ざっくり要約!
- コンパクトシティとは、住まいや交通、公共サービス、商業施設などを集約し、効率化した都市のこと。
- コンパクトシティ政策が進むと、都市の中央部では不動産の需要が高まり、価格が上昇する可能性がある。
コンパクトシティとは、都市の機能を1箇所へ集中する施策のことです。サービスや行政の拠点と居住地を近づけることで、効率化やコスト削減につながると考えられています。
この記事では、コンパクトシティがもたらす効果や課題について解説します。不動産への影響も説明するので、参考にしてください。
記事サマリー
コンパクトシティとは?
コンパクトシティとは、生活機能を集約して効率化した都市や、その都市政策のことです。具体的には、住まい、交通、公共サービス、商業施設などを近距離にまとめます。
マイカーの利用を減らし、公共交通機関や徒歩による移動を促すのもコンパクトシティ政策のひとつです。徒歩圏内に必要な機能を集めることで、持続可能な都市環境を構築することが目的とされています。
コンパクトシティに関しては、1980年代ごろからヨーロッパやアメリカで考えられてきました。日本においても同時期から検討が始まり、人口減少や高齢化などの課題が顕在化した2013年頃から、本格的な議論が加速しました。
国の政策
日本では、国土交通省によりコンパクトシティ政策が進められています。政策の軸は主に以下の3つです。
- 都市のスポンジ化対策
- 郊外部のスプロール開発
- 誘導区域内における取組等
都市のスポンジ化対策とは、都市部の人口密度が薄くなってしまわないようにする対策です。具体的には、活用されていない土地について行政から利用を働きかけたり、地域の公共空間を創出したりしています。
郊外部のスプロール開発では、市街化調整区域における開発行為等を抑制しています。
そのほか、誘導区域内においては、コミュニティバスの回遊性の向上や、徒歩の推奨のために健幸ポイントを導入するなど、さまざまな取り組みがされています。
コンパクトシティの形成が進む背景
日本においてコンパクトシティに関する議論がされ始めたのは、高齢化と人口減少により都市のあり方を考える必要が出てきたからです。
それまでは住宅費用を抑えられる郊外へ人口が流出し、都市から周辺地域へ開発が広がる「スプロール現象」が進んでいました。中心部の居住人口が減少したことで、空洞化する「ドーナツ化現象」も問題となりつつあります。
中心地域が過疎化して都市の機能が分散すると、公共施設への効果的な投資が難しくなり、行政コストが増大するという問題が浮上します。
この結果、将来的には公共サービスが地域全体に提供されなくなる懸念さえも生じているのです。高齢者向けの医療や福祉機能を適切に配置する必要性も増しています。
こうした背景により、コンパクトシティの形成が進められています。
コンパクトシティがもたらす効果
国のコンパクトシティ政策がもたらす効果には、生活サービスの維持や、サービス産業の生産性の向上があります。そのほか、行政コストの縮減と税収の維持、環境負荷の低減や健康増進なども効果のひとつです。
生活サービスの維持
医療や商業、公共交通などの生活サービスを維持するためには、ある程度の人口を集める必要があります。今後、人口が減少していき、市街地が広がったままになると、これらのサービスを維持することが難しくなり、日常生活や地域経済にも悪影響を及ぼすかもしれません。
しかしコンパクトシティ化を進めて、公共交通の近くや日常の拠点に人々を集めれば、人口の集積や増加が可能となります。サービス施設の近くで人々が生活することによって、市民の生活における利便性を保つことができます。
サービス産業の生産性の向上
訪問介護は、移動にかかる時間とコストが多く、生産性や収益性が低いと認識されています。しかし、コンパクトシティの進展により、まちなかへの人口集中と介護施設の配置ができれば、サービス提供の効率が向上し、移動コストも削減されます。
訪問介護の生産性向上のイメージ
参考:国土交通省
また、都市機能の集約に伴い、まちなかでの買い物客や公共交通の利用者数も増加する見込みです。多くの人々がまちなかに滞在し、市民の消費活動が拡大するでしょう。その結果、店舗の床面積あたりの販売効率も向上することが期待されます。
行政コストの縮減と税収の維持
都市機能が一箇所に集中するほど、公共施設の維持やインフラの管理、ゴミ収集などの行政サービスは効率的に運営できます。コンパクトシティの進展により、行政サービスの効率アップができると、結果的に市民一人あたりの行政経費は削減されます。
また、固定資産税の多くは、まちなかから徴収されていますが、これまではまちなかの地価も郊外と同様に低下していました。しかし、コンパクトシティの推進により、まちなかの土地利用が活性化すると、地価が維持され、固定資産税収入の確保にもつながります。
健康増進
都市機能が集中し、さまざまな拠点と居住地が近接すると、多くの市民が徒歩や公共交通機関の活用で日常生活を送るようになります。
