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単身赴任時の住民票は移す?メリット・デメリットや移さない場合の影響を解説

執筆者プロフィール

海老原政子
ファイナンシャル・プランナー/住宅ローンアドバイザー

国内の生命保険会社にて生命保険募集人業務に携わるなかでライフプランの重要性に目覚め、生活者視点を活かしたFP業務を開始。千葉で、家計相談や執筆業務、個人・企業向けマネープランセミナーをおこなう。生命保険見直しや住宅ローンの借り換え、貯蓄ができない家計の体質改善アドバイスなど、わかりやすい情報提供が好評。

ざっくり要約!

  • 単身赴任中に住民票を移さないと、年末調整や各種公的サービスの利用に影響が出る可能性がある
  • 単身赴任先に住民票を移すと元の居住地での印鑑登録が抹消されるので、元の居住地での契約などに実印が必要な場合は手続きが複雑になることがある

全国に支社や支店を持つ企業にお勤めの方の場合、同じ勤務地に最後まで勤める人はあまりいないように思います。異動先が他県ということも十分考えられます。もしも今、人事異動で自宅から離れた場所への配置換えが決まったら、あなたはどうしますか?

家族の事情もあるかと思いますが、家族全員で新勤務地のそばに引っ越しをするのではなく、単身赴任で一人、家族と離れて暮らすことを選ぶ人もいるのではないでしょうか。

この記事では、単身赴任時の住民票の取り扱いについて解説します。

単身赴任時に住民票を移す必要性とは

いざ単身赴任をすると決めた際に悩ましいのが「住民票を(引越し先に)移すべきか、否か」ということ。やはり転出・転入の手続きをちゃんと済ませなければいけないのでしょうか。

住民票の移動が必要な理由

行政サービスはそもそも住民票を基本データとして提供されます。

ですので、引っ越しをしたら14日以内に新たに住む自治体に届け出を出すことが定められています(住民基本台帳第二十二条 )。

ただし、「正当な理由」があれば住民票を移さなくてもよい(任意)ケースもあります。

それは、転居が一時的な場合で今お住まいの家に戻る見込みがある場合や、平日は新赴任地で暮らして週末は家に戻るなど、生活拠点は変わらず現在の家にある場合です。

悩ましい転出・転入手続きですが、住民票をベースにした公的サービスの種類や住民票を移すメリット・デメリットを具体的にみていくと、判断の材料になるかもしれません。

出典:住民基本台帳法|e-Gov法令検索

年末調整や公的サービス利用への影響は?

住民票をベースにした公的サービスにはさまざまな種類があります。
たとえば、下記のようなサービスです。

国民健康保険・国民年金等の社会保障や福祉サービス

医療や年金、高齢者や障害者向けのサポートなどの福祉サービスはお住まいの自治体が運営・所管しています。どのエリアの住民になるかでこうしたサービスは変わります。

住民票移転により、これまで受けられた住民サービスが受けられない(内容が変わる)こともあり得ます。心配なことがあれば引っ越し前に自治体窓口などに問い合わせて確認しておきましょう。

税金

住民票の住所をもとに所得税や住民税が計算・課税されます。住民税については、該当年の1月1日どこに居住していたかで課税される場所が定まります。

確定申告や納税の手続きも、原則、住民票のある場所を管轄する税務署で行います。

教育関連サービス

お子様の通う公立学校も、特別な事情がない限り、住民票を基にして決められています。

選挙権

住民票をもとに、地方選挙や国政選挙などでの選挙権が行使されます。

公共サービスの利用

図書館や公民館などの公共施設の利用も「そこに住んでいる住民」が対象です。
他の市町村に住まう人は利用手続きが面倒であったり、施設を利用できなかったりする可能性もあるかもしれません。事前に窓口でたずねてみてください。

