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不動産の減価償却とは?耐用年数や定額法での計算方法をわかりやすく紹介

執筆者プロフィール

東本隼之
ファイナンシャルプランナー、マネーライター

独立系ファイナンシャルプランナーとして執筆業を中心に活動中。金融記事を中心に執筆・編集・監修を担当。税金・社会保険・資産運用・生命保険・不動産・相続分野を得意とし、自身の経験に基づいたライティングを強みとしている。難しい金融知識を初心者にわかりやすく伝えることが得意。

ざっくり要約!

  • 減価償却とは、複数年にわたって使用できる建物や設備などの取得費を一定期間で按分して経費計上すること
  • 年数によって資産価値が低下しない土地は、減価償却の対象とならない

減価償却とは、建物や設備などの複数年にわたって使用できる資産の取得費を一定期間に按分して経費計上する仕組みのことです。減価償却費は、不動産投資をしたり不動産を売却したりするときに活用されるので、適切な計算ができていなければ納税額が増えてしまう可能性があります。

本記事では、不動産の減価償却費の考え方や計算方法をわかりやすく紹介します。居住用不動産を売却した際の譲渡所得税や、不動産投資時の減価償却費の計算シミュレーションも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

不動産の減価償却とは?

減価償却とは、複数年にわたって使用できる建物や設備などの取得費を一定期間で按分して経費計上することをいいます。減価償却できる金額は、不動産の構造や築年数によって異なるので注意が必要です。

まずは、不動産の減価償却の考え方と活用する場面を見ていきましょう。

減価償却の考え方

減価償却には、建物や設備などの老朽化による資産価値の低下を数値化する目的があります。その資産価値の低下にあわせて経費計上することとなります。

たとえば、3,000万円のアパートを購入した場合、購入年度にアパートの価値がゼロになることは基本的にありません。アパートの資産価値は、経年劣化によって少しずつ低下することになりますが、視覚的に判断することは困難です。そのため、以下の計算式から資産価値の低下金額を求めて経費計上します。

1年間の経費計上額(資産価値の低下金額) = 建物・設備価格 ÷ 耐用年数(減価償却期間)

耐用年数については「構造別!減価償却の計算に必要な耐用年数」で詳しく紹介します。

減価償却を使うのはどんな場面?

減価償却を活用する主な場面には、以下の2つがあります。

  • 不動産投資をしているとき
  • 不動産を売却するとき

不動産投資で収入を得た場合は、所得税と住民税を納めなければなりません。所得税は、所得金額に応じて税率が上がる「累進課税制度」を採用しているため、利益額が大きくなるほど税負担が重くなります。

なお、不動産から得た収入のすべてに税金がかかるわけではなく、修繕費や管理費などの経費を差し引いた所得に税率をかけて納税額を計算します。減価償却費も経費として計上できるため、不動産投資の税負担を軽減させるための欠かせない要素といえるでしょう。

不動産売却で利益が発生した場合は、譲渡所得税を納めなければなりません。譲渡所得税の納税額は、以下の計算式で求めた「譲渡所得」に税率をかけて算出します。

譲渡所得 = 売却金額 − (取得費 − 減価償却費) − 譲渡費用 − 特別控除

取得費には、不動産の購入代金や仲介手数料などの不動産取得にかかった費用が該当します。譲渡費用は、売却時の仲介手数料や印紙税などの費用のことです。特別控除とは、一定要件を満たしたマイホームを売却したり、相続で取得した建物を売却したりした際に適用される控除のことをいいます。

取得費を計算する際は、資産価値の低下を加味するために、これまでに経費として計上した減価償却費を差し引かなければなりません。そのため、多くの減価償却費を計上している場合は、取得費が低くなることで譲渡所得が大きくなるので注意が必要です。

なお、先祖代々の土地のように取得費がわからない場合は「売却金額の5%」を概算取得費として計算します。なお、実際の取得費が5%に満たない場合も、概算取得費を活用できるので、減価償却によって取得費が低くなったときに活用してみるのもよいでしょう。

減価償却できるのは建物のみ

減価償却の対象となるのは、建物や設備などの経年劣化によって資産価値が低下する資産です。そのため、年数に応じて価値が低下しない土地は、減価償却の対象となりません。

土地と建物を取得した場合は、建物だけを減価償却することとなるため、不動産の購入代金における「土地建物割合」を求めたうえで減価償却費を計算します。土地建物割合は、契約書に記載されている土地と建物の金額から求めたり、自治体の固定資産課税台帳から計算したりすることで確認できます。

