ざっくり要約!
- ALCとは軽量気泡コンクリートのことで、ALCパネルを外壁材として使用している場合にALC造と表記される
- ALC造は耐火性・防火性、断熱性、防音性が高いといったメリットがある
建物の構造を見ていると、木造やRC造、SRC造のほかに「ALC造」と表記されている建物があります。
ALCとは軽量気泡コンクリートのことで、通常外壁材や床材として使われる建材です。本来は構造を表すものではありません。ALCパネルを外壁材として使用している建物を、一般的にALC造と呼んでいます。
この記事では、ALC造の特徴やメリット、デメリットを解説します。他の構造との違いや、ALC造の住宅に住む場合の注意点も紹介しますので、新築や住み替えを検討している方はぜひ参考にしてください。
記事サマリー
ALC造とは?
ALCとは、軽量気泡コンクリートのことです。厳密には建物の構造を表すものではありません。通常は、ALCパネルを外壁材として使用していることを表現するために、ALC造と表記されることが多いようです。
一般的に、ALC造と呼ばれる建物構造について説明します。
軽量気泡コンクリート製の壁材を使った建物構造
ALCとは「Autoclaved Lightweight aerated Concrete」の略で、セメントや珪石、石灰などを主原料として、高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリートのことをいいます。
ALCを補強材で補強し、成形したものを「ALCパネル」といい、その多くは建材として使用されています。
つまりALC造と呼ばれている建物は、構造自体がALCというわけではありません。骨組みは鉄骨造もしくは木造であることが多く、ALCパネルを外壁材や床材、間仕切り壁として使用している建物のことを、一般的にALC造と呼んでいます。
したがって木造の建物に、ALCパネルを外壁として利用するケースもあります。
ALC造のメリット
ALC造の特徴ともいえるメリットを、4つ紹介します。
耐火性・防火性が高い
ALCの主原料は、不燃材料であるセメントや珪石、石灰などです。そのため耐火性・防火性に優れており、万が一火災が起きたとしても、発火しにくいのが特徴です。また仮に燃えたとしても、基本的には煙や有毒ガスが発生する素材ではないため安心です。
無数の気泡が熱の伝達を抑えるため、都心部などの住宅密集地の防災対策として有効です。
断熱性が高い
ALCには無数の気泡があり、その1つ1つの空気層が熱の伝達を防ぎます。したがって、比較的断熱性が高いのが魅力です。
コンクリートの約10倍の断熱性能があるとの試算もあります。そのため暑い夏や寒い冬でも室温を一定に保ちやすく、光熱費を抑えるのに役立ちます。
防音性が高い
ALCは多孔性のコンクリートで、音を伝えにくい性質を持っており、遮音性に優れています。
そのため外壁材としてだけでなく、床材としても活用されており、足音などの振動音を軽減することができます。
しかし防音室のように、消音できるわけではありません、ALCパネルを採用したとしても、近隣への配慮は必要です。
建物が歪むリスクや地盤への負担が少ない
ALCには、強度が強く安定した鉱物である、トバモライトという結晶が豊富に含まれています。そのため化学変化を起こしにくく、乾燥収縮や熱膨張が小さいのが特徴です。
ゆえに温度差や乾燥によってひび割れたり、反ったりしにくい特性をもっており、建物の歪みを最小限に抑えることができます。
また鉄筋コンクリート造に比べて軽量であるため、地盤に対する負担を軽減できます。したがって、比較的軟弱な地盤でも建築することができますが、実際には建築地の地盤調査をして判断することになります。
ALC造のデメリット
メリットが多いALC造ですが、デメリットもあります。ここでは代表的なデメリットを紹介します。
水に弱い
ALCは気泡が多くあるため吸水性が高く、雨水が侵入しやすい特徴をもっています。万が一、建物の構造内部まで水分が浸み込んでしまうと、鉄骨を腐食させてしまう恐れがあり、鉄骨など骨組みの劣化を早めることになります。
また環境によってはカビの発生原因にもなり、とくに寒冷地では外壁に吸収された水分が凍結することで外壁がひび割れてしまうこともあります。
水の浸食を防ぐためには、防水塗装などの仕上げが必要です。しかし塗装した被膜も経年により劣化し、防水性は低下します。定期的な点検と早めの塗装工事を心がけましょう。
建築コストが高くなりがち
ALCを外壁として使用する場合、一般的なサイディングと比較すると、建築コストは高くなる傾向があります。
ALCは施工後に塗装が必要になるため、現場での作業工程が多くなり、その分コストも高くなります。また現場での塗装は天候に左右されるため、施工に手間がかかります。
その点、サイディングは工場で塗装済みのものが多いため、現場での施工がしやすく、コストも比較的安価です。
ALC造とそのほかの構造の違い
一般的にALC造といわれる構造と、そのほかの構造には、どのような違いがあるのでしょうか。それぞれ比較しながら解説します。
ALC造 | RC造 | SRC造 | 鉄骨造 | |
---|---|---|---|---|
