2024年公示地価
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2024年公示地価、3年連続上昇!「アフターコロナ」顕著に

ざっくり要約!

  • 2024年の公示地価は、昨年に続き全エリア・全用途平均は上昇し、上昇率も拡大
  • 首都圏で上昇率が高いのは「都市部」「新駅周辺」「再開発エリア」

執筆者プロフィール

亀梨奈美

株式会社realwave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ジャーナリストとして独立。
2020年には「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに、不動産を“伝える”ことに特化した株式会社realwaveを設立。
住宅専門全国紙の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

国土交通省は3月26日、2024年の公示地価を発表しました。それによれば、全国全用途平均の前年比上昇率は2.3%、3年連続の上昇となりました。コロナからの回復が見られた23年と比べても、上昇率は拡大しています。上昇率が2%を超えるのは、1991年以来、33年ぶりのことです。

コロナ禍前を上回る地点も!全エリア・全用途が上昇

2024年地価公示 全国の地価動向

全用途平均

2020年2021年2022年2023年2024年
全国1.4▲ 0.50.61.62.3
三代都市圏2.1▲ 0.70.72.13.5
東京圏2.3▲ 0.50.82.44.0
大阪圏1.8▲ 0.70.21.22.4
名古屋圏1.9▲ 1.11.22.63.3
地方圏0.8▲ 0.30.51.21.3
地方四市7.42.95.88.57.7
その他0.1▲ 0.6▲ 0.10.40.7
(単位:%)

住宅地

2020年2021年2022年2023年2024年
全国0.8▲ 0.40.51.52.0
三代都市圏1.1▲ 0.60.51.72.8
東京圏1.4▲ 0.50.62.13.4
大阪圏0.4▲ 0.50.10.71.5
名古屋圏1.1▲ 1.012.32.8
地方圏0.5▲ 0.30.51.21.2
地方四市5.92.75.88.67.0
その他0▲ 0.6▲ 0.10.4 0.6
(単位:%)

商業地

2020年2021年2022年2023年2024年
全国3.1▲ 0.80.41.83.1
三代都市圏5.4▲ 1.30.72.95.2
東京圏5.2▲ 1.00.735.6
大阪圏6.9▲ 1.802.35.1
名古屋圏4.1▲ 1.7 ▲1.73.44.3
地方圏1.5▲ 0.50.211.5
地方四市11.33.15.78.19.2
その他0.3▲ 0.9▲ 0.50.10.6
(単位:%)    ※地方四市:札幌市・仙台市・広島市・福岡市

(出典:国土交通省「令和6年地価公示の概要」

2024年の地価公示は、上記すべてのエリアの全用途平均・住宅地・商業地がいずれも上昇しました。21年は20年の新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、ほぼすべてのエリア・用途でマイナスとなりましたが、22年、23年と徐々にコロナ前への回復が加速し、24年はコロナ禍前を上回る上昇率のエリア・用途も見られます。

上昇率が高いエリアに共通するのは「リゾート」「半導体」

2024年地価公示 変動率上位ランキング(全国)

住宅地

順位標準地番号都道府県標準値の所在地令和4年公示価格円/㎡令和5年公示価格円/㎡変動率%
1富良野-201北海道富良野市北の峰町4777番33『北の峰町25−11』38,70049,50027.9(22.1)
2千歳-19北海道千歳市栄町2丁目25番2062,00076,50023.4(21.6)
3宮古島-6沖縄県宮古島市上野宇野原東方原1104番8,91010,80021.2(19.6)
4千歳-10北海道千歳市柏陽2丁目3番1117,00020,50020.6(14.9)
5帯広-8北海道帯広市大空町1丁目6番1314,70017,70020.4(13.1)
6千歳-1北海道千歳市緑町3丁目13番地『緑町3−2−5』50,00060,10020.2(22.0)
7福岡博多-7福岡県福岡市博多区麦野3丁目5番3『麦野3−17−24』163,000195,00019.6(17.3)
8白馬-1長野県北安曇郡白馬村大字北城字堰別レ827番3613,30015,90019.5(17.3)
9千歳-5北海道千歳市花園5丁目33番『花園5−2−14』61,50073,50019.5(21.8)
10幕別-5北海道中川郡幕別町札内あかしや町47番2322,60027,00019.5(7.6)
(注)『』書きは住居表示
   上段の変動率は2024年地価公示、下段は2023年地価公示。

