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古い家を売るには? 売却する3つの方法と好条件で売るコツを伝授

執筆者プロフィール

亀梨奈美

株式会社realwave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ジャーナリストとして独立。
2020年には「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに、不動産を“伝える”ことに特化した株式会社realwaveを設立。
住宅専門全国紙の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

ざっくり要約!

  • 古い家を売る方法は「仲介」「買取」「売却保証」の3つ
  • 仲介で売る場合は「古家付き土地」や「更地渡し」といった売り方もできる

築年数が30年を超えるような「古い家」は売却が難しいと思われている方も多いでしょう。確かに売却に苦労するケースが多いのが現状ですが、売り方や注意点を把握することで売却できる場合があります。

古い家を売るためには、売り方の選択肢を知っておくことが大切です。本記事では、古い家の売却を検討している方のために、売る方法や注意点をわかりやすく解説します。

「古い家」とはどれくらいの築年数を指す?

「古い家」に明確な定義はありません。しかし、法定耐用年数を超えた住まいは「古い家」と称されることが多い傾向にあります。住宅の法定耐用年数は、以下のとおりです。

構造 用途 耐用年数
木造 住宅 22年
事務所 24年
鉄骨鉄筋コンクリート・鉄筋コンクリート造 住宅 47年
事務所 50年
鉄骨造(骨格材4ⅿm超) 住宅 34年
事務所 38年
鉄骨造(骨格材3ⅿm超4ⅿⅿ以下) 住宅 27年
事務所 30年
鉄骨造(骨格材3ⅿm以下) 住宅 19年
事務所 22年

引用:耐用年数(建物/建物附属設備)|国税庁

木造住宅であれば「22年」が法廷耐用年数となるわけですが、そもそも法定耐用年数とは税務上の手続きをするための耐用年数であって、これを超える場合に住めなくなってしまうわけではありません。

近年は住宅の性能も向上していることもあり、築22年の木造住宅であっても必ずしも古いと感じるわけではありません。「古い家」の目安としては、木造住宅は築30年程度を超えた物件、マンションは築40年程度を超えた物件と考えておくと良いでしょう。

古い家を所有し続けるリスク

古い家を所有し続けることには、次のようなリスクがあります。

資産価値が低下する

「古い家」は明確に定義されていないとはいえ、築30年、40年を超えてくると建材や設備の劣化が目立ってきます。需要も基本的には経年につれて低減していくため、資産価値が低下していくと考えておきましょう。

維持・管理に費用がかかる

古い家を適切に維持・管理しようと思うと、それなりの費用がかかります。一戸建ては、築20年頃まではメンテナンスや補修などで維持していくことができますが、築30年を超えると外壁や屋根、内装材、設備などの交換が必要になってきます。

また、マンションも「修繕費用は積み立てているから安心」とは限りません。マンションも高経年化するにつれて、必要な修繕費用は上がっていきます。それに伴い、毎月、管理組合に徴収される管理費や修繕積立金が増額する可能性もあります。

「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定される

適切な維持・管理を怠ると、一戸建ての空き家は空き家対策特別措置法に基づき、自治体から「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定される可能性があります。特定空き家や管理不全空き家に指定された状態で勧告を受けると、空き家が建つ土地が「住宅用地の特例」から除外され、固定資産税や都市計画税が跳ね上がるおそれがあります。

住宅用地の特例

固定資産税課税標準額都市計画税課税標準額
小規模住宅用地(200㎡以下の部分)1/61/3
一般住宅用地(200㎡超の部分)1/32/3

古い家を売る3つの方法

古い家を売る方法は、次の3つに大別されます。それぞれにメリット・デメリットや向き不向きがあるため、家の状態や売主の意向を踏まえて売り方を検討しましょう。

1.「仲介」で売却する

「仲介」は、不動産を売却する一般的な方法です。売却する相手は一般消費者や宅建業者ではない法人で、売買取り引きを不動産仲介会社に仲介してもらいます。

3つの売却方法の中で最も高く売れる可能性がありますが、不特定多数に向けて販売活動を行うため、売れる保証はありません。古い家は築浅の物件と比べるとどうしても需要が低いため、売却に半年や1年、それ以上の期間がかかる可能性もあります。

2.「買取」で売却する

「買取」は、宅建業者に不動産を買い取ってもらう方法です。買主が一般の方ではないため、取り引きがスムーズで「仲介」に必要な仲介手数料が不要といったメリットがあります。ただし、どのような物件でも買い取ってもらえるわけではありません。宅建業者は買い取った物件を修繕・リフォームし、再販して利益を得ることを目的にしています。利益が得られないと判断する物件は、宅建業者であっても買い取ることはしません。

