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固定資産税の減税措置とは?適用条件や申請方法を解説

この記事の監修

植村拓真
公認会計士/税理士 植村会計事務所・代表

植村会計事務所代表税理士・公認会計士。大手監査法人勤務時に鉄道系不動産会社の会計監査を経験。
監査法人独立後も不動産会社の予算管理や事業計画の策定に携わる他、不動産投資家向けの税務顧問、節税アドバイス、申告代行業務なども担当。
高い効率性・正確性を追求すべく、ITツールを駆使した税理士業務の運営を行う傍ら、各種セミナーや執筆協力なども行なっている。

ざっくり要約!

  • 固定資産税の減税措置を受けると、固定資産税の負担が大きく軽減される可能性があります。
  • 固定資産税の減税措置を受けるには、申請期限までに不動産が所在する自治体に申請しなければなりません。

固定資産税は、土地や建物などの固定資産を1月1日時点で所有している人に納税義務がある税金です。納税額は「固定資産税評価額(課税標準額)× 税率」で求められます。

固定資産税には、納税額の負担を軽減する「減税措置」が設けられており、適用を受けることで納税額が抑えられます。ただし、適用要件を満たしていなかったり、申請を忘れたりすると減税されないので注意が必要です。

本記事では、固定資産税の減税措置の種類や適用要件、申請方法を解説します。

固定資産税とは?

固定資産税とは、土地や建物などの固定資産を1月1日時点で所有している人が納付する地方税です。固定資産税は、教育や福祉などの行政サービスに広く活用されています。固定資産税の金額と、いつまでに納税しなければならないかを詳しく見ていきましょう。

固定資産税はいくら?

固定資産税の納税額は、以下の計算式で求められます。

固定資産税 = 固定資産税評価額(課税標準額)× 税率

固定資産税評価額は、土地や建物の販売価格ではなく、3年ごとに自治体が評価する価格のことです。税率は「1.4%」とされていることが多いですが、自治体ごとに適用税率が異なるので注意が必要です。

固定資産税額を計算する際は、居住している自治体が算定した固定資産税評価額と適用税率を事前に確認しておきましょう。

固定資産税はいつ払う?

固定資産税は、1年分を4期に分けて納付する方法が一般的で、納期限は自治体ごとに以下のように異なります(令和5年度)。

第1期第2期第3期第4期
東京23区6月10月12月2月
名古屋市5月7月1月2月
大阪市5月7月12月2月

固定資産税の納税通知書は、納期限の10日前までに交付することが法律で定められているため、多くの自治体が4〜5月に発行しています。

なお、納期限までに納付しなかった場合は、固定資産税額と滞納日数に応じた「延滞金」を納めることとなります。固定資産税をいつまでに納付すればいいのかわからないときは、放置することなく自治体に問い合わせることが大切です。

固定資産税の減税措置

一定要件を満たした固定資産を所有している場合は、自治体に申請することで以下の減税措置の適用が受けられます。

減税措置名減税対象減税割合減税期間
新築住宅の軽減措置建物2分の1戸建ては3年間
マンションは5年間
住宅用地の特例土地6分の1〜3分の1基本的に建物を解体するまで
リフォーム減税建物3分の1〜3分の21年間
マンション長寿命化促進税制建物6分の1〜2分の1令和7年3月31日まで

減税対象や適用要件は、減税措置によって異なるので、自身が該当する可能性があるものを確認しておきましょう。

1.新築住宅の軽減措置

新築住宅の軽減措置は、以下の要件を満たした新築住宅の固定資産税を2分の1まで減額できる制度です。

  • 令和6年3月31年までに新築した
  • 床面積が50〜280㎡
  • 居住部分の割合が2分の1以上(併用住宅)

固定資産税の減税範囲は、床面積の120㎡までとなっており、120㎡を超えた床面積分は減税対象外です。減税期間は建物種別によって異なり、戸建てが3年、マンションは5年になります。

新築住宅が長期優良住宅に該当すると、減税期間が戸建て5年、マンション7年まで延長されます。長期優良住宅とは、良好な状態で長く使い続けられる耐震性や耐久性などに優れた住宅のことです。

なお、新築住宅を土砂災害特別警戒区域などの自治体が指定した地域に建てた場合は、新築住宅の軽減措置の適用対象外になってしまう可能性があります。特別警戒区域に住宅を建てると、固定資産税の軽減措置が受けられないだけでなく、被災リスクが高まるので、住宅を建てる際は自治体のハザードマップなどを確認しておきましょう。

2.住宅用地の特例

住宅用地の特例は、住宅の敷地として活用している土地の「固定資産税の課税標準額」を軽減する制度です。課税標準額とは、固定資産税を計算する際の基礎となる金額で、課税標準額が低くなるほど固定資産税の納税額が少なくなります。なお、同特例では都市計画税の課税標準額も減税対象です。

住宅用地の特例は、土地面積によって減税割合が異なります。減税割合は、次の通りです。

区分固定資産税課税標準額都市計画税課税標準額
200㎡までの部分(小規模住宅用地)6分の13分の1
200㎡を超える部分(一般住宅用地)3分の13分の2

たとえば、250㎡の住宅用地の場合は、200㎡までが6分の1、残りの50㎡が3分の1の課税標準額として計算します。

なお、アパートのように同じ敷地内に2戸以上の住宅がある場合は、1戸につき200㎡の敷地が小規模住宅用地と見なされます。具体的には、総戸数4戸のアパートが建つ土地は、800㎡までが小規模住宅用地です。

