ざっくり要約!
- IT重説はパソコンやテレビ、タブレット、スマートフォンなどの端末上で通話アプリを使用して行う重要事項説明
今ではすっかり定着したリモートワーク。不動産業界でもリモート化は進んでおり、そのひとつがIT重説(IT重要事項説明)です。対面での説明が原則であった重要事項説明ですが、2021年4月より賃貸・売買にかかわらずITによる非対面で行えるようになりました。そこで、本記事ではIT重説の概要、そのメリットとデメリットや実際の流れを解説します。
記事サマリー
IT重説とは?
不動産の売買契約や賃貸借契約を交わすときには、重要事項を記載した「重要事項説明書」を交付しなくてはなりません。不動産取引は高額で権利関係が複雑なうえ、一般的に買主・借主は不動産に関しての知識や経験が豊富でないことがほとんどでしょう。
そこで、売買契約の買主、賃貸借契約の借主を保護するために、宅建業者には重要事項説明が義務づけられています。契約成立の前に書面で重要事項説明書を発行し、宅地建物取引士がその内容を買主、借主に説明します。
以前は対面で行う必要があった重要事項説明(重説)ですが、2017年10月より賃貸借契約、2021年4月からは売買契約においてパソコンやスマートフォンなどのITを用いての非対面の重要説明が認められるようになりました。これがIT重要事項説明、つまりIT重説です。
スマホやパソコンなどを使って行う重要事項説明
IT重説は、パソコンやテレビ、タブレット、スマートフォンなどの端末上で通話アプリを使用して行います。アプリはZoomやGoogle Meet、Skypeなどが主に利用されます。
このようなアプリが使える端末と、インターネット環境があれば、自宅や会社など都合の良い場所で、重要事項説明を受けることができます。
IT重説対応物件とは?
IT重説は場所を問わず行うことができるため大変便利ですが、前提として次の4つの要件が必要です。
- 双方向でやりとりできるIT環境
- 重要事項説明書等の事前送付
- 説明開始前に相手方の重要事項説明書等の準備とIT環境の確認
- 宅地建物取引士証を相手方が視認できたことの画面上での確認
上記4つの要件を満たした上で、次の条件を満たした物件がIT重説対応物件となります。
- 不動産会社がIT重説に対応していること
- 売主・貸主からIT重説の同意が得られること
IT重説を行うために特別な登録やライセンスは不要ですが、すべての不動産会社がIT重説を行う準備が整っているわけではないため、事前に確認が必要です。
IT重説のメリット・デメリット
メリットしかないように思えるIT重説ですが、デメリットがないわけではありません。
改めてIT重説のメリット・デメリットを確認しましょう。
メリット
売買契約の買主の立場からみたIT重説は、次のようなメリットがあります。
日程が合わせやすく場所を選ばない
インターネット環境が整っていれば、自宅や会社など、都合のよい場所で重説を受けられるのは最大のメリットでしょう。店舗に出向く必要がないため、仕事が忙しい方、外出が難しい方でも重要事項説明を受けるのが容易です。
自宅で重要事項説明を受けることができれば、移動時間なども短縮できることから、日程調整もスムーズにできるでしょう。
時間などの負担が少なくなる
以前は店舗まで行かなくてはならなかった重要事項説明が自宅などでも受けられるため、特に遠方に住んでいる場合は、移動時間と交通費の負担が減ります。
国土交通省が調査したアンケートでも「店舗を訪問する必要がない点が便利だった」という声が多数あがっています。
事前に重要事項説明書を確認できる
IT重説を行う要件として、不動産会社は事前に買主へ重要事項説明書を送付しなくてはなりません。自宅でIT重説を受ける場合は、自宅に重要事項説明書が届きます。
事前に内容を確認することが可能なため、内容をより深く把握することができます。疑問点も事前に洗い出せるので、トラブルの防止に役立つでしょう。
対面と比べ威圧感が少ない
IT重説は、自分の都合の良い場所で比較的リラックスした状態で受けることができます。威圧感が少ないため、質問がしやすいという声もあがっています。
双方了解のもと録画が可能
買主と不動産会社の双方の了解があれば、IT重説を録画に残すことが可能です。録画をした場合はコピーを求めることができます。万が一トラブルが発生した際にも有効な資料になるでしょう。
デメリット
つづいて、売買契約の買主の立場からみたIT重説のデメリットを確認しましょう。
通信環境によっては実施が難しくなる
IT重説はインターネットの使える通信環境が必須です。使用する端末はスマートフォンでも可能ですが、1時間を超えることも想定される重要事項説明ではWi-Fi環境下で行うのがベストです。安定した通信環境の確保ができない場合は、途中で回線が途切れ中断するリスクがあります。
売主や貸主の同意が必要
IT重説は、環境が整っていても売主の同意がなければ実行できません。重要事項説明には売主の個人情報も含まれるため、同意が取れない限り、いくら買主が希望をしてもIT重説ではなく、対面にて従来型の重説を行う必要があります。
画面を見続けるため疲れる
IT重説中は、パソコンなどの画面を見続ける状態になるでしょう。1時間程度はその状態が続くため、オンラインミーティングなどに慣れていない場合は対面以上に疲れてしまう場合があります。
資料を追うのが難しい
IT重説はオンラインで行うため、宅地建物取引士が説明している資料と、自分の確認している資料が同一のものか確認するのが難しいといったデメリットがあります。また事前に資料を広げられる程度のテーブル等がない場合、資料を追うのが難しいことも考えられます。
