ざっくり要約!
- 賃貸住宅では契約時に事務所利用を制限されていることが多いです。
- 自宅兼事務所にするメリットは、オフィスを借りる費用や通勤の必要がないこと、自宅の光熱費の一部を経費にできることです。
- 自宅兼事務所にするデメリットには、仕事とプライベートの線引きや来客対応が難しいこと、信用を得にくいことが挙げられます。
小規模の事業を始める際、オフィスを構えずに自宅で仕事をしたいと考える人は多いでしょう。しかし、賃貸住宅においては事務所利用ができない場合も多くあります。
この記事では、自宅を事務所にできるか否かや、自宅兼事務所にするメリット・デメリットを解説します。自宅兼事務所にできない場合の対応策も紹介するので、これから事業を始める方はぜひ参考にしてください。
記事サマリー
自宅を事務所にすることはできる?
自宅を事務所として使用できるか否かは、住居の契約内容などによって異なります。ここでは、主に賃貸住宅の場合について解説します。
賃貸住宅は制限があることも
賃貸住宅を事務所として利用することは、契約違反とされることが多いです。これは、賃貸契約時に「居住用」として契約しているためであり、契約書には明確に「事務所使用不可」と記載されていることが多いです。
具体的な制限としては、登記の禁止やポストや表札に屋号の表示禁止、広告や看板の禁止などが挙げられます。無断で事務所として使用することは、税金の問題や火災保険の適用条件が変わるリスクもあります。
事務所として使用する場合、事前に不動産会社や貸主の許可を得ることが必要です。
自宅兼事務所は「SOHO」と呼ばれる
自宅を事務所として使用するスタイルは「SOHO(Small Office/Home Office)」と呼ばれます。主に在宅勤務やフリーランスの仕事をする人に適しています。
SOHO物件を探す際には、事前に事務所使用が可能かどうかを不動産会社に確認することが必要です。事務所使用が可能な物件であっても、業種によっては制限があるため、具体的な使用方法について説明し、許可を得ることが求められます。
・「SOHO」に関する記事はこちら
SOHOと賃貸オフィス物件の違いとは?メリットとデメリットも紹介
自宅兼事務所に向いている職業
自宅兼事務所に向いている職業としては、主に次の3つが挙げられます。
- IT関連
- クリエイター
- 来客がない職種
それぞれの職業について見ていきましょう。
IT関連
IT関連の職業は、特に自宅兼事務所での働き方に適しています。具体的には、システムエンジニアやプログラマーが挙げられます。これらの職業は、基本的にパソコンとインターネット環境があれば業務を遂行できるため、特定のオフィスに出向く必要がありません。
また、IT業界は成果物の納品が主な業務であり、リモートでのコミュニケーションが一般的です。時間や場所に縛られずに働けるため、柔軟なスケジュール管理が可能です。
クリエイター
クリエイター職も自宅兼事務所に適しています。たとえば、グラフィックデザイナーやライターが挙げられます。創造的な作業が中心であり、静かな環境で集中して取り組むことが求められます。自宅兼事務所であれば、自分のペースで作業が進められるため、クリエイティブな発想ができるでしょう。
また、クライアントとのやり取りもオンラインで完結することが多く、物理的なオフィスの必要性が低いです。自宅での作業環境を整えることで、より効率的に業務を行うことも可能となります。
来客がない職種
来客がない職種も自宅兼事務所での働き方に適しています。具体的には、データ入力やオンラインサポートが挙げられます。パソコンを使った作業が中心であり、対面での打ち合わせや来客対応が基本的に不要です。
自宅兼事務所で働くことで、業務に集中しやすくなり、効率的に仕事を進められるメリットもあります。
自宅兼事務所にするメリット
自宅兼事務所で働くメリットは、主に以下の3つです。
- 別にオフィス・事務所を借りる費用がかからない
- 通勤する必要がない
- 光熱費などの一部を経費にできる
それぞれ解説していきます。
別にオフィス・事務所を借りる費用がかからない
自宅兼事務所のメリットは、オフィスや事務所を借りる費用が不要なことです。通常のオフィス契約では、敷金・礼金・保証金などの初期費用に加え、毎月の家賃も発生します。自宅を事務所として使用すれば、これらの費用を全て節約できるのです。
特に、フリーランスや小規模事業者にとっては、固定費の削減が事業の継続性に直結します。オフィス費用の節約分を、事業拡大や自己投資に回すことができるため、ビジネスの成長にもつながるでしょう。
通勤する必要がない
通勤が不要になることも、自宅兼事務所で働くメリットです。通勤時間をゼロにできるため、その分の時間を業務やプライベートに充てることができます。
特に長時間の通勤が必要な都市部では、このメリットは大きいです。朝の混雑した電車に乗る必要がないため、精神的・体力的な負担が軽減されます。通勤費用の節約にもなるため、経済的なメリットもあります。
光熱費などの一部を経費にできる
自宅を事務所にすると、光熱費や家賃の一部を経費として計上できる場合があります。「家事按分」と呼ばれる方法で、生活費と事業費用を適切に分けて申告します。
例えば、仕事部屋の面積が自宅全体の20%だとすると、光熱費や家賃の20%を事業経費として計上する方法があります。結果的に、税金面でメリットを得られる場合があります。
