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不動産投資の利回りの計算方法は?投資物件の判断ポイントも紹介

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 不動産投資の利回りとは定量的には収益性を表したものだが、リスクを表現するものでもある
  • 不動産投資の利回りが低いほど、資産価値が高い物件という見方ができる

収益物件を購入する場合、利回りがとても重要になってきます。
収益物件の価格は、収益を利回りで割ったもので求められることが一般的です。

利回りが高い物件であれば物件価格は安くなり、利回りが低い物件であれば物件価格が高くなるという関係になります。

利回りと価格は密接に関係することから、収益物件を適正価格で物件を購入するには、適正な利回りを知ることが望ましいです。
この記事では「不動産投資の利回り」について解説します。

不動産投資の利回りとは?

不動産投資の利回りとは、定量的には収益性を表したものです。
投資に対するリターンを表現したものが利回りであることから、利回りが高いほど高収益の物件ということになります。

一方で、不動産投資の利回りは、定性的にはリスクを表したものでもあります。
投資に対するリスクを表現したものも利回りであるため、利回りが高いほどハイリスクの物件であるといえます。

つまり、利回りは収益性とリスクという2つの側面を表現しています。
高利回りの物件はハイリスクハイリターンであり、低利回りの物件はローリスクローリターンであるということです。

一般的に、利回りは郊外の物件ほど高く、都市部の物件の方が低くなります。
都市部の物件の利回りが低いのは、単に価格が高いからという理由だけではなく、賃貸経営上のリスクが低いからです。

都市部の物件であれば、空室が発生したり、賃料が下落したりする可能性も低く、安定した賃貸経営をすることが期待できます。
そのため、都市部の物件はローリスクであり、投資家の需要も高く、結果的に物件価格も高くなっているのです。

よって、利回りは単に収益性の高低の判断材料となるたけでなく、リスクの判断材料にもなる重要な数値となります。

物件取得費に対する年間家賃収入または年間収益の割合を示したもの

利回りは、年間家賃収入(または年間収益)を物件価格で割ったものです。

利回り = 年間家賃収入(または年間収益) ÷ 物件価格

逆にいうと、年間家賃収入(または年間収益)を利回りで割ったものが物件価格となります。

物件価格 = 年間家賃収入(または年間収益) ÷ 利回り

年間家賃収入(または年間収益)を利回りで割って物件価格を求める方法を「収益還元法」と呼びます。
収益物件の価格は、収益還元法を用いて求められることが一般的です。

利回りには、地域や物件の築年数等によっておおむねの相場が存在します。
例えば、都市部の築浅物件であれば4%程度、郊外の築古物件であれば10%程度といったイメージです。

適正な価格であるかどうかを見抜くには、投資家として利回りの相場観を養っておくことが必要となります。

表面利回りと実質利回りがある

利回りには、表面利回りと実質利回りの2種類があります。

表面利回りとは、年間家賃収入を物件価格で割ったものです。
実質利回りとは、年間収益を物件価格で割ったものとなります。

年間収益とは、年間家賃収入から固定資産税や建物損害保険料等の年間費用を控除した額のことです。

表面利回りは、簡単に計算できるというメリットがあります。
一方で、年間費用が考慮されていないことから、実態が分からないという点がデメリットです。
実は修繕費がものすごくかかる、または管理委託料が異常に高いといったことがあったとしても、表面利回りではその事実は反映されません。

実質利回りは、物件の収益性の実態を把握できる点がメリットです。
ほとんど費用のかからない物件や、相当に費用がかかっている物件の実態が数値に反映されます。
例えば表面利回りが10%でも、実質利回りが3%の物件もあれば、7%の物件もあるということです。

一方で、実質利回りは、計算が面倒であるという点がデメリットとなります。

一般的に、インターネット広告やチラシで公開されている利回りは表面利回りです。
実質利回りを把握するには、売主から固定資産税や修繕費、建物損害保険料等を聞き出す必要があります。

売主から固定資産税等の費用を聞き出すには、売主と秘密保持契約書を締結してから聞き出すことが一般的です。

物件を購入するか否かは、実際にかかっている費用を把握してから判断することが適切となります。

不動産投資の利回りの計算方法

この章では、不動産投資の利回りの計算方法について解説します。

表面利回りの計算方法

表面利回りとは、年間家賃収入を物件価格で割ったものです。
表面利回りの計算式を表すと、以下のようになります。

利回り = 年間家賃収入 ÷ 物件価格

実質利回りの計算方法

実質利回りとは、年間収益を物件価格で割ったものとなります。
実質利回りの計算式を表すと、以下のようになります。

利回り = (年間家賃収入 - 年間費用) ÷ 物件価格

実質利回りは、NOI(エヌオーアイ)利回りとも呼ばれています。
NOIは、「Net Operating Income」の略であり、正味の運用益という意味です。

NOIは、一般的には家賃収入から以下のような支出を控除して求めます。

【NOIを求めるときの支出】

  • 固定資産税および都市計画税
  • 損害保険料
  • 管理委託料
  • ビルメンテナンスコスト
  • 共用部の水道光熱費
  • 修繕費
  • 入居者募集費用

NOI利回りでは、支出の中に借入金の返済額を含めていない点がポイントです。
借入金の返済額は、投資家の資金力に依存する数値であり、借入金の返済額も支出に含めてしまうと物件の収益力がわからなくなります。