商業地

順位標準地番号都道府県標準値の所在地令和4年公示価格円/㎡令和5年公示価格円/㎡変動率%
1熊本大津5-1熊本県菊池郡大津町大字大津字拾六番町屋敷1096番2外
(村上写真館)
57,80077,00033.2(16.8)
2菊陽5-1熊本県菊池郡菊陽町大字津久礼字石坂2343番2
(冨永ビル)
73,00095,50030.8(21.7)
3千歳5-4北海道千歳市幸町3丁目19番2
(ホワイトビル)
66,00086,00030.3(20.4)
4白馬5-1長野県北安曇郡白馬村大字北城字山越4093番2
(こいや)
17,20022,40030.2(6.2)
5千歳5-3北海道千歳市千代田町5丁目1番8
(東宙ビル)
92,000119,00029.3(15.0)
6千歳5-2北海道千歳市錦町2丁目10番3
(ビジネスホテルホーリン)
59,00076,00028.8(22.9)
7千葉美浜5-301千葉県千葉市美浜区豊砂1番4
(コストコホールセール幕張倉庫店)
280,000356,00027.1
(ー)
8大阪中央5-19大阪府大阪市中央区道頓堀1丁目37番外
『道頓堀1−6−10』
(新世界串カツいっとく道頓堀戎橋店)
4,950,0006,200,00025.3(1.0)
9北広島5-2北海道北広島市栄町1丁目1番3
(北海道銀行北広島市店)
86,000106,00023.3(28.4)
10札幌東5-6北海道札幌市東区北8条東1丁目2番3外
『北8条東1−2−1』
(ほくていビル)
496,000610,00023.0(19.5)
(注)『 』書きは住居表示、( )書きはビル名または店舗名。
上段の変動率は2024年地価公示、下段は2023年地価公示。

(出典:国土交通省「令和6年地価公示の概要」

地価の上昇率が高いのは、北海道の富良野市や千歳市、沖縄県の宮古島、熊本県の菊池郡、長野県の白馬村などです。これらのエリアに共通するのは、リゾート地あるいは半導体メーカーの進出が見られることです。

リゾート地の地価上昇率が高い理由

富良野市や宮古島、白馬村は、国内外の旅行者から人気が高いエリアです。2023年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に変更されて以降、インバウンド需要はコロナ禍前に戻りつつあることから、24年の地価公示ではリゾート地の上昇率が目立つ形となりました。

日本政府観光局によれば、23年の訪日外客数は前半こそコロナ禍前の19年に及ばなかったものの、10月・11月・12月は19年を上回っています。
(出典:日本政府観光局「訪日外客数(2023年12月および年間推計値)

一方、国土交通省によれば、23年の日本人国内旅行消費額は前年比+27.5%でした。コロナ禍で大きく落ち込んだ国内の旅行客も、コロナ禍前に戻りつつあります。
(出典:国土交通省「旅行・観光消費者動向調査2023年年間値(速報)」

半導体メーカーの進出は周辺エリアにも影響

上昇率ランキング上位の熊本県菊池郡と北海道千歳市は、いずれも半導体メーカーが進出しているエリアです。菊池郡菊陽町には台湾の半導体メーカー「TSMC」が進出し、2月に工場が完成しました。日本の半導体メーカー「ラピダス」は、千歳市に工場を建設中です。

半導体は、デジタル社会となった現代の暮らしを支える重要基盤と位置付けられており、日本では国土強靭化の一環として補助金支給などの支援をしています。半導体工場の周辺にはさまざまな業種の企業や施設が集まり、雇用の創出などにも期待されることから、近年は半導体メーカーが進出したエリアとその周辺地域の地価上昇が目立っています。

首都圏で上昇が目立つのは都市部・新駅・再開発

一都三県は、すべての地域の住宅地の地価が上昇しました。とくに「都市部」「新駅周辺」「再開発エリア」の上昇率は、非常に高いものとなっています。

東京都の地区別住宅地 平均変動率

東京都全域4.1%(2.6%)
23区5.4%(3.4%)
多摩地区2.7%(1.6%)
※カッコ内は前年度の平均変動率
(出典:東京都 「令和6年地価公示価格(東京都分)」

東京都の住宅地は、23区、多摩地区ともに23年を大きく上回る上昇率となりました。上昇率トップの地点は、13.9%の港区芝浦。2位も港区の港南で、13.0%上昇しました。

昨今は新築マンションの供給エリアが限定的であり、中古マンションについても成約数が減少傾向にありますが、需要の高いエリアでは変わらず、タワーマンションなど高価格帯のマンションの取引が活発です。

