ざっくり要約!
- 表題登記とは新たな土地が生じた際や新たに建物を建築した際に物理的現況を表示するもの
- 不動産売買の際には建物表題登記が完了している必要がある
建物を新築した際に、最初にする登記が建物表題登記です。一般的な住宅以外にも、ビル、アパート、マンションなども最初に建物表題登記をします。
この建物表題登記は「自分で申請できるのか」「専門家に依頼した場合はどの程度費用がかかるのか」と疑問に思う方もいるでしょう。そこで本記事では表題登記に関する下記の内容を解説します。
- 建物表題登記の必要書類と費用
- 建物表題登記の手続きの流れ
- 建物表題登記と所有権保存登記の違い
- 建物表題登記は自分でできるのか
- 自分で登記をする際の注意点
建物を新築する方はぜひ、ご一読ください。
記事サマリー
表題登記とは?
新たな土地が生じた際や新たに建物を建築した際、表題登記をすることで今まで存在しなかった登記簿が作成されます。
この土地や建物の物理的現況を表示する登記が、表題登記です。
国有地の払下げを受けた場合など新たな土地が生じた際には土地表題登記、建物を新築した際には建物表題登記を申請します。
土地の表題登記の申請期限は、新たに土地が生じた日から1カ月以内、建物表題登記は新築した建物の所有権を取得した日から1カ月以内です。期限内に申請しないと、10万円以下の過料に処せられる可能性があるため注意しましょう。
不動産売買における役割と重要性
建物を新築した際は登記記録(登記簿)が存在しません。建物は存在しても、その物理的状況が不明確な状態です。
そこで建物表題登記を行うのですが、住宅ローンを組まずに建物を建築した場合など、建物表題登記をせずに放置しているケースも存在します。
このような建物を未登記物件とよびます。未登記物件は所有権保存登記もできないため、建物の所有者が誰であるのか公的に証明されません。
未登記物件でも理論上は売却可能ですが、正確な所在地や構造、床面積などの状況や、誰が本当の所有者であるか確認ができません。また、買主が住宅ローンを使いたくても、未登記の建物に抵当権設定登記はできないため、住宅ローンが組めません。
つまり不動産売買の際には、少なくとも建物表題登記が完了している必要があるのです。
不動産売買以外でも、相続が発生した際には相続人に登記名義を変えることになりますが、その前提として建物表題登記、所有権保存登記は必要なのです。
・「所有権保存登記」に関する記事はこちら 所有権保存登記とは?必要な理由や記録内容、申請手続きの流れを解説 |
表題登記(建物表題登記)に必要な書類
建物表題登記に必要な書類について解説します。
住所証明書
建物の所有者の住民票が必要です。なお本籍地や続柄、マイナンバーの記載は不要です。
所有権証明書
所有権証明書となる書類は数種類あります。一般的には「検査済証と建築確認通知書」と「工事完了引渡証明書」を提出しますが、法務局により異なることもあるため、事前に管轄法務局に確認します。
【検査済証と建築確認通知書】
建物建築後に、検査済証と建築確認通知書といった建築確認に関する書類一式を工務店、施工会社や建築会社より受領します。
建物表題登記の際、基本的には検査済証と建築確認通知書を提出しますが、建物表題登記の申請時に検査済証が未発行の場合には、確認済証と建築確認通知書を提出します。
【工事完了引渡証明書】
工事完了引渡証明書は、工務店、施工会社や建築会社より受領します。
工務店、施工会社、建築会社の登記事項証明書と印鑑証明書もセットで提出するため、忘れずに受領しましょう。
【所有権証明書となるその他の書類】
- 譲渡証明書(建売の場合)
- 建築工事請負契約書と工事代金領収書
- 固定資産税の納付証明書等
建物表題登記の申請書
建物表題登記の申請書は、A4サイズの用紙を使い下記のように作成します。手書きでもPCを使い作成しても構いません。
代理権限証明書(※本人申請の場合は不要)
土地家屋調査士に依頼する場合には委任状が必要です。委任状そのものは土地家屋調査士が用意します。
表題登記(建物表題登記)に必要な図面・写真
建物表題登記申請の際に必要な、図面や写真について解説します。
建物の図面
建物図面とは不動産登記規則第82条により定められた図面で、敷地と建物の1階部分の形状が示された図面です。手書き、PCどちらで作成しても構いません。
出典:不動産登記規則第82条|e-GOV法令検索
各階の平面図
各階平面図は不動産登記規則第83条により定められた図面で、各階の形状と辺長、床面積の求積を示した図面です。
一般的に建物図面と各階平面図は下記のようにB4用紙1枚で作成します。
建物が位置する地図
登記申請後、法務局の登記官が現地調査に訪れます。手書きの地図や、印刷したGoogle Mapsに建物位置のしるしをつけ案内図として提出します。
建物の写真
建物外観の写真を2~3枚、居室、お風呂、キッチン、トイレを撮影したものを5~6枚、吹き抜けや屋根裏部屋、床下収納などの特殊階も撮影して提出します。
表題登記の費用
土地の表題登記も建物の表題登記も、登録免許税は非課税です。
建物表題登記を申請する場合には、交通費や必要書類の取得費用等実費として5,000円~1万円が必要です。
土地家屋調査士に依頼をする場合は報酬が別途必要になり、報酬相場は8~12万円前後です。なお、建物の規模が大きい場合や、未登記のまま相続が発生した場合で、長期間未登記のまま放置したため必要書類が準備できない等の事情などがあるときは報酬が加算されます。