構造・工法 | 外壁がALC 骨組みは鉄骨造や木造 | 鉄筋コンクリート造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 | 鉄骨造 |
向いている建物 | 個人の住宅や小規模な賃貸住宅 | マンション | タワーマンションや構造ビル | 個人の住宅や小規模な賃貸住宅 |
コスト | 比較的低い | 高い | かなり高い | 低い |
工期 | 比較的短期間 | 長期間 | かなり長期間 | 短期間 |
ALC造とRC造の違い
RC造とは「Reinforced Concrete Construction」の略で、鉄筋によって補強されたコンクリートを意味します。一般的に鉄筋コンクリート造とも呼ばれています。
引っ張りに強く圧縮に弱い鉄筋と、圧縮に強く引っ張り弱いコンクリートを一体化することにより、強度と耐久性を高めた構造です。ALC造に比べると強度が強く、デザインの自由度も高くなるため、マンションに適した構造といえます。
一方でALC造よりもRC造は重量が重いため、地盤への負担が大きいことがデメリットです。軟弱な地盤に建築する場合は、地盤改良など何らかの対策が必要になります。
ALC造とSRC造の違い
SRC造とは「Steel Reinforced Concrete Construction」の略で、RC造に鉄骨を加えた構造です。一般的に鉄骨鉄筋コンクリート造とも呼ばれています。
RC造に鉄骨を加えることで、より強度の高い建物にすることができます。鉄骨の軸組み構造をプラスすることで揺れを分散できるため、地震に対しても強い構造となります。
強度が強く耐震性・耐火性が高いため、タワーマンションや高層ビルの建設に向いています。柱と柱の間隔を広くすることができるため、広い空間を作ることができるのも魅力です。しかし鉄骨を使うことから、RC造に比べるとデザインに多少制約が生まれます。
工期が長く建築コストも高くなるため、小規模な住宅には向いていません。その点ALCは比較的短い工期で建設でき、コストも抑えることができます。
ALC造と鉄骨造の違い
骨組みが鉄骨造であれば、ALC造と鉄骨造の違いは、外壁材の違いのみです。構造による差はありません。
外壁材をALCにすれば、サイディングなどに比べて耐火性や断熱性、遮音性が高くなるため、建物の性能を少しでもアップさせたいと思う方に向いています。
ただし、開口部の断熱性能や遮音性が低い場合は、外壁材にALCを採用してもそれほどメリットを感じられない可能性があります。
ALCの外壁材は、サイディングなどと比べてコストが高くなる傾向があります。費用対効果を考えて、採用することをおすすめします。
・「鉄骨造」に関する記事はこちら 鉄骨造の耐用年数はどれくらい?実際の寿命との違いを解説 |
ALC造の住宅に住む場合の注意点
ALC造の住宅に住む場合、どのような点に注意した方がよいのでしょうか。この章では2つの注意点を紹介します。
施工会社のALC造工事実績をチェック
ALC造には、メリットといえる特性があります。しかし施工会社がその特性を理解していなければ、そのメリットを最大限に生かすことはできません。
引渡し後のトラブルを避けるためにも、施工会社のALC造の工事実績をチェックし、実績が豊富な施工会社を選ぶことをおすすめします。
施工会社に対する判断が難しい場合は、不動産会社へ相談する方法もあります。不動産会社に施工会社を紹介してもらえるケースもありますので、まずは相談してみましょう。
メンテナンスを欠かさない
耐久性が高いALC造ですが、水には弱い特性をもっています。定期的に点検・メンテナンスを行い、劣化を防ぎましょう。
雨水の侵入を防ぐためには防水塗装が必要になりますが、外壁同士の接合部(シーリング材)の補修や交換も必要です。
シーリング部分に切れや破断がある状態は、雨水が侵入しやすくなります。一度水が侵入してしまうと、修復が難しくなるため注意が必要です。
建物を長持ちさせるためにも、定期的な点検と早めのメンテナンスをおすすめします。
この記事のポイント
- ALC造のメリットは?
ALCの主原料は、不燃材料であるセメントや珪石、石灰などです。そのため耐火性・防火性に優れており、万が一火災が起きたとしても、発火しにくいのが特徴です。また仮に燃えたとしても、基本的には煙や有毒ガスが発生する素材ではないため安心です。
また、ALCには無数の気泡があり、その1つ1つの空気層が熱の伝達を防ぎます。したがって、比較的断熱性が高いのが魅力です。
ほかにも防音性が高い、建物が歪むリスクや地盤への負担が少ないといったメリットがあります。
詳しくは「ALC造のメリット」をご覧ください。
- ALC造のデメリットは?
ALCは気泡が多くあるため吸水性が高く、雨水が侵入しやすい特徴をもっています。万が一、建物の構造内部まで水分が浸み込んでしまうと、鉄骨を腐食させてしまう恐れがあり、鉄骨など骨組みの劣化を早めることになります。
また環境によってはカビの発生原因にもなり、とくに寒冷地では外壁に吸収された水分が凍結することで外壁がひび割れてしまうこともあります。
加えて、ALCを外壁として使用する場合、一般的なサイディングと比較すると、建築コストは高くなる傾向があります。
詳しくは「ALC造のデメリット」をご覧ください。
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