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リノリウムの床とは?メリット・デメリットや住宅での活用方法を解説

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • リノリウムは天然素材からできている建材
  • リノリウムは耐久性が高く有害物質が発生しないため床材でも使われている

近年、SDGs(持続可能な開発目標)の観点から、天然素材から作られているリノリウム建材に再び注目が集まっています。
リノリウムとは、主に床の仕上げ材として使われる建材です。典型的な例を挙げると、病院のピカピカの床がリノリウムになります。
最近では、もう少しオシャレな感じにして住宅の仕上げ材として使用されるケースも増えてきました。
では、リノリウムとは一体どのような建材なのでしょうか
この記事では、住宅の仕上げ材として利用する「リノリウム」について解説します。

リノリウム素材とは?

リノリウムの概要について解説します。

天然素材を使用

リノリウムとは、主原料を亜麻仁油とする建材です。
亜麻仁油は1年草の亜麻から採取される成分となります。
その他は、木粉や松から抽出される天然ロジン、天然色素等を使用しています。
廃棄時に土に埋めることで生物によって分解される点が特徴です。

それに対して、一般的に住宅の床材に使われるシート材は石油製品である塩化ビニール等が主原料です。
塩化ビニール等を使った製品は、「石油を使っている」「水に溶けない」等から環境に悪いイメージがあります。

リノリウムは、石油を使っておらず、かつ、土に埋めても生物分解される素材となっていることから、環境に優しい建材とされているのです。

また、リノリウムは原材料が植物の亜麻であることから、成長中は光合成によって二酸化炭素を吸収する役割を果たしています。
そのため、リノリウムの製造や輸送の過程で発生する二酸化炭素は、植物を原材料とすることで帳消しにしていると捉えることができます。

このように二酸化炭素の吸収量と排出量を均衡させる考え方を「カーボンニュートラル」と呼びます。
リノリウムはカーボンニュートラルも実現していることから環境に優しい建材であるともいえるのです。

リノリウムの歴史

リノリウムの歴史は古く、1860年代にはイギリスで開発されていました。
ペリーが浦賀に来航したのは1853年、大政奉還が1867年ですので、日本で言えば幕末の真っただ中の時期に該当します。

昔からある建材ですが、あまり普及しなかったのは「製造に時間がかかること」や「コストが高いこと」等が原因だったようです。
日本では、短時間、大量、低コストで生産可能なシート材の方が重宝され、リノリウムよりもシート材が普及していった背景があります。

その他として、日本には元々床材として、木や畳等も存在したため、わざわざリノリウムを取り入れる必要性も低かったものと思われます。

ただし、リノリウムの古くから存在する建材であることから、日本でも多くの建物でリノリウムは昔から利用されています。

昔からよく見られる例としては、病院のピカピカに光っている少し硬そうな床材です。
最近だと新しい病院は床材にシート材を使っていることも多いので、古い病院でないとリノリウムを見かけないかもしれません。

「古い病院の床」というとイメージが少し悪いかもしれませんが、最近注目を集めている住宅用のリノリウムは、もう少し粋な感じのする仕上げ材となっています。

リノリウムのメリットとは?

この章では、リノリウムのメリットについて解説します。

耐久性の高さ

リノリウムは元々床材に利用されていたことから、耐久性が高い点が特徴です。
リノリウム発祥の地であるイギリスでは家の中で靴を脱がないため、室内で使用する床材にも頑丈さが求められていたということも理由として考えられます。

家の外部の床材には、石やタイルがあります。
リノリウムは石やタイルほどの硬さはありませんが、一般的なマンションの床で利用されるシート材より硬いです。

リノリウムは製品寿命が30~40年程度とされており、それに対してシート材の製品寿命は10年程度とされています。
シート材よりも3~4倍程度も寿命を維持できることから、床材としての耐久性は高いです。

耐久性も高ければ、傷もつきにくく、摩耗もしにくいのが特徴です。
張り替えや交換の頻度も低くなり、将来発生しうる修繕費を抑えられるというメリットもあります。

有害物質が発生しないこと

リノリウムは亜麻仁油という天然素材からできているため、シックハウス症候群の原因の1つとされる化学物質が発生しないことがメリットとして挙げられます。

シックハウス症候群は必ずしも化学物質だけが原因ではなく、ダニやカビの繁殖、家の高気密化・高断熱化も原因の1つです。
リノリウムを利用すればシックハウス症候群を完全に避けられるわけではありません。

ただし、日本でも、シックハウス対策として漆喰や珪藻土、天然木を利用するといった考え方が従来から存在します。

リノリウムも漆喰や珪藻土、天然木と同じく天然素材です。
リノリウムは天然素材の1つであることから、同様の考え方でシックハウスの確率を下げることに寄与すると思われます。

また、廃棄時の土に埋めるだけで生物分解されるため、廃棄時も有害物質を出さない点が特徴です。
カーボンニュートラルにもなっていることから、CO2も抑えられる材料です。

抗菌作用があること

リノリウムには抗菌効果が認められています。
複数の菌に対して不活性化させる作用があり、一定の抗菌作用があるようです。

病院の床に昔からリノリウムが使用されているのは、リノリウムの抗菌作用が着目されていることが理由とされています。

抗菌作用が生まれるのは、原料である亜麻仁油の「酸化」が理由のようです。
リノリウムが酸性状態になっているため、一部の菌の働きを弱めています。
抗菌作用のあるリノリウムは、病院だけでなく、保育園や介護施設、教育施設等にも適した建材です。

また、亜麻仁油が酸化していることから、リノリウムには脱臭効果もあります。
アンモニアのようなアルカリ性物質を酸によって中和することができます。
よって、リノリウムはトイレの床材としても適した素材と言えます。

リノリウムのデメリットとは?

