田舎暮らしを特集した番組を目にする機会も増え、都会以外での暮らしに興味を持っている方もいるでしょう。インターネットの普及やテレワークなどの影響で、田舎暮らしの注目はますます増しています。
自給自足生活や人間関係の温かさなどのイメージがある田舎暮らしですが、メリットばかりではありません。
本記事では、田舎暮らしを失敗しないためのメリット・デメリットや田舎での仕事、失敗事例などをわかりやすく解説します。
あわせて、田舎暮らしを始める具体的な流れも紹介するので参考にしてください。
記事サマリー
田舎暮らしのメリット
まずは、田舎暮らしのメリットとして以下3点を紹介します。
- 近くに自然がある
- 固定費が安い
- 人との距離が近い
近くに自然がある
田舎暮らしの大きな魅力は、豊かな自然に囲まれて生活できる点です。都会にある自然とは違う壮大な山々や綺麗に澄んだ空、季節の植物に囲まれながら、ゆったりとした時間を過ごせるでしょう。
都会と比べて娯楽施設などは少ないものの、キャンプ、サイクリング、ハイキング、魚釣り、スキー、地域のイベントなど、自然に恵まれた田舎でしかできない遊びも、日常的に楽しめます。
自然のなかでのびのびと子育てしたいという方にもおすすめです。
ただし、子育てに関しては、学校までの距離や教育環境など、教育方針によっては好ましい教育環境にならない可能性もある点には注意しなければなりません。
固定費が安い
田舎の物件の場合、賃貸、購入にかかわらず、居住費を安く抑えられる傾向にあります。
地域にもよりますが、庭付きの一戸建て賃貸でも安い物件は多くあるため、広々とした家に費用を抑えて住むことが可能です。また、直売所などで新鮮な野菜を安価で手に入れることも可能で、食費も抑えられる傾向にあります。
田舎であっても、現在はインターネットや通販が普及しているので、場所によっては都会とあまり変わらない生活も可能です。リモートワークなら、都心の会社に勤めながら田舎で生活ということも可能でしょう。
人との距離が近い
田舎暮らしの魅力のひとつに、人づきあいが密である点もあります。地域によっては、地域行事や近所づきあいなどで人との交流が盛んな場所もあります。
雪かきや草刈り、農作業は近所との助け合いが必要になるため、交流する機会も生まれやすいでしょう。
ただし、田舎において、この「人との距離が近い」という点はデメリットになることもあります。
例えば、田舎の人にとっては当たり前の距離でプライベートに立ち入られることに違和感を覚えたり、地域独特の風習を理解できなかったりする可能性があります。
田舎独特の距離感に馴染めないかもしれないという不安がある方は、移住者が多い地域に絞って探してみるのもおすすめです。移住者同士のコミュニティがある地域もあるので検討しましょう。
田舎暮らしのデメリット
田舎暮らしを失敗しないためには、デメリットも理解したうえで検討することが大切です。住んでから「こんなはずじゃなかった……」と後悔しても、簡単に住まいを変えることは難しいでしょう。
以下で、理解しておきたいデメリットを解説します。
- 利便性が悪い
- 商業施設やレジャー施設が少ない
- 都心と同等の給与を得るのが難しい
利便性が低い
田舎には、交通の便が悪い地域が多い点には注意が必要です。
都会では徒歩圏内に駅やバス停があり、1時間に何便も公共交通機関が運行しているのが当たり前でしょう。しかし田舎では、電車やバスが1時間に1本しかない場合もあります。駅やバス停に行くのに時間がかかる地域も多いです。
近くに病院や銀行、学校などの施設やスーパーやコンビニなどのお店がない可能性もあります。また、お店があったとしても閉店時間が早い可能性もあり、不便さを感じるかもしれません。
そのため、交通面では、都会に比べ利便性の悪さを感じる場面が多い点には留意しましょう。
ただし、近年は、ネットショッピングをうまく活用することで、買い物の不便さはある程度カバーできます。食料品、書籍、服飾品など日常的に必要なものもネットで気軽に購入できるため、そこまで不便に感じることはないでしょう。
商業施設やレジャー施設が少ない
スーパーなどの生活に必要な施設が少ないだけでなく、商業施設やレジャー施設も少ない傾向にあります。
