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母屋の意味は2つある!離れとつなぐ場合の注意点も紹介

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 「母屋」には「もや」と「おもや」という2つの読み方があり、「もや」は屋根材を支える部材の名称、「おもや」は主たる建物という意味を持つ
  • 母屋(おもや)と離れをつなぐリフォームを行う場合、建ぺい率と容積率の規制を理解しておく必要がある

「母屋」という漢字には、「もや」と「おもや」という2つの読み方があり、それぞれ意味がまったく異なってきます。

「もや」も「おもや」も同じく建築用語ですが、「もや」は屋根材を支える部材の名称であり、「おもや」は主たる建物のことを指すという点が違います。
同じ漢字であっても読み方を変えるとまったく違うものとなることから、「母屋」という表記を見たら前後の文脈から意味を読み解く必要があります。

では、「もや」も「おもや」とは、具体的にはどのようなものを指すのでしょうか。
この記事では、「母屋」について「もや」と「おもや」のそれぞれを詳しく解説していきます。

母屋の意味は2つ

「もや」と「おもや」の2つの意味について解説します。

母屋(もや)は建築部材

「もや」とは、屋根を支える水平材の一つです。

屋根の骨組みは、主に水平材と斜め材の2つで構成されており、水平材には母屋と棟木の2種類があります。棟木とは屋根の頂部に配される水平材のことで、母屋は棟木以外の水平材です。

一方で、屋根の斜め材は、垂木(たるき)と呼びます。垂木は、屋根なり(斜め方向)に設けられた木材のことで、屋根下地や屋根材を支える役割を果たします。

棟木と母屋は、垂木を支える木材という関係となります。

母屋(おもや)は「離れ」との対比

「おもや」とは、2つ以上の建築物がある場合、主たる建築物のことを指します。

まず、原則として建物は「一敷地一建築物」というルールがあります。そのため、敷地に1軒の戸建て住宅がすでに建っている場合、たとえ家族のものであっても原則として別の住宅を同じ敷地に建てることはできません。

別の住宅を建てる場合には、別の敷地で建築確認申請を取って建てる必要があります。
建築確認申請とは、着工前に行う図面審査のことを指します。

ただし、同一敷地内でも「用途上不可分の関係にある建築物」に関しては、同一敷地内に2棟以上の建築物を建てることは可能です。用途上不可分の関係にある建築物は、「付属建築物」と呼ばれます。

付属建築物の例としては、下表のようなものがあります。

主要用途主要用途に付属する建築物の例
専用住宅離れ、車庫、物置、納屋、茶室、東屋、温室、畜舎など
共同住宅車庫、自動車置場、物置、プロパン置場、都市ガスの減圧場、変電室
旅館・ホテル離れ(客室)、浴室棟、車庫、東屋、温室、倉庫
工場・作業場事務棟、倉庫、変電室、危険物貯蔵庫、各種機械室、更衣棟、浴室棟、食堂棟、守衛室
学校・校舎実習棟、図書館、体育館、更衣室棟、給食作業棟、倉庫

上表の専用住宅における付属建築物の中に「離れ」があります。離れとは、母屋から離れて立っている個室のことです。

離れは母屋と用途上不可分の関係にある付属建築物であることから、1つの敷地内に別で建てることができます。

その他、茶室や東屋、納屋等も付属建築物であることから離れと同じ扱いです。

一方で、たまに同じ敷地内に親の家と子の家を2棟建てているケースを見かけることがあります。1つの敷地に2棟建っているケースは、それぞれの建物の土地を別の建築敷地として建築確認申請を通しているものと推測されます。

「一敷地一建築物」のルールである「一敷地」とは、建築確認申請を通す上での建築敷地のことであり、必ずしも土地が分筆されている必要はありません。分筆とは、土地を切って分けることを指します。そのため、見た目上、1つの敷地に2つ以上の建物が建っていたとしても、違法とは限らないのです。

