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実勢価格とは?路線価との金額の差は?基礎知識や計算方法、調べ方を紹介

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 実勢価格とは「適切な不動産市場で取引される時価」のこと
  • 実勢価格を把握したいときに役立つのが公的評価額

実勢価格とは「不動産の時価」のことです。
不動産の価格には土地価格と建物価格がありますが、土地価格に関しては路線価や公示価格等の公的評価額から実勢価格を推測することができます。

公的評価額はインターネットで誰でも簡単に入手できるため、公的評価額から実勢価格を算出する方法を知っておくと便利です。
実勢価格は公的評価額からどのように算出され、また公的評価額以外を使って調べる方法には何があるのでしょうか。
この記事では「実勢価格」について解説します。

実勢価格とは

実勢価格とは「適切な不動産市場で取引される時価」のことです。
適切な不動産市場とは、以下の要件をすべて満たす市場のことを指します。

【適切な不動産市場の要件】

  • 売主・買主が自由意思に基づいて市場に参入・退出ができること
  • 取引形態が、売主・買主が制約されたり、売り急ぎ、買い進み等を誘引したりするような特別なものではないこと
  • 対象不動産が相当の期間市場に公開されていること

つまり、不動産会社の仲介を通じて普通に売却したときの価格が実勢価格(時価)です。
上記の「対象不動産が相当の期間市場に公開されていること」の相当の期間とは、一般的に3カ月程度を指します。

例えば、競売のような短期間で強制的に売却されてしまう市場は、適切な不動産市場とは呼びません。
任意売却による売却も、売り急ぎを誘引する特別な事情があり、適切な不動産市場ではないといえます。
任意売却とは、債権者(銀行等)の合意を得て行う借金返済のために行う売却のことです。
そのため、競売や任意売却による売却価格は、実勢価格とは呼びません。

本当の実勢価格は実際に仲介で売ってみないとわからないため、容易に把握できない点が問題点です。

不動産は、相続の遺産分割や離婚の財産分与等で売却は予定していないけれども実勢価格を把握したいというケースがあります。

実勢価格を把握したいときに、役立つのが公的評価額です。
公的評価額には、以下の4種類の価格があります。

【公的評価額】

  • 地価公示
  • 都道府県地価調査
  • 相続税路線価
  • 固定資産税路線価

地価公示とは、国が毎年行っている1月1日時点の土地の評価額のことです。
地価公示では、全国に約26,000地点ある標準地と呼ばれる評価地点の価格が毎年公表されています。

都道府県地価調査とは、都道府県が毎年行っている7月1日時点の土地の評価額のことです。
都道府県地価調査では、全国に約21,000地点ある基準地と呼ばれる評価地点の価格が毎年公表されています。

相続税路線価とは、国税庁が毎年行っている土地の相続税評価額を求めるために利用される土地の評価額のことです。
土地の相続税評価額は、相続税や贈与税を計算する根拠となります。

固定資産税路線価とは、市町村が3年に1度行っている土地の固定資産税評価額を求めるために利用される土地の評価額のことです。
土地の固定資産税評価額は、固定資産税や都市計画税、登録免許税、不動産取得税を計算する根拠となります。

実勢価格は路線価と相関がある?

土地の実勢価格は、路線価等の公的評価額と相関があります。
路線価等の公的評価額は、表向き時価とされる地価公示を基準に価格水準が決定されていることが特徴です。

まず、地価公示と都道府県地価調査は、同じ価格水準となります。
地価公示と都道府県地価調査は価格時点が半年ずれているだけであり、地価公示は1月1日、都道府県地価調査は7月1日が価格時点です。

次に、相続税路線価は、地価公示の8割を目安に価格が評価されています。
地価公示は標準地と呼ばれる「点」の価格であるのに対し、相続税路線価は道路に割り振られている「線」の価格です。
地価公示の標準地は全国に約26,000地点しかないため、当然、地価公示と相続税路線価は1対1の対応はしていません。

相続税路線価が地価公示の8割という関係は、標準地の前面道路にある相続税路線価は地価公示の8割になっているということです。

さらに、固定資産税路線価は、地価公示の7割を目安に価格が評価されています。
固定資産税路線価も相続税路線価と同様に道路に割り振られている「線」の価格です。

標準地の前面道路にある固定資産税路線価は、地価公示の7割という関係になっています。

実勢価格と公示価格との金額の差の目安は?

地価公示は、あくまでも「表向き」は実勢価格とされていますが、実際には実勢価格とは異なります。

地価公示との乖離の状況は都市部ほど大きく、実勢価格は都市部であれば地価公示の1.5~2倍、地方であれば地価公示の0.9~1.1倍程度です。

地価公示が実勢価格と乖離している点に関しては、理由があります。
相続税路線価と固定資産税路線価に連動してしまう地価公示は、端的にいうと税金を決定する評価額です。

都市部のように急激に土地価格が上昇する地域では、地価公示を真正直に実勢価格と連動してしまうと急激に相続税や固定資産税等が上昇する結果につながります。

急激に税金が増えれば納税者の反発を招く恐れがあるため、都市部では地価公示をあまり実勢価格に追随させないように評価しているのです。
そのため、都市部ほど地価公示と実勢価格の乖離は大きい傾向があります。

一方で地方の場合、地価公示を下げ過ぎると固定資産税等の市町村税が減ってしまう恐れがあります。
自治体の税収が減る懸念があることから、地方では地価公示が実勢価格を上回っている場合も存在します。

地価公示と実勢価格との乖離幅は地域によって異なり、どの程度乖離しているかは一言では言い表せません。

実勢価格と相続税評価額との金額の差は?