カラオケやボウリング場といった遊戯施設や大型のショッピングセンターなど休日に遊びに行ける場所が少なく、ストレスに感じる方もいるでしょう。
ただし、近年はおうち時間が充実するサブスクリプションサービスなどが増えています。例えば、映画館が少ない地域では、動画配信サービスを利用すればいつでも映画を鑑賞できます。サブスクリプションサービスなら、住んでいる場所を問わず休日を楽しめるでしょう。
また、キャンプやハイキングなど自然環境を活かした田舎ならではの楽しみ方もあります。子どもがいる家庭なら、近場で葉っぱやお花などを使った自然と触れ合う遊びを楽しめます。
都心と同等の給与を得るのが難しい
都心に比べ田舎の賃金は低い傾向があります。2022年度の最低賃金を比較してみると、全国平均961円に対し、東京は1,072円、神奈川1,071円、大阪1,023円です。
一方、47都道府県のうち、青森・秋田・愛媛・高知・沖縄などを含む10県は853円であり、東京と比べると219円もの差があります。
また、都心に比べ就職先が少ない点にも注意が必要です。田舎に来て就職先を探そうとすると、都心のような給与を得るには相当なハードルの高さがあるうえに、そもそも仕事がない可能性もあるでしょう。
ただし、リモートワークであれば都心の会社に勤めながら田舎で生活できるので、給与面の心配は軽減できるでしょう。
田舎には、農業や漁業など田舎独特の就職先もあり、人手を求めている可能性も高いので、就職先の選択肢に入れるのもひとつの手段といえます。
田舎暮らしの仕事とは
田舎暮らしでできる仕事は、都心と業種などが異なります。移住した際にどのような職に就くのかをイメージするため、田舎でできる仕事の例を紹介します。
- 農業
- 林業
- 漁業
- 公務員
- 一般企業のテレワーク勤務
農業
農業は、田舎暮らしでできる代表的な仕事です。農業従業者は年々減少を続けており、高齢化も相まって人手不足が大きな課題です。
人手不足解消のため、自動収穫ロボットの導入やドローンを使った分析など、さまざまな農業経営支援が行われているほか、農業を始めたい方向けの支援制度などもあります。
田舎暮らしで農業を始めれば、自給自足の生活ができ食費が少なく済みます。満員電車に揺られながら通勤する必要もありません。
とはいえ、初心者が田舎に移住していきなり農業を始めるのは、簡単なことではありません。移住で新たに農業を始めたい場合は、全国各地で行われている就農支援などを活用しましょう。
林業
林業は、育てた木を伐採して売る仕事です。自然に囲まれながら働きたい方や身体を動かすのが苦ではない方に向いています。
職に就くには幅広い知識や技術が必要ですが、法人に就職して勉強する方法もあります。
林業就業のための相談会や資格の取得もできる体験セミナーなどが行われているので、積極的に活用しましょう。
漁業
漁業は、魚介類など水産物を取る、または養殖する仕事です。獲れた魚を市場に出し値段がつけられ、食品卸、飲食店業者、一般の消費者に評価されるのが魅力です。
漁業と一口に言っても、種類や地域などが幅広く一概には言えません。漁業就業セミナーや就業支援フェア、漁業体験などに参加し、実際に漁師として働く方の話を聞くことが大切です。
公務員
公務員は、一般的に給料や雇用が安定していると言われる職業です。自治体によっては、Uターン枠やIターン枠などを設けている場合があります。
一方で、都市部と比べて採用人数が少ない傾向にあるため、注意が必要です。地方公務員の場合は、地域により年齢制限も定められています。受験資格を満たしているかなどもあらかじめ確認しておきましょう。
一般企業のテレワーク勤務
一般企業でのテレワーク勤務を検討するのも手段の1つです。
新型コロナウイルス感染症の影響で、近年急速にテレワークが普及しています。ノマドワーカーやワーケーションなどの言葉を耳にする機会も増えました。
フルリモートが認められる企業に勤めれば、田舎暮らししながら勤務することも可能です。これまで通りの収入で働き続けられるため、安心して田舎暮らしを始められます。
田舎暮らしの物件探しの方法
田舎暮らしをしたいものの、どうやって物件を見つければよいかわからない方のために、田舎暮らしでの物件探しの方法を紹介します。