このように、単身赴任中に住民票を移さないと、年末調整や各種公的サービスの利用に影響が出る可能性があります。

単身赴任時に住民票を移すメリット

単身赴任時に住民票を移すメリットは、簡単にいうと、上記に挙げたさまざまな公的サービスを赴任先(正確には、赴任後住みはじめた新住所地)で受けられることといえます。

以下で具体的にみていきましょう。

赴任先で選挙権が得られる

単身赴任先に住民票を移すと、その地域での選挙権が得られます(転入時期による)。

もし住民票を移さなければ、自宅に帰った際に不在者投票をするなどの手間がかかります。単身赴任先での選挙権が得られることは、時間がない人には嬉しいメリットですね。

また地元の選挙に参加できることは、地域社会に積極的に参加する機会ともなりますし、社会的なつながりを深める一環ともなるでしょう。

単身赴任先で公的書類を受け取れる

住民票が赴任先にあると、お住まいの近くの行政機関で公的な書類を発行してもらうことが可能です。

これにより、各種手続きがスムーズに行えますし、自治体のポータルサイトなどで必要な情報にアクセスすることも可能です。

また、ポータルサイトから変更手続きなども行えるため、公的な書類を必要とする人であれば実利性が高いといえそうです。

行政サービスを利用できる

たとえば運転免許の更新なども、赴任地そばの施設で行えます。近くに公民館や図書館があれば利用者登録も簡単ですよね。

このように、地域のさまざまな公的サービスが受けられるようになります。

単身赴任時に住民票を移すデメリット

単身赴任時に住民票を移すことにはデメリットも当然あります。

印鑑登録が抹消される

印鑑登録とは市町村への実印の登録です。

住民票を移すと、元の居住地での印鑑登録が抹消されますので、元の居住地での契約などに実印が必要な場合、手続きが複雑になるかもしれません。

また、赴任先から戻った際にもあらためて印鑑登録する必要が出てきます。

児童手当の変更手続きが発生する

単身赴任により家族が元の居住地に残る場合、児童手当の受給者の変更など手続きが必要となります。小さなお子様がいるご家庭は面倒に感じるのではないでしょうか。

戻る際に再度手続きが必要となる

印鑑登録にしても児童手当の受給者変更にしても、単身赴任先から自宅近くの職場に戻った時にあらためて元に戻す手続きが必要となります。

家に戻れたとホッとして手続きを忘れないように行いましょう

単身赴任時に住民票を移さない場合の影響

何らかの差し障りがあって単身赴任時に住民票を移さない場合、運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなど本人確認書類の住所も旧住所のままとなります。そのほかにもさまざまな影響があります。

以下に、単身赴任時に住民票を移さない場合の住宅ローンや住民税、児童手当についてまとめましたので確認していきましょう。

住宅ローン

住民票の所在地が変わらず、ご家族も住み続けるとなれば、住宅ローンの金利や条件に影響が出る可能性はほぼないでしょう(住所変更の届け出は必要です)。

ただし、住宅ローン控除は「対象となる家に住み続けている」ことが原則です。

住民票は移さず、そのままパートナーやお子様が自宅に残る(生活所点は変わらない)場合は大丈夫ですが、家族全員で赴任先に引っ越す場合は、家を離れている間は住宅ローン控除が受けられないことを覚えておいてください(単身赴任ではなくなり自宅に戻ったら、残期間があれば再び住宅ローン控除を受けることができます)。

住民税

住民票の所在地により住民税の課税標準が変わるため、納付金額の計算に影響が出ます。
適切な手続きを行って税務上のトラブルを避けるようにしましょう。

児童手当

住民票を移さなければ、受給者の変更など特別な手続きはいりません。

ただし、夫の単身赴任に伴い、夫ではなく妻を児童手当の受取人にしたいなどの要望があれば別途手続きが必要になります。

単身赴任時の住民票移動の手続き方法

単身赴任が決まり、新しい住まいが決まったら住民票移動の手続きをすることになります。手続きする場所や必要書類などをまとめましたのでご一読ください。

また、提出期限はあるものの単身赴任先で不便を感じた際に、住民票を届け出ることも可能です。住んでみて何かしらの不便を感じたら、あらためて届を出すことも一案です。

転入届の手続きと必要書類

現在住んでいる場所から他の市町村へ引っ越しをする人は、「転入届(住民異動届)」が必要となります。

転入手続きの場所・提出期限・必要書類

手続きをする場所      現在お住まいの市町村の役所
(市民総合窓口など)
提出期限引っ越し日の前後2週間以内 (郵送やWEBで手続きできる場合あり)
必要な書類など・転入届(役所でもらう)
・転出証明書(現居住地を管轄する役所で発行されたもの)
・本人確認書類(運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなど)
・印鑑(自署でOKの自治体もあります)

転居届の手続きと必要書類

同じ市町村の中で引っ越しをする人は「転居届」が必要となります。

転居手続きの場所・提出期限・必要書類

手続きをする場所      現在お住いの市町村の役所
(市民総合窓口など)
提出期限引越し日前後2週間以内 (郵送やWEBで手続きできる場合あり)
必要な書類など・転居届(役所でもらう)
・本人確認書類(運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなど)
・保険証や医療証など(市区町村で発行された各種証書を持っていく)
・印鑑(自署でOKの自治体もあります)

なお、上記2表は一般的な内容をまとめたものです。

転入する自治体によって必要書類はやや異なりますので、引っ越し前に必ず新住所地を管轄する自治体のホームページなどで最新情報を確認しましょう。

この記事のポイント

単身赴任時には必ず住民票を移す必要がある?

単身赴任で引っ越しした場合、「正当な理由」があれば住民票を移さなくてもよい(任意)ケースもあります。

それは、転居が一時的な場合で今お住まいの家に戻る見込みがある場合や、平日は新赴任地で暮らして週末は家に戻るなど、生活拠点は変わらず現在の家にある場合です。

詳しくは「単身赴任時に住民票を移す必要性とは」をご覧ください。

単身赴任時に住民票を移さない場合、住宅ローン控除はどうなる?

単身赴任時に住民票を移さず、ご家族が自宅に住み続けるとなれば、住宅ローンの金利や条件に影響が出る可能性はほぼないでしょう。
ただし、住宅ローン控除は「対象となる家に住み続けている」ことが原則です。

もし家族全員で赴任先に引っ越す場合は、家を離れている間は住宅ローン控除が受けられないことを覚えておいてください(単身赴任ではなくなり自宅に戻ったら、残期間があれば再び住宅ローン控除を受けることができます)。

詳しくは「単身赴任時に住民票を移さない場合の影響」をご覧ください。

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