状態で売却することができます。

住宅ローンが完済している場合は、新居購入に住宅ローンを利用することができ、自宅売却代金で繰り上げ返済も可能でしょう。

中古住宅に不具合や欠陥がある場合は買い手に説明し、納得した上で購入してもらうようにします。契約に定めた内容と異なる状態であることが引渡し後に判明すると、契約不適合責任を請求される恐れがあるからです。

賃貸に出す

住まなくなった中古住宅を手放さず、貸家として貸し出す方法があります。資産として残すことができ、賃貸収入を得ることができるのがメリットです。

しかし貸し出す場合は、ある程度費用をかけてリフォームする必要があります。また設備の故障や不具合が生じた場合は、その都度修理費用がかかります。

なお、入居者が決まらない場合は、賃貸収入を得ることはできません。賃貸するのに適した立地や環境であるのかの判断が必要になります。

そういった意味でも、賃貸に出すというよりは売却の方が、リフォームや解体等の手間をかけずに早期現金化を見込めます。マンションとは異なり賃借人も見つけにくい傾向があるので、将来自身が住む予定があるわけでないならば、売却を検討することもオススメです。

この記事のポイント

木造住宅の耐用年数と実際の寿命は違う?

法定耐用年数を超えても、定期的にメンテナンスを施すことによって快適に暮らすことは可能です。

例えば江戸時代に建てられたような古民家であっても、その建物の状況に応じたメンテナンスを加えることで、現在でも快適に暮らしている事例はたくさんあります。

詳しくは「木造住宅の耐用年数と実際の寿命は違う?」をご覧ください。

木造住宅の耐用年数はどんなシーンで活用される?

木造住宅の耐用年数は、不動産を売却した翌年に行う確定申告時の減価償却の計算、住宅ローンの審査、売却時の査定などで必要になります。

詳しくは「木造住宅の耐用年数にかかわる3つの項目」をご覧ください。

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