住宅用地の特例は、適用期限が設けられていないため、基本的には住宅用地として敷地を活用している限り適用が受けられます。建物を解体すると住宅用地の特例の適用対象外となり、固定資産税の負担が大きくなってしまうので注意しましょう。

3.リフォーム減税

リフォーム減税は、令和6年3月31日までに一定要件を満たしたリフォームをした場合に、翌年度分の建物にかかる固定資産税が減税される制度です。減税内容は、実施するリフォームの種類によって以下のように異なります。

リフォームの種類減税範囲(床面積)減税割合対象住宅
耐震120㎡2分の1・昭和57年1月1日以前に所在している
・改修した家屋の床面積の2分の1が居住用である(併用住宅)
バリアフリー100㎡3分の1・新築から10年以上経過している
・賃貸住宅に該当しない
・改修後の床面積が50〜280㎡である
・改修した家屋の床面積の2分の1が居住用である(併用住宅)
省エネ120㎡3分の1・平成26年4月1日以前から所在している
・賃貸住宅に該当しない
・改修後の床面積が50〜280㎡である
・改修した家屋の床面積の2分の1が居住用である(併用住宅)
長期優良住宅化120㎡3分の2・平成26年4月1日以前から所在している(省エネ工事のみ)
・昭和57年1月1日以前から所在している(耐震工事のみ)
・賃貸住宅に該当しない
・改修後の床面積が50〜280㎡である
・改修した家屋の床面積の2分の1が居住用である(併用住宅)

リフォーム減税は、対象住宅に該当しているだけでなく、居住者や工事内容といったリフォームごとに設定されている要件を満たしていなければ適用が受けられません。

なお、リフォーム減税では固定資産税だけでなく、所得税の減税措置も受けられます。所得税の減税措置には、同居対応や住宅ローン減税などもあるので、固定資産税の軽減措置に該当しない場合でも確認してみるとよいでしょう。

4.【2024年度から】マンション長寿命化促進税制

マンション長寿命化促進税制は、以下の要件を満たしたマンションが長寿命化工事をした際に固定資産税が減税される制度です。長寿命化工事とは、外壁塗装や防水工事などのマンションの寿命を延ばすことを目的にした工事をいいます。

  • 築20年以上経過している
  • 総戸数が10戸以上ある
  • 過去に長寿命化工事を実施している
  • 管理計画認定マンションのうち令和3年9月1日以降に修繕積立金を一定水準以上に引き上げたマンションまたは助言指導に係る管理者等の管理組合に係るマンションに該当する

管理計画認定マンションとは、管理計画の認定基準に適合し、都道府県から認定を受けたマンションのことです。一方、助言指導に係る管理者等の管理組合に係るマンションとは、助言や指導によって見直した長期修繕計画が一定基準を満たしたマンションをいいます。

マンション長寿命化促進税制の減税割合は、6分の1から2分の1の範囲で自治体の条例によって決定され、1戸あたり100㎡までが減税範囲となります。

令和5年4月1日から令和7年3月31日までに実施した長寿命化工事が対象となるので、居住しているマンションで修繕工事が計画されている場合は、管理会社または管理組合に確認してみるのがおすすめです。

固定資産税減税措置の申請方法

固定資産税の減税措置を受ける際は、以下の申請期限までに不動産が所在する自治体へ申請しなければなりません。なお、減税措置の申請期限は、自治体によって異なるケースがあので、いつまでに申請すればよいのかを事前に確認しておきましょう。

減税措置名申請期限
新築住宅の軽減措置新築した日の翌年の1月31日
住宅用地の特例申請が必要となった日の翌年の1月31日
リフォーム減税工事完了後3ヶ月以内
マンション長寿命化促進税制工事完了後3ヶ月以内

固定資産税の減税措置の申請を忘れたら、減税措置が受けられなくなるため、固定資産税の負担が大きくなってしまいます。同様に、減税分の還付を受けることも、基本的にはできません。そのため、固定資産税の減税措置の申請できる条件を満たしている場合は、決して忘れないように注意しましょう。

また、役場や税事務所などのように固定資産税を担当している窓口が自治体ごとに異なるので、担当窓口を探しているうちに申請期限を過ぎてしまうことがないように注意しなければなりません。減税措置の申請をどこで手続きをするべきかわからない場合は、市区町村役場で確認してみましょう。

まとめ

固定資産税の減税措置を活用すると、固定資産税の負担を大きく軽減できる可能性があります。しかし、適用要件を満たしていなかったり、申請を忘れたりすると適用が受けられなくなってしまうので注意が必要です。

新築購入やリフォームを検討している方は、どのような適用要件があるのかを事前に確認しておきましょう。

この記事のポイント

固定資産税の減税措置にはどんな種類がある?

新築住宅の軽減措置、住宅用地の特例、リフォーム減税、マンション長寿化促進税制などがあります。

詳しくは「固定資産税の減税措置」をご覧ください。

固定資産税の減税措置の申請を忘れたら?

固定資産税の減税措置が受けられなくなり、固定資産税の負担が大きくなってしまいます。

詳しくは「固定資産税軽減措置の申請方法」をご覧ください。

固定資産税の減税措置はどこに申請する?

不動産が所在する自治体に申請します。

詳しくは「固定資産税軽減措置の申請方法」をご覧ください。

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