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2024年上半期の不動産市場を振り返る! 2024年下半期、2025年はどうなる?

執筆者プロフィール

亀梨奈美

株式会社realwave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ジャーナリストとして独立。
2020年には「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに、不動産を“伝える”ことに特化した株式会社realwaveを設立。
住宅専門全国紙の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

記憶にも新しい「能登半島地震」で幕を開けた2024年。世界ではロシア・ウクライナ紛争が長期化し、イラン・イスラエル間でも緊張が高まっています。激動の半年間となった2024年上半期ですが、日本の不動産市場も大きな転換期を迎えています。3月には、ついに日本銀行がマイナス金利政策を解除しました。円安の進行もあいまって、市場は大きく揺らいでいます。不動産価格は、新築、中古ともに高騰傾向を維持していますが、その裏で「格差」が確実に進行しています。

2024年3月に「マイナス金利政策」解除

金融政策の枠組みの見通し(2024年3月)

マイナス金利政策解除
(出典:日本銀行

日本銀行は2024年3月19日、8年以上継続してきたマイナス金利政策を解除しました。これにより「住宅ローン金利が上昇するのではないか」という声も少なからず聞かれましたが、2024年上半期は固定系の金利が若干上昇したものの、米国のような大幅な金利上昇は見られていません。

住宅ローン利用者の金利タイプの割合

住宅ローン 金利タイプ 割合
(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者調査(2024年4月調査)」)

現在、8割近くの方が選択する変動金利にいたっては、住宅ローンを提供する各社の競争が激化し、もう一段金利を下げる商品も見られたほどです。変動型の金利に影響する短期プライムレートは2009年から変動しておらず、マイナス金利政策解除後も変わっていません。

以上のことから、長期的には住宅ローン金利が上昇していく可能性は高いと見られるものの、2024年下半期や2025年にドラスティックな金利上昇があるとは考えにくいといえるでしょう。仮に大幅な利上げがあったとしても、基本的に金利だけが上がることはなく、そのときには物価や賃金も上がっているはずです。

・「マイナス金利政策解除」に関する記事はこちら
マイナス金利解除!住宅ローン金利や不動産価格に与える影響は?

歴史的な円安が不動産市場に与える影響とは

米ドル/円(USD/JPY)の為替の推移

出典:TradingViewより 米ドル/円(USD/JPY)の為替の推移(終値ベース 2022年1月3日~2024年5月15日)

東京外国為替市場の円相場は年始時点で141円台でしたが、2024年の年明け以降、ぐんぐん上がり、6月後半には160円の大台を突破しました。円安が進むことで海外から仕入れる資材の価格や物流コストなどが上がり、不動産価格がさらに高騰することも危惧されます。また、円安がもたらす可能性があるのは資材価格の高騰だけではありません。

ここまで円安が進むと、とくにドル経済圏に住む人にとって、日本の商品やサービスの魅力は増します。もちろん、日本の商品には不動産も含まれます。コロナ禍前の円相場は、1ドル=110円前後だったことから、現在は当時と比べて2/3程度の価格で日本の不動産を取得できることと同義です。

日本不動産研究所によれば、2023年10月から2024年4月までの半年間のマンション価格の上昇率は、東京・大阪が世界主要15都市の中でトップでした。とはいえ、他の先進国と比べれば、日本の不動産はまだまだ安価です。2024年下半期も円相場が大きく変わらなければ、引き続き、東京の湾岸エリアや大阪、福岡など大都市部の一部の不動産に海外マネーが流れ込んでくることになるでしょう。

2024年上半期 その他の不動産市場の動向

公示地価、路線価は歴史的な上昇も「格差」が広がる

2024年3月に公表された公示地価、7月に公表された路線価は3年連続で全国平均が上昇し、上昇幅も拡大しました。上昇率が高かったのは、都市部やリゾート地、再開発エリア、半導体企業の進出があるエリアなどです。経済活動の再開やインバウンド需要の回復などによる影響が顕著に見られ、コロナ禍の収束を象徴する結果となりました。