- 空き家バンクで格安物件を探す
- 農地・畑付きの賃貸物件を探す
空き家バンクで格安物件を探す
空き家バンクは、空き家を売りたい・貸したい人と利用したい方を自治体がつなげる制度です。空き家バンクを利用すれば、100万円台などの格安で物件を見つけられる可能性があります。
また、空き家バンクを利用した場合、仲介手数料の補助が受けられるケースもあります。自治体のホームページなどで空き家情報が紹介されているので、調べてみましょう。
ただし、空き家バンクで格安の物件が見つかった場合も、リフォームをしないと住めないケースもあり、リフォーム代にお金がかかることもあるので、購入の際は実際に物件を見て確認することをおすすめします。修繕費の補助制度もあるので、あらかじめ利用できる制度を確認しておきましょう。
農地・畑付きの賃貸物件を探す
農地・畑付きの物件なら、家庭菜園が始められます。移住先でいきなり物件を購入するのが不安な方、住み続けられるかどうか試してみたい方は、賃貸物件を探しましょう。賃貸なら、合わなかった場合に引っ越しできます。
農地の購入や賃借には許可が必要なため、移住して自分で農業を始めるのは簡単なことではありません。しかし、空き家に付随する農地については、許可をとるための要件が緩和されている自治体があります。
農地・畑付き賃貸物件に関しても、空き家バンクを活用しましょう。ただし、田舎では賃貸物件が豊富にあるわけではないことを覚えておきましょう。
田舎暮らしの失敗事例
にぎやかな都会から離れて自然に囲まれた田舎で暮らすのは良いイメージがありますが、メリットばかりではありません。田舎暮らしの失敗事例を以下で解説します。
- 仕事が決まらない
- 人間関係に嫌気がさした
- 予想以上にお金がかかった
仕事が決まらない
田舎では、都市部と比べると求人数が少ないため、移住後に仕事が見つかるとは限りません。勢いで移住するのではなく、事前に仕事探しをするなどの準備が必要です。
人間関係に嫌気がさした
田舎では、人づきあいが多い分、人間関係が閉鎖的になる傾向があります。都会での暮らしに慣れていると、密な人間関係を面倒に感じるかもしれません。
「思っているのと違った」という状況にならないためにも、田舎暮らしを始める前に実際に移住先を訪問し、現地の人の声を聞くことが大切です。
予想以上にお金がかかった
田舎は住居費や食費は安い傾向にありますが、買い物などに車が必要であれば維持費などが高くつきます。都会と比べて交通の便が悪く、車社会の地域も多いので注意しましょう。寒い、暑い地域では、光熱費も高くなりやすいです。
また、空き家バンクなどで安く物件が手に入った場合も、老朽化などが進んでいればリフォームに予想以上の費用がかかることがあります。
田舎暮らしを始める流れ
田舎暮らしを始めるにもどうすればいいのかわからないという方も多いでしょう。田舎暮らしを始める流れについて理解しておくことが大切です。
- 候補地を決める
- 事前調査する
- 計画を立てる
- 現地を訪問する
- 仕事や住居を決めて移住する
候補地を決める
まずは、候補地選びです。田舎といっても以下のようなさまざまな環境があります。
- 山や川側、海側
- 雪の降る地域、温暖な地域
- 都心から近い地域、人里離れた地域
どのような環境で生活したいのかによって、選ぶべき地域も異なります。ご自身や家族の理想の田舎暮らしを明確にしたうえで、候補地を決めましょう。
移住先におすすめの候補地をいくつか紹介するので、参考にしてください。
北海道
北海道は、面積が最も大きく、179もの市町村がある島です。雄大な大地が広がる北海道には、自然本来の絶景スポットがたくさんあります。
冬が長く、スキーやスノーボードなどのスポーツ、雪まつりなどのイベントが楽しめるのが特徴です。田舎暮らしで自然を感じられるアクティビティを楽しみたい方にも適しています。
食費は安い傾向にありますが、光熱費や交通費が都市部よりも高くなる傾向にある点に注意が必要です。
北海道では、オンライン移住相談や移住費用のシミュレーションなど、移住支援が充実しています。北海道での田舎暮らしを考えている方は、うまく活用しましょう。