ただし、家事按分の割合は客観的に判断する必要があり、過度な申告は税務調査の対象となるリスクもあります。適切な按分比率を設定し、証拠となる書類を保管しておくことが重要です。
自宅兼事務所にするデメリット
自宅兼事務所には、デメリットも3つあります。
- 仕事とプライベートの線引きが曖昧になる
- 信用を得にくい
- 来客対応が難しい
それぞれ解説していきます。
仕事とプライベートの線引きが曖昧になる
自宅兼事務所で働くと、仕事とプライベートの境界が曖昧になることが多いです。プライベートな時間に仕事の電話やメールが入ると、休息が取りにくく、ストレスが溜まりやすくなります。
夜遅くまで仕事を続けてしまい、家族とのコミュニケーションが減ってしまうケースも考えられます。仕事と生活のバランスが崩れ、心身に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。
信用を得にくい
自宅兼事務所では、ビジネス上の信用度が低く見られることがあります。特に法人取引においては、専用のオフィスを持たないことで信頼性に欠けると見なされがちです。
例えば、顧客が訪問した際に事務所ではなく自宅で対応すると、プロフェッショナルな印象を与えにくいです。それによって、取引の機会を失うこともあるかもしれません。
来客対応が難しい
自宅兼事務所では、仕事上の来客対応が難しいことがあります。来客のための専用スペースがない場合、リビングやダイニングでの対応となり、ビジネスの信頼性やイメージに悪影響を与えかねません。プライベートな空間が見えてしまうこともあります。
家族やペットがいる場合は、騒音や動きが気になり、集中して打ち合わせを行えないこともあるでしょう。
自宅兼事務所にできない場合の対応策
ここでは、何らかの事情により自宅を事務所にできない場合の対応策を3つお伝えします。
- コワーキングスペース・シェアオフィスを利用する
- サービスオフィスを利用する
- バーチャルオフィスで登記する
それぞれの特徴を把握し、ご自身の状況に合う方法を選んでください。
コワーキングスペース・シェアオフィスを利用する
コワーキングスペースやシェアオフィスは、複数の個人や企業が共同で利用する作業空間です。一般的に、デスクや会議室、インターネット環境が提供され、月額または日割りで利用できます。
自宅を事務所にできない場合は、コワーキングスペースやシェアオフィスを利用する方法が有効です。いずれも仕事とプライベートの区切りを付けられ、プライバシーの確保が可能です。また、個室を利用できる場合もあり、集中して作業する環境を確保できます。
サービスオフィスを利用する
サービスオフィスとは、オフィス家具や設備が整っており、すぐに業務を開始できるレンタルオフィスです。一般的に月額料金で利用できます。
家具・設備やインフラが整っているため、初期投資を抑えて業務を始められることがメリットです。受付や会議室などが完備されているケースも多く、来訪者に対して企業のように接客することが可能です。
バーチャルオフィスで登記する
バーチャルオフィスとは、事業用の住所や電話番号を貸し出すサービスです。物理的なオフィススペースは提供されません。バーチャルオフィスを利用することで、法人登記や銀行口座の開設が可能となり、ビジネスの信用性を高めることができます。
自宅住所を公開したくない場合や、都心の住所を利用したい場合に有効です。郵便物の受け取りや転送、電話の転送などのオプションサービスを利用することもできます。
まとめ
賃貸住宅は、用途を居住用に限定され、自宅兼事務所にすることを制限されているケースが多いです。また、事務所利用が可能な物件であっても、業種によって制限される場合もあります。自宅を事務所にする場合は、不動産会社や貸主の許可を事前に得ることが必要です。
ただし、自宅兼事務所にすると仕事とプライベートの線引きや来客対応が難しいこと、信用を得にくいことなどのデメリットもあります。メリット・デメリットを踏まえて、自宅を事務所にするかを考えましょう。
事務所利用できる物件をお探しの場合は、まず不動産会社へ相談するのがおすすめです。
この記事のポイント
- 自宅を事務所にすることはできますか?
自宅を事務所として使用できるか否かは、住居の契約内容などによって異なります。
詳しくは「自宅を事務所にすることはできる?」をご覧ください。
- 自宅を事務所にするのに向いている職種はなんですか?
IT関連やクリエイターなど、パソコンとインターネット環境があれば仕事ができる職種が向いています。
詳しくは「自宅兼事務所に向いている職業」をご覧ください。
- 自宅を事務所にできない場合はどうしたら良いですか?
コワーキングスペースやバーチャルオフィスなどを検討してみましょう。
詳しくは「自宅兼事務所にできない場合の対応策」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
事務所兼自宅、いわゆるSOHOは、個人事業主や起業家にとって魅力的な選択肢です。しかし、多くの賃貸住宅では事務所利用に制限があるため、家主や管理会社との事前相談が不可欠です。
もし自宅での事業が難しい場合は、コワーキングスペースやサービスオフィス、バーチャルオフィスなどの代替案も検討してみてください。
また、SOHOを選択する際は、ご自身のライフスタイルと事業計画を十分に考慮することが大切です。快適な生活環境と効率的な仕事場の両立が、長期的な成功につながります。
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