土地建物割合がわからない場合は、税理士や不動産会社に確認してみましょう。

構造別!減価償却の計算に必要な耐用年数

減価償却費を求める際は、国が定める「法定耐用年数」をもとに計算します。法定耐用年数は、建物の用途や構造によって下表のように定められています。

用途構造法定耐用年数
住宅用 木造 22年
木骨モルタル造 20年
鉄骨鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造
47年
事務所用 木造 24年
木骨モルタル造 22年
鉄骨鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造
50年
飲食店用 木造 20年
木骨モルタル造 19年
鉄骨鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造
34年
※延べ床面積における木造内装部分の面積が30%を超える場合

ほかにも、れんが造や金属造などの構造、旅館や工場といった用途ごとに法定耐用年数が定められているので、国税庁のサイトで確認しておきましょう。

なお、中古物件の耐用年数は、法定耐用年数に対する築年数の割合に応じて以下のように計算します。

法定耐用年数の全期間を経過している場合
法定耐用年数 × 20%

法定耐用年数の一部を経過している場合
(法定耐用年数 − 築年数) + 築年数 × 20%

耐用年数が2年未満になった場合は、計算結果に関わらず「2年」とし、耐用年数に1年未満の端数が生じたときは切り捨てた年数で減価償却費を計算します。

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減価償却費の2つの計算方法

減価償却費を計算する方法には、定額法と定率法の2種類があります。

これらの計算方法は、取得時期や資産の種類によって以下のように異なります。

取得時期建物付属設備・構築物
〜1998年3月31日旧定額法または旧定率法旧定額法または旧定率法
1998年4月1日
〜2007年3月31日
旧定額法旧定額法または旧定率法
2007年4月1日
〜2016年3月31日
定額法定額法または定率法
2016年4月1日〜定額法定額法

減価償却の計算で用いられる「償却率」は、2007年4月1日に見直されており、それ以前の方法は旧定額法・旧定率法と呼ばれています。

ここでは、定額法と定率法を用いた減価償却費の計算方法を詳しく紹介します。

定額法

定額法とは、資産価格を耐用年数で按分する方法で、毎年一定額の減価償却費を計上します。1年間に計上できる減価償却費は、以下の計算式で求められます。

建物・設備価格 × 償却率(定額法) = 減価償却費(年間)

定額法における償却率は、耐用年数と取得時期に応じて下表のように定められています。

耐用年数 償却率
定額法
(2007年4月1日以降)
旧定額法
(2007年3月31日以前)
2年 0.5 0.5
3年 0.334 0.333
4年 0.25 0.25
5年 0.2 0.2
6年 0.167 0.166
7年 0.143 0.142
8年 0.125 0.125
9年 0.112 0.111
10年 0.1 0.1

耐用年数が10年超の場合は、国税庁のサイトで確認しておきましょう。

定率法

定率法は、資産の未償却残高に償却率をかける方法で、減価償却費が年々減少するのが特徴です。未償却残高とは、これまでに計上した減価償却費を資産価格から差し引いた金額をいいます。1年間に計上できる減価償却費は、以下の計算式で求められます。

未+償却残高 × 償却率(定率法) = 減価償却費(年間)

定率法における償却率は、耐用年数と取得時期に応じて下表のように定められています。

耐用年数 償却率
定率法
(2007年4月1日以降)
旧定率法
(2007年3月31日以前)
2年 1 0.684
3年 0.833 0.536
4年 0.625 0.438
5年 0.5 0.369
6年 0.417 0.319
7年 0.357 0.28
8年 0.313 0.25
9年 0.278 0.226
10年 0.25 0.206

なお、算出した減価償却費が資産価格(購入代金)に保証率を乗じた「償却保証額」を下回った場合は、以下の計算式で減価償却費を求めます。

改定取得価額 × 改定償却率 = 減価償却費(年間)

改定取得価額とは、減価償却費が償却保証額を下回ったときの未償却残高のことをいいます。保証率と改定償却率は、耐用年数に応じて以下のように異なります。

耐用年数保証率改定償却率
2年
3年0.027891
4年0.052741
5年0.062491
6年0.057760.5
7年0.054960.5
8年0.051110.334
9年0.047310.334
10年0.044480.334