港区はタワーマンションの棟数が最も多い区であり、湾岸エリアのマンションは外国人投資家からの人気も高いことから、円安やインフレが影響して地価が急騰しているものと考えられます。

令和6年地価公示 住宅地 平均変動率マップ

令和6年地価公示 住宅地 平均変動率マップ
(出典:東京都「令和6年地価公示価格(東京都分)の概要」

東京都では、島部を除き全エリア・全用途で地価が上昇しましたが、上記の変動率マップからわかるように、上昇率は千代田区を除く都心5区および文京区、豊島区が7%を超えている一方、23区内でも上昇率が5%に満たない区もあり、地域差が見られます。

神奈川県の地区別住宅地 平均変動率

神奈川県全域2.8%(1.4%)
横浜市2.7%(1.5%)
川崎市3.2%(1.7%)
相模原市4.0%(1.9%)
その他市2.6%(1.2%)
※カッコ内は前年度の平均変動率
(出典:神奈川県 「令和6年地価公示(神奈川県分)」

神奈川県内の上昇地点で目立ったのは、2023年に開業した東急新横浜線・相鉄新横浜線沿線エリアです。13.0%で住宅地の上昇率トップとなった横浜市保土ヶ谷は、相鉄線西谷駅周辺のエリアです。同じく、相鉄線大和駅周辺の2つの地点も上昇率が9%を超えています。

上昇率の上位には、茅ヶ崎や鎌倉、湘南などの地点も見られます。コロナ禍でテレワークが普及して以降、自然が豊かな一部のエリアの人気が高まっており、今もこの傾向が継続していることが伺えます。

千葉県の地区別住宅地 平均変動率

千葉県全域4.3%(2.3%)
東京圏4.7%(2.6%)
地方圏▲0.3%(▲0.3%)
※カッコ内は前年度の平均変動率
(出典:千葉県 「令和6年地価公示」

千葉県の住宅地は、一都三県の中で東京に次いで高い上昇率となりました。しかし、東京に近い「東京圏」、郊外の「地方圏」で分けると、東京圏の住宅地の上昇率は4.7%と千葉県の平均値を上回っているものの、地方圏については0.3%の下落。県内でも地域差が見られています。

市区町村別の上昇率トップは10.6%の市川市で、2位の流山市も10.1%と10%を超える上昇を見せています。3位は9.9%の浦安市となっており、いずれも東京都に隣接する市の上昇率が高いようです。

埼玉県の地区別住宅地 平均変動率

埼玉県全域2.0%(1.6%)
さいたま市2.7%(2.8%)
蕨市 6.0%(4.9%)
戸田市5.9%(5.8%)
川口市5.3%(4.9%)
※カッコ内は前年度の平均変動率
※さいたま市と、埼玉県内での平均変動率上位3市を記載
(出典:埼玉県 「令和6年地価公示(埼玉県内分)」

埼玉県の住宅地の平均上昇率は2.0%と、昨年の1.6%から微増しました。首都圏の中では最も上昇率が小さいようですが、23年と比較すると、上昇地点は東京やさいたま市に隣接するエリアのみならず、その周辺にも広がっています。

住宅地で最も上昇率が高かったのは、9.3%のさいたま市浦和区の浦和駅周辺です。JR浦和駅は東京都心へのアクセスが良く、再開発が進んでいることもあってファミリー世帯や若年層に人気が高まっています。26年には浦和駅西口に地上27階、地下2階の複合施設が竣工予定です。こうした計画の期待感も、地価の上昇に大きく影響します。

その他主要都市の住宅地 平均変動率

大阪府全域1.6% (0.7%)
  大阪市3.7%(1.6%)
愛知県全域2.8%(2.3%)
 名古屋市4.5%(3.7%)
北海道全域4.4%(7.6%)
  札幌市8.4%(15.0%)
宮城県全域4.7%(4.0%)
  仙台市7.0%(5.9%)
福岡県全域5.2%(4.2%)
  福岡市9.6%(8.0%)
※カッコ内は前年度の平均変動率

(出典:大阪府 「令和6年地価公示結果の概要」
(出典:愛知県 「令和6年地価公示結果(愛知県)について」
(出典:北海道 「令和6年地価公示(北海道分)の結果について」
(出典:宮城県 「令和6年地価公示(宮城県分)」
(出典:福岡県 「令和6年地価公示」

