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耐震等級は1・2・3でどれくらい違う?メリットや調べ方を紹介

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 基本となる耐震等級は1、2、3の3つで、耐震等級1は建築基準法の最低基準を満たした新耐震基準の建物
  • 基本的に耐震性能は耐震等級1で十分なので、無理に耐震等級3まで求める必要はない

建物の耐震性を示す用語には、いくつか種類があります。
旧耐震基準や新耐震基準の他に、免震構造や制振構造、耐震構造といった種類も存在します。
耐震等級も、耐震性を示す用語の一つです。

耐震等級は、住宅ローンのフラット35や地震保険において割引の基準となる指標であることから、気になっている人も多いと思います。
耐震等級とは、一体どのような指標なのでしょうか。
この記事では「耐震等級」について解説します。

耐震等級とは

耐震等級とは、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)で規定された評価方法により評価された建物の耐震性を表す指標のことです。
品確法は、2000年(平成12年)より施行された比較的新しい法律となります。

法律が制定される以前は、住宅の性能を客観的に示す基準が存在しなかったため、住宅購入者が客観的に良い住宅かどうかの見極めがしにくいという問題が存在しました。

そこで、品確法では住宅性能表示制度という制度を設け、住宅購入者が客観的に住宅の性能を知ることができる仕組みを作ったのです。

住宅性能表示制度では、建物の構造の安定性や音環境、エネルギー消費量、防犯、高齢者への配慮等のさまざまな性能(大きく分けて10項目)を評価します。
耐震等級は、住宅性能表示制度の中にある評価指標の一つです。

住宅性能表示制度の中には、耐震等級の他に、耐火等級や高齢者等配慮対策等級、断熱等性能等級といったさまざまな等級が存在します。

耐震等級を知るには、住宅性能評価書を取得することが必要です。
耐震等級は、住宅性能評価書の中に記載されています。

品確法では住宅性能評価書の取得は任意(自由)となっており、建築主が費用をかけて取得しないと分からないということになります。
住宅性能評価書を取得するには、国土交通省に登録されている「登録住宅性能評価機関」に依頼することが必要です。

住宅の耐震性能を示す指標

耐震等級は、住宅性能評価書のうち、「構造の安定」に関する評価項目の一つです。
構造の安定には耐震等級の他、耐風等級や耐積雪等級といった項目も存在します。

耐震等級は、倒壊防止と損傷防止の2種類に分かれます。
倒壊防止とは、震度6強から7の揺れに対する倒壊のしにくさを表す指標です。
損傷防止とは、震度5強の揺れに対する損傷の生じにくさを表す指標になります。

倒壊防止と損傷防止では、倒壊防止の方が重要です。
住宅性能表示制度では、住宅性能評価書の取得者の負担を和らげるために、評価する項目に必須項目と選択項目の2種類を設けています。

耐震等級は倒壊防止が必須項目で、損傷防止が選択項目です。
住宅ローンのフラット35や地震保険において割引の基準となっているのは、倒壊防止の耐震等級となります。

耐震等級の種類

耐震等級には0、1、2、3の4種類が存在します。
基本となる耐震等級は1、2、3の3つです。
耐震等級0というのは、現行の耐震基準(新耐震基準)を満たしていない建物の耐震等級のことを指します。

建物の耐震基準は、建築基準法の改正により1981年(昭和56年)6月1日を境に大きく変わりました。

新耐震基準とは、1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認申請を通過した建物のことです。
旧耐震基準とは、1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認申請を通過した建物になります。あくまで建築確認申請を通過した日時であって、建物の竣工日ではないので注意してください。

住宅性能表示制度を設けた品確法は2000年に施行された法律であることから、住宅性能表示制度ができた以降に建てられた建物は当然に新耐震基準を満たしています。

耐震等級1というのは、建築基準法の最低基準を満たした新耐震基準の建物です。

一方で、現在でも1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認申請を通過した旧耐震基準の建物は存在します。

1981年当時は住宅性能表示制度といったものは想定されていませんので、「1、2、3」で表される基本的な耐震等級からは除外される等級です。
そのため、旧耐震基準の建物の耐震等級は、「0」で示されることとなっています。

倒壊防止の耐震等級1、2、3の特徴を表すと、下表の通りです。

等級耐力の表現内容
耐震等級1建築基準法の最低基準震度6強から7程度の地震に対して倒壊や崩壊がしない。
耐震等級2等級1の1.25倍等級1の地震力の1.25倍の力に対して倒壊や崩壊がしない。
耐震等級3等級1の1.5倍等級1の地震力の1.5倍の力に対して倒壊や崩壊がしない。

なお、倒壊防止とは、建物の構造躯体は損傷を受けても人命が損なわれるような壊れ方をしないことを指します。
絶対に倒壊しないというわけではありません。

震度7の地震が発生した場合、建物が倒壊する確率は等級1で28%、等級2で7.9%、等級3で3.5%とされています。

耐震等級1

耐震等級1というのは、建築基準法の最低基準を満たした耐震性能であるということです。
よく勘違いされますが、耐震等級1だからといって決して耐震性が低いわけではありません。

新耐震基準は満たしており、耐震等級1であっても十分な耐震性を備えていることから、安心して生活できる建物となっています。

耐震等級2

耐震等級2は、等級1の1.25倍の地震力に対して耐えられる建物のことです。
新耐震基準よりも高い耐震性能を有しており、学校や避難所等の公共建築物を建てる場合は耐震等級2が求められる傾向があります。

