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不動産売却でかかる税金はどのくらい?特例や計算シミュレーションを紹介

執筆者プロフィール

尾嵜豪
株式会社ウィンドゲート 代表取締役

不動産の売買仲介・相続相談・不動産投資・賃貸・その他不動産コンサルティングなど、実際に不動産会社を経営しています。現場目線から不動産に関する記事を執筆しており、その他、書籍執筆、セミナー講師などもしております。渋谷にオフィスがあり、対面及びオンラインでも、お客様目線に立って不動産の相談にのっています。不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、相続対策専門士、ビル経営管理士、2級ファイナンシャルプランニング技能士など。

ざっくり要約!

  • 不動産の売却では、売却したときと売却で利益が出たときにそれぞれ税金が発生する
  • 不動産売却でかかる税金の控除に使える特例がいくつかあり、それぞれ適用要件が異なる

不動産を売却すると、数種類の税金がかかります。

売却したときと売却によって利益が出たときに、印紙税、登録免許税、仲介手数料の消費税、所得税、住民税、復興特別所得税など、さまざまな税金が発生するため、初めての不動産売却では混乱してしまうこともよくあるでしょう。

この記事では、不動産の売却を考えている方に向けて、不動産売却でかかる税金の種類や計算方法、税金控除に使える特例について解説します。

不動産売却でかかる税金

不動産の売却では、売却したときと売却で利益が出たときにそれぞれ税金が発生します。具体的には以下のような税金を支払う必要があります。

売却時にかかる税金

売却時にかかるのは印紙税、登録免許税、仲介手数料の消費税です。

印紙税

国税庁によると、印紙税とは文書を作成する背後にある経済的利益、取引をした買主と売主間の法律関係の安定化が目的で課税されるものであり、不動産の売買契約書にも貼付しなければなりません。

不動産を売却したとき、通常は売買契約書を取り交わします。売主・買主がそれぞれ1通分保有しますので、合計で2部売買契約書を作成します。印紙税は契約当事者が国に支払う税金で、売主・買主が折半して負担します。

なお、不動産の売買契約金額によって貼付すべき印紙税額が変わります(詳細は国税庁の印紙税額一覧表をご確認ください)。電子契約の場合は印紙税が課税されません。

不動産売買契約書に貼付する印紙税額の相場としては、契約金額が1千万円を超え5千万円以下で1万円(軽減税率)、5千万円を超え1億円以下で3万円(軽減税率)ほどです。

登録免許税

登録免許税とは、中古の不動産売買時において所有権を移動する登記、抵当権を設定する登記にかかる税金です。売主、買主が共同で国に支払う税金とされていますが、実際の取引では買主が負担することがほとんどです。

所有権の移転登記自体は義務ではありませんが、登記をしないことによって自身の権利を対外的に主張できなくなりますので注意してください。

税額の計算式(原則)

  • 不動産取得の場合の登録免許税額 = 固定資産税評価額 ×2.0%
  • 抵当権設定の場合の登録免許税額 = 抵当権設定金額 × 0.4 %

仲介手数料の消費税

不動産の売却では、消費税の課税事業者である不動産会社が、サービスの対価として仲介手数料を受領するため、買主及び売主は不動産会社に仲介手数料を支払う際に消費税を加算して支払う必要があります。

非課税である土地の売買であっても、仲介手数料には課税されます。不動産会社は決算時に消費税を計算して国に納めなければなりません。消費税は仲介手数料の10%となります。

売却で利益が出たときにかかる税金

売却で利益が出たときにかかるのは、所得税、住民税、復興特別所得税です。

所得税

所得税とは、不動産を売却したときに出た利益に対してかかる譲渡税で、売主が国に対して治める税金です。

税額 = 課税譲渡所得 × 税率で求めることができ、税率は所有期間5年以下なら30%、所有期間5年超は15%となります。

住民税

不動産を売却したときに出た利益に対してかかる譲渡税です。売主が市町村などの自治体に対して治める税金です。

税額 = 課税譲渡所得 × 税率で求めることができ、税率は所有期間5年以下なら9%、所有期間5年超は5%となります。

復興特別所得税

2011年の東日本大震災からの復興のための施策を実施する目的で、必要な財源の確保に関する特別措置法にもとづき、不動産を売却したときに出た利益に対してかかる税金です。売主が国に対して治める税金で、所得税に対する付加税であり、平成25年~令和19年までの間、基準所得税額の2.1%を所得税と併せて納めます。

相場としては税額 = 課税譲渡所得 × 税率で、税率は所有期間5年以下なら9%、所有期間5年超は5%となります。

不動産売却で利益が出たときにかかる税金の計算方法

この章では、不動産売却で利益が出たときにかかる税金の計算方法を解説します。

不動産売却で出た利益は「譲渡所得」

土地・建物を売却した際に生じた利益を譲渡所得と呼びます。

課税対象となる譲渡所得の計算方法は以下のとおりです。

収入金額(土地や建物を売ったことによって買主から受け取る金銭)
−取得費
(売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入時の仲介手数料等)
+譲渡費用土地や建物を売るために直接かかった費用
(仲介手数料・印紙税・立退料・取壊費用、他)
− 特別控除額

= 課税譲渡所得金額

不動産売却で利益が出た場合は、譲渡所得の確定申告が必要です。また、各種控除を使うためにも確定申告をしなければなりません。

なお、売却した不動産が古く、契約書などがなく取得費用がわからないときは、売った金額の5パーセント相当額を取得費として計算することとなります。

譲渡所得にかかる税金の計算方法

譲渡所得にかかる計算式は以下のとおりです。

・短期譲渡所得(譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のもの)
=譲渡所得×39.63%
(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)

