ざっくり要約!
- 勾配天井とは屋根の形状に沿って、屋内側で天井が貼られた構造
- 勾配天井は開放感があり収納としても活用できるが、メンテナンスなどの手間がかかる
建築基準法(施行令第21条)では、居室における天井高は2.1m以上なければならないと規定されています。
一方で天井高の上限規定はありませんので、新築時に勾配天井を希望するケースも増えています。この記事では、勾配天井の特徴や注意点などを解説いたします。
記事サマリー
勾配天井とは?
まずは勾配天井とはどのような形状か解説いたします。
屋根の勾配に合わせて斜めにした天井
そもそも住宅(特に木造)にはさまざまな屋根形状があるのをご存知でしょうか。一般的な4つの屋根は以下の通りです。
・切り妻(きりづま)
1枚の紙を半分に折って載せたような形の屋根。和洋折衷に向き、瓦を載せた和風建築や勾配を大きくつけた洋風建築にも合う。
・寄棟(よせむね)
4面が「棟」と呼ばれる頂点のラインに合わさる形の屋根。構造的に強いので瓦屋根などと相性が良い。
・方形(ほうぎょう)
中央を頂点としたピラミッドのような形の屋根。正方形に近い住宅と相性が良い。
・片流れ(かたながれ)
折れ曲がる部分が無く1面に勾配を持たせた屋根。面積の少ない狭小住宅や太陽光パネルを有効に載せるための住宅などに取り入れられている。
勾配天井はそれぞれの屋根の形状に沿って、屋内側で天井が貼られた構造になります。また、屋根の形状だけでなく勾配に合わせた形状のため、屋根勾配の程度もポイントになります。
屋根勾配の一般的な種類
- 3寸勾配(約16.7度)
- 4寸勾配(約21.8度)
- 5寸勾配(約26.6度)
- 6寸勾配(約31度)
- 10寸勾配(45度)
勾配天井と聞くと、45度位の角度があるように思われがちですが、比較的緩やかで屋根面積が広い(長い)住宅ほど高低差が生まれる計算になります。一方で、勾配が緩いほど勾配天井の恩恵は少なくなってしまいます。
ドーンと上に突き抜ける空間が欲しい場合は、勾配天井よりも吹き抜け天井のほうが向いているでしょう。
勾配天井のメリット・デメリット
勾配天井のメリットとデメリットについて解説いたします。
メリット
まずはメリットについてみていきましょう。
開放感が生まれる
水平な天井がなく、屋根面に沿った天井となるので開放感が生まれます。
施工方法も異なり、天井がある場合は「天井断熱」で、天井より上の小屋裏は外気を流入させて換気する施工方法ですが、勾配天井は「屋根断熱」の施工方法で室内と一体化した空間となります。
断熱に関してはそれぞれ一長一短がありますのでどちらが良いとは言い切れませんが、上部の開放感を求める場合は勾配天井(屋根断熱)がおすすめです。
収納としても活用できる
頭上すべてを解放空間にしても良いですが、部分的にロフトなどを設けることもできます。
また、上部に床を設けると面積等によっては上階扱いとなるので注意が必要ですが、「屋根断熱」構造で小屋裏を収納スペースとして活用する方法もあります。
天窓やハイサイトライトをつけられる
水平な天井の場合は基本的に壁面の窓からの明かりだけですが、勾配天井の場合は屋根面に天窓を設置することで上部からの明かりを取り入れることもできます。
また、屋根形状を片屋根にし、高い方の壁面上部にハイサイトライト(高窓)を設置することで、窓面積が増えて日当たりが良くなる効果も期待できます。
おしゃれな家づくりが叶う
屋根形状により魅せ方も変わりますが、切り妻・寄棟・方形等の場合は「梁見せ天井」とし、古民家風なデザインにすることも可能です。
また、片流れ屋根の場合はロフトを設けて上下空間を有効利用することもできます。
デメリット
気になるデメリットにはどのようなものがあるか解説します。
費用がかさみやすい
通常の水平な天井なら、建築会社が脚立を使って作業できますが、勾配天井ともなると内部足場を別途組む必要があったり、斜め部分の作業の手間がかかったりするので、費用がかさみます。
また、勾配天井の天窓やハイサイトライトは熱損失が大きく、冬は屋外の冷気が室内に、夏は室内の冷気が屋外に流れでやすいことから、冷暖房の効率が下がってしまいます。そのため、断熱ガラス・断熱サッシの導入が必須ですが、一般的な仕様より費用がかさみます。
シーリングファンが必要
勾配天井は室内に高低差が生まれるので、冬は暖かい空気が上に溜まり、冷たい空気が下に溜まりがちです。そのため、シーリングファンで暖かい空気を下に循環させることが必要になります。