一方で、バブル崩壊以降、30年以上にわたって地価が下落し続けているエリアも見られます。日本では人口が減少しており、少子高齢化も急速に進んでいることから、すべてのエリアの不動産価格や地価が上昇しているわけではありません。円安やインバウンド需要の回復によって海外のマネーが流入しているのは日本の一部のエリアであり、金利が上昇した場合に真っ先に影響を受けるのはすでに需要が低くなっているエリアと推測されます。2024年下半期以降、不動産価格が上がるエリア、下がるエリアの格差はますます広がっていくものと考えられます。

・「公示地価」に関する記事はこちら
2024年公示地価、3年連続上昇!「アフターコロナ」顕著に

空き家数・空き家率が過去最高に

空き家数・空き家率の推移(1978年〜2023年)

空き家数・空き家率の推移
(出典:総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」)

2024年4月には、総務省が「2023年 住宅・土地統計調査(速報値)」を公表しました。2023年の全国の空き家数は約900万戸、空き家率は13.8%と、いずれも2018年の前回調査を上回り、過去最高を更新しています。

2023年12月には空き家問題の対策を目的とした「空き家対策特別措置法(空き家法)」が改正され、空き家所有者への風当たりは一層強いものとなりました。加えて、改正空き家法によって、市区町村が定めた「空き家等活用促進区域」内の用途規制や接道規制を合理化することが可能になりましたが、国土交通省によれば2024年に促進区域に指定される予定なのは10区域と限定的です。
(参考:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法 の施行状況等について」)

空き家の増加や人口の減少、少子高齢化などを受け、国や自治体では近年「二地域居住」を促進しています。2024年5月には、二地域居住の促進などを目的とした「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律(広域的地域活性化基盤整備法)」の改正法が参院本議会で可決・成立しました。これにより、市区町村は地域に合った施策を講じやすくなります。

人口が減り始めている今も一定数の新築住宅が供給され続けていることから、家が余るのは必然であり、すべてのエリアで定住人口を増やすことは不可能です。しかし、複数の拠点で生活する人が増えれば、空き家の減少や地方の活性化につながります。

住宅の「省エネ性能」への関心が一層高まる

住宅ローン減税の概要(2024年度税制改正後)

住宅ローン減税 概要
(出典:国土交通省「住宅ローン減税」)

2025年4月からすべての新築住宅に省エネ基準への適合が求められるようになることもあり、近年は住宅の「省エネ性能」が注目されています。住宅ローン減税は、2024年度税制改正によって一足早く、省エネ基準に適合していない新築住宅・買取再販住宅を対象から外しました。

一部の中古住宅にも、長期優良住宅や低炭素住宅、ZEH(ゼッチ)などが見られ始めています。築年数が古い住宅であっても、リノベーションによって省エネ性能を高めることも可能です。省エネ性能の高い住宅は、税金や金利の優遇、補助金制度なども手厚い傾向にあります。2030年までに新築住宅の省エネ基準が引き上げられることも決定していることから、住宅を取得する際には、立地や広さ、間取りなどだけでなく、省エネ性能にも目を向けることが今後さらに大切になってくるでしょう。

まとめ

2024年上半期も不動産価格は高騰し続けましたが、これはあくまで「平均値」です。日本では人口の減少や少子高齢化が急速に進んでおり、4月に公表された2023年の空き家数・空き家率は過去最高を更新しました。不動産価格や地価が下がり続けているエリアがあるからこそ、一部、上昇し続けるエリアがあるのです。円安や金融政策の転換は、この格差をますます拡大しかねません。

不動産を売買する方は、このような市場の動向も注視しながら売り時や買い時を検討する必要があります。一方、市場の動向だけを見るのではなく、自分や家族のニーズに目を向けることも大切です。多様化する暮らし方、働き方の中で、どのようなライフプランを実現したいのかを考え、整理し、どこに住み、どのような資産を所有すべきか改めて考えてみましょう。

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