相続税評価額は、地価公示の80%程度です。
そのため、相続税評価額の1.25倍(=1÷0.8)が地価公示水準となります。

実勢価格は、都市部であれば地価公示の1.5~2倍程度でした。
相続税評価額の1.25倍が地価公示ということであれば、相続税評価額の1.8~2.5倍程度が実勢価格となります。

また、実勢価格は地方であれば地価公示の0.9~1.1倍程度です。
相続税評価額の1.25倍が地価公示とすると、相続税評価額の1.1~1.4倍程度が実勢価格となります。

いずれにしても、相続税評価額がどれだけ実勢価格と差があるかは、地価公示がどれだけ実勢価格と差があるかによって決まります。

実勢価格の計算方法

この章では、公的評価額を使って実勢価格を計算する方法を紹介します。

地価公示から価格相場を計算する

地価公示は、都市部であれば1.5~2倍程度、地方であれば0.9~1.1倍程度が実勢価格でした。

そのため、仮に実勢価格が地価公示の1.5倍と仮定した場合、地価公示から価格相場を計算する方法は以下のようになります。

実勢価格 = 地価公示 × 1.5 × 面積

路線価から土地の価格相場を計算する

地価公示の標準地は全国に約26,000地点しかないため、必ずしも自分が調べたい土地の近くに標準地があるとは限りません。

そのため、公的評価額を使って実勢価格を把握するには、相続税路線価を利用するのが便利です。

相続税路線価は1.25倍(=1÷0.8)すると地価公示水準になります。

仮に実勢価格が地価公示の1.1倍と仮定した場合、地価公示から価格相場を計算する方法は以下の通りです。

実勢価格 = 相続税路線価 × 1.25 × 1.1 × 面積

固定資産税評価額から算出する

固定資産税評価額は、地価公示の70%程度です。
そのため、固定資産税評価額の約1.43倍(=1÷0.7)が地価公示水準となります。

仮に実勢価格が地価公示の1.0倍と仮定した場合、地価公示から価格相場を計算する方法は以下の通りです。

実勢価格 = 相続税路線価 × 1.43 × 1.0 × 面積

実勢価格の調べ方は?

実勢価格と地価公示の乖離は地域によって異なるため、公的評価額から実勢価格を求める方法は不確かな結果しか得られないのが正直なところです。

そこでこの章では、公的評価額を用いずに実勢価格を調べる方法について解説します。

国土交通省の不動産情報ライブラリを見る

不動産情報ライブラリとは、2024年4月から国土交通省が運営している不動産情報サイトになります。

国土交通省では、2024年3月まで土地総合情報システムというサイトを運営していましたが、土地総合情報システムが不動産情報ライブラリにリニューアルされました。

従前の土地総合情報システムも土地の相場を調べられるサイトでしたが、不動産情報ライブラリは土地総合情報システムよりも大幅に情報量が増えた点が特徴です。

土地総合情報システムは情報量が少なすぎて取引事例が出てこない地域もありましたが、不動産情報ライブラリでは調べられる地域がかなり広がったといえます。

不動産情報ライブラリは、地図から価格情報を調べることが可能です。
価格情報には「地価公示および都道府県地価調査の公的評価額」と「不動産取引価格情報と成約価格情報の実勢価格情報」の2種類があります。

不動産取引価格情報とは、土地総合情報システム時代から存在した取引事例情報です。
国土交通省が取引当事者にアンケート調査して得た情報であり、回答は任意であることから情報量は少ない傾向があります。

成約価格情報とは、不動産情報ライブラリで新たに加わった取引事例情報です。
成約価格情報は、指定流通機構(レインズ)が保有している情報が元となっており、取引情報が豊富な傾向があります。

価格情報で不動産取引価格情報と成約価格情報をチェックし、調べたい地域の地図上をクリックするとその地域における取引事例情報が開示されます。

取引事例情報は個人情報を保護するために、場所は特定できず、一覧表形式で表示される点は従来の土地総合情報システムと同じです。

表示される種類と土地に設定すると、土地だけの取引事例一覧を見ることができます。
最寄り駅で絞ることができ、坪単価も表示されますので、ある程度の相場を把握することが可能です。

不動産会社に査定を依頼する

売却予定であれば、不動産会社に査定を依頼することで実勢価格を把握できます。
不動産会社の査定は、基本的には仲介で売却することを前提とした価格ですので、査定結果はまさに実勢価格です。

ただし、査定結果はあくまでも売却予想価格に過ぎないため、不動産会社の査定価格で必ず売却できるわけではありません。

査定価格が極めて実勢価格に近い価格ではありますが、実際の売却価格は査定価格と異なる場合もあることを知っておく必要があります。

この記事のポイント

実勢価格とは何ですか?

実勢価格とは「適切な不動産市場で取引される時価」のことです。

例えば競売のような短期間で強制的に売却されてしまう市場は、適切な不動産市場とは呼びません。

任意売却による売却も、売り急ぎを誘引する特別な事情があり、適切な不動産市場ではないといえます。

詳しくは「実勢価格とは」をご覧ください。

実勢価格の調べ方は?

公的評価額を用いずに実勢価格を調べる場合、国土交通省の不動産情報ライブラリを見るという方法があります。

不動産情報ライブラリとは、2024年4月から国土交通省が運営している不動産情報サイトになります。

詳しくは「実勢価格の調べ方は?」をご覧ください。

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