高齢者にはハードルが高い
スマートフォンやパソコンを日常的に使用している高齢者の方を除き、IT重説は高齢者の方にはハードルが高いでしょう。スマートフォンを使っていても、ZoomやLineなどのアプリを使い慣れていない場合には、IT重説を始める前段階で戸惑ってしまうことが想定されます。「こんな大変なら対面のほうが良い!」と感じてしまうのも、想像に難くありません。
IT重説の具体的な流れ
世の中のペーパーレス化が進む中、不動産業界にも変化がありました。令和4年5月18日より、重要事項説明書の電子化が認められるようになったのです。これにより、電子契約に対応した不動産会社であれば、完全オンラインで重説・売買契約を行うことも可能となりました。ただし、売買契約に関しては手付金のやりとりなどもあるため、同時進行ではなく、別で行われることも多いようです。
実際にIT重説が行われる場合の具体的な流れを確認しましょう。
①IT環境の確認
最初にIT重説が実施できる状態か確認します。通常、不動産業者が、買主がIT重説に必要なマイク・カメラ・スピーカー機能などIT重説の条件を満たす端末を持っているか確認します。併せて買主に、IT重説時に使用するアプリのダウンロードを行ってもらいます。
②事前の接続テスト
IT重説を行う前に買主側の接続テストを事前に行います。このテストでは、音声が途切れないか、宅地建物取引士証が鮮明に確認できるか、画面が停止してしまわないかなどの確認をします。
③重要事項説明書の送付
事前に行ったテストで、IT重説を行える状態だと判断できれば、不動産会社から買主に書類一式を送付します。宅地建物取引士の記名済み重要事項説明書は、事前に内容の確認をしてもらうためにも、IT重要説明の前日までに到着するよう発送されます。
不動産売買契約も併せて行う場合には、売買契約書も同封されます。また、電子化された重要事項説明書や売買契約書を利用するケースでは、電子メールやWeb上へのアップロード、USBメモリなどの方法で提供されます。
④宅地建物取引士証を提示
宅地建物取引士は取引証を買主に提示し、取引証を視認できたことを確認する必要があります。
具体的には、宅地建物取引証に記載された名前を読みあげてもらうなどで確認をとります。宅地建物取引証の顔写真と、画面上の取引士の顔が同一人物であると認識できているかの確認も併せて行います。
⑤契約者の身分証明証を提示
重要事項説明は、取引条件や権利関係等について事前に説明を受けて理解した上で契約を結ぶことで、トラブルを防止するために行われるものです。
そのため、説明を受ける人が本人や代理人でなければ意味がありません。本人(代理人)であることを証明するために、免許証やパスポート等の身分証明書を提示します。
⑥契約者の同意のもとで録画・録音し、重要事項説明を行う
買主の同意のもとで、重要事項説明の録画・録音をしながら、物件や契約内容などについて説明します。契約者が事前に洗い出した疑問点もこの時に質問をします。
対面よりも契約者の理解度が把握しづらいため、宅地建物取引士は注意を払いながら進めていきます。
⑦契約者が署名捺印または電子署名をする
重要事項説明を受けて疑問点などがなければ、書面の重要事項説明書に署名捺印します。売買契約を続けて行った場合には、署名済みの売買契約書と併せて不動産会社に返送します。
電子化された重要事項説明書の場合は、電子署名を付与し、電子メールやWeb上にアップロードする形で返信します。併せて売買契約を行った場合には、電子化された売買契約書にも電子署名を付与し、同様に返信します。
IT重説で注意したいポイント
最後にIT重説を受ける際に注意が必要なポイント2点を説明します。
通信環境を整えておく
通信環境が整っておらず、声が途切れてしまったり、画面が止まったりしてしまう場合は、IT重説を中断しなくてはなりません。
通信環境が改善されなければ、改めて重要事項説明を行う必要があります。二度手間になってしまうことのないよう、事前に通信環境を整えておきましょう。
不明点をそのままにしない
IT重説は便利な反面、自分自身で通信環境を整え、ZoomやLine、Skypeなどのアプリをダウンロードし、使える状態にしなくてはなりません。
通信環境やアプリのトラブルが起こった場合、不動産会社の担当者は同席していないため、その場で直接サポートをすることができません。不明な点はそのままにせず、事前に担当者に確認をし、当日はIT重説がスムーズに進むようにしましょう。
また重要事項説明の最中は、建築図面や登記事項証明書、用途地域の地図などを示された上で説明を受けることもあるため、できるだけディスプレイ画面の大きな端末を用意し、見逃しや不明な点があれば躊躇せず、質問するようにしましょう。
この記事のポイント
- IT重説とは何ですか?
IT重説とは、スマホやパソコンなどを使って行う重要事項説明です。
以前は対面で行う必要があった重要事項説明ですが、2017年10月より賃貸借契約、2021年4月からは売買契約においてパソコンやスマートフォンなどのITを用いての非対面の重要説明が認められるようになりました。
詳しくは「IT重説とは?」をご覧ください。
- IT重説の具体的な流れは?
①IT環境の確認②事前の接続テスト③重要事項説明書の送付④宅地建物取引士証を提示⑤契約者の身分証明証を提示⑥契約者の同意のもとで録画・録音し、重要事項説明を行うといった流れで行われます。
詳しくは「IT重説の具体的な流れ」をご覧ください。
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