日本では高齢者の人口が年々増加しており、総務省統計局によると2040年には全体人口の35.3%が65歳以上の高齢者になると予測されています。
高齢になると体力の衰えや病気の後遺症などによって、自立した生活を送れなくなる可能性があります。自立した生活が難しくなったときには、介護施設の利用が一つの手段となります。
しかし、介護施設は目的やサービス内容に応じてさまざまな種類があり、どの介護施設を選べば良いのか迷ってしまうかもしれません。
この記事では、介護施設を利用者の身体状態別に解説します。あわせて、費用やサービス内容など、介護施設を選ぶ際のポイントも紹介します。
実際に自身や家族が介護施設を利用する前に理解しておきましょう。
記事サマリー
介護施設とは日常生活に必要なサポートを受けられる施設
介護施設とは、2000年に施行された介護保険法において、高齢者の介護を社会全体で支え合うことを目的とした施設サービスに分類される施設です。
広義の意味では、介護サービスを提供する施設全般を総称して、介護施設といわれることもあります。
この記事では、介護サービスを提供する施設のなかでも、介護保険法上で施設サービスに分類される施設について解説します。
介護保険法上で定められている介護施設は、以下の3施設です。
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設(老人保健施設)
- 介護療養型医療施設
機能やサービスの内容に違いはありますが、いずれも日常生活に必要なサポートを受けることができます。
介護の度合いによって利用できる介護施設は異なる
介護施設はそれぞれ施設の目的や利用条件などがあるため、どの施設でも自由に選べるわけではありません。
その理由としては、利用者によって必要なサービスが異なるからです。
例えば、身体的な衰えから日常生活が困難な方は、日常生活上の世話がおもに必要となり、病気によって身体や精神状態が安定していない方は、医療的なケアが必要となります。
ここでは、利用者の介護の度合いから、利用できる介護施設を詳しくみていきましょう。
在宅での生活が困難な要介護高齢者
身体や精神の障害によって、在宅での生活が困難な要介護高齢者の方が利用できる介護施設が介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)です。
介護老人福祉施設のなかでも、定員が29名以下の施設は、地域密着型介護老人福祉施設(地域密着型特別養護老人ホーム)といわれます。
介護老人福祉施設で提供されるサービスは、以下のとおりです。
- 食事や排泄、入浴など日常生活における介護
- 利用者の身体的機能を維持・向上させるための機能訓練
- 健康管理や療養上の世話
介護老人福祉施設を利用できるのは原則、要介護認定で要介護3以上に認定された方です。
そのため、基本的には要介護1・2の方は利用することができません。
ただし、例外として、やむを得ない事情で介護老人福祉施設以外での生活が困難だと認められる場合は、要介護1・2の方も利用できます。
例外となるやむを得ない事情は、以下のとおりです。
- 認知症により、日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さがよく見られ、在宅での生活が困難な状態
- 精神障害・知的障害などをともない、日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さがよく見られ、在宅での生活が困難な状態
- 家族などからの深刻な虐待が疑われるなど、心身の安全・安心の確保が困難な状態
- 単身世帯や、同居家族が高齢・病弱で、家族などからの支援が期待できないうえに、地域の介護サービスや生活支援が十分に供給されず、在宅での生活が困難な状態
介護老人福祉施設の入所者の平均要介護度は上昇傾向にあり、2020年に厚生労働省が公表した資料によると、2018年度の平均要介護度は3.95となっています。
在宅復帰を目指す要介護高齢者
在宅への復帰を目指し、病状が安定しているときに介護や看護、機能訓練を受けられる介護施設が介護老人保健施設(老人保健施設)です。
介護老人保健施設では、以下のサービスが提供されます。
- 日常生活における世話
- 在宅復帰を目指したリハビリテーション
- 施設サービス計画に基づいた看護や機能訓練など
介護老人保健施設の特徴は、リハビリテーションが充実していることです。在宅への復帰を目的とした施設であることから、利用者の身体機能を維持・回復をさせるためのリハビリテーションが重要視されています。
