ざっくり要約!
- スラブとは通常鉄筋コンクリート造の建物に使われる床材や屋根材
- スラブは歪みや変形に強く、堅固な建物を建てることができるため、公共施設やマンションなどで多く利用されている
職業上知っている人を除けば、「スラブ」と聞いて即座に建築用語であるとわかる人は、少ないのではないでしょうか。
もしかするとマイホームの購入やリフォームを検討している人は、スラブについてすでにご存じかもしれません。
スラブとはマンションなど鉄筋コンクリート造の建物に欠かせない、コンクリートの床や屋根のことをさします。
建設中の工事現場を見るか、リノベーションなどで部屋をスケルトンにしない限り、スラブはほぼ目にすることがない部分です。ピンと来ないかもしれませんが、実は建物の構造上重要な部分であり、マンションなどの遮音性や強度に関係する部分です。
この記事ではスラブの概要や特徴、種類について紹介します。住宅を選ぶ時やリフォームを検討している人は、ぜひ知識としてお役立てください。
スラブとは?
スラブとは、通常鉄筋コンクリート造の建物に使われる床材や屋根材です。まずはスラブの概要について解説します。
鉄筋コンクリートで作られた構造床
スラブは英語で「平板」や「石板」を意味しますが、建築用語でいうところの「スラブ」は鉄筋コンクリートで造られた構造床や屋根材をさします。形状はその名の通り、基本的には凹凸がない平たい板です。
便宜上ですが床の場合は「床スラブ」、屋根は「屋根スラブ」と区別して呼ぶこともあります。
コンクリートは圧縮に強く、引っ張る力に弱い特性があります。スラブの内部には格子状の鉄筋が埋め込まれており、その鉄筋がコンクリートの弱点を補うことによって強度を高めている構造です。
遮音性や強度が優れていることから、マンションや公共施設などで多く使われています。スラブの厚みは一般的なものだと150㎜、分譲マンションなどの場合は180~250㎜のものが使われていて、200㎜が標準ともいわれています。
厚みは遮音性に比例しますので、厚ければ遮音性が高いと判断することができます。遮音性を重視する場合はスラブの厚みを確認しましょう。
スラブの特徴
スラブは木造と比べると遮音性が高く、歪みに強く変形しにくい特徴を持っています。
ここではスラブのメリットともいえる、代表的な2つの特徴について詳しく解説します。
遮音性が高い
スラブの代表的な特徴は遮音性が高いことです。音や振動を伝えにくい性質があるため、木製や鋼製の床に比べて遮音性が高くなります。鉄筋コンクリート造の居住性の高さは、遮音性が影響しているといってもいいでしょう。
音は振動によって伝わりますが、集合住宅で問題になるのは床や柱から伝わる振動音の場合がほとんどです。この振動を防ぐためには、スラブの厚さが重要になってきます。
分譲マンションでは200㎜以上を標準としているケースが多いですが、厚ければいいというものでもありません。
もちろん遮音性は高くなりますが、その分重量も重くなります。そうするとそれを支えられる構造にしなければならず、コストに跳ね返ってきます。基本的には200㎜以上であれば問題はないでしょう。
音の問題に関しては、他の方法も取り入れて解決することをおすすめします。たとえば遮音性に優れたフローリングの採用や、ジュータンやコルクマットの利用でも軽減することができます。
リフォームを検討している場合は、床材の張り替えでも音の問題を解決できる可能性があります。
歪みに強く変形しにくい
スラブには、強度を保つために格子状に鉄筋が埋め込まれています。コンクリートの圧縮に強い特性と、鉄筋コンクリートの引っ張る力に強い特性を合わせ持っているため、歪みに強く変形しにくいメリットがあります。
また振動を伝えにくいという性質からも、歪みや変形に強いといえます。
スラブを使うことにより堅固な建物を建てることができるため、その特性から公共施設やマンションなどで多く利用されています。
これは税法上の話になりますが、木造の耐用年数が22年なのに対し、鉄筋コンクリート造は47年です。それだけ木造と鉄筋コンクリート造の建物の資産価値が異なるということです。これはあくまでも税金を計算するための年数であり、木造住宅が22年を超えると住めなくなるという意味ではありません。
スラブの種類
スラブと一口にいっても種類があり、使う場所や用途によっても異なります。ここでは各スラブの概要と特徴を紹介していきます。
- コンクリート床スラブ
- 土間コンクリートスラブ
- 構造スラブ
- 二重スラブ
- フラットスラブ
- 片持ちスラブ
コンクリート床スラブ