手残りは、自己資金100%で行う人と借入金100%で行う人では異なって当然であり、そのような投資家の資金力に関する要素は実質利回りでは排除しているのです。

つまり、実質利回りとは、自己資金100%で投資をした場合の物件の収益性を表す数値であり、物件が純粋に稼ぎ出す収益性を表したものになります。

なお、借入金の返済額まで考慮した利回りは、「キャッシュフロー利回り」と呼びます。
キャッシュフロー利回りは、NOIからさらに借入金の元本返済額や税金を差し引いて求めます。

キャッシュフロー利回りは、投資家の資金力も加味した数値です。
NOI利回りが同じ物件に投資をしたとしても、自己資金100%で投資をできる人と借入金100%でないと投資をできない人ではキャッシュフロー利回りは異なります。

最終的なキャッシュフロー利回りを上げるには、自己資金を十分に用意し借入金を少なくすることが必要です。

不動産投資の利回りの相場

不動産投資の利回りの相場について紹介します。

首都圏の不動産投資の利回り相場

首都圏における2023年6月時点の物件種別ごとの表面利回りを示すと、下表の通りです。

物件種別利回り(%)
区分マンション6.50
一棟アパート7.52
一棟マンション6.92

出典:収益物件 市場動向マンスリーレポート2023年6月期|不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家

地方の不動産投資の利回り相場

地方圏における2023年6月時点の物件種別ごとの表面利回りを示すと、下表の通りです。

地方圏区分マンション(%)一棟アパート(%)一棟マンション(%)
北海道11.3711.589.15
東北11.7811.7710.28
信州・北陸16.6112.5312.84
東海8.859.299.24
関西7.319.218.18
中国・四国13.0510.9110.71
九州・沖縄10.379.129.02

出典:収益物件 市場動向マンスリーレポート2023年6月期|不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家

不動産投資は利回りを重視すべき?

不動産投資の利回りで意識したい点を解説します。

判断ポイントは利回りだけではない

不動産投資は、まずは表面利回りだけで判断することは避けるべきです。
利回りで判断するとしても、実質利回りまできちんと把握する必要があります。

また、利回りが高いから良い物件、低いから悪い物件でもないということも重要なポイントです。

国内には、不動産投資信託(REIT)を扱っているプロの投資家たちがいます。
プロの投資家が購入に携わっているREITには、地方の築古アパートのような高利回り物件は組み込まれていません。
なぜ地方の築古アパートは高利回りであるにも関わらず、REITに組み込まれていないのかというと、プロの投資家は地方の築古アパートは良い物件と判断していないからです。

プロの投資家は地方の築古アパートの利回りだけではなく、リスクもきちんと見ています。
地方の築古アパートは、空室リスクも高く、賃料が今後下落する可能性もあり、また修繕費が発生する可能性も高いといえます。
このような物件は、購入後の賃貸経営上のリスクが高いことから、利回りが高くても購入しないのです。

不動産投資で失敗しないようにするには、プロが絶対にやらないようなことは避けるべきといえます。

利回りに理想値はないことを把握しておく

不動産投資の利回りは、市況によって変化するものです。
一般的には金利と連動しており、金利が低くなれば利回りも低くなり、金利が高くなれば利回りも高くなります。

昨今は総じて低金利の環境が継続していることから、不動産投資の利回りも低くなっている状態が続いています。

利回りの相場は、金利等によって変動するものであることから、固定的な理想値というのは存在しません。
常にアンテナを高く張っておく必要があり、相場観を養っておくことが重要となります。

不動産投資の利回りにおける注意点

不動産投資の利回りにおける注意点について解説します。

利回りが高い物件はリスクがあることも

利回りは、定性的にはリスクを表します。
ハイリスクハイリターン、ローリスクローリターンの関係であることから、高利回り物件はリスクも高い物件です。

ハイリスク物件は、賃貸経営の難易度も高くなります。
はじめて不動産投資を行うのであれば、難易度の高い物件への投資は避け、リスクの低い物件を選ぶことが適切です。

利回りが低い物件は資産価値が高いともいえる

不動産投資の利回りは、都市部の立地が良く、築年数の浅い物件ほど低くなります。
都市部の立地が良くて築年数の浅い物件は、資産価値が高い物件です。
つまり、利回りが低いほど、資産価値が高い物件という見方もできます。

単に利回りを見るだけでなく、立地や築年数も見ることが重要です。
立地や築年数等の条件で良い物件を探していけば自然と利回りが低くなりますが、それは資産価値の高い物件を探しているということであり、決して悪い選び方ではありません。

この記事のポイント

不動産投資の利回りとはなんですか?

不動産投資の利回りとは、定量的には収益性を表したものです。
投資に対するリターンを表現したものが利回りであることから、利回りが高いほど高収益の物件ということになります。
一方で、不動産投資の利回りは、定性的にはリスクを表したものでもあります。
投資に対するリスクを表現したものも利回りであるため、利回りが高いほどハイリスクの物件であるといえます。

詳しくは「不動産投資の利回りとは?」をご覧ください。

不動産投資は利回りを重視すべきでしょうか?

表面利回りだけを重視し、投資するかどうかを判断することは避けるべきです。
利回りで判断するとしても、実質利回りまできちんと把握する必要があります。
また、利回りが高いから良い物件、低いから悪い物件でもないということも重要なポイントです。

詳しくは「不動産投資は利回りを重視すべき?」をご覧ください。

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