ほとんどの都市で昨年以上の上昇が見られますが、東京・大阪より地方都市のほうが上昇率は高くなっています。

地方都市では、オフィスやホテルに加え、マンション用地としての需要が高まっています。近年では、東京や大阪で数十億円を超えるハイエンドクラスのマンションの分譲が少なからず見られますが、地方都市でも“億ション”の誕生が相次いでいます。

札幌駅や名古屋駅周辺、福岡の「天神ビッグバン」、仙台の「せんだい都心再構築プロジェクト」など、地方都市では大規模な再開発が進められています。その一方で、立地適正化計画にあるように、街のコンパクト化は人口・世帯数が減っていくこれからの時代には必須であることから、地方でも中心部とその他のエリアとの格差は今後ますます広がっていきそうです。

立地適正化計画の概要

立地適正化計画の概要
(出典:国土交通省「みんなで進める、コンパクトなまちづくり」

足元ではさらに上昇率拡大か!これからの不動産市場はどうなる?

公示地価は、国土交通省土地鑑定委員会が地価公示法に基づき、都市計画区域などの標準的な地点の1月1日時点の1㎡あたりの価格を判定したものです。つまり、2024年地価公示は、23年の市況などから判定した鑑定結果に基づいています。

24年は年明け早々、日経平均株価が急騰し、バブル期の最高値を更新して4万円を超えました。不動産価格は、基本的に株価に連動するものです。今回、発表された公示地価には、こうした株価の急騰は反映されていないため、足元ではさらに上昇率が拡大しているものと考えられます。

さくら事務所会長 長嶋修氏 2024年 公示地価

さくら事務所会長で不動産コンサルタントの長嶋修氏は、3年連続の上昇かつ一部でコロナ禍前を上回る上昇率を見せた2024年地価公示について、次のような見解を示します。

「今年の地価公示は、コロナ禍の終わりを象徴するものだと思います。長らく続いたデフレが終わり、いよいよインフレ時代が到来するということなのでしょう。これまでも長らく不動産価格は高騰してきましたが、もう一段、上昇する可能性が高いといえます。

とはいえ、不動産価格の高騰は『格差の拡大』と同義です。今年の公示地価は、全国平均・三大都市圏・地方四市で上昇および上昇率の拡大が見られましたが、和歌山県や山梨県、四国などの地価はバブル崩壊以降、継続して下落しています。ただ、このような地域も、人が集まる中心地はこの限りではありません。

日本の土地総額はバブル時点でおよそ2,000兆円ありましたが、いまやその半分。1,000兆円ほどです。人口減少が続く2050年頃までは、800兆円、700兆円……と、どんどん低減していくと考えられます。

3月には、日本銀行がマイナス金利政策を解除しました。この程度の政策変更が地価や不動産価格に与える影響は軽微なものでしょうが、長期的には過疎化が進んでいるような地域、すでに価値が落ちている不動産などへの影響は大きいものになるのではないでしょうか」(長嶋氏)

まとめ

2024年の公示地価は、全国全用途平均で前年比2.3%上昇し、3年連続の上昇となりました。首都圏では都市部や新駅周辺、再開発エリアの上昇率が高く、地方ではリゾート地や半導体メーカーが進出しているエリアの上昇率が目立っています。

上昇率がコロナ禍前を上回る地点も多数出ていることから、今年の公示地価は「アフターコロナ」を象徴するものであると同時に、インフレ時代の到来を示唆するものとなりました。その一方で、地価や不動産価格の二極化は確実に進行しています。日銀がマイナス金利政策を解除したことで、この格差はますます大きくなるものと予想されます。

この記事のポイント

2024年公示地価の傾向は?

全国全用途平均の上昇率は2.3%、3年連続の上昇となりました

詳しくは、「コロナ禍前を上回る地点も!全エリア・全用途が上昇」をご覧ください。

首都圏の住宅地で上昇率が高かった場所は?

一都三県すべてで住宅地の平均地価が上昇しましたが、とくに「都市部」「新駅周辺」「再開発エリア」の上昇率が高くなっています。

詳しくは、「首都圏で上昇が目立つのは都市部・新駅・再開発」をご覧ください。

地方で地価の上昇が目立つエリアにはどのような特徴が見られる?

地方では、リゾート地や半導体メーカーが進出しているエリアの上昇率が顕著になっています。

詳しくは、「上昇率が高いエリアに共通するのは『リゾート』『半導体』」をご覧ください。

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