母屋(もや)の特徴や役割

母屋の特徴と役割について解説します。

屋根の一部として活用される

屋根の骨組みは頂部に棟木があり、棟木から少し下がった位置に母屋が設けられます。母屋は棟木と平行に屋根勾配に沿って何本も配される水平材です。母屋と棟木によって屋根勾配が形成され、その上に垂木が組まれる形となります。

母屋のような水平材は、建物の重みを柱や基礎に伝える役割があり、横架材とも呼ばれます。
横架材には、母屋の他に梁や桁、棟木、胴差(どうさし)等があります。梁とは建物の水平面にかけられている材、桁とは外壁の上部で垂木を支える材、胴差とは2階や3階の床を受けるための外周部の材のことです。

母屋も、梁や桁、棟木、胴差と同様に水平方向に配されて重みを支える役割がある材になります。

なお、母屋を支えるための縦材のことを「母屋束(もやづか)」、軒に一番近い母屋のことを「鼻母屋(はなもや)」と呼びます。

母屋下がりとは?

母屋下がりとは、屋根なりに斜めに作られている天井のことです。

部屋が狭く見えたり、背の高い家具が置けなかったりするため、積極的に作られることは少ないですが、やむを得ない理由で母屋下がりの部屋ができてしまうことがあります。

母屋下がりの部屋ができてしまう主な理由は、建築基準法上の斜線制限が挙げられます。斜線制限はその名の通り、制限を受けると建物が斜めの形状になってしまう規制のことです。

建築基準法の斜線制限には、「道路斜線制限」や「隣地斜線制限」、「北側斜線制限」と呼ばれるものがあります。

これらの斜線制限は、主には周辺の日照を確保するために設けられた制限です。斜線制限の有無は、土地に指定されている用途地域によっても異なります。用途地域とは、エリアごとに建築可能な建物の用途を定めた規制のことです。

道路斜線制限はすべての用途地域、隣地斜線制限は第一種および第二種の低層住居専用地域を除くすべての地域、北側斜線制限は第一種および第二種の低層住居専用地域にかかる規制です(第一種および第二種の中高層住居専用地域にも北側斜線制限はかかりますが、日影規制がかかる場合には除かれます)。

北側斜線制限がかかる第一種および第二種の低層住居専用地域は、主に戸建て住宅が建てられる用途地域です。戸建て住宅においても、建物の設計によっては北側斜線制限にかかることで母屋下がりが発生してしまうこともあります。

なお、斜線制限があるからといって、常に母屋下がりの部屋が生じるわけではありません。母屋下がりの部屋は使い勝手が悪くなるため、通常、設計者は母屋下がりができないように建物を設計します。

しかしながら、例えば前面道路の幅員が狭い、敷地が狭い等の悪条件が重なると、やむを得ず母屋下がりを作らざるを得ないことがあります。

注文住宅で母屋下がりの部屋が発生しそうな場合には、発生する理由は何か、また回避方法はないか等を設計者と検討することをおすすめします。

出典:住宅団地の再生に関係する現行制度について|国土交通省

母屋(おもや)と離れをつなぐリフォーム例と注意点

母屋(おもや)と離れをつなぐリフォームを行う場合、建ぺい率と容積率の規制を理解しておく必要があります。建ぺい率とは、建築面積(概ね建物を上から見たときの面積のこと)の敷地面積に対する割合のことです。容積率とは、敷地面積に対する建物の延床面積の割合のことを指します。

建ぺい率や容積率とは、建築基準法上の集団規定と呼ばれるものです。集団規定は、原則として都市計画法で指定されている都市計画区域および準都市計画区域に適用される規定のことを指します。都市計画区域は、一般的に多くの人が暮らしている地域に指定されています。

ここで、建ぺい率の制限を受ける建築面積と、容積率の制限を受ける延べ床面積は、それぞれ母屋と離れの合計面積であるという点がポイントです。

例えば、土地の面積が100平米で建ぺい率が60%と指定されている場合、母屋と離れの合計の建築面積が60平米以内であれば建ぺい率の規制はクリアしていることになります。