なお、長期優良住宅は、耐震等級2の建物に相当します。
長期優良住宅とは、「長期に渡り良好な状態で使用するための措置が講じられた住宅」のことです。

耐震等級3

耐震等級3は、等級1の1.5倍の地震力に対して耐えられる建物のことです。
極めて高い耐震性を有した建物であり、消防署や警察署といった災害復興の拠点となる防災施設を建てる場合は耐震等級3が求められることもあります。

耐震等級の調べ方

耐震等級の調べ方について解説します。

住宅性能評価書を確認する

耐震等級とは、住宅性能評価書の中に記載されている評価項目の一つです。
住宅性能評価書を取得している場合には、中身を確認してみましょう。

既存住宅性能評価を実施する

新築時に住宅性能評価書を取得していない場合には、新たに住宅性能評価書を取得することが必要です。
竣工後に行う住宅性能評価は、既存住宅性能評価と呼ばれます。

耐震等級が高い住宅のメリット

耐震等級が高い住宅のメリットについて解説します。

災害時のダメージを抑えられる

耐震等級が高い住宅は、災害時のダメージを抑えられる点がメリットです。
例えば、数百年に一度の地震が発生した場合、一般の住宅で建物が傾くような被害が発生するケースでも、ひび割れ程度で済むといったこともあります。

住宅ローンの金利優遇を受けられる

高い耐震等級の住宅では、フラット35の適用金利が安くなるというメリットがあります。
フラット35とは、住宅金融支援機構が行う買取型の証券化支援事業を活用した民間金融機関の長期固定金利の住宅ローンのことです。

フラット35には、一定期間金利を0.25%引き下げる「フラット35S」という商品があります。
さらにフラット35Sには金利Aプランと金利Bプランがあり、耐震等級との関係を示すと、下表の通りです。

フラット35S耐震等級割引内容
金利Aプラン耐震等級3当初10年間0.25%引き下げ
金利Bプラン耐震等級2以上
免震建築物
当初5年間0.25%引き下げ

出典:【フラット35】S|住宅金融支援機構

金利Bプランにある免震建築物とは、地面と建築物の間に免震装置を入れて建物に伝わる揺れを減らす構造のことです。
耐震等級とは異なる概念の耐震性能を表す指標となります。

なお、フラット35Sを利用できるかどうかは耐震等級だけで決まるわけではありません。
他にも断熱等性能等級や高齢者等配慮対策等級といった指標で一定基準以上を満たすことが必要となります。

地震保険の割引率が高くなる

耐震等級の高い建物は、地震保険でも割引を受けることができる点がメリットです。
耐震等級と地震保険の割引率を示すと、下表のようになります。

耐震等級割引率 
 110%
 230%
 350%

耐震等級1だと10%の割引がありますが、実は耐震等級1ではなくても新耐震基準の建物であれば、地震保険は10%割り引かれます。
つまり、地震保険でも耐震等級1は、建築基準法の最低限の基準を満たした建物と同等の扱いにしているということです。

耐震等級が高い住宅のデメリット

耐震等級が高い住宅のデメリットについて解説します。

間取りが限られる場合がある

耐震等級の高い建物は、間取りに制限を受けることもあります。
建物の耐力を上げるため、構造上、位置を動かせない壁が発生することもあり、設計の自由度が下がることも多いです。

建築コストが高くなりやすい

耐震性を高めることで、建築コストは高くなりやすいです。
地震に耐える力を増すために、柱や梁(柱と柱を繋ぐ横架材)を太くしたり、壁を厚くしたりする必要があります。
建築費のうち、躯体部分の材料費が増えることから、建築コストが高くなりやすいです。

マンションの場合は耐震等級1がほとんど

マンションは耐震等級1の建物が多いです。
ただし、マンションは免震建築物となっている建物もあり、高い耐震性を有する物件が少ないわけではありません。
免震建築物であれば、地震保険は50%の割引が適用されます。

耐震等級に関するQ&A

耐震等級に関するQ&Aについて解説します。

耐震等級3にして後悔することがある?

一般の住宅で耐震等級3にするのは、若干、過剰な性能である印象はあります。
基本的には耐震性能は耐震等級1で十分ですので、無理に耐震等級3まで求める必要はありません。

コストもかかり、場合によっては間取りに制約が発生することもあるため、バランス感覚をもって選択するのが望ましいといえます。

耐震等級3の証明書には何がある?

耐震等級3の証明書は、基本的には既存住宅性能評価書です。
住宅性能評価書には、設計段階の図面で評価を受ける設計住宅性能評価書と現場による検査を経た段階で評価を受ける建設住宅性能評価書の2種類があります。
証明書として求められるのは、既存住宅性能評価書であることが多いです。

耐震等級2から耐震等級3にしたい場合、どのくらいの費用がかかる?

耐震等級2から耐震等級3にグレードアップする場合、工事費は5~10%程度上がる印象です。
延べ床面積が30坪程度の建物であれば、200万円前後の工事費が上がるイメージとなります。
また、建設住宅性能評価書を取得するには、20万円程度の費用が発生します。

この記事のポイント

耐震等級の種類は?

耐震等級には0、1、2、3の4種類が存在します。基本となる耐震等級は1、2、3の3つです。

震度7の地震が発生した場合、建物が倒壊する確率は等級1で28%、等級2で7.9%、等級3で3.5%とされています。

詳しくは「耐震等級の種類」をご覧ください。

耐震等級が高い住宅のメリットは?

耐震等級が高い住宅には、災害時のダメージを抑えられる、住宅ローンの金利優遇を受けられる、地震保険の割引率が高くなるといったメリットがあります。

詳しくは「耐震等級が高い住宅のメリット」をご覧ください。

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