また、買取価格は仲介で売却した場合の7〜8割ほどになるのが一般的です。以上の特徴から「仲介では売れなかった」「できる限り早く売りたい」というケースや意向がある方に適した売却方法といえるでしょう。

3.「売却保証」をつけて売却する

「売却保証」とは、一定期間、売れなかった場合に限って買取で売却するという方法です。一定の期間中は「仲介」による売却を目指します。

最終的に「買取」によって売ることになる可能性はあるものの「仲介」による販売活動も挟むため、高額で売れる可能性もあるというのが売却保証の特徴です。売却保証さえつけることができれば「売れない」ことを避けられるため、住み替えによる売却、あるいは売りたい期日がある方に向いている売却方法です。

古い家を好条件で売るためのコツとは?

決して需要が高いとはいえない古い家を好条件で売るには、次のようなコツがあります。

相場を把握して適正な価格で売り出す

古い家に限ったことではありませんが、不動産を好条件で売るには、まず「適正価格」を知る必要があります。たとえば、市場価値が2,000万円の不動産の価値が1,500万円しかないと思い込んでいたら、機会損失につながりかねません。一方、2,000万円の不動産の価値を2,500万円と思い込んでしまっている場合は、売り出し価格が高すぎて売れない可能性が高くなります。

市場価値より高く売りたいとしても、まずは適正な価格を知ることが大切です。市場価値より高く売るなら、それなりに時間をかけるか「付加価値」を付ける必要があります。

まだ住める家はインスペクションや瑕疵保険の付保を検討しよう

不動産の付加価値のひとつとして「インスペクション」の実施や「瑕疵(かし)保険」の付保が挙げられます。インスペクションとは、中古住宅を売買する前の状況調査を指します。調査は第三者のプロが行うため、中立的かつ専門的に建物の状況を買主に把握してもらうことができます。

一方、既存住宅向けの瑕疵保険は、物件を売買し、引き渡した後に基本構造部分などの不具合などを対象とした保険です。インスペクションは壁や床を破壊して行う検査ではないため、インスペクションをすれば不具合が起きないというものではありません。瑕疵保険まで付保することで買主の大きな安心となるため、不動産が早く、高く売れる可能性が高まります。

瑕疵保険は原則的に新耐震基準で建てられた住宅にしか付保できませんが、1981年5月以前に建築確認を受けた旧耐震基準の住宅も、一定の耐震性を有していれば付保が可能な場合もあります。ただし、家屋の解体を前提としている買主にとっては、インスペクションも瑕疵保険も付加価値にはなりません。家の状態や需要を見て実施を検討しましょう。

「古家付き土地」として売ることも可能

古い一戸建ては「古家付き土地」として売却することも可能です。土地として売ることで、新築を目的としている人や土地活用を検討している人もターゲットに加えることができます。

ただし、一戸建てではなく土地として販売するため、基本的に建物は評価されません。場合によっては、一戸建てとして売るより価格が下がってしまう可能性があります。

独断でリフォームするのは避けるべき

「古い家を高く売るためにリフォームしよう」と考える方もいるかもしれませんが、不動産会社に相談する前に独断でリフォームするのは避けるべきです。

たしかにリフォームすることで見た目が良くなり、早く、高く売れる可能性はあるものの、リフォームにかけた費用の分だけ高く売れるとは限りません。また、そもそも建物に価値がなく、建て替えや土地活用を前提としている人にとっては、リフォームの有無は意味をなしません。不動産会社に相談した結果「リフォームしたほうが良い」との判断になる可能性はありますが、まずは手を加えない状態で査定を依頼しましょう。

解体して売るときは「更地渡し」も検討する

「古家付き土地」ではなく「更地」として売却するのも一案です。新築や土地活用を検討している人にとっては、建物が現存していることがマイナスとなる可能性があります。しかし、更地にしてしまうと前述した「住宅用地の特例」の適用がなくなるため、固定資産税や都市計画税は実質的に増税してしまいます。

建物を解体して更地にした後に長期間売れないことを避けるには「更地渡し」という引き渡し方法が有効です。更地渡しとは、売買契約後に売主が建物を解体し、更地にして買主に引き渡すことを指します。所有権がある内に更地になる期間を最小限に留めることができるため、増税を気にすることなく売却できます。

インスペクションや解体などに補助金が出る自治体もある

一部、インスペクションの実施や建物解体に補助金が出る自治体もあります。補助金には上限がありますが、一部負担してもらったうえで物件の魅力が高まるのであれば使わない手はありません。

