昨今、地方や故郷への移住を考えている人が増えています。地方ならではの自然に囲まれたのんびりとした暮らしに憧れていた人が、テレワークの普及によって移住の実現に踏み切るというケースもみられます。
生まれ故郷など、もともと知っている土地に移住する場合はともかく、これまで暮らしたことのない土地に移住する場合には移住先での暮らしぶりなど気になることがたくさんあるのではないでしょうか。
この記事では、移住をしたいが何から始めればいいかわからないという方に向けて、移住の魅力や、とくに気になる移住先での仕事や生活、自治体の移住支援金の活用について解説します。
記事サマリー
移住の魅力
移住とは、現在暮らしている場所とは別の土地に移り住むことです。
とくに都会から地方への移住には、都会にはないたくさんの魅力があります。人によって移住の目的は様々であり、新しいビジネスや農業・漁業を始めたい方、自然のなかでスローライフを体験したい方など多岐に渡ります。
自然の多い環境で暮らせる
地方には都会にはない山や河などがあります。田園風景も地方ならではの魅力です。
このほか、とれたての野菜が安く手に入るなど、自然豊かな地方への移住にはたくさんのメリットがあります。
例えば、地方では、農家が収穫したばかりの野菜の無人販売、道の駅や農協などの直売所などが身近にあります。このため、都会では手に入りにくい新鮮な野菜や食べ物を簡単に手に入れることができます。
自然の多い場所で子育てができる
地方への移住は子育て世帯にも人気があります。
子どもには豊かな自然のなかで、のびのびと育ってほしいという願いを持つ親は少なくありません。このため、子育て中の世帯が地方への移住を検討しているケースもあります。
海や山で趣味を満喫できる
とくにアウトドア好きの方は、地方への移住に魅力を感じることが多いのではないでしょうか。どのようなアウトドアを好むかによって移住先は変わってきます。
例えば、サーフィンや釣りなどマリンスポーツが好きな人は海沿いの地域に移住するケースがあります。
一方で、山登りやキャンプを趣味とする人は、山沿いのエリアなどがおすすめです。
広い家に暮らすことが比較的容易に実現できる
都会暮らしで負担となることとして家賃の高さが筆頭にあげられます。
東京23区の場合、家族向け賃貸だと安くても月10~15万円程度かかります。一方、地方の場合、同程度の設備や広さの物件であっても賃料が月10万円以下の物件も珍しくありません。
地方移住の場合、地域によっては賃料が月5万円程度で済むことすらあります。したがって、都会ではなかなか難しい「庭付きの広い家に住む」という夢も、比較的容易に実現できます。
移住の注意点
前述したように移住には大きな魅力があることは間違いありません。しかし、地方での生活は都会での生活と異なる点もあります。
とくに、これまで都会でしか生活したことのない人は、地方への移住において想定していなかったことが起こることが多いでしょう。
以下では、地方に移住することの注意点について説明します。
意外に生活費がかさむことも
地方では都市部と比べて公共交通が発達していないことがあります。地方の中核都市であれば、鉄道やバスなどはありますが、都市部ほど往来頻度が高くないため利便性には欠けることが通常です。
また、地方でも農村寄りともなれば、鉄道自体が近くにないことも珍しくありません。バスがある場合でも、1時間に1本しか来ない、最終バスの時間が非常に早いといったこともあります。
そうなると公共交通機関を仕事や用事のために利用することは難しくなります。このため、地方に移住するとたいていは自動車を購入する必要があります。なかには、家族1人につき1台の自動車を保有している家もあります。
自動車が必要になると、購入費用や維持費などがかさみます。地方は住居費が都心部より安いことが多いのですが、場合によっては自動車にかかる費用によって住居費が浮いた分が相殺されかねません。
このように、都心での生活ではかからなかった費用が地方に移住すると発生することがあるので、事前に生活スタイルをシミュレーションし、実際にどのような費用がかかるか見積もっておくことが大切です。
また、地方では都心にあるような大手チェーンのスーパーや薬局などが少なく、また店舗間の競争も少なかったり、輸送費がかかったりするため、都心よりもかえって日用品の値段が高いことがあります。
日用品の値段などは実際に移住しないとわかりにくいため、移住してから生活費の高さに驚くということもあるでしょう。
生活が不便になる
地方移住の宿命として、都市部と比べるとどうしても生活は不便になります。例えば、地方では商業施設や病院、学校は少ないため、都心部ほど気軽に買い物や病院などに出かけることが困難です。
過疎化が進んでいる地域の場合には、公立学校であっても歩いて行くことが困難な遠方にしかなく、毎日学校まで車で送迎しなければならないといったケースもあります。
また、移住する方の家族構成によっても必要な施設は異なります。例えば、子どもや高齢者のいる家族であれば病院が近くにあるか否かは重要ですが、子どもがいない家族であれば、学校の場所はそれほど重要ではないでしょう。
