ざっくり要約!
- マンション価格は2013年頃から上昇しており、近年の新築マンション価格は東京23区内であれば平均で1億円を超えている
- マンション価格の上昇には円安ドル高の傾向や建築費の高騰などさまざまな要因がある
日本国内では新築も中古も、マンション価格が高騰してから久しいといえます。
マンション価格は2013年より上昇が始まっており、2023年時点では約10年も上昇が継続している状況です。
マンション価格の高騰の主たる理由は、日銀の低金利政策の影響が大きいとされています。
このマンション価格の高騰は、一体いつまで続くのでしょうか。
この記事では「マンション価格の推移」について解説します。
記事サマリー
新築マンション価格の推移【首都圏・近畿圏】
新築マンション価格の推移を示します。
首都圏の新築マンション価格の推移
首都圏における新築マンションの価格推移は以下の通りです。
年 | 平均価格 | 平米単価 |
---|---|---|
2020年 | 6,083 | 92.5 |
2021年 | 6,260 | 93.6 |
2022年 | 6,288 | 95.1 |
出典:首都圏 新築分譲マンション市場動向 2023年上半期(1~6月)|株式会社不動産経済研究所
近畿圏の新築マンション価格の推移
近畿圏における新築マンションの価格推移は以下の通りです。
年 | 平均価格 | 平米単価 |
---|---|---|
2020年 | 4,181 | 69.1 |
2021年 | 4,562 | 75.1 |
2022年 | 4,635 | 77.4 |
出典:近畿圏 新築分譲マンション市場動向 2022 年のまとめ|株式会社不動産経済研究所
中古マンション価格の推移【首都圏・中部圏・近畿圏】
中古マンション価格の推移を示します。
首都圏の中古マンション価格の推移
首都圏における中古マンションの価格推移は以下の通りです。
年 | 平均価格 | 平米単価 |
---|---|---|
2020年 | 3,599 | 55.17 |
2021年 | 3,869 | 59.81 |
2022年 | 4,276 | 67.24 |
出典:首都圏不動産流通市場の動向(2022年)|公益財団法人東日本不動産流通機構
中部圏の中古マンション価格の推移
中部圏における中古マンションの価格推移は以下の通りです。
年 | 平均価格 | 平米単価 |
---|---|---|
2020年 | 5,974 | 26.45 |
2021年 | 5,743 | 27.13 |
2022年 | 6,012 | 28.59 |
近畿圏の中古マンション価格の推移
近畿圏における中古マンションの価格推移は以下の通りです。
年 | 平均価格 | 平米単価 |
---|---|---|
2019年 | 2,311 | 33.59 |
2020年 | 2,337 | 33.60 |
2021年 | 2,491 | 36.04 |
出典:2021年度年刊市況レポート|公益社団法人中部圏不動産流通機構
マンション価格の推移に影響するトピック
マンション価格の推移に影響するトピックについて解説します。
マンションの供給戸数の減少
近年のマンション供給戸数は、首都圏では年間約3万戸前後で推移しています。
年によって微増・微減はあるものの、概ね約3万戸前後をキープしている状況です。
首都圏の新築マンションの供給戸数が約3万戸前後なったのは、2019年頃からになります。
それより以前の2005年頃までは、毎年約8万戸の供給がありました。
マンション供給戸数は、2005年頃から徐々に減りだし、現在の年間約3万戸前後に落ち着いています。
マンション供給戸数が減ってきた理由は、いくつかあります。一つは、リーマンショックです。
2008年にリーマンショックが生じたことで、2009年には供給戸数が約3.6万戸まで一気に落ち込みました。
当時は、リーマンショックによって複数社の中堅大手のマンションディベロッパーが倒産したことから、市場が大きく減退しています。
その後、約4万戸前後に回復するものの、東日本大震災等の影響もあり、思ったより回復が進みませんでした。
当時は東日本大震災の復興需要で建築費が上昇してきたことから、供給量は伸び悩みました。
近年、首都圏のマンション供給戸数が約3万戸前後に落ち着いているのは、用地取得が難しくなってきたことが挙げられます。
2013年以降、マンション価格が上昇していますが、それに伴い、マンション用地の仕入れ価格も上昇しています。
多くのマンション用地は、ディベロッパー同士による入札形式で売却されることから、非常に高い価格で落札されている状況です。
もし、ディベロッパーが高過ぎる価格で土地を落札してしまうと、販売価格に転嫁できなかった場合、大赤字となってしまいます。
場合によっては、高値で土地を買ったことが原因で、会社が倒産してしまう可能性もあります。
また、昨今は土地価格だけでなく、建築費も高騰しています。建築費の高騰も、ディベロッパーの頭を悩ます原因の一つです。
近年の新築マンション価格は、例えば東京23区内であれば平均で1億円を超えてしまっています。実需が郊外に逃げ、投資家による需要が中心となっているため、市場に不透明感が出てきています。
理由としては、投資家の需要は実需とは異なり、何かをきっかけに簡単に減少してしまうかもしれないからです。
将来の不透明感が強まれば、コスト高を販売価格に転嫁しにくくなり、用地仕入れの需要が弱まります。
マンションディベロッパーは、コスト高になれば商売がしにくくなり、マンションを供給しにくくなります。不透明感は今後も継続する恐れがあるため、供給量は現在の水準をキープしながら推移していくものと思われます。
住宅ローンの低金利の継続
マンション価格は2013年頃から上昇し始めていますが、日銀の低金利政策も2013年頃から始まっています。政策金利が低くなれば、住宅ローンの金利も低くなり、多くのお金を借りることができます。
低金利政策によって、不動産市場の中に多くのお金が流れ込むようになりました。一方で、日本の土地は基本的には増えないため、不動産の総量は変化しないものと仮定できます。
不動産が増えず、お金だけが増えてしまえば、相対的に貨幣価値が下がります。
昨今、不動産価格が上昇しているように見えるのは、不動産価格が上がっているというよりは、貨幣価値が下がっているという見方もできるのです。
円安ドル高の状況
円安ドル高の影響は、近年の日本の不動産市場に大きな影響を与えています。
円安になると、海外の投資家にとって日本の不動産に割安感が出てきます。
近年、立地の良い都市部のマンションは外国人投資家が購入し、賃貸にも出さず、空き家の状態のまま保有するケースが増えてきました。
空き家のままとするのは、値上がりしたらいつでも売却できるようにするためという理由もあるようです。
建築費の高騰
建築費の高騰も、マンション価格を押し上げている要因です。
ここ数年は、建築費が上がることで、新築マンションの販売価格に転嫁せざるを得ない状況も続いています。
また、近年の新築マンションは、省エネ仕様にするためにコストが余計にかかっていることも価格高騰の原因の一つです。
買主の多くが利用する住宅ローン控除は、一定の基準を満たした省エネ住宅でないと控除の対象となる借入限度額の枠が広がらないという仕組みになっています。
住宅ローン控除の借入限度額の枠を広げないと、マンションが売りにくくなることから、コストのかかる省エネ仕様にせざるを得なくなり、結果的に価格も上がっているのです。
マンション価格の推移にかかわる「2025年不動産暴落説」とは?