コンパクトシティ化の進展に伴い、高齢者の外出頻度が増すことで、市民の健康促進につながり、医療費の削減も期待されるのです。
具体的なデータを見ると、見附市の健康づくり事業に参加し、継続的に運動をおこなう高齢者は、おこなわないグループと比較して、年間約10万円も医療費を節約できていることが分かりました。
環境負荷の低減
通常の都市では、都市の人口密度が高いほど、自動車によるCO2排出量が低い傾向がみられます。つまり、都心部の人口が集中しているエリアでは電車を利用する人が多く、人口密度が低い地方では日常的に車を使っている状態といえます。
そこでコンパクトシティ化により、徒歩圏内に必要な施設を作れば、マイカーで移動する機会を減らせます。結果的にCO2排出量を削減できるでしょう。
コンパクトシティのメリットや課題
様々な効果が期待されているコンパクトシティですが、さまざまな課題も抱えています。
例えば人口を集中することによるトラブルの増加や、農地が減少することによる食料自給率の低下などが代表的な懸念点です。
ここでは、メリットとともに課題も見ていきましょう。
コンパクトシティのメリット
コンパクトシティのメリットに挙げられるものは、交通や生活の利便性の向上です。居住地と主要拠点が近接することで、市民は徒歩圏内で日常生活を送ることが可能となります。市街地の集中により、商業やサービス業が発展するため、地域全体の経済繁栄も促進されます。
行政コストの削減と、自治体のサービス向上も大きなメリットです。都市機能の集約により、行政の効率性が向上し、市民に対する高品質なサービス提供が可能になります。
また、自動車利用を減らすことによってCO2排出量が減少し、環境負荷の軽減も期待できるでしょう。これらのように、コンパクトシティにはさまざまなメリットがあります。
コンパクトシティの課題
コンパクトシティの課題は、人口が密集することによる近隣トラブルの増加が懸念される点です。居住地が集約されることで住民同士の距離が狭まり、個人のプライバシーに影響を及ぼす可能性があるでしょう。
また、一部の住民にとっては、現状よりも家賃や生活費などのコストが増加するリスクがあると指摘されています。
さらに、都市機能の集約に伴い、農地が失われることが懸念されており、食糧自給率の低下が議論されています。
現時点では、コンパクトシティの議論を進めている段階であり、実際のコストや利益に関しては詳細な検討が必要です。地域の経済や生活環境に及ぼす影響について、議論が続いています。
コンパクトシティの推進が不動産市場に与える影響は?
コンパクトシティ政策が進むと、都市の中央部では人口密度が増えていきます。そのため中央部では不動産の需要が高まり、価格が上昇すると懸念されています。
住民は現状よりも高い家賃を支払わなければならず、今後住宅を購入する際にはローン金額も大きくなるかもしれません。
一方、人口が減少していく郊外では不動産価格が下落し、土地所有者の資産価値も減少してしまいます。このため、土地所有者の一部からは反発や不満の声が出ることが予想されます。
しかし、このような懸念点ばかりではなく、コンパクトシティの取り組みに成功している都市もあります。代表的な成功事例は富山県富山市です。
富山市はLRTネットワークを形成し、公共交通の活性化により、コンパクトなまちづくりを実現しました。沿線への居住を推進するために、賃貸住宅の建設費や市民の家賃などの助成も行っています。
これらの取り組みにより、富山市では5年連続で地価が上昇するほか、中心市街地の人口は平成20年から転出よりも転入が多くなっています。
まとめ
コンパクトシティは、住まいや交通、公共サービス、商業施設などを集約し、効率化した都市や、その都市政策のことです。
都市機能を集中することで、生活サービスの維持やサービス産業の生産性の向上をすることなどを目的としています。
コンパクトシティ政策が進むと、都市の中央部では不動産の需要が高まり、価格が上昇すると考えられています。不動産購入を検討している場合は、国や市場の動向をチェックし、地域に詳しい不動産会社へ相談してみるのもよいでしょう。
この記事のポイント
- コンパクトシティとは?
コンパクトシティとは、住まいや交通、公共サービス、商業施設などを集約し、効率化した都市や、その都市政策のことです。
詳しくは「コンパクトシティとは?」をご覧ください。
- コンパクトシティがもたらす効果は?
都市機能を集中することで、生活サービスの維持やサービス産業の生産性の向上につながる効果があります。そのほか、行政コストの縮減と税収の維持、環境負荷の低減や健康増進なども効果のひとつです。
詳しくは「コンパクトシティがもたらす効果」をご覧ください。
- コンパクトシティの推進が不動産市場に与える影響は?
コンパクトシティ政策が進むと、都市の中央部では不動産の需要が高まり、価格が上昇すると考えられています。
詳しくは「コンパクトシティの推進が不動産市場に与える影響は?」をご覧ください。
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