とはいえ、商業施設や病院、学校に関しては、地方の中核都市であれば都心部と変わらないくらい存在している場所もあります。生活の利便性に関しては、単純に都心と地方の比較だけでなく、地方のどのエリアかによっても変わります。
移住を検討する際は、その地域の地図をみて自分たちにとって必要な施設がどこにあるのか確認したり、実際に現地を訪れてみて距離感を把握したりすることによって、移住してから想定と違ったという事態は避けやすくなるでしょう。
移住前に検討すべきポイント
移住には大きな魅力がありますが、実際に生活をしていくとなると事前にさまざまな検討が必要になってきます。
移住先選び
地方への移住と一言でいっても、地方都市なのか農村なのかによっても暮らしぶりが大きく異なります。
県庁所在地や県内の中心街など、いわゆる地方都市であれば店舗や公共交通機関も充実しています。このため、良くも悪くも都会と大きく変わらない環境で暮らすことが可能です。
一方で、農村であれば豊かな自然環境を享受でき、都会と異なる地方ならではの人とのつながりなども体感しやすいという魅力があります。
しかし、その反面で独特の文化風習が残っていたり、閉鎖的であったりする可能性もあります。また、商店や外食のできる施設がほとんど存在しないこともあるため、都会から移住すると想定以上に不便を感じることもあるでしょう。
これまで住んでいた場所と大きく環境の異なる地方に移住する場合には、そこでの生活に馴染めるかどうかをよく検討する必要があります。
仕事や収入
移住先に将来にわたり住み続けるつもりの場合、仕事についても考えておく必要があります。移住先での収入としては、都会での仕事をテレワークで続けるケースと移住先での仕事を見つけるケースに大きく分かれます。
テレワークで仕事を続けるのであれば収入について不安はあまりないでしょう。
ただし、ときどき出社しないといけない会社の場合には移住先のエリアの選択肢は限られてしまいます。完全テレワークの会社であれば、移住先選びの制限は基本的にありません。
これに対し、移住先で仕事を見つける場合、農業、林業、漁業あるいはインターネットを利用したテレワークが移住者の典型的な仕事としてあげられます。
もし、そこで長く暮らしていくことを望むなら、そのまちの農業や林業、漁業や地元に根付いた企業などで働くのも良いでしょう。
移住先での暮らし方
子どもがいる世帯では、子育て支援の充実度や地域の風習や文化なども移住前に調べておくことをおすすめします。同じ「農村」であっても地域ごとに雰囲気は異なります。
例えば、農村には、ほかのまちから移住してきた人に対して、排他的な地域もあります。一方で、移住者を歓迎する雰囲気の農村もあります。
生まれ故郷などの地縁がない地方に移住するなら、移住を完了する前に週末に定期的に移住先に足を運んでみるなど、事前準備の期間を設定すると失敗するリスクを減らすことができるでしょう。
また、農村の場合にはそもそも住むための家自体が手に入りにくいことがあるので注意が必要です。都会と異なり不動産の流通が少ないため、不動産会社が仲介を取り扱っていない可能性があります。
現在の家をどうするか
移住を考え始めたら、現在住んでいる家をどうするかを考えておきましょう。売却することもひとつの選択肢ですが、将来的に都会に戻る可能性があるなら賃貸物件として貸し出すという選択肢もあります。
移住後に賃貸に回す場合には、移住先との距離にもよりますが何かあってもすぐに戻れないことが多いため、管理会社に管理や募集を委託しておく必要があります。
支援金も確認しておく
政府や各自治体では過疎化の抑止や村おこしなどのため移住を促進する政策を行っていることがあります。そのひとつとして、移住者への支援金支給があります。
例えば、国、および各地方公共団体による地方創生起業支援やフラット35による地方移住支援があります。また、住宅を建築する際の補助や既存の住宅のリフォーム支援などがあります。
以下で、政府や自治体の用意している地方移住者への支援制度を4つ紹介します。
地方創生起業支援
地方創生起業支援 は、内閣府地方創生推進事務局が創設されたことを受け、各地方公共団体が地方での起業や東京圏から地方に移住して地方で起業や就業する人に対して、合計で最大300万円の支援金を支給する制度です。
地方創生起業支援は、起業支援金と移住支援金の2つの支援制度があります。
そのうち、起業支援金は、地域の課題に取り組む社会性・事業性・必要性の観点を持つ起業等を支援するもので最大200万円の支援金を受けられます。
また、移住支援金は、地域の重要な中小企業等への就業や社会的企業をする移住者を支援するもので、最大100万円(単身者は最大60万円)の支援金を受け取ることができます。
起業支援金と移住支援金は、両方受け取ることができるため、両者の合算で最大300万円(単身者は最大260万円)の支援金を受けられる可能性があります。
なお、起業支援金と移住支援金の支給に関しては、各地方公共団体が主体となって実施されています。金額や手続も自治体によって異なることがありますので、受給を検討している場合には、移住を考えている自治体の制度を調べるようにしましょう。