リノリウムのデメリットについて解説します。

独特のニオイがする

リノリウムには新築当初は独特のニオイがするといったデメリットがあります。
ニオイはいずれ消えますが、亜麻仁油特有のニオイであることから、苦手な人も多いようです。

リノリウムに限らず、一般的に新築住宅には独特のニオイが存在します。
ただし、日本人が感じる「畳のイグサの香り」や「ヒノキの香り」のように心地良さを感じるものとは異なるようです。
新品のニオイに関しては、昔から日本にある天然素材の方が優れているといえます。

特定の刺激に弱い

リノリウムは天然素材であるため、紫外線の影響を受けやすいという特徴があります。
リノリウムに限らず、畳や天然木の床材は、日当たりの良い部屋だと日焼けします。
畳であれば、定期的に裏返すことで色落ちを防ぐといったこともできますが、リノリウムでは裏返しができません。
日当たりが良過ぎる部屋には、避けたほうが良いと言われています。

高い値段設定

歴史のあるリノリウムがあまり普及しなかったのは、価格が高いというのも理由の1つです。
床材としての機能性であれば、シート材も同等の働きをします。
近年はシート材も様々な質感や色味のものが登場しており、低価格にも関わらずオシャレなものも選べるようになっています。
コストを抑えたい人にとっては、リノリウムは選びにくい建材です。

リノリウムを住宅で活用できる場所とは?

リノリウムを住宅で活用できる場所について解説します。

キッチン

リノリウムは主に床材ですが、一般的なシート材のように様々な色や模様を付けることができ、シート材のように利用できる点が特徴です。

近年の住宅では、キッチンの床材として水はけが良く掃除のしやすいシート材が多く利用されています。

リノリウムもシート材と同様の感覚で使用できるため、シート材が多く使われているキッチンに適しています。

キッチンのような水回りで気になるのは目地です。
たまに、キッチンを大判タイルで仕上げているような家を見かけます。
大判タイルは見た目も良くオシャレに見えるのですが、キッチンから発生する油汚れ等が目地に入ってしまうと掃除がしにくいです。

よく使われるシートフローリングは目地が少ないため、掃除がしやすくキッチンに適しているといえます。
リノリウムもキッチンに使用する場合には、なるべく目地を発生させずに、汚れにくく掃除をしやすい形とすることが望ましいです。

また、キッチンはリビングと空間が連続している住宅もよくあります。
例えば、リビングが天然木のフローリングでキッチンがリノリウムとなる場合、見切りの部分をどのように仕上げるかも気になるところです。
リノリウムは、リビングの床材との連続性や色味等も加味しながら選ぶこともおすすめします。

洗面所

リノリウムは洗面所でも利用ができます。
リノリウムはシート材と代替可能な床材であることから、洗面所にシート材が多く利用されているようにリノリウムも洗面所に利用しやすいです。

洗面所は風呂場と連続しており裸足で歩くことも多いことから、冷たくない床材が求められる傾向があります。
石やタイルを使ってしまうと、見た目は良いですが歩くには冷たいです。

一方で、木であれば温かみはありますが、水が多く飛び散る洗面所は腐食のおそれがあるため、木は採用されない傾向にあります。

そのため、リノリウムやシート材のような防水性があり、ある程度の温かみもある床材が適しているのです。

また、洗面所は一般的に空間が狭くなっています。
狭い部屋に濃い色の床材を使ってしまうと、圧迫感が出てしまい余計に部屋が狭く感じてしまいます。
よって、リノリウムで床を仕上げるのであれば、できるだけ明るい色を選ぶことをおすすめします。

子ども部屋

リノリウムはシート材と代替できる床材であるため、基本的には家の中のどの部屋でも利用できます。
畳部屋以外であれば、リビングや寝室、子ども部屋で使用は可能です。

どこでも利用できるリノリウムですが、色味やデザインの選べる幅が広いため、子ども部屋の床に採用する人も多いようです。
リノリウムには、木目調に仕上がっているものもありますし、虹色のパステルカラーや複数色の大判タイル状になっているものもあります。
カラフルな楽しい色味のものであれば、子ども部屋に適していると思われます。

ただし、あまりにも幼過ぎる雰囲気の部屋にしてしまうと、子どもが成長したときに飽きられてしまう可能性もあります。
子どもの成長を考慮し、過剰な演出をし過ぎないこともポイントです。

この記事のポイント

リノリウムはどんな素材?

リノリウムとは主原料を亜麻仁油とする建材で、その他は木粉や松から抽出される天然ロジン、天然色素等を使用しています。
リノリウムは石油を使っておらず、かつ、土に埋めても生物分解される素材となっていることから、環境に優しい建材とされています。
詳しくは「リノリウム素材とは?」をご覧ください。

リノリウムを住宅で活用するのに適した場所は?

・キッチン
近年の住宅では、キッチンの床材として水はけが良く掃除のしやすいシート材が多く利用されています。

リノリウムもシート材と同様の感覚で使用できるため、シート材が多く使われているキッチンに適しています。

・洗面所
リノリウムは洗面所でも利用ができます。
リノリウムはシート材と代替可能な床材であることから、洗面所にシート材が多く利用されているようにリノリウムも洗面所に利用しやすいです。

・子ども部屋
リノリウムはシート材と代替できる床材であるため、基本的に畳部屋以外であれば、リビングや寝室、子ども部屋などで使用可能です。

色味やデザインの選べる幅が広いため、特に子ども部屋の床に採用する人も多いようです。

詳しくは「リノリウムを住宅で活用できる場所とは?」をご覧ください。

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