・「不動産の登記費用の相場」に関する記事はこちら 不動産の登記費用の相場は?【計算シミュレーション付き】 |
表題登記(建物表題登記)の手続き方法
建物表題登記、建物表題登記完了後の所有権保存登記、住宅ローンを利用した場合の抵当権設定登記までの流れを解説します。
1.法務局や市役所等で建物に関する資料調査
管轄法務局で、以下の書類を取得し記載事項に間違いがないか、土地や建物の位置関係、古い建物の登記が残っていないかを調査します。
・建物を建設した土地の登記事項証明書、公図、地積測量図
万が一、古い建物の登記が残っていた場合、古い建物の滅失登記をしないと建物表題登記を申請できないため、しっかり調査しましょう。
また役所で都市計画図、隣地関係等の調査を行います。
2.実際に建物を現地調査
法務局・役所での調査が終わったら、現地へ行き建物の調査を行います。法務局で取得した書類一式、メジャー、建築確認通知書一式を持参し以下を調査します。
- 土地の境界確認
- 建物の工事が終わり、住居として利用できる状態になっているか
- 建築確認通知書の図面と異なる点はないか
- 土地の境界から建物外壁までの距離を3か所メジャーで計測
この現地調査の際に、写真撮影をしましょう。
3.登記申請書類の準備
建物表題登記に必要な書類を集めます。所有権証明書が手元になければ施工会社、建築会社等に請求します。
集めた書類、資料をもとに図面、登記申請書を作成します。
4.表題登記の申請
表題登記申請書と添付書類をまとめ、建物所在地を管轄する法務局に申請します。申請は法務局窓口で直接する方法のほか、郵送申請、オンライン申請も可能です。
登記完了までは10営業日程度が目安となります。なお、建物表題登記が完了しても、登記識別情報通知は発行されません。
5.所有権保存登記の申請
建物表題登記の完了後、権利の登記である所有権保存登記を申請します。所有権保存登記をすることで誰が建物の所有者であるかが公示されることとなり、登記完了後は所有者に対し登記識別情報通知が交付されます。
なお、権利の登記の専門家は司法書士です。土地家屋調査士は所有権保存登記を申請できないので注意しましょう。
6.抵当権設定登記を申請
住宅ローンを利用する場合は、金融機関は建築した建物とその敷地の土地をローンの担保に取るため、建物や土地に抵当権を設定します。所有権保存登記~抵当権設定登記は同日に連続で申請し、約10~14営業日で登記は完了します。
なお、住宅ローンを利用する場合、金融機関の要請により「所有権保存登記(金融機関によっては建物表題登記から)~抵当権設定登記」は専門家が代理申請することが一般的です。本人申請が認められるかは金融機関によるため、必ず事前に確認してください。
表題登記は自分でできる?専門家に頼むべき?
表題登記には土地と建物の登記がありますが、建物表題登記は自分で申請することも可能です。どのような点に注意すべきか、専門家に頼んだ方が良いケースについて解説します。
自分でできるが注意点を把握しておく
建物表題登記を申請する際にネックになるのは、図面作成です。図面作成し申請したものの、図面の補正を何度も求められ途中で諦めてしまう人もいるようです。
建物図面、各階平面図の作成方法はインターネット上で見つけることができるため、それらの情報を参考に図面作成が可能なのかを判断しましょう。
また、事前相談や、登記の補正をするため平日何度かは法務局を訪れることになります。法務局の開庁時間である平日8時30分から17時15分までに時間が取れない人は土地家屋調査士への依頼を検討しましょう。
土地家屋調査士など専門家に頼むと安心
住宅ローンを利用する場合の建物表題登記には注意が必要です。万が一、建物表題登記の完了が遅れれば、その後の所有権保存登記、抵当権設定登記に影響がでます。
抵当権設定登記は申請日が決まっていることが多いため、住宅ローンを利用する場合、土地家屋調査士に建物表題登記を依頼した方が安心です。
建物表題登記を土地家屋調査士に依頼した場合の報酬相場は8万から12万円程度です。なお、その後の所有権保存登記、抵当権設定登記(抵当権1本の場合)の司法書士報酬相場は7万から10万円程度です。
また、相続した建物が未登記の場合や、長期間にわたり建物表題登記をしていなかった場合は、必要書類も通常の申請とは異なるため土地家屋調査士に依頼しましょう。このようなケースでは先の土地家屋調査士報酬に数万円程度加算されることが一般的です。
この記事のポイント
- 表題登記に必要な書類は?
建物の所有者の住民票のほか、一般的には「検査済証と建築確認通知書」と「工事完了引渡証明書」などを提出しますが、法務局により異なることもあるため、事前に管轄法務局に確認するようにしましょう。
詳しくは「表題登記に必要な書類」をご覧ください。
- 表題登記は自分でできる?
表題登記には土地と建物の登記がありますが、建物表題登記は自分で申請することも可能です。ただし、事前に注意点を把握し、自分でするのが難しそうな場合は土地家屋調査士に依頼すると安心です。
詳しくは「表題登記は自分でできる?専門家に頼むべき?」をご覧ください。
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