近年は、毎年のように「○○年問題」という言葉が登場します。一部には、2025年に不動産価格が暴落する「2025年不動産暴落説」を唱えている人もいるようです。
もし未来に生じる事象の根拠が明確になっているのであれば、その前に原因を未然に是正して、問題を深刻化させてこなかったのが今までの「○○年問題」です。また、根拠が明確ではない問題の場合には、そもそもその問題は単なる憶測にすぎないといえます。
誰も将来のことはわかりませんので、このような話題はいたずらに振り回されないことが賢明です。
空き家問題の深刻化で不動産の需要と供給のバランスが崩れること
「2025年不動産暴落説」とは、2025年あたりから団塊の世代が後期高齢者となり、不動産の需給バランスが崩れるのではないかという懸念のようです。
不動産業界のプロの中では、あまり認識されていない問題ですので、単なる噂レベルの話だと思われます。
以前、不動産業界の中には都市部の農地が大量に売りに出されて地価が暴落するという「2022年問題」という問題がありました。2022年問題は不動産の業界紙の中でも頻繁に取り上げられていた話題でしたが、2025年不動産暴落説は一切取り上げられていません。
そもそも、需給のバランスが崩れて不動産価格が下落するという考えは、近年の不動産価格の本質的な部分が見えていない主張です。
日本の人口は2008年頃から減少していますが、不動産価格は2013年以降から上昇しています。需給のバランスはとっくの昔に崩れていますので、需給だけでは不動産価格は決まらないということです。
昨今の不動産価格の上昇は、貨幣価値の下落に本質的な部分があります。住宅ローンの低金利化によって、不動産市場の中にお金がどんどん流れ、不動産の量とお金の量のバランスが崩れたことで、貨幣価値が下落してしまったのです。
10年前なら新築マンションという商品を6,000万円で買えたものが、今は1億円出さないと買えないというのは、それだけ貨幣価値が下がったということになります。
マンション価格の推移への影響は?
2025年不動産暴落説というのは少し考えにくいですし、マンション価格への影響もほとんどないと思われます。
まず、不動産の価格には株価という明確な先行指数が存在します。株価が上がれば遅れて不動産価格も上がり、株価が下がれば遅れて不動産価格も下がるという関係です。
2025年に不動産価格が下落するという話であれば、2024年に株価が大幅に下落しなければなりません。
2023年9月時点において、2024年に株価が暴落する懸念は今のところ考えにくいです。
かつて2008年に生じたリーマンショックは、2年前の2006年頃にはサブプライムローンが下落する等の予兆があり、世界的に金融危機が懸念されていました。リーマンショックも突然やってきたものではなく、数年前からさまざまな前兆や懸念があって発生した問題です。
話を2023年9月時点に戻しても、今のところ2024年に株価が大暴落する世界的な前兆はないといえます。
2024年に株価が大暴落しなければ、2025年も不動産価格は大暴落しないといえるため、2025年にマンション価格が下がるとは考えにくいのです。
・「不動産トレンド」に関する記事はこちら 不動産市場の最新トレンドなどを解説。税制改正のポイントや、今は買い時?など不動産業界の動向などについても詳しく取り上げています。 |
この記事のポイント
- マンション価格の推移には何が影響しているのですか?
マンション価格の推移は、近年のマンション供給戸数の減少、円安ドル高の影響、建築費の高騰など、さまざまな影響を受けています。
詳しくは「マンション価格の推移に影響するトピック」をご覧ください。
- マンション価格の推移にかかわる「2025年不動産暴落説」とは何ですか?
一部でささやかれている、2025年あたりから団塊の世代が後期高齢者となり、不動産の需給バランスが崩れるのではないかという懸念です。
そもそも不動産の価格には株価という明確な先行指数が存在し、株価が上がれば遅れて不動産価格も上がり、株価が下がれば遅れて不動産価格も下がるという関係になっています。
もし2025年に不動産価格が下落するならば、2024年に株価が大幅に下落しなければなりません。2023年9月時点において、2024年に株価が暴落する懸念は今のところ考えにくいです。
詳しくは「マンション価格の推移にかかわる『2025年不動産暴落説』とは?」をご覧ください。
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