定率法で計算する際は、国税庁のサイトで償却率や保証率、改定償却率を確認しておきましょう。

シミュレーション1.居住用不動産の譲渡所得税を計算

ここでは、居住用不動産の譲渡所得税を以下の条件でシミュレーションします。

条件
取得費  :土地2,000万円、建物2,500万円
減価償却費:1,150万円
売却金額 :3,800万円
譲渡費用 :50万円
所有期間 :10年

譲渡所得税の納税額は、以下の計算式で求めた譲渡所得に税率をかけて求めます。まずは、譲渡所得を計算していきましょう。

3,800万円(売却金額) − (4,500万円(取得費) − 1,150万円(減価償却費)) − 50万円(譲渡費用) = 400万円(譲渡所得)

譲渡所得税の税率は、譲渡した年の1月1日時点の所有期間で異なり、5年以下であれば39.63%(所得税30.63%、住民税9%)、5年を超えると20.315%(所得税15.315%、住民税5%)となります(復興特別所得税2.1%相当を含む)。今回のケースでは、5年を超えて所有していたため「20.315%」で計算します。

400万円 × 20.315%(税率) = 812,600円(譲渡所得税額)

以上の計算から、居住用不動産を売却した際の譲渡所得税は「812,600円」となります。減価償却費を差し引くことを忘れると、適正な納税額が計算できなくなってしまうので注意しましょう。

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シミュレーション2.新築の不動産投資物件の減価償却費を計算

次は、新築の不動産投資物件の減価償却費を以下の条件でシミュレーションします。

条件
取得費  :土地3,000万円、建物5,000万円
建物の構造:木造
建物の用途:住宅
建築年度 :2023年

年数に応じて価値が減少しない土地は、減価償却の対象とならないため、建物価格に償却率をかけて減価償却費を求めます。新築の住宅用木造物件であるため、耐用年数は22年、償却率が0.046となります。

5,000万円(建物価格) × 0.046(償却率) = 230万円(1年間の減価償却費)

計算の結果、毎年230万円の減価償却費が計上できることがわかります。

シミュレーション3.中古の不動産投資物件の減価償却費を計算

最後は、中古の不動産投資物件を購入した際の減価償却費を以下の条件でシミュレーションします。

条件
取得費  :土地1,000万円、建物5,500万円
建物の構造:木造
建物の用途:住宅
築年数  :5年
建築年度 :2023年

住宅用木造住宅の法定耐用年数の22年の一部を経過しているので、以下の計算式で耐用年数を求めます。

(22年(法定耐用年数) − 5年(築年数)) + 5年(築年数) × 20% = 18年

耐用年数18年の償却率は「0.056」となるため、建物価格に乗じて減価償却費を計算します。

5,500万円(建物価格) × 0.056(償却率) = 308万円(1年間の減価償却費)

以上の計算から、物件価格5500万円の中古物件を購入後の減価償却費は「年間308万円」になります。

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まとめ

不動産の減価償却費は、建物の構造や築年数、取得時期によって異なります。減価償却費を適切に計算しなければ納税額が増えたり、無申告加算税や延滞税などのペナルティを受けたりする可能性があります。

本記事で紹介した計算方法やシミュレーションを参考にしながら、どれほどの減価償却費が計上できるのか、計上金額が適切であるのかを確認しておきましょう。減価償却費の計算方法がわからない場合は、税理士や不動産会社に相談することをおすすめします。

この記事のポイント

減価償却はどんな場面で使われますか?

不動産投資や不動産売却で利益を得たときに活用します。

詳しくは「減価償却を使うのはどんな場面?」をご覧ください。

土地の減価償却費は経費として計上できますか?

年数によって資産価値が低下しない土地は、減価償却をすることができません。土地と建物を取得した場合は、建物の経年劣化に応じた減価償却費を経費として計上することとなります。

詳しくは「減価償却できるのは建物のみ」をご覧ください。

減価償却の耐用年数はどのように計算すればいいですか?

耐用年数は、国が定める法定耐用年数から求めます。法定耐用年数の全期間を経過している場合は「法定耐用年数 × 20%」、一部を経過している場合は「(法定耐用年数 − 築年数) + 築年数 × 20%」で計算します。

詳しくは「構造別!減価償却の計算に必要な耐用年数」をご覧ください。

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