ざっくり要約!
- 土地の譲渡・貸付け、住宅の貸付けに消費税はかからないので、基本的に家賃は非課税となる
- 住宅を借りる際は個人・法人を問わず消費税がかからないが、事業用として事務所や店舗を借りる際は消費税がかかる
家賃に消費税はかかるのでしょうか?
結論からいうと、住宅として借りる場合には消費税はかかりませんが、事務所として借りる場合は消費税が課税されます。
居住用だとしても、1カ月未満など短期間借りる場合は消費税がかかるため、注意が必要です。
この記事では家賃や敷金など、賃貸物件を借りる際にかかる消費税について、詳しく解説します。またインボイスとの関連についても触れますので、大家として知っておきたいという方もぜひ参考にしてください。
記事サマリー
家賃の消費税についての基礎知識
まず消費税に関する基本的なルールと、非課税となる取引について紹介します。
消費税の適用と例外
消費税は、日本国内において事業者が対価を得るために行うサービスの提供や商品の販売などに対して課税される税金です。消費税は消費者が負担しますが、事業者は預かった消費税について会計処理を行い、国と都道府県に納付しています。
たとえば不動産会社が建物を売却もしくは賃貸する場合、対価を得て行う事業になるため消費税がかかります。
一方で、消費税の性格上なじまないという理由や社会政策的な配慮から、事業者が対価を得て行う取引であっても非課税となる取引があります。
土地の譲渡や貸付け、住宅の貸付けがその1つであり、消費税はかかりません。
ちなみに3%の消費税が導入された当初は、家賃に対しても消費税が課税されていましたが、1991年10月から住宅として借りる場合は非課税になりました。
原則、事業として対価を得るために行う取引は課税の対象になりますが、住宅などの貸付けのように例外があると考えるとわかりやすいでしょう。
非課税となるおもな取引は以下の通りです。
- 土地の譲渡や貸付け(1カ月未満の貸付け、および駐車場施設として土地を利用する場合を除く)
- 住宅の貸付け(1カ月未満の貸付けを除く)
- 有価証券や商品券などの譲渡(株式やゴルフ会員権などを除く)
- 支払い手段の譲渡(銀行券や政府紙幣、硬貨、小切手、約束手形など)
- 介護サービスの提供など
- 学校の授業料や入学金、教科書の譲渡
- 国が行う事務にかかる役務に対する手数料(登記や免許などにかかる手数料)
- 医師や助産師などによる助産
- 社会保険医療など
- 火葬料や埋葬料
家賃と事務所の区別
住宅貸付けは、消費税について非課税となる旨が定められていますが、事務所の賃料に対しては消費税が課税されます。
たとえば同じマンションであっても、住宅として借りる場合は非課税ですが、事務所として利用する場合は消費税が課税されます。
また借主が法人であっても、寮として借りる場合は非課税です。
出典:No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など|国税庁
No.6201 非課税となる取引|国税庁
消費税法(昭和六十三年法律第百八号)|e-Gov法令検索
家賃の消費税率
事務所の家賃(賃料)に対する消費税率は10%です。その内訳は、国税である消費税の7.8%と地方税である地方消費税の2.2%をあわせて10%です。
現行の消費税率と賃料への影響
消費税の税収は年金、介護、医療、子育て支援に充てられていますが、日本では少子化の傾向が続いており、保険料だけではまかなえない状況になっています。
2024年度の税制改革において、経団連が消費税の引き上げを「有力な選択肢の1つ」と提言したことで話題になりました。
今後、消費税が10%から引き上げられた場合、事務所などの貸付けでは消費税が引き上げられた分、賃料が高くなります。
2019年10月に消費税が10%に引き上げられた際は、同年10月以降の引き渡しであっても、同年3月31日までに締結した賃貸借契約であれば、8%の税率が適用になる経過措置がありました。また同年3月31日までに賃貸借契約が自動更新された場合は、経過措置により次回更新時まで8%の税率が適用になりました。
住居用として貸す場合は消費税の影響を受けませんが、消費税が引き上げられるタイミングで事務所を貸し出す場合は、契約日や経過措置について確認するようにしましょう。
賃貸契約と消費税の計算方法
住宅として借りる場合は非課税になるため、消費税を計算する必要はありません。一方で事務所として借りる場合は、賃料に対して10%の消費税がかかります。
住居兼事務所など、住居部分と事務所として使用する部分がある物件は、賃料をそれぞれの面積で按分して消費税を計算することになります。
実際に按分して計算する場合は、以下の通りになります。
住居兼事務所
家賃:25万円
事務所の面積が全体の4割・住居部分が全体の6割
事務所部分:25万円×4/10+消費税=11万円
住居部分:25万円×6/10=15万円
合計:26万円(税込)
住居兼事務所が上記条件だった場合、家賃25万円の住居を借りる場合と比べて、消費税分の1万円高くなります。
出典:[税のしくみ] 税の種類と分類|国税庁
消費税について教えてください。|財務省
家賃の消費税におけるインボイス制度
2023年10月からインボイス制度が始まりました。個人であっても家賃収入を得ている方は、インボイス制度について理解しておくことが重要です。
この章では、インボイス制度の概要と、賃貸業界への影響などについて解説します。
インボイス制度の概要と賃貸業界への影響
インボイスとは、従来の請求書に必要事事項を追記した請求書のことで、販売先に対して税率と税額を正しく伝えるためのものです。仕入税額控除の適用を受けるためには、仕入れ先が発行するインボイスが必要になります。