母屋と離れをつなぐリフォームを行う場合、新たに床面積が発生して建ぺい率と容積率がオーバーしないようにすることが注意点です。床面積が発生するケースとは、例えば屋根と壁で覆われた廊下でつなぐ等の方法が挙げられます。

現状の母屋と離れの建築面積と延床面積の合計が、建ぺい率と容積率をめいっぱい消化しているようであれば、床面積を増やしてしまう方法で両者をつなぐことはできません。建ぺい率と容積率に余剰がない場合には、床面積を発生させないような方法で両者をつなぐ必要があります。

渡り廊下でつなぐ

渡り廊下とは、建築基準法でいうと大規模な商業施設で見られるような2棟の建物をつなぐ空中の廊下のことを指します。母屋と離れを空中廊下でつなぐというのは非現実的であるため、ここでいう「渡り廊下」は単なる廊下とお考えください。

渡り廊下でつなぐ場合、廊下をどのような構造とするかで考え方が異なってきます。屋根と壁で覆うような廊下の構造としてしまうと、その廊下の面積は床面積に算入されてしまいます。

つまり、建ぺい率と容積率の規制によりこれ以上床面積を増やせない場合には、屋根と壁で覆う渡り廊下でつなぐことはできません。

一方で、カーポートのように外部が解放されており、雨除けだけを設置するような通路の場合、その通路の面積は床面積に算入されません。このような雨除けだけ設置した通路であれば、設置できる可能性はあります(最終的には実態を見て設置の可否が判断されます)。

ただし、この通路が例えば物を置く等の屋内的用途として利用されていると、床面積に算入されてしまうケースがあります。

いずれにしても、渡り廊下で母屋と離れをつなぐ場合には、建ぺい率と容積率がオーバーしないことを意識する必要があります。詳しくはリフォーム会社に相談しましょう。

玄関ホールでつなぐ

母屋と離れは、玄関ホールを延ばしてつなぐ例もあります。玄関ホールでつなぐケースも、建ぺい率と容積率に注意する必要があります。

玄関ホールは、通常、屋根と壁で囲われる空間であることから、床面積に算入されることが一般的です。そのため、玄関ホールでつなぐ場合には、建ぺい率と容積率に余剰があることが条件となります。

ウッドデッキでつなぐ

母屋と離れをウッドデッキでつなぐ例も見られます。ウッドデッキとは、屋外に床板を張って仕上げる木製のスペースのことです。庭の一部に板を張るだけであるため、床面積には算入されません。建ぺい率と容積率に余剰がない場合でも、ウッドデッキなら可能な接続方法となります。

ウッドデッキは、天然木または人工木が使われます。天然木は質感が良く雰囲気もありますが、価格が高く腐食も早いという特徴があります。

それに対して、人工木は風合いがやや失われますが、価格も安く腐食しにくいという点が特徴です。また、一般的に人工木の方が、メンテナンスもしやすいとされています。

ウッドデッキでつなぐ際は、コストやメンテナンス等を加味した上で天然木や人工木を選ぶことをおすすめします。

この記事のポイント

母屋とは何ですか?

「母屋」という漢字には、「もや」と「おもや」という2つの読み方があります。

「もや」とは、屋根を支える水平材の一つで、「おもや」とは、2つ以上の建築物がある場合、主たる建築物のことを指します。

詳しくは「母屋の意味は2つ」をご覧ください。

母屋(おもや)と離れをつなぐリフォームを行う場合の注意点は?

母屋(おもや)と離れをつなぐリフォームを行う場合、建ぺい率と容積率の規制を理解しておく必要があります。

建ぺい率とは、建築面積(概ね建物を上から見たときの面積のこと)の敷地面積に対する割合のことです。容積率とは、敷地面積に対する建物の延床面積の割合のことを指します。

建ぺい率の制限を受ける建築面積と、容積率の制限を受ける延べ床面積は、それぞれ母屋と離れの合計面積であるという点がポイントです。

詳しくは「母屋(おもや)と離れをつなぐリフォーム例と注意点」をご覧ください。

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