窓などの掃除がしにくい
勾配天井の良さを活かし、ハイサイドライト(高窓)や天窓を取り入れるケースも多いですが、掃除がしにくくなります。
また、虫などが舞い込んで壁上部に張り付いた状態が続いたり、溜まったホコリがシーリングファンの風で上から降ってきたりする場合もあるので、虫が苦手な方や潔癖症の方はこうした事態も想定した上で検討しましょう。
照明器具の数が必要
水平な天井の場合はシーリングライトで事足りますが、勾配天井の場合はペンダントライト(吊り下げ)や壁面からのブラケットライト、勾配天井面に組み込むダウンライトなどの組み合わせで室内を明るくするので、ある程度の器具数が必要になります。
メンテナンスが面倒
勾配天井の場合、シーリングファン、壁に設置した間接照明やブラケットライト、勾配天井部から吊り下げたペンダントライト、ハイサイトライト、天窓など、さまざまな箇所の掃除や電球の交換などが必要となります。業者に依頼しなければならない場合もあるため、メンテナンスの手間や費用も検討しておく必要があります。
居室の天井としては不向きな場合も
リビングなど開放感を求める空間であれば、勾配天井との相性が良いですが、居室の場合は就寝時に上を見上げた際、天井が斜めになっていることで平衡感覚に影響が出るケースがあるようです。
この場合、就寝時にタープ(布)を水平に張って天井が見えないようにすることで対策できる例もあります。
勾配天井を選んだときに後悔しないためのポイント
勾配天井を取り入れる際、どのようなポイントに注意すべきか解説いたします。
照明選び
頻繁に掃除したり、電球交換をしたりする必要のないよう、ホコリの溜まりにくいケース(傘)のデザインである照明器具やLED照明を選ぶことが大切です。
また、照明においては間接照明やダウンライトの導入も含め、室内の明るさがどの程度必要か、照射範囲はどうするか、色温度(昼白色・電球色など)はどうするか、LEDで色温度を変えられるものにするのかなど、設計者と綿密に打ち合わせましょう。
特に照度や温熱などの部分は、事前にショールームに行ったり、実際の商品を試したりすることで失敗を避けたいものです。
また、後付で機器を設置できるよう、コンセントの配置を多めにしておきましょう。
換気計画
照明計画同様に勾配天井は1部屋当たりの気積(体積)が大きくなるので、24時間の換気量も含め、シーリングファンの数や設置位置などの計画を綿密に行うようにしましょう。
断熱計画
勾配天井においては、冷暖房計画が最も重要です。断熱性能や気密性能とのバランスが省エネにつながります。
勾配天井は屋根断熱ですが、断熱ラインを部分的に天井断熱とつなげたり、寒い地域で使われるような断熱仕様にグレードアップしたりすることもひとつです。
また、エアコン、輻射熱式冷暖房、床暖房、ガスや石油ヒーターなど、どの機器を使うのか検討することも、居住後の快適性を左右します。
費用やメンテナンス
勾配天井部分は屋根断熱工法ですが、それ以外の壁や基礎において内断熱工法(一般的な断熱工法)にするのか、外断熱工法(外壁と躯体の間を断熱する工法)にするのか、窓断熱のグレードをどのようにするかなどで省エネ性能が変わり、光熱費にも大きく影響します。
また、防火・準防火地域といった外周部を燃えにくい仕様にしなければならない地域に建設する場合などは、網入りガラスや耐熱ガラスといった防火窓の費用がかさむので、より費用面での検討が必要になります。
メンテナンスに関しては、施工業者とメンテナンスのスケジュール管理および緊急時の対応を含めた打ち合わせをしておくとともに、毎年の大掃除などで自分でできるメンテナンスを具体的に洗い出しておくと安心です。
この記事のポイント
- 勾配天井のメリット・デメリットは?
開放感が生まれる、収納としても活用できる、天窓やハイサイトライトをつけられるといったメリットがある一方で、費用がかさみやすい、シーリングファンが必要、窓などの掃除がしにくいなどのデメリットがあります。
詳しくは「勾配天井のメリット・デメリット」をご覧ください。
- 勾配天井を選んだときに後悔しないためのポイントは?
照明選び、換気計画、断熱計画、費用やメンテナンスの4つのポイントについて、事前に確認しておくことが大切です。
詳しくは「勾配天井を選んだときに後悔しないためのポイント」をご覧ください。
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