コンクリート床スラブには2種類あります。1つは「土間コンクリートスラブ」、もう一つは「構造スラブ」です。
どちらも鉄筋コンクリート造の建物に使われる床材ですが、使われる場所や特徴、メリットが異なります。それぞれ詳しく解説します。
- 土間コンクリートスラブ
- 構造スラブ
土間コンクリートスラブ
土間コンクリートスラブはコンクリート製の床の一種で、通常地盤面の上に使うことを想定した構造です。つまりその荷重は土間コンクリートスラブの下にある、地盤が支えることを想定しています。
よって内部に埋め込む格子状の鉄筋はコンクリートの収縮を抑える程度と少ないため、上からの荷重を支える構造にはなっていません。
その関係性から地盤面の強度が重要です。たとえば地盤沈下が起きると、土間コンクリートスラブは荷重に耐えきれずに破損してしまう可能性があります。
構造スラブ
梁や柱によって支えられている、コンクリート製の床のことを構造スラブといいます。土間コンクリートスラブとは異なり、構造スラブ自身で耐えられるように設計されています。強固な鉄筋が格子状に埋め込まれているため、上からの荷重を支える強度があります。
比較的強度が強いので、地盤沈下などの影響は受けにくいといわれており、耐震性も期待できます。地盤の強度に心配がある場合に採用されるスラブです。
二重スラブ
その名の通り二重になっているスラブです。「ニジュウスラブ」と読みます。スラブの下にさらにスラブがある構造です。
二重というと強度を保つためのように思われるかもしれませんが、その目的はそのスラブとスラブの間に給排水管などを配管するための空間(配管ピット)を作るためです。この空間があることによって、露出配管やスラブ配管(コンクリート埋設配管)をしないで済みます。
二重スラブの場合、その上下両方を荷重に耐えられる構造スラブにする場合もありますが、下に地盤がある場合は下だけ土間コンクリートスラブにすることもあります。どちらの場合も二重スラブと呼びます。
土間コンクリートスラブは、歩行などによる上からの荷重を支えることはできませんが、下に地盤がある場合は地盤が支える役割をするため問題ありません。
二重スラブはマンションなどの居室の床に使われます。通常点検口を設けて点検や修理ができるように配慮されています。
配管のための空間ではありますが、上下階の間に空間を作ることができるので、上階の生活音が下階へ伝わりにくくなるメリットがあります。
二重スラブと似た建築用語に「二重床工法」があります。床という字が使われているので混同しやすいのですが、二重床工法はコンクリートスラブに金属製の支えなどを設置してから、内装材である床を設置する工法です。
主に防音対策として、コンクリートスラブへの振動を軽減するために使われる手法です。
フラットスラブ
フラットスラブとは、構造形式の1つで梁を必要としないスラブです。その代わり柱で支える構造になっています。
通常スラブは柱と柱は梁によってつながれ、強度を保っています。しかしその梁があることによって天井の一部が下がるので、見栄えは悪くなり空間的な広さも損なわれます。
フラットスラブは梁がない分、スラブと柱の結合部分を補強することで強度を保っています。
フラットスラブは梁がないため、空間を広く感じることができるのがメリットです。またスラブを補強するために支持部分を厚くしているので、上階の音が下階に伝わりにくいというメリットもあります。
海外ではよく用いられている構造ですが、地震大国である日本では地震が起きた際に梁がないことが原因で、床スラブが落下する可能性があることを懸念し、それほど多く用いられていません。
柱と梁が交わる接合部分を硬く留めて変形を防ぐラーメン構造と異なり、慎重な構造設計が必要になります。現在では地震について考慮した構造に改善されているため、今後日本でも活用される可能性が十分あります。
片持ちスラブ
片持ちスラブは、はね出しスラブや持ち出しスラブとも呼ばれます。スラブは通常両端を他のスラブと接合して固定していますが、片側が接合していない状態で屋根のように突き出したスラブが片持ちスラブです。主にエントランスの屋根部分や、窓の外のひさし、ベランダなどで使われています。
片持ちスラブは片側が支えのない状態のため、その持ち出しの長さについては限度があります。持ち出し部分を2m以上とすることもできますが、たわみの原因になりますので注意が必要です。
強度は両端を接合しているものに比べて弱くなりますが、もちろん構造計算して強度を保てるように設計しているので問題はありません。
この記事のポイント
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