神奈川県
神奈川県は、東京都の南に位置する県です。都心から近いにもかかわらず、海も山もあり自然にあふれているのが特徴です。
相模湾に面しており、海水浴も楽しめるほか、観光地が多く買い物や遊びも楽しめます。地域によっては大型商業施設なども利用可能です。
神奈川県でも各自治体が移住支援を行っているので、積極的に利用しましょう。例えば、神奈川県箱根町では、第2子以降に誕生祝金が支給される子育て支援や空き家バンク、お試し居住制度などがあります。
山梨県
山梨県は、東京の隣に位置し、長野県や静岡県にも隣接する県です。富士山などの山々に囲まれており、ハイキングや登山が楽しめます。
美しい山々の景観や広大な農村の風景など、自然環境に恵まれていながら、都心からのアクセスも良好です。地域によりますが、約2時間足らずで都心まで行けます。
仕事の面でいうと、製造業で働く方が多い傾向にあります。
事前調査する
田舎暮らしの候補地が決まったら、事前調査をします。住居の候補や仕事の有無などの生活に関わることや、現地の雰囲気などを事前に調査しましょう。
- スーパーや学校・病院など生活に必要な施設があるのか
- 就職先があるのか
- 近所付き合いはどの程度なのか
- 子育て支援が受けられるのか
調査をする際は、移住セミナーや相談会も積極的に活用しましょう。移住セミナーや相談会では、先輩移住者や移住先の自治体の方などから、生の声を聞くことができます。
セミナーなどはオンラインでも実施されているので、会場に出向けない方でも参加可能です。
移住先が合わなかった場合、簡単に住まいを変えられるわけではありません。住み続けられるかどうかを十分に検討しましょう。
計画を立てる
田舎暮らしをする地域が決まり調査を行ったら、実際に移住するまでに計画を立てることが大切です。
田舎暮らしでは固定費が安くなる傾向にありますが、無計画に移住してしまうとかえってお金がかかってしまうケースもあります。
何の仕事に就き、どの程度収入が得られるのか、毎月生活費にいくらかかるのかなどをシミュレーションすることが大切です。
現地を訪問する
田舎暮らしを始める前に、なるべく現地を訪問しましょう。移住先を実際に歩き、現地の様子を感じることで、自分の持っているイメージとのずれがないかどうかを確認できます。
現地を訪問する場合は、日帰りではなく、お試し移住などを利用するようにしましょう。お試し移住とは、実際に現地での暮らしを体験できる制度のことです。
体験ツアーや農業体験など、さまざまなプランが用意されており、自治体によってはお試し移住の費用の補助が受けられる場合もあります。
仕事や住居を決めて移住する
移住してから仕事を決める場合、収入面だけでなく精神的にも負担がかかる可能性があります。
また、移住前にあらかじめ住居を決めていない場合は、住居が決まるまで仮住まいになるので、引っ越しの手間や費用がかさむでしょう。
田舎暮らしを始める際は、なるべく移住する前に仕事や住居を決めておきましょう。
田舎暮らしをするなら事前のリサーチと現地訪問をしっかり行おう
田舎暮らしには魅力も多いですが、移住して失敗する方もいるのが実情です。
失敗しないためには、事前のリサーチと現地訪問をしっかりしたうえで田舎暮らしを検討することが重要です。また、短期滞在から少しずつ滞在期間を長くして、徐々に田舎暮らしにシフトしていくのもおすすめです。
本記事を参考に、田舎暮らしについて理解し、理想の田舎暮らしを始める準備を進めてみてはいかがでしょうか。
この記事のポイント
- 田舎暮らしのメリットとは?
田舎暮らしには以下のようなメリットがあります。
- 近くに自然がある
- 固定費が安い
- 人との距離が近い
といった項目が挙げられます。
詳しくは「田舎暮らしのメリット」をご確認ください。- 田舎暮らしの物件の探し方は?
各自治体が紹介している空き家バンクを活用しましょう。賃貸の場合は、紹介されている物件数が豊富にあるわけではないので、田舎暮らし専門の不動産会社を探すのも手段の1つです。
詳しくは「田舎暮らしの物件探しの方法」をご確認ください。
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