フラット35の地方移住支援型
住宅金融支援機構がおこなう「フラット35」も地方移住を支援するための制度を設けています。支援制度の名称は、【フラット35】地方移住支援型 です。
【フラット35】地方移住支援型がどのような制度かというと、上で説明した地方自治体の移住支援金の交付とセットで、フラット35による借入金利を一定期間引き下げるというものです。
具体的には、借入後10年間について金利が年0.3%引き下げられます(2023年3月31日までの申込受付分まで適用)。
このため、移住先に定住するために自宅を購入する場合や、自宅を建築する場合には、フラット35で住宅ローンをお得な条件で利用することができます。
【フラット35】地方移住支援型の利用にあたっては、移住する地方自治体から移住交付金の交付決定通知を受ける必要があります。
そして、移住支援金の交付決定日から5年以内にフラット35の取扱金融機関に借入れ申込みをすれば、金利引き下げの特典を受けることができます。
このため、すでに移住支援金を受けたという方が後からフラット35での借入れをすることもできます。
なお、移住支援金の交付決定通知書は、実際に移住後してから数ヶ月経過しないと受け取ることができません。なぜなら、移住支援金の要件として一定期間の居住実績が定められているためです。
つまり、移住と同時にフラット35で借入れをして自宅を購入することは制度上できないので、注意が必要です。
北海道札幌市の移住支援金
北海道札幌市では、平成31年4月1日以降に東京23区の在住者または在勤者が札幌市に移住した場合、一定の要件のもと移住支援金を支給しています。
移住支援金の金額は、2人以上の世帯で100万円、単身世帯で60万円です。
また、移住後もテレワークによって都会での仕事を継続する場合には、本人の意志によって移住したことが要件となっており、会社の転勤命令による移住は支援金の対象から除外されています。
このほか、移住後5年以上継続して居住する意思を有していることなど、支援金を受け取るためにはさまざまな要件が決められています。
愛知県名古屋市の移住支援金
愛知県名古屋市でも、埼玉県、千葉県、東京都および神奈川県から名古屋市に移住した場合に移住支援金を支給するという制度があります。支援金の金額は札幌市と同じです。
ただし、愛知県名古屋市の支援金は、札幌市と異なりテレワークで都会の企業に勤め続ける方は対象としていません。
あくまでも愛知県内の人手不足解消を目的としている制度なので、移住支援金の対象となるのは愛知県内で補助金対象としている会社に転職した方か、「あいちスタートアップ創業支援事業」で企業支援金の交付決定を受けた方となっています。
また、移住支援金の申請日から5年以内に移住先の市町村から転出した場合などには、支援金を返還すべきこととされています。
このため、移住先の生活に馴染むことができるか、移住前に慎重に検討する必要があります。
気になる方はお試し移住がおすすめ
いきなり移住するのはちょっと心配という方にはお試し移住がおすすめです。以下では、お試し移住の制度がある埼玉県秩父市と長野県安曇野市の制度について説明します。
埼玉県秩父市「お試し居住」
埼玉県秩父市には、「お試し居住」 という制度があります。移住を検討している人向けに実際の秩父市内での生活を体験してもらい、滞在中に移住に必要な住まいや仕事の情報を収集してもらうことを目的とする制度です。
秩父市のお試し居住では、秩父市の用意する秩父杉の家「絆」に無料で3~7日間滞在することができます。
長野県安曇野市「おためし移住」
長野県安曇野市では、市が用意した住居に最大7日間まで無料で滞在できる「おためし移住」 の制度があります。
秩父市の制度と同じく、実際の安曇野市での生活を体験することや、滞在中に移住に向けた住居探しや就職活動をすることなどを目的としています。
移住後の生活をよく検討することが大切
一度は移住をしたものの、地方の生活に馴染めずに結局都会に戻ってきたという事例もあります。一言で地方といっても、エリアによって移住後の生活は大きく異なるので、事前に複数の移住候補先をピックアップし、慎重に比較検討したいところです。
移住してこの先も住み続けたいとなった場合には、移住先で家を購入し、都会の家を売却することも検討する必要があります。
この記事のポイント
- 移住の魅力とは?
移住には様々な魅力があります。
- 自然の多い環境で暮らせる
- 自然の多い場所で子育てができる
- 海や山で趣味を満喫できる
- 広い家に暮らすことが比較的容易に実現できる
といったことが挙げられます。
詳しくは「移住の魅力」をご確認ください。- 移住を検討するポイントとは?
移住で検討するポイントは以下の通りです。
- 移住先選び
- 仕事や収入
- 移住先での暮らし方
- 現在の家をどうするか
といったことを意識しましょう。
詳しくは「移住前に検討すべきポイント」をご確認ください。
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