ちなみにインボイス制度により追記が必要になったのは、登録番号と適用税率、税率ごとに区分した消費税額です。
もし家賃収入が賃貸住宅などの家賃に限られるのであれば、非課税のためインボイスを発行する必要はなく、適格請求書発行事業者になる必要もないでしょう。
適格請求書発行事業者になると、課税対象となる売上げが1,000万円以下であったとしても「課税事業者」となります。つまり消費税は免税にならず、申告や納付が必要になります。テナントからインボイスの請求があった場合は、慎重に検討するようにしましょう。
・「賃貸借」に関する記事はこちら 賃貸借とは?契約書の電子化のメリットやインボイス制度との関連も |
課税事業者と免税事業者の違い
免税事業者で、適格請求書発行事業者でない場合、当然ながら適格請求書を発行できません。すると、事業者であるテナントは消費税の負担額が増えてしまうため、インボイスを発行してもらえる事務所や店舗への移転を検討する可能性があります。
一方、課税事業者は、適格請求書発行事業者に登録することで、インボイス制度を活用できます。そしてテナントはインボイスにより仕入税額控除の適用を受けることができ、消費税の負担を軽減することができます。
住居者が住居として使用している場合は問題ありませんが、事務所や店舗など事業用として借りているテナントがいる場合は、免税事業者であっても適格請求書発行事業者への登録を検討する必要が出てくるかもしれません。
消費税の負担額を想定し、空室リスクも考慮したうえで決定するようにしましょう。
敷金や礼金などの費用と消費税の関係
賃貸住宅として貸し出す場合、家賃に消費税はかかりません。では敷金や礼金、駐車場代はどうでしょうか。この章では、賃貸借に関連する費用と消費税の関係を紹介します。
敷金や礼金に消費税はかかる?
前提として、事業用の建物を賃貸借する場合にかかる保証金や敷金、更新料などのうち返還されないものについては「権利設定の対価」と判断され、課税の対象になります。
一方で、住宅用の建物を借りる際にかかる敷金や礼金は非課税です。
敷金とは、退去時の原状回復費用に充てるために預けておくお金です。実際にかかった費用は差し引かれ、残った場合は戻ってきますが、住宅として借りるのであれば消費税はかかりません。
礼金は貸主にお礼として支払うものです。返還されないお金ですが、敷金と同様に住宅を借りるときに支払った場合、消費税はかかりません。
なお事業用として借りる場合は、礼金や保証料などは課税対象となります。したがって住居兼事務所は、面積に応じて事務所に対してかかる消費税を計算する必要があります。
駐車場に消費税はかかる?
土地の貸付けは原則非課税です。しかし駐車場施設として土地を貸し出す場合や、土地を1カ月未満など短期で貸す場合は消費税がかかります。
なお家賃が駐車場込みで設定されていることがありますが、駐車場代の分として一部消費税が課税されることはありません。
賃貸取引におけるその他の費用と消費税
賃貸取引は、敷金や礼金以外の費用が発生することがあります。
代表的な費用の中で、消費税が課税されるものは以下の通りです。
- 仲介手数料
- 鍵の交換費用
- 保険料
- インターネット使用料
- 更新事務手数料(更新料は非課税)
- 駐車場代・駐輪場代(家賃に含まれる場合は非課税)
- クリーニング費用・リフォーム費用
家賃の消費税における個人と法人の違い
最後に家賃にかかる消費税について、個人と法人の違いについて紹介します。
個人賃貸と法人賃貸の消費税の違い
消費税は、事業者が対価を得るために行うサービスの提供や商品の販売などに対して課税されます。賃料を得るために建物を貸し出す場合に、賃料に対して消費税が課税されるというのが前提です。
しかし社会政策的な配慮から住宅の貸付けは非課税と定められているため、住宅を借りる際は個人・法人を問わず消費税はかかりません。
個人が事業用として事務所や店舗を借りる際は、住宅ではないため消費税がかかります。
つまり消費税が課税されるか否かは、個人か法人かではなく、その用途によって判断されます。そして住居兼事務所のような物件は、面積に応じて按分し消費税を計算します。
法人による賃貸物件の消費税処理とは
法人が事務所や店舗を借りる場合は、消費税が課税されます。では社宅に対して消費税はかかるのでしょうか。
結論からいえば、社宅は住宅にあたるため消費税はかかりません。
そして法人が社宅用に借り上げた物件を、従業員に貸し付けることで発生する賃料も非課税です。また給与から従業員の自己負担額を控除する場合も消費税はかかりません。
また、敷金や礼金、共益費などは、消費税法では非課税とされており、社宅も例外ではありません。
社宅に関連する費用で、消費税が課税されるものは以下の通りです。
- 社宅を借りる際にかかる仲介手数料
- 駐車場代
- 社宅の管理費用
この記事のポイント
- 家賃の消費税率はどのくらい?
住宅として借りる場合は非課税になるため、消費税を計算する必要はありません。
一方で事務所として借りる場合は、賃料に対して10%の消費税がかかります。
詳しくは「家賃の消費税率」をご覧ください。
- 敷金や礼金などの費用に消費税はかかる?
住宅用の建物を借りる際にかかる敷金や礼金は非課税です。
なお事業用として借りる場合は、礼金や保証料などは課税対象となります。したがって住居兼事務所は、面積に応じて事務所に対してかかる消費税を計算する必要があります。
詳しくは「敷金や礼金などの費用と消費税の関係」をご覧ください。
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