そのため、施設にはリハビリテーションを提供する理学療法士や作業療法士などが配置されているのです。
介護老人保健施設は原則3ヵ月で、在宅への復帰を目指します。
しかし、3ヵ月経過しても在宅への復帰が難しそうだと判断された場合には、入所期間の延長が可能です。
2020年に厚生労働省が公表した資料(※)によると、介護老人保健施設に入所される方の平均在所日数は299日となっています。同資料によると平均要介護度は3.2となり、入所者の年齢割合は85歳~94歳が51.6%と最多です。
(※)厚生労働省介護給付費分科会 第183回(令和2年8月27日) 資料「介護老人保健施設」
医療が必要な要介護高齢者
医療的なケアを欠かせない状態にある要介護高齢者が、長期間療養するための介護施設が介護療養型医療施設です。介護療養型医療施設は、他の介護施設では対応が難しい要介護度の高い利用者も受け入れられるように医療ケアが充実しています。そのため、平均要介護度が4.3、利用者の44.3%が90歳以上と、要介護度の高い高齢の入居者が多い傾向にあります。
介護療養型医療施設は、2023年度末までに完全廃止されることが決定しています。そして、介護療養型医療施設の役割を担う施設として、介護医療院といわれる施設が2018年4月に新設されました。
介護医療院は要介護者に対して、日常生活上の介護と長期療養のための医療を提供する施設です。
介護施設を選ぶときのポイント
介護施設によって、特徴や力を入れているサービスが異なります。
ここでは、介護施設を選ぶときに確認しておきたい4つのポイントを紹介します。
費用
介護施設の利用費用は介護施設によって差があり、低価格で利用できる施設もあれば、設備やサービスが充実している代わりに高価格な介護施設もあります。
そのため、介護施設を選ぶときには費用をしっかりと確認しておきましょう。
一般的に介護施設にかかる費用には、入居するときに支払う「入居一時金」と、月々支払う「月額費用」があります。「月額費用が安いと思って入居を検討していたら、入居一時金が高額だった」ということもあるので、合計金額をみて検討しましょう。
サービス内容
介護施設の種類が一緒であれば基本的な提供されるサービスも同じですが、施設によって重視しているサービスが異なります。
例えば、リハビリテーションを積極的に実施している施設もあれば、レクリエーションやイベントなどに注力している施設もあるなどさまざまです。
ホームページやパンフレットを見ただけではわからないこともあります。利用者に必要なサービスに力を入れている介護施設を選ぶには、見学した際に職員へ聞いてみると良いでしょう。
食事内容
介護施設は利用者にとって生活の場となるため、提供される食事も重要なポイントです。好みに合わない食事だと食欲が湧かず、栄養も楽しみも減ってしまうこともあるでしょう。
施設によっては、施設内で出来立ての食事や、イベントの際に特別な食事を提供することもあります。食にこだわりたい方は、食事内容を確認しておきましょう。
医療・介護体制
施設によっては、医療・介護の質を向上させるために人員を確保していることがあります。人員が多いと、必ず質の高いサービスを受けられるというわけではありませんが、職員一人当たりの負担が少なくなれば、行き届いたサービスが実現しやすいでしょう。
そのため、基本となる医療・介護サービス以外に、以下の医療・介護体制を確認することをおすすめします。
- 24時間スタッフが常勤しているか
- 看取り対応の有無
- 緊急時の提携病院の対応など
安心・安全な介護施設を選びましょう
今回は、介護保険法における介護施設について解説しました。介護施設は3種類あり、利用者の介護度や目的によって入居する場所が異なります。
施設の種類は同じでも、常駐するスタッフやサービス内容に違いがあるため、施設選びは慎重に行い、最適な介護施設選びを行いましょう。
この記事のポイント
- 介護施設とは?
介護施設は2000年に施工された介護保険法において、高齢者の介護を社会全体で支えあうことを目的とした施設です。
詳しくは「介護施設とは日常生活に必要なサポートを受けられる施設」をご確認ください。
- 利用できる介護施設とは?
介護施設はそれぞれ施設の目的や利用条件などがあるため、どの施設でも自由に選べるわけではありません。
詳しくは「介護の度合いによって利用できる介護施設は異なる」をご確認ください。
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