・長期譲渡所得(譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの)
=譲渡所得×20.315%
(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)

不動産の所有期間ごとの税率は下表の通りです。

所有期間短期(5年以下)長期(5年超)
税率39.63%20.315%
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不動産売却でかかる税金の控除に使える特例

不動産を売却して利益が生じ譲渡所得があった場合、税金の控除に使える特例があります。

主に、3,000万円の特別控除、所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例、特定の居住用財産の買換え特例、マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の4つです。ひとつずつ説明していきます。

3,000万円の特別控除

居住していた不動産を売却したときは、所有期間の長さに関係なく、譲渡所得から最高3000万円まで控除ができます。

適用を受けるための要件として、以下が挙げられます。

  1. 自分が住んでいた家屋を売るか、家屋と共に敷地を売る必要があります。
  2. 以前に住んでいた場合でも、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば適用を受けられます。(家屋を取り壊してしまった場合は、その敷地の売買契約が取り壊し日の1年以内である+取り壊してから売買契約までの間に貸し駐車場などにしていないこと)
  3. 売った年、前年、前々年、買換えや交換の特例を受けていないこと。
  4. 売った家屋や敷地が、収容等の他の特例の適用を受けていないこと。
  5. 売主と買主が、親子や夫婦でないこと。

出典:国税庁|No.3302 マイホームを売ったときの特例

所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例

居住していた不動産を売却したとき、下記の要件を満たしていれば、長期譲渡所得の税額を通常の場合よりも、さらに低い税率で計算した軽減税率の特例を受けられます。

  1. 日本国内にある自分が住んでいた家屋を売るか、家屋と共に敷地を売る必要があります。
  2. 売却をした年の1月1日において、売った家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていること。
  3. 売った年、前年、前々年、買換えや交換の特例を受けていないこと。
  4. 売った家屋や敷地が、収容等の他の特例の適用を受けていないこと。ただし、3,000万円の特別控除の特例と軽減税率の特例は、重ねて受けられます。
  5. 売主と買主が、親子や夫婦でないこと。
課税長期譲渡所得金額(=A)所得税額
6,000万円以下A×10%
6,000万円超(A-6,000万円)×15%+600万円

出典:国税庁|No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例

特定の居住用財産の買換え特例

所有期間と居住期間が10年を超える不動産を売却し、売却する不動産より高い価格のマイホームに買換えて住み替えたとき、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます。

特例の適用を受ける要件として以下が挙げられます。

  1. 自分が住んでいた家屋を売るか、家屋と共に敷地を売る必要があります。
  2. 売却をした年の1月1日において、売った家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていること。
  3. 居住用不動産の敷地の売買契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結されていて、かつ、居住しなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
  4. 家屋を取り壊してから売買契約までの間に貸し駐車場などにしていないこと。
  5. 売却した居住用不動産と購入した居住用不動産が、共に日本国内にあること。
  6. 売却代金が1億円以下であること。
  7. 買換える建物の床面積が、50㎡以上、土地が500㎡以下であること。
  8. 居住用不動産を売却した年の前年から翌年までの3年の間に居住用不動産を買い換えること。買い換えた居住用不動産には、売却した年かその前年に取得したときは、売却した年の翌年12月31日まで、売却した年の翌年に取得したときは、取得した年の翌年12月31日までに住むこと。
  9. 売主と買主が、親子や夫婦でないこと。
  10. 買換える居住用不動産が、耐火建築物の中古住宅の場合は取得の日以前25年以内に建築されたもの、または一定の耐震基準を満たすものであること。買換える居住用不動産が、耐火建築物以外の中古住宅の場合は取得の日以前25年以内に建築されたもの、または取得期限までに一定の耐震基準を満たすものであること。

出典:国税庁|No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例

マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

マイホームを売却して、新しいマイホームを購入した場合、マイホームを売却した時に譲渡損失が出たのであれば、その年の給与所得や事業所得などと損益通算することができます。

また、損益通算をしても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除ができます。

特例の適用を受けるための要件として以下が挙げられます。

  1. 自分が住んでいる居宅を譲渡すること。以前に住んでいた場合でも、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すれば適用を受けられます。(家屋を取り壊してしまった場合は、家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において所有期間が5年を超える+その敷地の売買契約が取り壊し日の1年以内である+取り壊してから売買契約までの間に貸し駐車場などにしていないこと)
  2. 譲渡した年の1月1日における所有期間が5年を超える旧い居宅で、日本国内にあるものこと。
  3. 譲渡した年の前年の1月1日~翌年12月31日までの間に日本国内にある新居宅で家屋床面積が50㎡以上であるものを取得すること。
  4. 新居宅を取得した年の翌年12月31日までの間に居住をすること
  5. 新居宅を取得した年の12月31日において、買換えた資産にについて償還期間10年以上の住宅ローンを有すること。

出典:国税庁|No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)

この記事のポイント

不動産売却で利益が出たときにかかる税金の計算方法は?

土地・建物を売却した際に生じた利益を譲渡所得と呼びます。

課税対象となる譲渡所得の計算方法は以下のとおりです。

収入金額(土地や建物を売ったことによって買主から受け取る金銭)

−取得費(売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入時の仲介手数料等)

+譲渡費用土地や建物を売るために直接かかった費用(仲介手数料・印紙税・立退料・取壊費用、他)

− 特別控除額

= 課税譲渡所得金額

詳しくは「不動産売却で利益が出たときにかかる税金の計算方法」をご覧ください。

不動産売却でかかる税金の控除に使える特例はありますか?

3,000万円の特別控除、所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例、特定の居住用財産の買換え特例、マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例があります。

詳しくは「不動産売却でかかる税金の控除に使える特例」をご覧ください。

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