インスペクションや解体への補助金の多くは、古い空き家に対するものです。家が建つ自治体名とともに「空き家 解体」「空き家 インスペクション」といったキーワードで検索すれば、情報にたどり着けるはずです。

古い家の売却で使える可能性のある税金控除特例

古い家であっても、金額次第では譲渡所得(売却益)が発生し、売却後に所得税や住民税が課される可能性があります。しかし、譲渡所得を控除できる特例も少なからずあります。とくに購入当時の価格がわからない古い家は、譲渡所得が高くなってしまいがちです。あらかじめどのような控除特例が適用できるか、確認しておきましょう。

状況特例
住んでいた自宅を売却するときに
利用できる税金控除特例
居住用財産の3000万円特別控除
長期所有における軽減税率の特例
自宅売却で譲渡損失が出たときに
利用できる税金控除特例
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
相続した実家を売却するときに
利用できる税金控除特例
相続空き家の3000万円特別控除
取得費加算の特例
平成21年・平成22年に取得した土地を売却したときに利用できる税金控除特例 1000万円の特別控除
収容などにより土地を売却したときに
利用できる税金控除特例
収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
収容等の場合の5000万円特別控除

売れない古い家はどうすればいい?

古い家は、決して需要が高いとはいえません。都市部や駅近であれば建物が古くても土地自体に魅力がありますが、郊外や駅から歩けない距離にある古い家は、思うような価格や期間で売れない可能性もあります。なかなか売れない場合は、次のような手段を講じてみましょう。

売り方を変えてみる

半年など一定期間経っても反響が少ない、あるいは内見予約が入らない場合は、売り方を変えてみるのも一案です。先述のとおり、古い家を売る方法は「仲介」「買取」「売却保証」の3つに大別されます。ただ、同じ仲介による売却であっても、リフォームや解体して売却したり、古家付き土地として売却したりすることも可能です。

売り方を変えるにあたっての注意点は、現状や市場のニーズにあった条件にすることです。たとえば、築40年を超える一戸建ては建物が評価されない可能性が高いため、リフォームによる効果は限定的かもしれません。一方、築20年程度でまだまだ住める状態であれば
、リフォームが効果的な施策となる可能性があります。

一概に「リフォームすれば需要が上がる」「解体すれば売れやすくなる」というわけではありません。これらの施策を講じるには一定の費用もかかるため、不動産会社に相談しながら慎重に判断しましょう。

不動産会社を変更する

選択肢のひとつとして、不動産会社を変えるという方法もあります。ただ、古い家が売れない要因が、必ずしも不動産会社にあるとは限りません。需要が低い家をなんとか売ろうと尽力してくれている不動産会社であれば、変更する必要はありません。

一方で、「媒介契約を締結した後、便宜的な定期連絡しかしてこない」「売ろうとする気概が感じられない」といった場合は、不動産会社の変更も視野に入れて検討してみましょう。

空き家バンクに登録する

空き家が多いエリアや過疎化が進んでいるエリアの古い家は、売り方を工夫しても、いくら不動産会社の力量が高かったとしても、売ることが難しいかもしれません。

地方自治体では、こうした古い空き家を「空き家バンク」に登録し、買いたい人とマッチングする政策を行っています。自治体によっては、不動産会社と媒介契約中の物件は登録できないなど細かな規定があるため、まずは自治体のホームページなどで情報を集めてみましょう。

ポイントを押さえて古い家の売却を成功させよう

古い家の売り方や注意点をお伝えしました。
古い家は売却が難しいケースが多いですが、売り方次第で売却は可能です。
ただし、トラブルを避けるために、売る際には契約不適合責任など法律的な問題も押さえておく必要があります。
本記事を参考に、古い家の売り方について理解し、売却を検討されてみてはいかがでしょうか。

この記事のポイント

古い家を売る方法とは?

古い家を売る方法は以下の通りです。

  • 仲介で売る
  • 買取で売る
  • リフォームしてから売る
  • 空き家バンクを利用する

詳しくは「古い家を売る方法」をご確認ください。

古い家を売るときに気を付けるポイントとは?

古い家を売る際は、契約不適合責任に注意が必要です。契約不適合責任は契約書の内容とは異なる目的物を引き渡した際に、売買主が問われる責任のことをいいます。

詳しくは「古い家を売る際の注意」をご確認ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

古い家の需要は決して高くありませんが、全国的に中古住宅の築年数は上がっており、新築住宅の供給数は減少傾向にあることから、今後は古い家を改修して住むことはよりメジャーになっていくものと考えられます。物件の築年数は変えることができませんが、付加価値を付けたり、見せ方を工夫したりすることは可能です。

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